トム ヨシダブログ


第678回 『免許は返納しなくていい』

加齢に伴う身体機能や認知機能の低下によって運転操作を誤りやすくなり、交通事故を起こしてしまう可能性が高くなるので高齢者は自主的に免許証を返納しましょうという空気が蔓延しているように思う。いくつかの調査機関のデータを見るとおおむね返納には賛成で、あちこちのデータを見ると8割弱の人が将来的に返納しようと考えているようだ。

しかし、免許証の返納と言っても住んでいる地域によってクルマの運転に依存する度合いは大きく異なるし、まして運転技術のレベルは年齢によらず人によってまちまちだし、ひとくくりにして高齢になったら返納しろと言うのは少し乱暴だろう。

で、自分だったらどうするか考えてみた。結局、言葉は少々きたないかが 「 くたばる前の日まで運転していたい 」 から返納はしないという結論になるのだけど、そんな気持ちを後押ししてくれるような文章に出会った。

精神科医の和田秀樹さんが書かれた『老人入門』に掲載されている『免許は返納しなくていい』の講だ。1部引用(太字部分)させてもらって紹介したい。

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 まして地方に住んでいて、週に1度の買い物や通院に車を使っているような人は、免許返納をしてはいけません。不便になるだけでなく、生活の自由度が大きく低下して、老いを一気に加速させる可能性があるからです。

 そしていちばん見逃してならないのは、免許を返納することで高齢者が要介護になるリスクが高まるということです。筑波大などの研究チームは、運転をやめた高齢者は運転を続けた高齢者に比べて6年後には要介護と認定される人が約2.2倍になるという調査結果をまとめています。

 言うまでもなく、運転ができなくなることで家に閉じこもりがちの生活になり、運動機能も脳機能も衰えてしまったからです。自発的な免許返納は良識的な判断のように思われがちですが、実際には老いを加速させ、生きる楽しみを高齢者から奪ってしまうことにしかならないのです。

 たかが運転ぐらいでと思うかもしれませんが、それくらい高齢者は危ういバランスを保ちながら生活しています。

 運転をやめることで外出の機会が減り、人と会ったり話したりすることも減ると、活動量もどんどん減ってしまいます。とくに外出の手段が限られる地方に暮らす高齢者ほど、車の運転をやめてはいけません。たったそれだけのことでも、維持できるさまざまな機能や楽しみや意欲があります。免許返納は、それをすべて自分から手放すことになりかねないのです。

 

個人的なことになるけど、ボクはクルマの運転を自分が自立する手段だと思っている。自家用車以外の交通機関では陸海空を問わずその道の資格を持った人が運転する。いわば移動は人任せでかまわない。しかしクルマは誰にも頼らずに、運転中の出来事の全責任を負いながら、誰も助けてくれない状況で運転する。ボク自身の場合は日常生活とは違った緊張感を持ってステアリングホイールを握っている。自分がそういう自覚のもとに運転ができる限り、ボクは、人に頼らず生活を続けられると思っている。

ボクはこう思う。高齢者になって事故を起こす可能性が高くなる人は、もともと潜在的に事故を起こしかねないような運転をしていたのではないかと。スクールでも言う。クルマは機械だけど家電とは違う。使うにはそれなりの知識と覚悟が必要だと。
クルマが発達し運転が特別なことではなくなり操作自体も簡単になったけれど、手軽になったことを気軽に運転できるとはき違えてはならない。実際、運転に真剣味が足りない人もいるだろう。でも、だからこそ、年齢を問わず、クルマを運転する人全員がもっと一生懸命運転すれば事故が減る可能性はある。まずは運転に興味を持つことだと思う。次に運転を楽しむことだと思う。クルマを単なる移動の道具にしておくのはもったいない。考えようによっては自分の人生を拡大してくれる相棒になりうるのだから。

昨年暮れの調査で免許証返納義務化に反対する人が23.9%いたらしい。それぞれが反対した動機は定かではないけれど、その人達はいつも覚悟を持って運転しているから返すことに抵抗があるのではないだろうか。

 

現状を認識するために改めて年齢層別に交通事故の数字をまとめてみた。左の表が交通事故件数で右が死に至った交通事故件数でともに令和3年度の数字だ。

事故発生件数から見れば決して高齢者の事故が多いわけではない。参考のために全人口に占める年齢別構成比と交通事故総件数に占める事故件数を調べてみた。30~59歳が人口の38.9%を占め交通事故の48.1%を起こしている。一方60~89歳は人口の32.8%で起こした事故は30.8%だ。
ただ、表からはいったん事故が起きた場合に亡くなる人の数は圧倒的に高齢者が多いのが読み取れる。重大事故に至る例が多いのだろう。高齢者の安全を考えるなら免許返納を促す流れは間違いではないかも知れないが、返納すれば片付く問題でもないだろう。運転の仕方によっては事故を防げる。免許証返納問題を機に、免許保有者の多くが運転を見直す風潮が生まれるといいのだが。

 

※数字は公益財団法人 交通事故総合分析センター発行の交通統計令和3年版より引用した



第677回 視界

1979年にアメリカに渡り、日本にいてはできないような仕事を広範囲に渡ってさせてもらってきた。例えば日系メーカーのモータースポーツ部門を立ち上げたのが2社。公共放送で6年間デトロイトモーターショーのコメンテーターもやった。アルミホイールメーカーの商品開発もやった。インディカーレースを日本に招聘する交渉役もやった。コマーシャルフィルムのドライバーをやったのは1度や2度ではない。ジムラッセルレーシングスクールで日本語クラスを創設しインストラクターもやった。でもこれらはごく一部。まだまだあるけどとてもここでは全てを書ききれない。
2017年に永住権を返納するまで40年あまり、日米をちょうど100往復した記録がある。今思えばアメリカでの経験は本当に得難いものだった。その経験を活かして自分のクルマ人生を集約しようと1999年暮れに始めたユイレーシングスクールも24年目を迎えている。これだけ長く同じことを続けたことはなく、スクールの合間にアメリカ時代に経験した類い稀な思い出がよみがえる。歳のせいか。 (笑) ほとんどが楽しかったことや嬉しかったことなのだけど、実はあの時ほど悔しくて情けなかったことはないという 『1日』 もある。我が人生で最大の汚点、と言っても過言ではない。

アメリカに仕事を求めたのには他にも理由があった。中学生のころに貪り読んでいた自動車雑誌に載っていたアメリカのモータースポーツに直に触れてみたいというのもあったし、クルマが好きというより運転するのが大好きだったから、日本人では誰も乗ったことのない速いクルマに乗りたいと思っていた。
ある日フロリダにあるフランク・ホウリ―・ドラッグレーシングスクールのスーパーコンプ・コースに申し込んだ。ゼロヨンを9秒台で走るいわゆるレールというマシンのクラス。座学に始まって反射神経の計測とかコクピットドリルが終わりスタートの練習になったのだけど、リアタイヤをホイールスピンをあまりさせないようにスタートの練習をするうちはまだよかった。ところが純ドラッグレース用のマシンはリアタイヤを派手にホイールスピンさせないと速くは走れない。ATトランスミッションがエンゲージした瞬間、リアタイヤが倍ぐらいの直径になったシーンを見たことがあるだろう。間近で見るとタイヤのサイドウォールに皺がよっているのがわかるほど。ロケットスタートの秘密。
しかし、しかし。ボクはスロットルを瞬時に全開にすることができなかった。おそるおそる開けようとすると、開け方が中途半端なのでリアタイヤがホイールスピンしない。しないから後輪が路面を捕まえて前輪が浮いてしまう。コンクリートウォールに挟まれたドラッグストリップ。どっちの方向に飛んでいくのかわからない。NASCARストックカーでもIMSAのGTPマシンでもそれなりに乗りこなしてきた自負はあるものの、次に何が起きるのか想像できない。生まれて初めて運転で身体がすくんだ。これはやってはいけない、と理性が語りかける。大げさではなく、クルマの運転で初めて自分にできないことがあることを自覚した。同時に受講していた人達はドラッグレースの経験者ばかり。できて当たり前。はでなスモークを上げてタイムを競っていた。乗りたいというだけで申し込んだ自分の判断が無謀だったことを痛感した。フランクにリタイヤする旨を告げ、傷心のうちに西海岸行きの飛行機に乗った。飛行機の中でもう1度自分の運転を見直そうとしみじみ思ったものだ。

けれど負け惜しみではなく、収穫がなかったわけではない。

座学でフランクの言った「運転は芸術だ」という言葉。運転の極意は無意識行動で操作ができるようになることだとも。それでなければドラッグスターは乗りこなせないと。ジムラッセ・レーシングスクール・カリフォルニアのジャック・カチュア校長も同じようなことを言っていたけど、目指すのはそこなのだろう。ただ運転するのではなく、どこへ向かおうとしているか、より深く考えるようになった。どうすればその域に到達できるかずっと考え続けてきた。身の回りにその域に達するためのヒントがないか、ずっと探し続けてきた。むろん今もだ。

ある日のこと。公道をかっ飛ぶラリーにはあまり興味がないのだけどWRCの動画を見ることがあって、目が釘付けになったことがある。現在はトヨタのドライバーで今年ランキング3位につけているエルフィン・エバンスの車載映像だった。これを芸術と言うのだろうか。 目からの情報がどうやって、どんな経路をたどってあのような速さで手足を動かしているのか想像できない。あの狭いダート路を思い通りにクルマを動かせるのかも、自分の経験からは推し量れない。あの日と同じ。口は開いたままだから身体は緊張していないはず。無意識行動だからこうしたいと思う通りに自然と身体が動くのか。

  果たして、彼の視界には何が映っているのだろう。
  どこにも焦点を合わせず、口を開けて脱力して無心に走ってみれば想像できるのかも知れない。

 

運転しているWRCドライバーの映像をYoutubeで探してみてはどうですか。現在ポイント1位のカッレ・ロバンペラ21歳のドライビングも運転という枠に収まらないほど刺激的です。

動画はWRCオフィシャルサイトから



第673回 数字から見えてくるモノ

公益財団法人交通事故総合分析センター発行の交通統計に載っている交通事故件数で最も古いのは昭和23年、1948年の21,341件。その年の交通事故死者数は3,848人とある。この年の死亡事故件数の記載はまだない。

交通事故件数、死亡交通事故件数、交通事故死者数、車両保有台数、人口、運転免許保有者数の数字がそろったのは昭和41年、1966年。今から56年前。この年、日本の道路には原付1種を含む2輪車から大型特殊自動車までありとあらゆる車両が1千8百万台走っていた。道路の総延長は98万9千キロ。乱暴な計算ではあるが全ての車両を1列に並べると549m間隔になる。
この年、42万6千件の交通事故が発生しうち13,257件が死亡事故。13,904人が亡くなっている。免許人口は2千3百万人弱。

車両保有台数が9千万台の大台に乗ったのは平成14年。今から20年前。道路の総延長は118万キロになったが、1列に並べた車両の間隔はおよそ13mに縮まる結果に。
この年、93万7千件の交通事故が発生し(過去最多は平成16年西暦2004年の95万3千件)、死亡事故は8,062件で8,396人の方が亡くなっている。免許人口は大幅に増加し7千6百万人強。

交通統計令和3年版に載っている最新の車両保有台数は91,253,654台。令和3年度の数字が掲載されていないので令和2年度の数字を借りると、道路の総延長は1,227,422キロ。全ての車両が日本全国の道路を13.5m間隔で走ることになる。
令和3年になると交通事故は大幅に減少し305,196件。死亡事故件数が2,583件。2,636人の方が亡くなっている。運転免許保有者は81,895,559人。

交通事故も交通死亡事故もひところに比べれば大幅に減少している。1966年より免許人口は3.6倍に増え車両の保有台数にいたっては5倍になったのだから、道路交通は間違いなく安全になっていると言ってもさしつかえないだろう。しかし死者数に関しては日本は24時間死者をカウントしているので救急医療が進み救急医療体制が整った現在、正確なところはわからない。もちろん死者数が減少傾向にあるのは歓迎すべきことだけど。
いずれにしろ交通事故そのものが減っているのは、クルマの運転を教えている者としては大いに喜ぶべきことではある。

しかしながら、事故を起こした人も起こそうとして起こしたわけではないのは百も承知だけれど、それでも事故は防げたのではないかと考えてしまう。

ここでは令和3年度にクルマと2輪車の交通事故がどのような状況で起きたかを知る手がかりとして、交通統計から引用した数字をまとめてみた。参考になるかどうかわからないがご覧いただければと思う。

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令和3年度事故類型別交通事故件数
 
pdfファイルでもご覧になれます
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第672回 驚いた

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土日に富士スピードウエイでスクールがあると、日曜日中に大津に戻って月曜日の朝に片づけとか洗濯をして、そのあとはのんびり(ダラダラとも言うけど)する。
それで何げなくネットのニュースを見ていたら、『必死に飛ばしても「トイレ休憩」1回分レベル!? 高速で追い越しまくったクルマがどのぐらい得するのか考えてみた』という記事が目に入った。
だいぶ高速道路を走る人のマナーが良くなってきたなと思っていたものだから、400を超えるコメントを少しばかり追ってみて驚いた。
かなりの人がアダプティブクルーズコントロールを使って高速道路を走っている。
今やそんな時代なのかねぇ。
ボクは駄目だ。判断までクルマに任せられない。この先ずっと自立し続けるためにも。

 

※ 写真はウェアラブルカメラで撮影したものです。記事とは関係ありません。



第670回 交通統計令和3年版を見て ヤ・ハ・リ

今年7月に発行された公益財団法人 交通事故総合分析センター刊行の交通統計令和3年版からひも解く。
・日本の人口は平成22年の128,057,000人がピークで11年後の令和3年は125,502,000人に減少
・免許保有者数は平成30年の82,310,000人がピークで3年後の令和3年は81,900,000人に減少
・車両保有台数は平成30年に最多の91,460,000台を記録したがその後横ばいで令和3年は91,250,000台に
・交通事故件数は平成16年の952,720件が過去最多で17年後の令和3年は305,196件にまで減少
・交通事故死は昭和45年の16,765人をピークに減少を続け51年後の令和3年には2,636人にまで減少

自動車の安全性の向上、交通環境の整備の推進、交通違反取り締まりの強化、安全運転の啓発活動、ドライバーの運転意識の向上等々の相乗効果なのだろう、数字的には我々が共有する交通の安全性は高まっているように見える。その昔メディアを賑わした交通戦争という言葉はもはや死語のようだ。しかし、その一方である傾向が気になる。

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警察庁は交通事故を人対車両、車両相互、車両単独の3つに分類している。ユイレーシングスクールではここ10年余り運転の仕方に起因する交通事故、要するに運転の仕方次第では避けられたであろう車両単独の事故に注視してきた。車両が単独で起こすの事故とは、つまりひとり相撲だ。人であるか車両であるかは別にして、相手がある事故ならば避けられない場合もあるだろう。しかし単独での事故は運転の仕方次第では間違いなく起こさなくてすむと考える。統計的な数字は改めて集計するつもりだが、ここ数年の傾向として令和2年と3年の数字を比較してみたい。そこから見えてくるものは・・・。

交通事故の総件数は309,178件から305,196件に減少。そのうち人対車両の事故は37,811件から36,801件に、車両相互の事故は261,209件から257,481件にどちらも減少しているが、車両単独の事故だけは10,099件から10,848件に増加している

増加していると言っても、もちろん公道を走っている台数から見ればごくわずかな数字ではある。しかし交通事故総数が減っていて人対車両や車両相互も事故件数がどちらも減少傾向にあることを考えると、そして毎日見聞きする単独事故のニュースの多さやここ数年頻繁に遭遇するようになった傍若無人の運転と合わせて想像するに、交通を共有する人々の運転の質が年々下がってきているのではないかと危惧している。以前にも書いたことがあるが、『 たまたま偶然が重なって事故を起こしていないだけで、潜在的に極めて危険な運転をしている人 』が増えているように思う。

クルマを運転する者として、運転を教えている者として、改めて運転というものについて考えるいい機会になった。



第659回 想像力

ある日。テレビをつけたままキーボードをたたいていたら、「 人の限界は能力で決まるのではなく想像力で決まると思った 」という声が聞こえてきた。思わず振り返って画面に見入ってしまった。一瞬、運転の話かと思ったものだ。

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「人の限界は能力で決まるのではなく想像力で決まる」と思った

 

遠い昔から運転が上手くなるために必要なものは何だろうかとか、不可欠なものは何だろうと考えるのが常だった。けれどあれこれ考えても、運転という行為が人間の営みの広範囲に及ぶものだからこれといった答えは出ずじまいだった。時間が経ち、クルマを動かす操作そのものが重要なのはもちろんだけど、どのようにクルマを動かすか、どう動かしたいかという思想のほうが大切なのではないかと考えることに比重が移ってきた。
けれど、確かに思想があってもそれに見合った操作ができなければ、クルマの性能を引き出し、目的に沿ってクルマを動かすことは難しいことも認識してはいた。 ある時。はたと気が付いた。人間が抱く概念である思想と、人間の行動の結果である操作の溝を埋めることができるのは想像力ではないかと。想像力を働かせれば運転手の思いをクルマに伝えやすいのではないかと。それがいつ頃だったか覚えてはいないけれど、想像力が豊富なほど運転が上手くなると思い始めた。だからテレビから流れる「 人の限界は想像力で決まる 」というフレーズに思わず反応したのかも知れない。

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「想像できることは実現できる」

 

自分の運動神経が標準より劣るであろうことはたびたび触れてきた。隠す必要もない。だけど自分の運転が下手だとは少しも思ってはいない。想像力を比較する術があるのなら話は別だけれど。
スクールで「 遠くを見て 」、「 物を点で見ないで 」、「 景色の中に入っていくようなつもりで 」 とアドバイスするのは、動くモノを操るには1秒後、2秒後、3秒後、10秒後にクルマがどうなっているかを想像する必要があるからだ。「 はい、何も考えないで走ってみましょう 」、「 ちょっといいかげんに走ってみましょう 」 と言うのは、何かに固執していると全体の絵が見えにくくなるからだ。「 透明な気持ちになって運転してみて下さい 」 と助言するのはかって自分がそうした時にクルマを動かしやすかったからだ。そう、全ては想像力を高めるのための試み。
逆に「 行き当たりばったりの運転はダメです 」、「 直前の路面を見て運転するのはやめましょう 」 と口を酸っぱくして言うのは、それでは想像力が働く暇がないし、先行き想像力を豊かにすることにつながらないからだ。

オーバルコースを走る延べ15,000人以上の運転をこの目で見て来て、誰しもが想像力を豊かにするほど無意識行動でクルマを動かせるようになり、やがてクルマを手足のように操る領域に近づいていったのを目撃してきた。

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「想像できるようになったらいりいろなことを変えられる」

 

ワタクシの思想? それは実現できるかどうかの問題は置いておいて、駆動方式に関わらずクルマが動き出してから止まるまで、前後輪それぞれについたスリップアングルの合計が限りなく等しくなるような運転を絶え間なく目指すことだ。それがクルマさんが望むことだと長年の経験が教えてくれた。だから、今でも運転中の自分の頭の中を覗くことができれば、想像力がワンワンと飛び交っているのが見えるはずだ。



第652回 57年目

高1の5月。それまで庄内川の河川敷で練習して、ぶっつけ本番で平針の試験場で軽免許のテストを受けて1発合格。高3の5月。松橋の試験場で普通免許のテストを受けて1度で合格。1976年6月カリフォルニア州トーランスのDMVでカリフォルニアライセンスの実技試験を受けて300mぐらい走っただけで合格。嬉しかった思い出ばかり。

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せっかくなので誕生日に運転免許証を更新しに行ってきたのだけれど、71歳以上になると優良運転者でも有効期間が3年になることを今日知りビックリ。



第647回 Sさんの場合

申し込みフォームのコメント欄に、

「4月2日、3日両方とも参加させて頂きます。以前はデミオディーゼルでサーキット走行していましたがもっと速い車が欲しくなり前から好きだったメガーヌを購入しました。せっかく格好良い車を購入したので腕が伴っていないとなと思い参加を決めました。よろしくお願いいたします」

と書いて申し込んでくれたSさん。YRSオーバルスクールFSWとYRSドライビングワークショップFSWに2日連続で参加してくれた。お願いした感想文からは、ブレーキング、スラローム、オーバルを 『できるだけ速くコンスタントに』 走ってもらった効果があったように感じられます。

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半径22m直線130mのYRSオーバルFSWの
上のコーナーを立ち上がるSさん

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下のコーナーにトレイルブレーキングで進入するSさん

 

4月2日オーバルスクール、4月3日ドライビングワークショップに参加させて頂きましたSです。

最初はオーバルをグルグル回るだけでしょと若干舐めていた部分があったのですが実際に走行してみると自分のイメージ通りに車が動いてくれない事に驚きました。また同じコースをドライ、ウエット路面で走行できたのですがドライではタイヤがグリップしてくれたお陰で走れていたコースもウエットでは速度域が低いのにも関わらずタイヤがズルズル滑ってしまい腕の未熟さが露呈してしまいました。ウエットだと誤魔化しが効かない事を痛感しました。

サーキットではブレーキはガツンと踏むものと思い込んでいたのですが踏み方やコントロールのやり方など教えて頂き、また実際に体感出来たので普段の運転時も意識して練習してみようと思います。

シンプルなオーバルコースを回るのでやるべき事、やった方が良い事、やってはいけない事が段々と分かってくるのでシンプルだけど奥が深いんだなと思いました。私は2日間通して参加したので「あっ!この練習はこういう風に車を動かすためだったんだ」等気付いた事が多々あり、非常に収穫が多かった内容でした。と同時に課題もしっかりと頂きましたので普段から意識と目標を持って運転を楽しみたいと思います。せっかく格好良い車を購入できたのでスマートに運転したいですからね。

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Sさん また遊びに来て下さいね



第644回 Nさんの場合

今年1回目のYRSツーデースクールFSW。神戸にお住いのNさんが初めてのユイレーシングスクールに参加してくれた。当日お話を聞くと、ルーテシアRSを通じて知り合った同じ神戸に住むKさんに受講を勧められたらしい。
Kさんは去年のYRSツーデースクールFSWやYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールにも参加してくれた常連。そしたら、スクール2日目昼頃に深谷市に行ってきたというKさんがひょっこり。今回のルノー仲間全員とは顔見知りで、スクール終了まで運転とルノーの話題で盛り上がってました。

で、初参加のNさんに感想文をお願いした次第。

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FSWショートコース最終コーナーを回るNさん

 

3月19日20日の2日間富士スピードウェイにて、YRSツーデースクールFSWに参加しました。

一番印象に残っているのが、クルマは物理の法則に支配されており、クルマを動かすには理論に基づいてクルマに動いてもらう必要があるということです。そのための知識をこの2日間で非常に濃い内容を教えていただきました。

1日目は、パート毎にクルマに動いてもらうための理論を学んだ。午前中に、ブレーキング・スラローム・8の字をグループに分かれてトレーニングを行う。
ブレーキングでは、いかに効率よく最大グリップを発揮させて停止する技術をトレーニング。事前課題でだされた雑巾を絞るようにペダルを踏みこむこと。結果、最大荷重を前輪にかけてタイヤをつぶすことにより、タイヤサイズ以上のグリップが得られる。 
もう一つは、ブレーキペダルの踏み方の学び。アクセルペダルを離すとすぐにブレーキペダルを踏み込むのでは無く、一度間をおいてブレーキペダルを踏み込む技術を学ぶ。結果、荷重の移動の感じ方と過度のローターの発熱をコントロールする方法を学んだ。
スラロームでは、従来の荷重を左右に移動するスラロームでは無く、可能な限りストレートで加速させるハンドリングとアクセルワークを学んだ。荷重が均等であればあるほど安定した加速が得られることを実感した。
8の字では、従来の外側に荷重をかけたままでの8の字では無く、定常円旋回からの逆定常円旋回へつなぎ方に、ストレートで走行する方法を学んだ。つなぎをストレートで走るためには、なるべく早くハンドルを早く戻すこと、切り方は慎重に戻すときは素早く、加速は車体がまっすぐにストレート状態で安定した加速を得る。

すでにここで、自身のドライビングテクニックの常識が覆っている。

昼食休憩をはさんで午後のトレーニングに入る。午後は、オーバルコーストレーニング。日本ではインディ500マイルレースくらいしか馴染みのないオーバルコースであるが、米国ではメジャーなレーシングコースレイアウトだそうです。
一般的な定常円旋回のトレーニングでは無く、オーバルコースはストレートと円で構成されており、ストレート加速・ブレーキング減速・コーナリング・立ち上がり加速の組み合わせでトレーニングを行う。このトレーニングで、クルマの荷重移動を感じタイヤのグリップを最大化することを学んだ。
オーバルコースは、なかなか手ごわい。何度かスピンをする、理由はわかってはいるが満足できる走りがなかなかできない。オーバルコースでレースを行っている米国クルマ文化を尊敬する。サンデーレースは、オーバルコースのレースが多いのであろうが、相手を抜かす方法がわからない。今度、米国のレースを参考にしてみよう。

一日目で、クルマの動かす理論の基本を学ぶことができた。明日からは今日学んだことを自分なりに生かすトレーニングとなる。本日の走行距離 95kmなり。

二日目 富士スピードウェイショートコースでのトレーニング関谷正則氏が監修したショートサーキットとのこと、下り5%上り8%の勾配レイアウトのレイアウトサーキット。一日目にトレーニングした技術を用いてのサーキットトレーニングを行う。

最初は、全員でコース歩行を行ってコースの攻略方法のレクを受ける。勾配のあるコースなので、減速・加速・荷重のかけ方等、昨日教えてもらったことを考えながらコースの走り方を考える。なるべくストレートを最大限にとれるように走ろうと考える。
そのあとは、ヨシダ先生にリードフォローを行ってもらい、走行ラインとペースを学ぶ。先生、速いです。 と言いながら必死についていく。そのあとは、グループ毎ににラッピングを行って各自のレベルアップを行う。
都度休憩時に先生からのアドバイスがあり、再度ラップを重ねていく。メインストレートからのブレーキングで注意されるが、走り始めると頑張ってしまいなかなかブレーキングがうまくいかない。反省である。
午後からは、雨が降ってきてウエットコンディションとなり、更に難しいトレーニングとなったが、より一層荷重移動でのクルマの動きがはっきりわかることとなりいいトレーニングになったと思う。

2日目は17:00に終了 本日の走行距離148km

2日間のスクールを終え総走行距離243km あっという間の2日間であった。クルマを動かすための理論を学んだが、実行するにはまだまだトレーニングが必要というのも分かった。
スクール後に本日クルマを運転し、一般道を走りながらでも加速・ブレーキング・荷重を考えながら運転している。確実にスクール受講の成果はでていると思う。まだまだ書きたいことは多いのですが、スクールには機会があれば次回も参加したいと思っています。まだまだ自分の成長を確認したい、クルマの運転は本当に楽しい。

是非、ヨシダ先生にはいつまでもお元気でスクールの開催をお願いしたいと思っています。

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Nさんと愛車のルーテシアRSトロフィー・シャーシカップ


Nさん。感想文ありがとうございました。ドライビングスクールを長く続けられるよう健康に留意します。ぜひまた遊びに来て下さい。今年2回目のYRSツーデースクールは10月15/16日(土日)に開催予定です。

 

※ Nさんがオーバルコースでスピンしたと書かれている。路面が濡れている上に「あと5キロ速い速度からターンインしてみて下さい」と走行中にFMラジオで指示するものだから、オーバル走行が初めての人はオーバーステアになりがちで、Nさんが下手なのではありません。
スピンはオーバーステアが瞬間的に起きた結果だから、その手前でリアのグリップが足りなくなるような操作をしたのが原因ではあるけれど、スピンしなければわからないことがあるのも事実。だから、YRSオーバルFSWはイン側とアウト側のパイロンの間隔を14mにしている。つまり幅員14mの走路。車線を分ける線が描いてないから想像しにくいけど、高速道路の3車線より広いのだからYRSオーバルでスピンしても危なくはない。安心してタイヤと自分の(!)限界を試すことができる。タイヤは減るかも知れないけれど。



第638 回 クルマは前に進めたい

紹介する動画は昨年のあるF1GPのあるコーナーを回るバルテリ・ボッタス選手の走り。録画しておいたものを再生中にテレビ画面を動画撮影したもの。
オーバースピードでターンインしたのか理由は定かではないけれど、マシンがオーバーステアにおちいってカウンターステアを当てているシーンだ。

以前からコーナリング中のF1マシンのタイヤがたわむのを見て、「あんなに変形するんだ」、「リムから外れないのかな」、「タイヤがかわいそうだよねぇ」、「ハイトが高いからああなっても前に進むのかな」、「タイヤがたわまなければサスペンションが壊れているね」、「ハイトの低いタイヤだと滑り出したらスパーッっていくのかな」、「たわみが反応を遅らせるから250キロのコーナリングができるに違いないね」、「だからF1はサイドウォールがたわみやすい13インチタイヤなのかね」、「F1パイロットでもミスはするんだなあぁ」、「クルマは前に前に進めなければだめだよな」なんて勝手に独り言ちて楽しんできた。

さて。シャーシから伸びるサスペンションアームの先にあるハブに取り付けられたホイールまでは剛体。一方、ビード部でのみでホイールに密着しているタイヤは弾性体だ。この共存する形の変わらないものと形の変わるものに力が加わった時、当然のことながら弾性体であるタイヤにまず変化が生じる。

円運動を始めると遠心力が働くのでクルマは円運動の外側に向かってふくらもうとするのだけど、4本のタイヤと地面の摩擦力=グリップが生むコーナリングフォースが求心力となって遠心力が相殺され、クルマはふくらむことなく旋回を続けることができる。コーナリングの仕組み。
ところが遠心力と求心力が釣り合っていたとしてもタイヤは形の変わる弾性体なので、実はタイヤが向いている方向と実際にタイヤが進む方向との間にズレを生じながらタイヤは回転している。タイヤは円運動の外側に向かってズレながら回転している状態にあって、このズレをスリップアングルと呼ぶ。スリップアングルは4本のタイヤ全てに発生している。このズレこそ弾性体であるタイヤに生まれる最初の変化。地面との間にズレが生じるということは摩擦力が増すことに他ならないので、結果的にタイヤのグリップもさらに高まる。だからタイヤが路面とズレること、すなわちはタイヤにスリップアングルが生じることは旋回性能の向上に寄与していることになる。ただし、それはある条件の元においてだ。

前輪のスリップアングルが後輪のそれより大きい走行状態をアンダーステア、後輪のスリップアングルが前輪のそれより大きい場合をオーバーステアと呼ぶことは度々触れてきた。前者はステアリングを切ってもクルマが曲がらない、後者はステアリングを切っている以上にクルマのリアが回り込む。いずれの場合も前輪なり後輪が横滑りを起こしているわけで、その間は駆動力なり制動力が進行方向に生かされていない。つまり失速していることになる。
この動画の場合、ある瞬間にリアタイヤが大きな横力を受けグリップを増して踏ん張るものの横力に押されて大きくたわむ。次に耐えきれなくなったリアタイヤがそれまでより大きくズレることで横力を開放するから元の形に戻る。グリップを回復したタイヤだけど横力に勝てず再びたわむ。その繰り返し。クルマが、タイヤが回転した分だけ前に進んでいないことが見て取れる。

この動画のような変形はしないにしても、我々が乗っているクルマのタイヤにも様々な力が加わって形を変えていることは容易に想像できる。タイヤがタイヤとして機能していない瞬間があるかも知れない。やはりタイヤをうまく使えるように心掛けることが運転の上達には欠かせないとつくづく思う次第。

2022年のF1GPはまもなく2月23日に行われるバルセロナでのプレシーズンテストで幕を開ける。新たに18インチ径のタイヤが採用されるなど車両規則が大幅に変更になり、史上最多の23戦を戦うという今年のF1GP。果たしてどんなシーンを届けてくれるのだろうか。開幕戦は3月20日のバーレーンだ。

 

それにしても、この動画に出会って思ったことふたつ。

本当にハイトの低いタイヤがいいのだろうか、というのがひとつ。技術の進歩がトレッドゴムを進化させて扱いやすくはなっているのだろうけれど、滑り出したらスパーッといきそうで全面的に肯定できないのが本音。おそらく時代の流れがそちらに行っても、自分にとっては永遠の課題なのかな、と。昔運転の下手だった自分でもテールが流れればカウンターステアを当てることで速さを手に入れることができたバイアスタイヤ。思い出は尽きない。

もうひとつは、クルマをスタートさせてから止めるまでどんなコースを走ろうと、たとえ速く走ることが目的であったとしても、まず速さに優先して、動き出してから止まるまでの前後輪のスリップアングルの合計が等しくなるような運転を目指してきたことは間違いではなかったし、これからもそうしたいなと。