トム ヨシダブログ


第180回 私見 偏見 卓見

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ゆずり車線

ニュースで、中央道の一部の登坂車線で走り方が変わる、と言っていた。

複数の車線のある区間で、低速車両用に第一車線の左側に張り出して追加された登坂車線。従来は第一車線を走行していて流れに乗れない車両が登坂車線に移動して後続車両を先に行かせ、登坂車線が終わる前に第一車線に戻る、というシステムだった。

それが、登坂車線を廃止し張り出し部分を第一車線にして、最右車線を追い越し車線にするという。使用者の立場からすれば当たり前のことなんだけど、ようやく。

NEXCOのコメントは「右側付加車線方式への変更により、低速車が車線をゆずるのではなく、比較的速度に自由度のある車両が右側から追い抜くこととなり、安全性の向上が期待されます」だから、もっと早くに実施しても良かったのではないのかね。

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注意書きがあるということはやる人がいるということだ


我が家の近くを通る湖西道路にも同様な車線が存在するが、名称は「ゆずり車線」。名称も含めその合理性のなさを2013年10月11日のブログ、『第80回 なんだかなぁ…』 に書いたことを思い出した。「ゆずり車線」の文字が消えて「追い越し車線」の看板が出現する日は来るのかねぇ?

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ゆずるのは少数派だよな

同じブログで触れた制限速度も、湖西道路の一部で60キロ制限から70キロ制限になった。なぜ複線区間の一部だけなのか理解に苦しむけど、改善しようとする方向は評価したい。


第179回 YRSトライオーバルスクール

ユイレーシングスクールのカリキュラムのひとつにYRSトライオーバルスクールがある。

トライオーバルとはおむずび形のオーバルコースのこと。NASCARストックカーの聖地デイトナインターナショナルスピードウエイも、
世界で最も長く(2.66マイル=4280.9m)最もハイバンク(33度)のタラデガスーパースピードウエイもトライオーバルだ。

ユイレーシングスクールでは操作の練習に役立つように3つのコーナーを全て異なる曲率にしている。下りきったところにある低速の回り込んだコーナー、3速全開でクルマの向きを変えるキンク、2速に落としながらのターンインが求められる中速コーナー。

ここを走ると上手くなると言うよりも、まず走って楽しい。慣れると、もちろんブレーキングやコーナリングの練習をしてからだが、クルマを動かしている実感がヒシヒシと感じられる。

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4代目ルーテシアRSが走る
雨が降ったらメッケモノ

で、3月6日に開催したYRSトライオーバルスクールに2台のルーテシアRSがやってきた。Uさんの2代目ルーテシアRSとSさんの4代目ルーテシアRS。
お二人とも前にもユイレーシングスクールを受講したことがあるから、イーブンスロットルとトレイルブレーキングがなんたるかはご存知だけど、3速全開でターンインするYRSトライオーバルは初めて。午前中にブレーキング区間の最後で前加重を抜く練習をみっちりやって、次いでキンク後にロールを消して再加速するラインを試していざ全開。

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2代目ルーテシアRSが走る
軽さは武器!

昼過ぎから雨が降り出し路面が濡れてもなんのその。他の参加者ともども走る、走る。ウエットだからと言ってバランスを崩す人がいないのは、ユイレーシングスクールの真骨頂。1日で2度美味しいYRSトライオーバルスクールでした。

179-33代目ルーテシアRSで来れば3代そろって良かったな、と思いながらの記念撮影
右がUさん、左がSさん

ルノー・スポールに乗っているみなさん、愛車を全開で走らせてあげませんか?


◎動画で2台のルーテシアRSの走りをどうぞ。


以下はYRSオリジナルビデオから

・YRSトライオーバルオンボード映像

・YRSトライオーバル外撮り


第178回 急がば…回せ

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ブログの内容と写真は関係ありません

とある右折車線がある片側1車線の交差点。同じく右折車線がある片側1車線の道路と斜めに交わっている。この交差点を右折する場合にはかなり鋭角に曲がらなければならない。高速道路に乗る前に使ういつもの道なのだが、いつも疑問に思うことがある。

かなり往来があるので右折可の矢印が出てから右折することになるのだが、前のクルマについて右折していくと、ほとんどのクルマが交差する道路の右折車線を「踏んで」右折していく。「踏まない」のは交差する道路の右折斜線に、「右折するのを待っているクルマがいる時」だけだ、と言っても過言ではない。

交差道路の右折車線を「踏むこと」が違反にあたるかどうかは別として、疑問に思うのは彼ら(彼女ら)がどんな意識でステアリング操作をしているか、だ。

あくまでも推測の域をでないのだが、行われている操作は「ステアリングをある舵角がつくまで一気に回してそこで手を止めて、右折してからもう一度切り足す」のではないのだろうか。

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ブログの内容と写真は関係ありません

別に右折車線にクルマがいなければかまわないではないかという意見もあるだろうけど、自分の運転と比較しての話だが、それだと右折を終わる頃に最も舵角を大きくして方向を変えなければならないはずなのだ。つまり、コーナリングの半径が最も、かつ必要以上に小さくなるのが右折して直進に移る地点の寸前になる。ということは、結構な高さのある歩道と車道を分ける縁石に向かう角度が深くなるし、右折を終わってからステアリングを戻す量が大きくならざるを得ない。つまり、右折の最終段階でも運転手の目線はまだ外側に向いているはずで、進行方向の遠くを見通せる情況ではない。それでもいいの?という話。

一気に舵角を与えればそれだけ内輪差が大きくなるから、前輪が大きく向きを変えるのと同時に後輪は前輪のはるか内側を通ることになる。
結果として、直線的にコーナリングしてしまうと立ち上がりでのクルマの向きが十分に変わっておらず、従ってエネルギーの方向もクルマの向きよりも外側にある可能性が高い。なのに…。

ここに、、彼ら(彼女ら)の運転に対する意識がうかがえると言ったら言い過ぎか。

もちろん安全に右折できれば、それはそれでかまわないのだろう。しかしどんな状況であろうと、ある操作の結果どういうことが起きるか想像しながら運転している自分にはできないね、と。

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ブログの内容と写真は関係ありません

同じようなことがドライビングスクールでも見られる。例えばオーバルスクール。ふたつの同じ曲率の180度コーナーを直線で結んだ楕円形のコース。受講者一人ひとりの操作を見直すことが目的だから、最初はイーブンスロットルでブレーキは使わずに走ってもらう。

半径22mのコーナーは時速45キロだとどんなクルマでもパイロンに沿って走ることができる。ところが、「それでは50キロにペースを上げて下さい」と言うと、何人かがパイロンに沿って走ろうとしているのにパイロンから離れるようになる。「次に55キロまで加速してみましょう」と言うと、かなりの人がパイロンに沿って走ることができなくなる。パイロンを後輪で踏んづけて倒す人が出てくるのが、「あと2、3キロ速く走ってみましょうか」と言う頃だ。そう、おわかりだろう。ステアリングを「バキッ」と切っているのだ。内輪差などおかまいなしに。

この時の受講生の操作は、鋭角の交差点を曲がる彼ら(彼女ら)のステアリングの回し方に近い。
最初に大きな舵角を与えるものだから、前輪にだけスリップアングルが生じ、後輪はただ前輪の軌跡の内側をたどることになる。ペースを上げてエネルギーが大きくなればなるほど、前輪は外に逃げようとするし、無意識のうちに逃げるのがわかるからさらにステアリングを切り足すようになる。

YRSオーバルスクールではパイロンを15度ごとに置いてある。コーナーの始まりと終わり、それと頂点に緑のパイロン。その間に5本の赤いパイロン。

見ていると、パイロンから遠ざかる人は赤いパイロンの2本目か3本目でステアリングを回す手が止まっている。止まっている位置、つまり舵角も、既にそのコーナーの最終舵角ほどに大きい。それでは高い速度で自分が思い描いた軌跡にクルマを持っていくことは難しい。速度が低ければ何も起こらずにすむかも知れないが、思い描いたところにクルマを持っていくのが難しい状況にあることには変わりない。低い速度だったとしても、晴れなら大丈夫で雨ならだめかも知れない。

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ブログの内容と写真は関係ありません

だから、ユイレーシングスクールでは受講生に煙たがられるのを覚悟でこんなアドバイスをしている。

「クルマが抱えるエネルギーは速度の二乗に比例して増減する。45キロから50キロに10%ペースを上げたとしたら、クルマを真っ直ぐに進ませようとするエネルギーは20%増えているんですよ」、「最初の舵角が大きくなる原因は近くを見て操作しているからで、自分の行きたいところに目線を動かしていないからです」、「クルマにとってコーナリングはストレスになります。ストレスを大きくしないためにも、ステアリング操作の最初はゆっくりと、コーナリング中も手を止めることなくコーナーから次の直線が見えるようになるまでゆっくりと回し続けたほうがクルマさんは喜んでくれます」、と。

さて、あなたはごんな運転をしていますか?


第177回 YRSライディングスクール始動

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歳だからと控えていたけど、またバイクに乗りたくなったね

今年4月。ユイレーシングスクールはバイクユーザーを対象としたYRSライディングスクールを始める。ここ5年ほど暖めていた構想がいよいよ実現。

別に「おっちょこちょいのライダー」に正しいバイクの乗り方を教えよう、と思っているわけではない。4輪と同様に、バイクを所有している人にもっとバイクを楽しむ方法を学んでもらい、バイクに乗っていて良かったなぁ、と思ってもらえればと考えてのことだ。

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練習はやはり、再現性のある操作を最優先にする

去る1月。バイクも持っているYRSスタッフとYRS卒業生でバイクにも乗っている人の協力をあおぎ、カリキュラムの検証を行った。
それは、もちろん座学に始まり、両手を離してのスラロームからブレーキングの練習、8の字でバランスを取る練習をした後に定常円をできるだけ速く走る練習へと続く。

試験的YRSライディングスクールに参加したYRSスタッフとYRS卒業生にからは、「今まで気がつかなかった」、「そんなこと知らなかった」、「運転が楽になった」と好評のカリキュラム。

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こんなスクールがあれば若い頃もっとバイクを楽しめたかも知れない

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追いかけっこも面白かった

路面温度が低いと転倒の危険性があるから寒い時期には開催しない方針なので、第1回は4月8日(金)。まもなく募集を開始する。バイクをお持ちの方はユイレーシングスクールのウェブサイトでの告知をお待ち下さい。


◎ 両手離しのスラローム

◎ 最短距離でバイクを止めるブレーキング

◎ 8の字を何回も何回も

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インストラクターはバイクの経験が豊富で理論に基づく操作の重要性を説く田村さんにお願いする

今までもそうだったし、これからも変わらぬユイレーシングスクールのテーマは所有欲から使用欲への転換だ。そして標語が「モータースポーツをもっと手軽に、もっと楽しく、もっとみんなで」であることも変わらない。


第176回 Hさんとルーテシア

昼すぎの気温でさえ一桁前半の寒い一日となった2月6日。YRSストリートで開催したYRSドライビングワークアウトに藤沢からHさんが参加してくれた。

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「あの~、ルノー・ジャポンのブログに載せたいので記念写真を撮りたいんですけど・・・」
「あ、見てますよ」
ということで2台並べてパチリ。

申し込みフォームのデータを整理していたら、車種がルーテシアでサーキット走行の有無が「レース経験」になっていたので、どんなレースに出ているのか興味があった。
で、座学の前に聞いてみると、実はランチャ デルタHFインテグラーレ エボリューションⅡでサーキットを走っているそうだ。けれど、せっかくのドライビングスクールだから足が柔らかくて操作と挙動の関係がわかりやすい、ふだん足に使っているルーテシアGTで参加したのだと言う。

ユイレーシングスクールは初めてのHさん。いつも速いクルマに乗っているせいか、ランチャに比べれば非力なルーテシアGTをていねいに上手に前へ前へと動かしていた。走り方の組み立てと、ブレーキング以外は教えることもなさそう、な感じだった。

HさんとルーテシアGT

同乗走行でルーテシアGTを運転させてもらったけど、ルーテシアRSより大人ひとり分軽いルーテシアGTが思いの他俊敏であることに驚いた。フロントの軽さが効いているのだろう、ターンイン後の加重移動が穏やかだった。もう少し速度の出るコーナーがあると楽しそう。

ただ、ヨーモーメントを出すことに主眼をおいてレイアウトしたYRSストリートでは、もう少しターンインの速度が速いほうがリアをロールさせやすいので、ランチャに乗った時のイメージに近づくようにHさんにルーテシアRSにも乗ってもらった。

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Hさん ルーテシアRSで立ち上がる

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Hさん ルーテシアRSで加速する

「パワーがあるほうが加重移動がわかりやすいですね」
「フロントががっしりしていますね」
とはHさんの弁。

同じルーテシアとはいえ、カタログ上80馬力の差がある2台をどちらもそつなく走らせていたのはさすが。

94年製のランチャは維持するのも大変らしいけど、好きなクルマで大いに楽しんでほしいと思う。

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Hさんのランチャ デルタHFインテグラーレ エボリューションⅡ
※写真はHさんに送ってもらいました





基本的に反時計回りにレイアウトしたYRSストリートだけど、時計回りに走ると景色がどう変わるか確かめてみた。

※リードフォローで参加者を引っ張っているのでペースは抑えています


第175回 サーキットを走りませんか?

サーキットには速度制限がありませんし、ツートーンカラーのクルマもいません。対向車も来ませんし、人もあるいていません。スピードを出して走ろうと思えば、いくらでも速く走ることが可能です。愛車の性能をとことん味わうこともできます。

ところがいざ速く走ろうとすると、クルマの都合を考えて操作をしなければならない、という現実に直面します。この状況は高速道路でいかに速度違反をしたとしても、ワインディングロードをかっ飛んでみても体験できません。常にクルマの限界を探りながら操作を続けなければならない、という日常ではありえない領域の話だからです。

我々はふだんクルマに守られて運転しています。クルマの運動力学に反する操作をしても、たいがいの場合は良くできた機械であるクルマがそれと気づかせることなく補正してくれます。極端な言い方をすれば、間違った運転をしてもそこそこは走れる、ということです。

しかし、瞬間的かも知れませんし、ひょとすると気がつかないうちに収束しているかも知れませんが、サーキット以外でもクルマが限界に達することはあります。ブレーキが間に合わないとか、道路からはみだしそうになるとか。
そうならないにこしたことはありませんが、多くの人に混じってクルマを運転する人であれば、クルマが限界に近づく時にどんなことが起きるのか、どう対処すればいいのかを知っておいたほうがいい、というのが持論です。

クルマは自動車メーカーの技術によってより安全な乗り物になりつつあります。しかし、だからと言って誰もが安全を享受できるというわけではありません。クルマの安全性というものは、あくまでもパッシブセーフティです。個人個人の運転技術の足りなさを補填してくれるものではありません。間違った操作をすれば、安全なクルマでも安全ではなくなります。運転する側にアクティブセーフティの意識があってこそ生きてくる技術なのです。

そのアクティブセーフティへの第一歩は、ご自身の運転の見直しから始まります。

ユイレーシングスクールがドライビングスクールやサーキット走行を勧める理由はそこにあります。ふだんは体験できない環境で、クルマを動かすためにやってはいけないことと、やらなければならないことの仕分けを経験するために、です。ユイレーシングスクールではそれに加えて、やったほうがいいこともお教えします。

そこでお誘いです。3月26、27日(土日)に富士スピードウエイでYRSツーディスクールを開催します。1日目に広い駐車場で基本的な操作を練習して、2日目にショートコースを走ります。2日間クルマの運転にドップリと浸かる贅沢なプログラムです。

・FSWショートコースはこんなところ

1日目のカリキュラム(リンクは新らしいウィンドウに展開します)は、
・ブレーキング
・スラローム
・フィギュア8
・オーバル走行

クルマを動かす手順が確認できたところで2日目にサーキットを走りますから、過去の例をみてもほぼ全員が安全に限界域を体験できました。もちろん、サーキットだからと言って実力以上に速く走る必要はありません。できる範囲で速く走ろうと意識するだけで十分です。

YRSツーディスクールの案内頁に申し込みフォームへのリンクがあります。言い方が適切でないことを承知の上ですが、「上司にゴマすり、同僚を欺き、部下を脅かし、今まで以上の家庭サービスに努め、借金してでも受講する価値のあるスクール」です。

あなたもサーキットを走ってみませんか?


第174回 YRSライディングスクール

ユイレーシングスクールは様々なカリキュラムを通じてクルマを意のままに操るコツを学んでもらっているが、今年から2輪のライディングスクールも開催することにした。

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理由は、意外とバイクの乗り方がわかっていないバイク乗りが多いことを知ったからだ。
交通事故統計を集計した時にもバイクの乗り方を教える必要性を感じていたのだが、バイクも持っているYRS卒業生と話していると理にかなった操作方法を教えてくれるところが少ないらしい。

理にかなった操作を教えるには、クルマという機械が動く原理を説明して、クルマがその機能を発揮するために必要な操作と、クルマの性能をスポイルするやってはいけない操作を理論的に説明する必要がある。練習も合理的な方法で行なわないと整合性に欠ける。

クルマがちゃんと機能するように動かすことができれば、それは安全につながるしサーキットでは速さにもつながる。
そんなユイレーシングスクール流の道具の使い方を2輪を対象に公開してみようと思う。

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開催は暖かくなってからになるけれど、既にYRSスタッフとYRS卒業生に協力してもらって基本的なカリキュラムの構成は終わった。
バイクを最短距離で止める方法はもちろん、不安定な乗り物であるバイクだからこそ、両手をハンドルから離して行なうスラロームや、当然のことだけどライディングフォームの確認も行なう。2輪メーカーがやっているライディングスクールとはかなり趣きが異なるスクールになるはずだ。

高校の時にオリンパスという500ccの単コロを転がしていた以外はバイクから遠ざかっていたから、YRSライディングスクールでの仕事は用務員。座学をやってデモランを見せるのは、バイク用のタイヤの開発をしたりレースに参加したこともある、ユイレーシングスクールの思想に賛同してくれたインストラクターが担当する。

詳細は決まり次第お知らせします。


第173回 ルーテシアⅢRS

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オイルとクーラントとブレーキフルードの交換に行ったルノー栗東でもらったカード立て

2010年のエンジンドライビングレッスンに参加したルーテシアⅢRSに一目惚れ。仕様を聞いただけで試乗もしないで注文した。

16歳で軽免許を取ってから50年。取材を含めるととんでもない数のクルマに乗った。
30年近くのアメリカ生活ではアメリカでしか乗ることのできない何台かのOHV-V8パワーのクルマや15mのトレーラーや13.5mのモーターホームも所有してこれでもかって堪能した。レースにも参加した。
そんなこんなで、日本に戻った頃は触手が動くクルマはなかった。

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スクールを10年続け、そろそろ歳だからくたばるまで付き合えるクルマがあってもいいな、と漠然と思っていた時に現れたのがルーテシアⅢRS。不明にもその存在を知らなかったのだが、決定的に欲しいクルマが見当たらなかった当時、本当に久しぶりに、たぶん人生3回目ぐらいに「このクルマ欲しい」と思った。

目に狂いはなく、中立付近からのステアリングの素直さ。日本の道を走るには十分な、スロットルではなく気分に呼応するように高まる加速度。妙な荷重移動を起こしにくいトレッド/ホイールベース比。そしてリアサスペンションの粘り。その全てを完璧に理解するには、残りの人生で足りるかどうか。それが楽しみと言えば楽しみなのだが。

ルノー・ジャポンからお借りしているルーテシアⅣRSもいいクルマだ。現代にあって、ルノー・スポールはクルマ作りにまじめに取り組んでいる。2台をいつも乗り比べることができるのは望外の幸せで、両方に乗ることができるからこそ、時代が求めているものが変化しているのがよくわかる。

しかし古い人間の部類に入るからかも知れないが、個人的には自分の能力が寸分の違いなく評価できる素のクルマに近いルーテシアⅢRSを終の相棒に選んだことは正解だった。変わらぬ尺度として、この先の指針になってくれるはずだ。


そんな相棒との生活も5年が経ち、ルーテシアⅢRSは2回目の車検を迎えた。
今まで通りディーラーで必要なところだけ手を入れてもらい、琵琶湖の東岸にある車検場に連れて行った。

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できることは自分でやってあげたい
※ブラックボックス化されたエンジンや地面が見えないエンジンベイでは昔のように面倒を見ることが難しいけど

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もらったシールを自分で貼ると次の2年へ気持ちが新たになる

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相棒の調子が上がるのはこれからだのオドメーター

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先輩と後輩

さ、2016年も運転を楽しむぞ。
みなさん今年もよろしくお願いします。


第172回 コンタクトパッチを意識する

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最大加速度は思っていたよりも手前の地点で0.452

 

自分で言うのもおかしいけれど、クルマの運転に関してはケチだと思っている。

もちろん、ケチと言ってもクルマにお金を使わないということではなくて、無駄な費用が発生するようなことはしないという意味だ。
例えばタイヤ。サーキットを走ったりすると、前輪のショルダーが削れてしまうことがある。アンダーステアになっていてタイヤの向きとタイヤが進む方向が一致していないのが最たる原因なのだが、いったんショルダーが丸くなってしまうとエッジが使えなくなって微舵角での手ごたえをスポイルしてしまうから、そうならないような操作を最優先している。
その結果、ショルダーを使って走るよりも遅くなったとしても(遅いとは思っていないけど)、それはそれでかまわない。タイヤが地面に接するコンタクトパッチの形状(大きさではない)が変わるような走り方はしない。クルマはに走らせたい。そう思う。

YRSのスクールでもたまにショルダーを痛めてしまう人がいる。アンダーステアが出ないような操作をして、4輪を使ってクルマを曲げるようにすればそうならないのだけど、「速く走ってやろう」なんて邪心があると(笑)クルマさんの事情を無視してしまうことになる。口を酸っぱくして「対角線に荷重が移動しないようにして下さい」、「こうすれば修正できます」とアドバイスしても理論より熱い思いが先走ってしまう人が少なくない。

昔からタイヤの変形を本当に意識して運転している。もちろん目視することはできないから想像の範囲でのことだけど、できる限りタイヤの断面が横方向に変形しないように心がけて全ての操作をしている。その上で、レースではいかに速く走るか、公道ではいかに危険な状況に踏み入れないか、に集中してきた。
クルマの性能を引き出すにはタイヤに頼るしかないし、タイヤがきちんと路面に接していなければクルマはその性能を発揮しない。逆にタイヤがしっかりと地面をつかんでいれば、想像する以上簡単に安全も速さも手に入る。それが自動車だと思っている。

で、筑波サーキットコース1000で外周だけ走るとオーバルコースに似たレイアウトをとることができる。そこをタイヤの接地面=コンタクトパッチをいかに変化させないかをテーマに3周だけ走ってみた。そのうちの加速度にメリハリがあった周の動画がこれ。

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1コーナー手前の最大減速Gは-0.795

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最終コーナー手前の最大減速Gは-0.837

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最終コーナーを回っている時の最大横Gは0.994

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最終コーナー立ち上がりの最大横Gは0.931

※図右下のコース上で×印があるのがそれぞれの加速度を拾った地点

グラフを見ればわかるけど、加速度というものは決して一定ではない。計測に使ったパフォーマンスボックスというGPSを使ったロガーの精度も関係しているだろうけど、減速以外はかなり加速度に波がある。と言うことは、タイヤにかかっている負担も刻々と変化しているわけで、つまりタイヤも絶えず変形している可能性もあるわけで、加速はスロットルは開けっぱなしにしてクルマに頼るしかないけれど、ステアリングはただ切ればいいというものではないことが想像できる。

中には、速さが手に入るのならショルダーの磨耗も仕方がないと思っている人がいるだろう。でも、そうやって手に入れた速さって、その人の本来の速さとは違う。タイヤを痛めてもかまわない、という前提の上での速さだから。
逆に言えば、タイヤを痛めていいのならそれなりの速さは手に入る。ただし遅かれ早かれ、痛めた時と痛めなかった時の速さにそれほどの差がないという現実に行き当たるだろうけど。

タイヤを意識して走っている限り速くは走れないんじゃないか、と言う意見もあるだろう。けれど心配はご無用。
余裕を持ってコンタクトパッチを意識して走っていれば、タイヤがグリップしている状況がわかるようになる。タイヤの限界を超えないように走っているとどんどんタイヤへの負担が減る。すると、タイヤがずれていない区間でクルマの性能を引き出していないかがわかる。それがわかるから、速く走る必要ができた時に何をすればいいのかがわかっている、という寸法だ。

アメリカでレースをやっていた時も、お金がなかったせいもあるけど、とにかくタイヤの使い方には最大限の努力をした。
予選でタイムが出ないことがあっても、自分なりに、タイヤを痛めない範囲での速さで十分と言い聞かせていた。だから、どんどんマージンがたまっていった。
運転している意識としては「全開」だったことはない。いわゆる、プッシュする前の状態で常に走っていた。だから、50レースぐらいやったし全米6位にもなったけど、1度もスピンをしたことがないのが自慢と言えば自慢。
で、レースになってここぞという時に、かっと目を見開いて次のステップへのスイッチを入れるのだけど、それでもタイヤを痛めることはまれだった。タイヤにタイヤとして最大限の仕事をしてもらうために、タイヤ断面とコンタクトパッチの変形にいつも気を配っていたおかげだったな、と今でも思っている。

だから、ひょっとすると運転が上手くなるための方法のひとつは、ケチになることかも知れない。



今回のベストラップは27秒7だったけど、あと1秒は簡単につめれるだろう。
走りながら、いくつかの場面でタイヤの限界に挑むことを躊躇していた。ショルダーに負担をかけまいとするがあまり、ショルダーを使わない区間でも遠慮があった、というわけだ。
そんなタイヤに余力があったところを修正し、使いきれていなかったクルマの性能を引き出し速さを手に入れる。そんな流れがユイレーシングスクールが目指す本来の運転だ。

【追記】減速Gのグラフでは、1コーナーも最終コーナーもマイナスの最大加速度がターンインの1秒から1秒半ほど前に発生している。その後、減速Gが急激に減るのと並行してクルマがコーナリングを始める。これが4輪を使ったコーナリングの第一歩だ。


第171回 満16歳

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御殿場に着いたらいつもの場所に直行

12月18、19日。今年2回目のYRSツーディスクールを開催した。2日間でたくさん走りいろいろな経験を積むことができるからか、今回は台湾からのご夫婦や、宮崎、宝塚、尼崎、名古屋、常滑など遠方からの参加が多かった。

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記念撮影には富士山が欠かせない

ブレーキング、スラローム、フィギュア8、大小のオーバル走行と盛りだくさんのメニューを1日目にこなし、880mのショートコースをじっくり歩くことから始まり、リードフォロー、同乗走行と続けば、5名のサーキットを走ったことのない方も2日目の終わりにはさっそうと、破綻のない走りを見せていた。

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今年2月のYRSツーディスクールでサーキットデビューを果たしたNさんがまた来てくれた

さっそうと走るビデオはこちら

※ メリハリがあっていいでしょ?


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帰り道。ショートコースを後にすればきれいな富士山が

さて、1999年12月に産声をあげたユイレーシングスクールも満16歳になった。今年の受講者はルノー・ジャポンのトレーニングに参加した方を除いて610名。16年間の受講者は14,043名を数える。

ありがたいことだと感謝しつつ、来年はどんなカリキュラムにしようかと頭をひねっている。


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おまけの1
居酒屋へ行くいつもの道の風景

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おまけの2
居酒屋で堪能した景色