トム ヨシダブログ


第335回 結果はついてくる

あるテレビ番組でホームセンターの特集をしていた。本来はアメリカでいうところのハードウエアストアだけど、今や家電は当たり前、日用品はもちろん、衣料や食料品を置いている店舗もあるので、その意味では和製英語ではあるけれどホームセンターがしっくりくるのか。日本独特の業態。番組では、競争が激化する業界で躍進を続けるそのホームセンターの65年余りにわたる成長の過程を、創業者の教えとともに紹介していた。

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日本で最も店舗数の多いホームセンターだとか
その社長が語る創業者の言葉

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お客に評価してもらえているか
お客の役に立っているか

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それが結果として
”数字”になって出てくるだけなので

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「数字」は追うな とよく言っていた
「数字は結果だ」と


番組を見ながら、『あれぇ、運転と同じじゃん!』と思った。

ユイレーシングスクールは様々な運転経験の方が受講する。例えば延べ468名が受講した今年。申し込みフォームに受講時の経験を記入してもらうのだけど、サーキットを走ったことのない方が84名で17.9%。レース経験者が101名で21.6%。サーキット走行の経験が1時間から11時間以上の方が283名で60.5%になる。もっとも、リピート率が95%近くなのでレース経験者ほど重複している度合が大きく、この比率はあくまでも参考値ではあるけれど。

2001年ぐらいから、ユイレーシングスクールを受講して運転が面白くなり、スクールレースに出てヨーイドンが楽しくなった人は少なくなく、JAFライセンスを取ってマツダタイムトライアルやロードスターパーティーレースやFSWクラブマンレースに参加した人がいて、今も参加している人もいる。手前味噌になるけれどユイレーシングスクールの卒業生は優秀で、優勝は数知れずシリーズチャンピオンになったのもい2度や3度ではない。

と言っても、彼らや彼女らが最初から飛びっきり速かったわけではない。ひとりでサーキットを走っている分には遅くても言い訳ができるけれど、勝者が一人しかいないレースとなると話は別。勝つためにはやらなければならないことがゴマンとある。どこでブレーキングするとか、どこでステアリングを切るかなんて操作そのものを悩む時間などあるわけがない。悩んでいては先に進まない。

そこでスクールでは、レース参加を目指す人にだけではないけど、サーキットでラップタイムを短縮できずに悩んでいる人にはこんなことを話すことにしている。

『 クルマが走りやすい状況を作っていますか?   クルマを前に前に進める努力をしてますか?
それらの結果が ”速さ” という数字になって表れるだけなので、
目先の 「速さ」だけを追うのは意味のないことです。   速さとは、あくまでもどういう操作をしたかの結果です。   クルマの性能以上には速く走れないのですから、クルマの性能を十分に引き出すためにはどうすればいいのか、模索し続ければ結果はついてきますヨ 』
と。

ね、似ているでしょ。



第330回 ヨーモーメント

日常ではめったに(!?)経験することはないけれど、厳密に言うとターンイン直後、すなわちコーナリングを開始した瞬間、実はアンダーステアが発生してる。

タイヤは路面とズレることでグリップを発生する。まず最初に舵角のついた前輪に横力が働いてズレ、スリップアングルがつき ≒ グリップが発生する。この瞬間に後輪には横力が働いていないからスリップアングルはついておらずグリップも大きくなってはいない。前後輪のグリップの大きさに差がある状態。
前2輪で操舵するクルマの宿命で、次の瞬間に後輪にもスリップアングルがつけばスムーズな旋回運動に入れるのだろうが、クローズドコースでちょっと速く走ろうとすると、『前輪のグリップが後輪のそれより大きい』のだからステアリングを切った通りに動きそうなものだけど、ステアリングワークが雑だったりターンインで過度の前過重になっていると、『特にアウト側前輪が悲鳴を上げてた結果』グリップの限界を越え見事な『手アンダー』が発生してしまう。

もともと、前2輪の操舵だけだとそのクルマの旋回中心は図のように後車軸の延長線上にあるわけで、クルマのフロントは外に逃げやすい傾向にある。まして前後の重量配分に差があるクルマでは前輪が悲鳴を上げやすくアンダーステアも発生しやすい。

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ある半径のコーナーを前輪にしか操舵装置がついていないクルマが回っている
旋回中心は後輪の回転面に対する垂線の延長線上にあるから
後輪より先を行く前輪は軌跡の外側を通ることになり
図のようにフロントが外に逃げやすい


だからYRSオーバルスクールで、はでなアンダーステアを出している受講生には「切り初めに一瞬手を止めてみたらどう?」と言うことにしている。前輪に舵角を与えた瞬間、前輪のスリップアングルがそれ以上大きくならないようにステアリングホイールを回す手を止めて、後輪が前輪のいた位置に到達するのを待つ。後輪が遠心力を受けスリップアングルを生じグリップが増す。前後輪のスリップアングル ≒ グリップが均等になることを期待する。それから改めてステアリングを切り足す。そうすることでアンダーステアを発生を押さえ、クルマによっては低減することができる。

要するに、ホイールベースの分だけ反応が遅れる後輪を『待つ』。待つことによってクルマの後方で発生しがちなヨーモーメントを、ホイールベースの間で発生させるようにしむけ、人的努力でニュートラルステアを実現しようというわけだ。


一方、そのクルマの運動特性を解析し機械的にアンダーステアを回避しようという試みが4コントロールの逆位相。図のように前輪に舵角がつくと同時に後輪に逆方向の舵角をつけ、前後輪同時にスリップアングルを生ませようという仕組み。理論上は『待つ』ことをしなくても前輪のスリップアングルだけが増加することを避けられる。

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前後輪が逆位相でステアする場合には
4輪の回転面に対する垂線の交点が旋回中心になる
結果4本のタイヤが描く軌跡はそのコーナーの半径と相似形をなすから
図のようなニュートラルステアが実現できる


まだ新型メガーヌRSを走らせた時間が少ないので4コントロールの効能は少ししか感じていない。後輪がどんなタイミングでどのようにステアするのかわからないし、ルノーに聞いても教えてくれないだろうし、教えてくれても理解できないだろうから、ここでは後輪が逆位相にステアすることでホイールベースの長さがないに等しくなり、単純に前輪操舵のクルマより、コーナリングの際に舵角が少なくてすむことと、内輪差が少なくなることを確認しておこう。

それにしても、これだけの技術だからクルマの運動特性を理解したほうが4コントロールの利点が明白になる。かと言って、他力本願的な運転を勧めるわけでは決してなく、人的努力も怠らないようにしたいものだ。だから、みなさんユイレーシングスクールに来て下さい。


◎ YRSオリジナルビデオ 『待つ』
※ IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい

・トライオーバルを走る(26秒に最終コーナーの『待つ』ステアリングワークが)

・筑波サーキットコース1Kを走る(1分6秒に1コーナーでの『待つ』ステアリングワークが)



第329回 自転軸

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2018年最後のYRSオーバルスクール
参加者全員で記念撮影


ユイレーシングスクール一押しのカリキュラムがYRSオーバルスクール。
「楕円形のコースをグルグル回るだけで面白いの?」という声があるのは知っているけど、それはオーバルコースを走ったことのない人が言う言葉。オーバルコースを走るのは間違いなく面白いし楽しいし、ためにもなる。

なぜか。一方向にしか走らないオーバルコースでは、速く走ろうとすると全周にわたってタイヤの限界を余すところなく使い続けなければならない。左右のコーナーがあるロードコースではどこかで妥協しながら平均速度を上げていくという作業が必要だけど、オーバルコースでは限界の線上でクルマを操り続ける必要がある。

クルマが加速、減速、旋回を繰り返す時、タイヤは駆動力、制動力、コーナリングフォースを発生する。クルマを限界で走らせるには、例えば10のグリップがあるタイヤを履いていた場合、タテとヨコに使うグリップの和が常に10になっていなければならない。摩擦円の理論だ。タイヤに余力が残る9.5でもだめだし、限界を越えてしまう10.3でもだめだ。その上、走行中のタイヤのグリップはタイヤにかかる荷重とタイヤの滑る量で変化する。設計上はグリップ10のタイヤでも、走行中は8になったり13になったりする。すると今度は増えたり減ったりするグリップに応じてタテとヨコの和が常に100%になるように操作する必要がある。しかも、クルマにはそんなあやふやなタイヤが4本もついているのだ。

YRSオーバルスクールは常連の参加が多いけど、彼ら彼女らはまずアンダーステアを出さない。速く走っているのにアンダーステアとは無縁だ。それは駆動方式に関係なく後輪を使ったコーナリングができるからだ。つまりターンイン後に、後輪にもスリップアングルがつくような操作をしているから、ちょうど4コントロールの逆位相が機能した時のようにホイールベースの中心あたりに自転軸をおいたようなコーナリングができる。

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クルマは自転しながらコーナリング(公転)をする
(写真はカタログから拝借)


4コントロールが装備されていないクルマの場合、操舵装置のついていない後輪にスリップアングルがつけるのには遠心力に頼るしかない。速度が上がれば遠心力も増すから、フロントが逃げない範囲でより高い速度からターンインすれば後輪にも十分なスリップアングルをつけることができる。この時、舵角を必要以上に増やさないのがコツだ。前輪のスリップアングルがアンダーステア方向に大きくなっていくと後輪のそれはそれ以上大きくならないからだ。

4コントロールがついていれば、コーナリング中にステアリングを切り足せば旋回半径を小さくできるから、真っ直ぐ進入して真っ直ぐに出て行くような走り方も可能なはずだ。いずれにしろ、クルマは後輪を使って曲げなければならないのは同じだ。

ある程度クルマを速く走らせないと『 どうするとどうなる 』といった人間の操作とクルマの挙動の因果関係を理解しにくい。だから、慣れれば100キロ超からターンインできて、10秒に1回同じコーナーが現れるオーバルコースでの反復練習がうってつけなのだ。

もちろん、常連組も最初から速かったわけではないし、失敗なしで走っているわけではない。失敗はするけど大きな失敗はしないし、失敗してもごまかす方法を知っているからクルマを前へ前へと進めることができる。そのうちにとんでもなくうまくいく時がある。そのうちにタイヤの限界を越すすれすれの状況を維持できるようになる。そんな、自分とのやりとりを延々と続けられるのだからオーバルコースが面白くないわけがない。


◎ YRSオーバルスクール動画
IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい。

↑ ブレーキングで前に荷重がかかりすぎている場合はターンインして下り始めると右前輪が悲鳴を上げる。前過重を抜かないようにフロントを拾う。

↑ 下のコーナーのアプローチは斜滑降のようなもの。外に逃げようとするクルマの向きを変えるのは永遠の課題。

↑ 下りかけるとフロントがストンと落ちる。その直後、前過重になり軌跡が変わる。




第328回 スリップアングル

クルマが旋回運動を始めると弾性体であるタイヤは遠心力を受けてよじれる。よじれるとタイヤの接地面ではズレが生じる。ズレが生じることでタイヤはグリップを発生するのだけれど、その結果タイヤが回転しながら進む方向は、実はタイヤが向いている方向と一致せずにその外側に軌跡を描くことになる。この差をスリップアングルと言う。クルマの操縦性を語る時に非常に重要な要素だ。

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スクールでこんな話をする。

片側2車線で右折車線のある交差点。右折車線から対面交通の隙間をぬってUターンしようとしたクルマ。しかし1回で回りきれずに停止。切り替えしてUターンしたものの運転というものがわかっていないことを露呈してしまった、という話。

なぜ1回でUターンすることができなかったのか。その原因を考える。

対向車が来る前にUターンしてしまおうと思ったご仁はステアリングを切りながら加速した。過重は後方に移動し前輪の荷重が減少。車輪にかかる荷重こそグリップの源だというのにそれが抜けたのだから、前輪のグリップが減った状態でステアリングを回したことになる。グリップが減少しているのだからいくら大きな舵角を与えたとしても、フロントが逃げクルマの向きは変わらない。

こんなことが実は起きていた。その時、4本のタイヤの接地面を見ることができれば、前輪のスリップアングルがとてつもなく大きく、後輪のそれは無に等しかったはずだ。それではクルマが向きを変えるわけがない。アンダーステアとも言う。そんな状況をこのご仁は知る由もない。

スクールではどうすればUターンが成功したかを説明する。1発でUターンを成し遂げるためには、右折車線で直線的に加速しスロットルを閉じるか、あるいは軽くブレーキングをしながらステアリングを切り始めなければならない。要するに回頭性がよくなければUターンはかなわないのだから、理論的には前輪よりも後輪のスリップアングルが大きければ回頭性がよくなるのだから、必然的に前輪のグリップを高め後輪のグリップを弱めるために前過重でステアリングを切らなければならない。結果としてフロントが逃げないから前輪ののスリップアングル < 後輪のスリップアングルの状態を維持できる。だから回頭性が高まり小回りできることになる。

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深夜の交差点でちょっとオーバースピードで飛び込んだ時。アウト側前輪に荷重が集中する前にクルマが旋回運動を開始した。

湖西道路から自宅へ続く道にある左の鋭角コーナーで、いつものように左手で迎えにいってステアリングを切る。「あれぇ、変だな。切っている途中で戻し始めないとならないね。ルーテシアRSだと切った後にホールドしている時間があったのにねぇ」。

もっといろいろな場面で確かめないたい気が湧いてきたところで。理論的には、前輪にしか操舵装置のついていないクルマはの旋回中心は、後車軸の延長線と舵角のついた前輪に対する垂直線の交点だからあくまでも後ろより。常にホイールベースの長さ分だけ後輪が前輪を追いかける図式になる。だからアンダーステアから逃れることができないし内輪差も生じる。人間がなんとかしないと前輪のスリップアングル > 後輪のスリップアングルという呪縛がつきまとう。

前輪にある条件で舵角が与えられた場合、間髪を入れずに後輪にも舵角がつく4コントロールでは、クルマの旋回中心が前後タイヤに対する垂直線の交点になるから、言ってみればホイールベースの中心付近のどこかを軸にクルマが円運動をすることになる。だから前輪だけ操舵のクルマに比べて少ない舵角でコーナリングができるし、アンダーステアが出やすい状況でもそれを抑制することが可能になる。これが逆位相の効果のひとつだ。

対向車の直前でUターンをするなど品のないことをしてはいけないけど、例のご仁も新型メガーヌRSに乗っていたら1発でUターンが成功したかも知れない。


【追記】 個人的な話ですが、4コントロールの効用が少しずつわかってきました。しかしながら4コントロールに頼り積極的に利用して走ろうとはしないほうがいいと思います。ユイレーシングスクールは4コントロールの恩恵にあずかれるのは、クルマをきちんと動かせる技術があってのことだと思っています。新型メガーヌRSのオーナーの方はクルマとの対話を進めるためにぜひユイレーシングスクールに遊びにきて下さい。



第320回 アンダーステア

とあるスーパーマーケットの立体駐車場。スロープを登ってきたクルマは場内に入ると直後に左折。その後それぞれに広大な駐車スペースと進む。

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左折する時、入ってくる全てのクルマがタイヤを慣らす。いわゆるスキール音ってやつだ。これが面白い。どうやってクルマを操っているかがわかる。操作にもいろいろあるけれど、例を挙げるなら、どうやってステアリングホイールを回しているかがわかる。

とにかく、『キキキキキキ キーッ』 とか、『ンギャッ』 とか、『キューゥーゥー』 とか。千差万別。

そもそも、スキール音はトレッドパターンのあるタイヤの接地面のゴムが路面とこすれる際に出る共振音だから、それが発生している場面というのは、ステアリングを切った瞬間から直進方向の慣性力の影響で前輪が外側に向って横滑りをしながら進行方向に回転を続ける状態にある。つまり、クルマのフロントは前輪が向いている方向よりも外側の軌跡を描いていくことになる。サーキットなどのクローズドコースのそれとは程度に差はあるけど、クルマの挙動としてはアンダーステアの範疇に入る。

ついでに言えば、トレッドパターンのないスリックタイヤは基本的にスキール音を発生しない。

であるから、スキール音が大きいということはそれだけ前輪がたくさん滑っていることになる。もちろん速度が高くなって運動エネルギーが増えれば滑る量も増えるが、中にはゆっくり走っていてもスキール音を撒き散らす場合もあるし、そこそこの速度でステアリングを切ってもわずかなスキール音ですむ場合もある。もちろん、ステアリングを切る時の前過重の大きさもスキール音の大小に関係するけど、それはおいておいて。

だから、スキール音の大きさと出方を観察していると運転している人の癖がわかる。ステアリングをバキッと切る人。ステアリングを一発で回してしまう人。ステアリングを回し続ける人。みんな意識してステアリングホイールを回しているわけではないだろうから、その人はいつもそうしているのだと推察もできる。

駐車場の入り口を通過する速度ですら結果的に前輪が外にはらむような運転をする人は、ワインディングロードや雪道を走る時にいったいどんなステアリング操作をしているのだろうか。クルマに助けられながら運転しているのだろうな、と気になってしまう。


少しばかり速度が高いのに躊躇なく間違いなくエイヤッとステアリングホイールを回している


速度を落としているのにスキール音が出るということは奥へ行ってからバキ切りと減速による前過重が原因


そこそこの速度なのにスキール音が出る位置が奥で小さいのはステアリングを回し続ける時間が長いから


せっかく速度を落としたのに内輪差を気にしたのか奥へ行ってから一発で舵角を与えている証拠


他人が運転するクルマを観察するのは面白いしためになる。あなたはどんなふうにステアリングホイールを回していますか?



第303回 左足ブレーキング

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我が家に棲むホットハッチ三態
まだ寒い頃に撮った写真だけど


基本的にAT車に乗る場合は左足でブレーキペダルを踏んでいる。

AT車だと左足の出番がないわけで、左足が『お~い、手持ちぶさただよ~』って言っているような気がするし、右足は常に動いているのに左足を動かさないのは身体の均衡が崩れるような気がするし、アメリカでサバーバンを足に使っていた頃からだから、かれこれ40年近くになる。
因みに、もちろんそれで身体の均衡が保てるとは思っていないけれど、パソコンに向かう時にも左手でマウス、右手でテンキーを操作する。

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ルーテシアⅣRSの足元


終の棲家ならぬ終のクルマに選んだルーテシアⅢRSを引っ張り出した時はもちろん右足でブレーキをかけるけど、それ以外はなんちゃってパドルシフトのフィットRSに乗る時もルーテシアⅣRSに乗る時も左足に頼りっぱなしだ。

で、左足に働いてもらうためだけに左足ブレーキを使っているかと言うとそうではなく、左足ブレーキにはいくつかの利点がある。

交差点で止まった時にクリープを抑制することができるし、坂道発進ではブレーキ開放とスロットルの踏み込みが同調できるというのは当然のこととして、実は過重移動と姿勢制御を能動的かつ積極的に行えるから左足ブレーキを使っていたりする。

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ルーテシアⅢRSの足元


加速をやめるとリアにかかっていた荷重がフロントに移動を始めるけど、その移動する速度はその時の走行状態によって決まるので、運転手が主体的にコントロールすることができない。つまり加速から減速へのトランジッションは 『クルマまかせ』 になる。

日常の運転で過重移動を意識してどうするの、と言われるかも知れないけど、運転中は他のことができないのだから過重移動を人為的にコントロールして積極的にクルマの動きに関与するのも悪くはない。

スロットルを閉じるとややあって重心が背後に近づいてくる気配がする。移動してくる重心をそのままの速さで遅滞なく前輪にかけることができればスムースなトランジッションが実現できる。だから、背後にやってきた重心がそのまま自分を追い越して前輪にかかるように、スロットルオフとタイミングを合わせて左足でパッドとローターをこすり合わせて抵抗にしてやると、慣性力に頼るトランジッションより素早く正確に過重移動が行える。前輪にかかる荷重を自由にコントロールすることができれば、前輪のグリップを自由に増やすことがができるわけで、より短い距離でのブレーキングも可能になるという寸法だ。

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なんちゃってパドルシフトのフィットRSの足元


フロントのブレーキパッドとローターがこすり合い始める位置を左足で探ることができるのなら、左足ブレーキはフロントのロール制御にも有効だ。

峠道を気持ち良く走っている時。時としてクルマが向いている方向と慣性力の方向が一致しない場合がある。オーバースピードでコーナーに入ってしまった時とか、コーナリングを開始してから舵角を増やさざるを得なくなった時などだ。
不用意にスピードを出すのは控えるべきだが、コーナリングを開始する前に、クルマにごくわずかな減速Gが発生し左右前輪に少しの過重が乗ればフロントが落ち着く。速度が落ちないほどの減速Gである必要があるけど、輪加重を意識することで過重が抜け気味になる内側前輪も働かせることができるからだ。あくまでも前後のタイヤのグリップに差が生じない範囲でなければならないが、ノーブレーキで勇猛果敢にコーナリングするのとは180度異なる安定した姿勢を作ることができる。


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昔~しNAASCARの取材でマーケティングディレクターブライアン・フランスに話を聞いた
現NASCARのCEO兼会長


ずいぶんと前のことだけど、NASCARストックカーレースの取材で聞いたのは、かなりのドライバーが左足ブレーキングを使っているという事実。トランスミッションはマニュアルだけどデイトナインターナショナルスピードウエイあたりで、3周ぐらいかけてトップスピードに達したら後はシフトの必要がないので、 『遊んでいる左足』 に働いてもらうのだと言う。もちろんその目的は、スムーズでドライバーのコントロール下にあるウエイトトランスファー、トランジッションだ。
あるスーパースピードウエイ用のセッティングだと、右前輪にネガティブ4度、左前輪にポジティブ3.5度のキャンバーをつけ、ブレーキングでしっかりとフロントに過重をかけた時に対地キャンバーがゼロになりあの高速コーナリングが生まれるのだから、トランジッションをスムースに短縮することができれば大きな武器になる。


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2リッターDOHC16バルブターボエンジン搭載のじゃじゃ馬
真っ直ぐは速かったけど


その昔。某メーカーの2リッター16バルブターボエンジンを搭載したFF車でレースをやっていたことがある。SCCAのショールームストックというカテゴリー。ロールケージ、セーフティネット、消化器の安全装備以外は全くのノーマル。ブレーキパッドも交換できない。ショールームから出てきたクルマでレースをやろうよと。

FF車は今ほど洗練されておらず、ましてハイパワーのFF車となればもう曲がらない。なにしろサスペンションジェオメトリーを変更してもいけないのだから、とにかく人間がなんとかしなければならない。ストレートはアメ車と互角に走れるものの向こうはFR。コーナーの入り口でも出口でもアンダーステアがこれでもかと顔を出す。

しかたないからスロットル全開のまま左足でブレーキをチョン、チョンして前輪に過重を乗せてなんとか向きを変えていた。マニュアル車で左足ブレーキングを使ったのは、後にも先にもこのクルマだけ。ペダルの位置の関係で、マニュアル車だとどうしても左足が右足に勝てないから。

それから考えると、時間が経っているとは言え、現在のFF車のよくしつけられていること。当時と比べると雲泥の差。だから逆に、クルマに助けられて無事に走れている部分もあるはずなのだから、運転には謙虚でありたいものだ。


第299回 Lutecia de Asan Circuit

去年の阿讃サーキットはルーテシアRSシャシースポールで走った。今年はルーテシアRSシャシーカップを持ち込むという贅沢を味わった。

全長1,004mの阿讃サーキット1周の動画、Lutecia de Asan Circuit


締め上げられたシャシーカップの足が阿讃サーキットでどんな動きをするか興味があった。阿讃サーキットは回り込んだコーナーが多い上に路面が荒れているところがある。登りながらのターンインや下りながらのターンインと、アップダウンも激しい。タイトな切り返しもある。一見ワインディングロードの延長のようなサーキットだけれど、もちろん公道よりもはるかに高い速度域で走ることができる。

結果は。タウンスピードではシャシースポールよりゴツゴツした感じの足が全く気にならなかった。バンプに乗った時もバネ下だけが動いていてるのがはっきりわかるし、上屋が揺れるような突き上げがあるでもない。連続して荒れた路面に、トトトトトッて接地感が失われたように感じても次の瞬間には収束しているし、シャシーカップの足は確かにサーキットに向いている。次の操作に移った時のタイムラグもシャシースポールより短く、トランジッションを短縮できるイメージ。

同じコンディションでシャシーカップとシャシースポールを乗り比べればはっきりすると思うのだが、『サーキットで同じタイムを刻むのならば間違いなくシャシーカップのほうが楽』
シャシースポールと比べてハイトの低いタイヤ以外の変更はわずかなはずなのだが、そこはそれ、ヨーイングモーメントの中心をどこにもっていくかが重要なサーキット走行用のセッティングが秀逸なのだろう。公表されていない部分の違いがあるのではと思うのは、かんぐりすぎか。

しかし、サーキットを走るからと言ってシャシーカップがマストではない。ユイレーシングスクール流に言うと、日常の中にタウンユースとサーキットユースのどちらもあるならば、動力性能が同じなのだからシャシースポールが選択としては正しい。ユイレーシングスクールの思想からすれば、『 シャシースポールでシャシーカップ並みの走りを目指すのも悪くないよな 』、という選択肢があることが、ルーテシアRSに目を向ける最大の理由になる。

それを実現しようとする過程が楽しくないわけがなく、それこそルノー・スポールとルーテシアRSから運転好きへのプレゼントだと言ったら言い過ぎか。



第296回 運転中は運転に集中して下さい

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写真は本文と関係ありません


ゴールデンウィ-ク初日の午前中なのに首都圏でいたましい交通事故が発生し、ひとりの方が亡くなったとニュースで知った。

クルマを運転する者は誰しも事故を起こさないように最大限の努力をするべきなのだが、努力をしていても事故が起きる可能性を否定することはできない。
クルマあるいは二輪車を運転するのには目的があるはず。その目的を達成するためには、絶対に事故を起こさないという覚悟で運転する必要があると思う。

このニュースに対してのどなたかのコメントに激しく同意したので、原文のま手ま引用させてもらいます。

『 車の運転はそれ自体がリスク複合体であることをきちんと承知して欲しい。リスクを1秒ごとに見直しているぐらいの意識がなければどんな事故も防げない 』


車内が和気あいあいとしていても、ステアリングホイールを握っている人は同乗している方たちを守る義務と責任があることを忘れないで下さい。
二輪車だからといってすり抜けをしないで下さい。四輪に比べると小さな二輪車ですが立派な交通の構成要因なのですから流れを乱さないよう走って下さい。
クルマにしても二輪にしても運転中は他人とのコミュニケーションをとることができません。予断せずに、まずご自分が運転に集中することが大切です。

ゴールデンウィークはまだまだ続きます。楽しい日々が続くよう、みなさんどうか一生懸命に運転して下さい。

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写真は本文と関係ありません



第283回 YRSツーデースクール

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3月17日(土)
2018年1回目のYRSツーデースクール
朝5時50分の富士山を須走から仰ぐ
雲がたなびきただよう
3月中旬だというのに氷点下
クルマのウインドシールドが凍結


FSWの広大な駐車場でのスクール1日目の写真はなし。受講者にたくさん走ってもらおうと撮影そっちのけでスタッフ大車輪。
午前中にスラローム、ブレーキング、フィギュア8と練習し、午後からはオーバルコースを走り込む。たぶん、走行距離80キロ以上。

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2日目は忘れないうちに準備ができたところでパチリ
2日目は場所をFSWショートコースに移して
遠くにありし日の思い出、FSW名物だった30度バンクが


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YRSツーデースクール2日目はまずコースを歩くことから
信号機の位置、路面の傾斜、うねり、縁石の形状、高さ、諸々を確認
後ろを振り返ってどんなラインでアプローチするのがいいかも確認
けっこうブラインドコーナーがあるのを発見したり


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今回はお二人参加。もっと増えるといいね。


今回は7名の方が初めてユイレーシングスクールに参加してくれた。それでも2日間みっちり走ったから、最後は見違えるほどスムースにクルマを操って。
なにしろ、2日目午後だけで最も走った方はショートコース170周。操作がこなれるわけです。


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走行時間を2時間残して記念撮影
まだまだみんなやる気まんまんです


ポルシェ911ターボSなど速いクルマに混じって静かなクルマも参加。1台のリーフと2台のアクアがタイヤノイズと風を切る音を残してストレートを下ります。


実は、四国からIさんがルノー メガーヌRSで参加してくれたのだけど写真を撮り忘れ。それでも5月に阿讃サーキットで会えるので、その時にちゃんと紹介します。ゴメンナサイ、Iさん。実は2日目の最多周回賞は、そのIさんです。

ユイレーシングスクールでは10月20、21日の土日に2回目のYRSツーデースクールをFSWで開催します。ルノーユーザーの方の参加をお待ちしています。


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第282回 YRSオーバルスクールFSWロンガー

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ユイレーシングスクールのメインのカリキュラムであるオーバルスクール
パイロンを並べた楕円形のコースをできるだけ速いペースで走るのがテーマ
人がスロットル、ブレーキ、ステアリングを操ると
クルマは加速、減速、旋回を繰り返しながら動く
オーバルスクールで
ゆっくり走っていてはわからない「しないほうがいい操作」を見つけることができる
クルマはよくできた道具だから多少の人の失敗はカバーしてくれる
だからクルマの求める操作を覚えれば安全性が飛躍的に高まり運転が楽しくなる


ユイレーシングスクールは富士スピードウエイの駐車場でドライビングスクールを初めて開催した。だれも駐車場でドライビングスクールを開催するなど思いつかなかった頃だ。
幸いなことに、富士スピードウエイには広大な駐車場がある。運転の練習にうってつけのドライビングスクールを、現在ではいくつかの規模で開催している。

下の映像は、最も大きいYRSオーバルFSWロンガーを走るルーテシアRS。YRSオーバルスクールFSWロンガーで使うコースだ。

半径22m直線160mのオーバルコースは中心線で測って1周502m。コース幅が14mもあるからアウトインアウトで走れば1周600mあまりの周回路になる。
速い人で1周22秒。11秒に1回、ターンインからトレイルブレーキングをつかってアプローチ。イーブンスロットルでボトムスピードを上げ、ステアリングを戻した分だけ過不足なくスロットルを開ける。

単純な作業に思えるかも知れないけれど、クルマが抱えるとてつもなく大きな慣性力をコントロールする難しさはわかる。
難しいから工夫する。次から次へと迫り来るコーナーを前に考える暇もなくとにかくなんとかする。
いつもうまくいくとは限らないけれど、うまくいくこともある。うまくいくと何も考えずに操作してもクルマが思い通りに動く感覚を得ることができる。
あきらめずに続けているうちに、かってに身体が反応し始める。

それこそ、YRSオーバルスクールが求めるもの。『透明な意識がもたらす無意識行動』



ベーシックなYRSオーバルスクールは、半径22m直線60mのYRSオーバルでトレイルブレーキングとイーブンスロットルの練習をした後、半径22m直線130mのYRSオーバルロングでインベタ走行とアウトインアウト走行の練習をします。

ルノーRSモデルに乗っている方にオーバルコースを体験していただくため、ユイレーシングスクールでは4月13日(金)に開催するYRSオーバルスクールに若干名の方を無料で招待いたします(応募多数の場合は抽選となります)。
興味のおありの方はユイレーシングスクールにメール(yui_racingschool@yahoo.co.jp)、あるいは電話(090-9710-4939)でお申し出下さい。


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