トム ヨシダブログ


第178回 急がば…回せ

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ブログの内容と写真は関係ありません

とある右折車線がある片側1車線の交差点。同じく右折車線がある片側1車線の道路と斜めに交わっている。この交差点を右折する場合にはかなり鋭角に曲がらなければならない。高速道路に乗る前に使ういつもの道なのだが、いつも疑問に思うことがある。

かなり往来があるので右折可の矢印が出てから右折することになるのだが、前のクルマについて右折していくと、ほとんどのクルマが交差する道路の右折車線を「踏んで」右折していく。「踏まない」のは交差する道路の右折斜線に、「右折するのを待っているクルマがいる時」だけだ、と言っても過言ではない。

交差道路の右折車線を「踏むこと」が違反にあたるかどうかは別として、疑問に思うのは彼ら(彼女ら)がどんな意識でステアリング操作をしているか、だ。

あくまでも推測の域をでないのだが、行われている操作は「ステアリングをある舵角がつくまで一気に回してそこで手を止めて、右折してからもう一度切り足す」のではないのだろうか。

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別に右折車線にクルマがいなければかまわないではないかという意見もあるだろうけど、自分の運転と比較しての話だが、それだと右折を終わる頃に最も舵角を大きくして方向を変えなければならないはずなのだ。つまり、コーナリングの半径が最も、かつ必要以上に小さくなるのが右折して直進に移る地点の寸前になる。ということは、結構な高さのある歩道と車道を分ける縁石に向かう角度が深くなるし、右折を終わってからステアリングを戻す量が大きくならざるを得ない。つまり、右折の最終段階でも運転手の目線はまだ外側に向いているはずで、進行方向の遠くを見通せる情況ではない。それでもいいの?という話。

一気に舵角を与えればそれだけ内輪差が大きくなるから、前輪が大きく向きを変えるのと同時に後輪は前輪のはるか内側を通ることになる。
結果として、直線的にコーナリングしてしまうと立ち上がりでのクルマの向きが十分に変わっておらず、従ってエネルギーの方向もクルマの向きよりも外側にある可能性が高い。なのに…。

ここに、、彼ら(彼女ら)の運転に対する意識がうかがえると言ったら言い過ぎか。

もちろん安全に右折できれば、それはそれでかまわないのだろう。しかしどんな状況であろうと、ある操作の結果どういうことが起きるか想像しながら運転している自分にはできないね、と。

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同じようなことがドライビングスクールでも見られる。例えばオーバルスクール。ふたつの同じ曲率の180度コーナーを直線で結んだ楕円形のコース。受講者一人ひとりの操作を見直すことが目的だから、最初はイーブンスロットルでブレーキは使わずに走ってもらう。

半径22mのコーナーは時速45キロだとどんなクルマでもパイロンに沿って走ることができる。ところが、「それでは50キロにペースを上げて下さい」と言うと、何人かがパイロンに沿って走ろうとしているのにパイロンから離れるようになる。「次に55キロまで加速してみましょう」と言うと、かなりの人がパイロンに沿って走ることができなくなる。パイロンを後輪で踏んづけて倒す人が出てくるのが、「あと2、3キロ速く走ってみましょうか」と言う頃だ。そう、おわかりだろう。ステアリングを「バキッ」と切っているのだ。内輪差などおかまいなしに。

この時の受講生の操作は、鋭角の交差点を曲がる彼ら(彼女ら)のステアリングの回し方に近い。
最初に大きな舵角を与えるものだから、前輪にだけスリップアングルが生じ、後輪はただ前輪の軌跡の内側をたどることになる。ペースを上げてエネルギーが大きくなればなるほど、前輪は外に逃げようとするし、無意識のうちに逃げるのがわかるからさらにステアリングを切り足すようになる。

YRSオーバルスクールではパイロンを15度ごとに置いてある。コーナーの始まりと終わり、それと頂点に緑のパイロン。その間に5本の赤いパイロン。

見ていると、パイロンから遠ざかる人は赤いパイロンの2本目か3本目でステアリングを回す手が止まっている。止まっている位置、つまり舵角も、既にそのコーナーの最終舵角ほどに大きい。それでは高い速度で自分が思い描いた軌跡にクルマを持っていくことは難しい。速度が低ければ何も起こらずにすむかも知れないが、思い描いたところにクルマを持っていくのが難しい状況にあることには変わりない。低い速度だったとしても、晴れなら大丈夫で雨ならだめかも知れない。

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だから、ユイレーシングスクールでは受講生に煙たがられるのを覚悟でこんなアドバイスをしている。

「クルマが抱えるエネルギーは速度の二乗に比例して増減する。45キロから50キロに10%ペースを上げたとしたら、クルマを真っ直ぐに進ませようとするエネルギーは20%増えているんですよ」、「最初の舵角が大きくなる原因は近くを見て操作しているからで、自分の行きたいところに目線を動かしていないからです」、「クルマにとってコーナリングはストレスになります。ストレスを大きくしないためにも、ステアリング操作の最初はゆっくりと、コーナリング中も手を止めることなくコーナーから次の直線が見えるようになるまでゆっくりと回し続けたほうがクルマさんは喜んでくれます」、と。

さて、あなたはごんな運転をしていますか?


第177回 YRSライディングスクール始動

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歳だからと控えていたけど、またバイクに乗りたくなったね

今年4月。ユイレーシングスクールはバイクユーザーを対象としたYRSライディングスクールを始める。ここ5年ほど暖めていた構想がいよいよ実現。

別に「おっちょこちょいのライダー」に正しいバイクの乗り方を教えよう、と思っているわけではない。4輪と同様に、バイクを所有している人にもっとバイクを楽しむ方法を学んでもらい、バイクに乗っていて良かったなぁ、と思ってもらえればと考えてのことだ。

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練習はやはり、再現性のある操作を最優先にする

去る1月。バイクも持っているYRSスタッフとYRS卒業生でバイクにも乗っている人の協力をあおぎ、カリキュラムの検証を行った。
それは、もちろん座学に始まり、両手を離してのスラロームからブレーキングの練習、8の字でバランスを取る練習をした後に定常円をできるだけ速く走る練習へと続く。

試験的YRSライディングスクールに参加したYRSスタッフとYRS卒業生にからは、「今まで気がつかなかった」、「そんなこと知らなかった」、「運転が楽になった」と好評のカリキュラム。

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こんなスクールがあれば若い頃もっとバイクを楽しめたかも知れない

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追いかけっこも面白かった

路面温度が低いと転倒の危険性があるから寒い時期には開催しない方針なので、第1回は4月8日(金)。まもなく募集を開始する。バイクをお持ちの方はユイレーシングスクールのウェブサイトでの告知をお待ち下さい。


◎ 両手離しのスラローム

◎ 最短距離でバイクを止めるブレーキング

◎ 8の字を何回も何回も

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インストラクターはバイクの経験が豊富で理論に基づく操作の重要性を説く田村さんにお願いする

今までもそうだったし、これからも変わらぬユイレーシングスクールのテーマは所有欲から使用欲への転換だ。そして標語が「モータースポーツをもっと手軽に、もっと楽しく、もっとみんなで」であることも変わらない。


第176回 Hさんとルーテシア

昼すぎの気温でさえ一桁前半の寒い一日となった2月6日。YRSストリートで開催したYRSドライビングワークアウトに藤沢からHさんが参加してくれた。

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「あの~、ルノー・ジャポンのブログに載せたいので記念写真を撮りたいんですけど・・・」
「あ、見てますよ」
ということで2台並べてパチリ。

申し込みフォームのデータを整理していたら、車種がルーテシアでサーキット走行の有無が「レース経験」になっていたので、どんなレースに出ているのか興味があった。
で、座学の前に聞いてみると、実はランチャ デルタHFインテグラーレ エボリューションⅡでサーキットを走っているそうだ。けれど、せっかくのドライビングスクールだから足が柔らかくて操作と挙動の関係がわかりやすい、ふだん足に使っているルーテシアGTで参加したのだと言う。

ユイレーシングスクールは初めてのHさん。いつも速いクルマに乗っているせいか、ランチャに比べれば非力なルーテシアGTをていねいに上手に前へ前へと動かしていた。走り方の組み立てと、ブレーキング以外は教えることもなさそう、な感じだった。

HさんとルーテシアGT

同乗走行でルーテシアGTを運転させてもらったけど、ルーテシアRSより大人ひとり分軽いルーテシアGTが思いの他俊敏であることに驚いた。フロントの軽さが効いているのだろう、ターンイン後の加重移動が穏やかだった。もう少し速度の出るコーナーがあると楽しそう。

ただ、ヨーモーメントを出すことに主眼をおいてレイアウトしたYRSストリートでは、もう少しターンインの速度が速いほうがリアをロールさせやすいので、ランチャに乗った時のイメージに近づくようにHさんにルーテシアRSにも乗ってもらった。

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Hさん ルーテシアRSで立ち上がる

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Hさん ルーテシアRSで加速する

「パワーがあるほうが加重移動がわかりやすいですね」
「フロントががっしりしていますね」
とはHさんの弁。

同じルーテシアとはいえ、カタログ上80馬力の差がある2台をどちらもそつなく走らせていたのはさすが。

94年製のランチャは維持するのも大変らしいけど、好きなクルマで大いに楽しんでほしいと思う。

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Hさんのランチャ デルタHFインテグラーレ エボリューションⅡ
※写真はHさんに送ってもらいました





基本的に反時計回りにレイアウトしたYRSストリートだけど、時計回りに走ると景色がどう変わるか確かめてみた。

※リードフォローで参加者を引っ張っているのでペースは抑えています


第175回 サーキットを走りませんか?

サーキットには速度制限がありませんし、ツートーンカラーのクルマもいません。対向車も来ませんし、人もあるいていません。スピードを出して走ろうと思えば、いくらでも速く走ることが可能です。愛車の性能をとことん味わうこともできます。

ところがいざ速く走ろうとすると、クルマの都合を考えて操作をしなければならない、という現実に直面します。この状況は高速道路でいかに速度違反をしたとしても、ワインディングロードをかっ飛んでみても体験できません。常にクルマの限界を探りながら操作を続けなければならない、という日常ではありえない領域の話だからです。

我々はふだんクルマに守られて運転しています。クルマの運動力学に反する操作をしても、たいがいの場合は良くできた機械であるクルマがそれと気づかせることなく補正してくれます。極端な言い方をすれば、間違った運転をしてもそこそこは走れる、ということです。

しかし、瞬間的かも知れませんし、ひょとすると気がつかないうちに収束しているかも知れませんが、サーキット以外でもクルマが限界に達することはあります。ブレーキが間に合わないとか、道路からはみだしそうになるとか。
そうならないにこしたことはありませんが、多くの人に混じってクルマを運転する人であれば、クルマが限界に近づく時にどんなことが起きるのか、どう対処すればいいのかを知っておいたほうがいい、というのが持論です。

クルマは自動車メーカーの技術によってより安全な乗り物になりつつあります。しかし、だからと言って誰もが安全を享受できるというわけではありません。クルマの安全性というものは、あくまでもパッシブセーフティです。個人個人の運転技術の足りなさを補填してくれるものではありません。間違った操作をすれば、安全なクルマでも安全ではなくなります。運転する側にアクティブセーフティの意識があってこそ生きてくる技術なのです。

そのアクティブセーフティへの第一歩は、ご自身の運転の見直しから始まります。

ユイレーシングスクールがドライビングスクールやサーキット走行を勧める理由はそこにあります。ふだんは体験できない環境で、クルマを動かすためにやってはいけないことと、やらなければならないことの仕分けを経験するために、です。ユイレーシングスクールではそれに加えて、やったほうがいいこともお教えします。

そこでお誘いです。3月26、27日(土日)に富士スピードウエイでYRSツーディスクールを開催します。1日目に広い駐車場で基本的な操作を練習して、2日目にショートコースを走ります。2日間クルマの運転にドップリと浸かる贅沢なプログラムです。

・FSWショートコースはこんなところ

1日目のカリキュラム(リンクは新らしいウィンドウに展開します)は、
・ブレーキング
・スラローム
・フィギュア8
・オーバル走行

クルマを動かす手順が確認できたところで2日目にサーキットを走りますから、過去の例をみてもほぼ全員が安全に限界域を体験できました。もちろん、サーキットだからと言って実力以上に速く走る必要はありません。できる範囲で速く走ろうと意識するだけで十分です。

YRSツーディスクールの案内頁に申し込みフォームへのリンクがあります。言い方が適切でないことを承知の上ですが、「上司にゴマすり、同僚を欺き、部下を脅かし、今まで以上の家庭サービスに努め、借金してでも受講する価値のあるスクール」です。

あなたもサーキットを走ってみませんか?


第174回 YRSライディングスクール

ユイレーシングスクールは様々なカリキュラムを通じてクルマを意のままに操るコツを学んでもらっているが、今年から2輪のライディングスクールも開催することにした。

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理由は、意外とバイクの乗り方がわかっていないバイク乗りが多いことを知ったからだ。
交通事故統計を集計した時にもバイクの乗り方を教える必要性を感じていたのだが、バイクも持っているYRS卒業生と話していると理にかなった操作方法を教えてくれるところが少ないらしい。

理にかなった操作を教えるには、クルマという機械が動く原理を説明して、クルマがその機能を発揮するために必要な操作と、クルマの性能をスポイルするやってはいけない操作を理論的に説明する必要がある。練習も合理的な方法で行なわないと整合性に欠ける。

クルマがちゃんと機能するように動かすことができれば、それは安全につながるしサーキットでは速さにもつながる。
そんなユイレーシングスクール流の道具の使い方を2輪を対象に公開してみようと思う。

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開催は暖かくなってからになるけれど、既にYRSスタッフとYRS卒業生に協力してもらって基本的なカリキュラムの構成は終わった。
バイクを最短距離で止める方法はもちろん、不安定な乗り物であるバイクだからこそ、両手をハンドルから離して行なうスラロームや、当然のことだけどライディングフォームの確認も行なう。2輪メーカーがやっているライディングスクールとはかなり趣きが異なるスクールになるはずだ。

高校の時にオリンパスという500ccの単コロを転がしていた以外はバイクから遠ざかっていたから、YRSライディングスクールでの仕事は用務員。座学をやってデモランを見せるのは、バイク用のタイヤの開発をしたりレースに参加したこともある、ユイレーシングスクールの思想に賛同してくれたインストラクターが担当する。

詳細は決まり次第お知らせします。


第173回 ルーテシアⅢRS

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オイルとクーラントとブレーキフルードの交換に行ったルノー栗東でもらったカード立て

2010年のエンジンドライビングレッスンに参加したルーテシアⅢRSに一目惚れ。仕様を聞いただけで試乗もしないで注文した。

16歳で軽免許を取ってから50年。取材を含めるととんでもない数のクルマに乗った。
30年近くのアメリカ生活ではアメリカでしか乗ることのできない何台かのOHV-V8パワーのクルマや15mのトレーラーや13.5mのモーターホームも所有してこれでもかって堪能した。レースにも参加した。
そんなこんなで、日本に戻った頃は触手が動くクルマはなかった。

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スクールを10年続け、そろそろ歳だからくたばるまで付き合えるクルマがあってもいいな、と漠然と思っていた時に現れたのがルーテシアⅢRS。不明にもその存在を知らなかったのだが、決定的に欲しいクルマが見当たらなかった当時、本当に久しぶりに、たぶん人生3回目ぐらいに「このクルマ欲しい」と思った。

目に狂いはなく、中立付近からのステアリングの素直さ。日本の道を走るには十分な、スロットルではなく気分に呼応するように高まる加速度。妙な荷重移動を起こしにくいトレッド/ホイールベース比。そしてリアサスペンションの粘り。その全てを完璧に理解するには、残りの人生で足りるかどうか。それが楽しみと言えば楽しみなのだが。

ルノー・ジャポンからお借りしているルーテシアⅣRSもいいクルマだ。現代にあって、ルノー・スポールはクルマ作りにまじめに取り組んでいる。2台をいつも乗り比べることができるのは望外の幸せで、両方に乗ることができるからこそ、時代が求めているものが変化しているのがよくわかる。

しかし古い人間の部類に入るからかも知れないが、個人的には自分の能力が寸分の違いなく評価できる素のクルマに近いルーテシアⅢRSを終の相棒に選んだことは正解だった。変わらぬ尺度として、この先の指針になってくれるはずだ。


そんな相棒との生活も5年が経ち、ルーテシアⅢRSは2回目の車検を迎えた。
今まで通りディーラーで必要なところだけ手を入れてもらい、琵琶湖の東岸にある車検場に連れて行った。

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できることは自分でやってあげたい
※ブラックボックス化されたエンジンや地面が見えないエンジンベイでは昔のように面倒を見ることが難しいけど

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もらったシールを自分で貼ると次の2年へ気持ちが新たになる

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相棒の調子が上がるのはこれからだのオドメーター

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先輩と後輩

さ、2016年も運転を楽しむぞ。
みなさん今年もよろしくお願いします。


第172回 コンタクトパッチを意識する

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最大加速度は思っていたよりも手前の地点で0.452

 

自分で言うのもおかしいけれど、クルマの運転に関してはケチだと思っている。

もちろん、ケチと言ってもクルマにお金を使わないということではなくて、無駄な費用が発生するようなことはしないという意味だ。
例えばタイヤ。サーキットを走ったりすると、前輪のショルダーが削れてしまうことがある。アンダーステアになっていてタイヤの向きとタイヤが進む方向が一致していないのが最たる原因なのだが、いったんショルダーが丸くなってしまうとエッジが使えなくなって微舵角での手ごたえをスポイルしてしまうから、そうならないような操作を最優先している。
その結果、ショルダーを使って走るよりも遅くなったとしても(遅いとは思っていないけど)、それはそれでかまわない。タイヤが地面に接するコンタクトパッチの形状(大きさではない)が変わるような走り方はしない。クルマはに走らせたい。そう思う。

YRSのスクールでもたまにショルダーを痛めてしまう人がいる。アンダーステアが出ないような操作をして、4輪を使ってクルマを曲げるようにすればそうならないのだけど、「速く走ってやろう」なんて邪心があると(笑)クルマさんの事情を無視してしまうことになる。口を酸っぱくして「対角線に荷重が移動しないようにして下さい」、「こうすれば修正できます」とアドバイスしても理論より熱い思いが先走ってしまう人が少なくない。

昔からタイヤの変形を本当に意識して運転している。もちろん目視することはできないから想像の範囲でのことだけど、できる限りタイヤの断面が横方向に変形しないように心がけて全ての操作をしている。その上で、レースではいかに速く走るか、公道ではいかに危険な状況に踏み入れないか、に集中してきた。
クルマの性能を引き出すにはタイヤに頼るしかないし、タイヤがきちんと路面に接していなければクルマはその性能を発揮しない。逆にタイヤがしっかりと地面をつかんでいれば、想像する以上簡単に安全も速さも手に入る。それが自動車だと思っている。

で、筑波サーキットコース1000で外周だけ走るとオーバルコースに似たレイアウトをとることができる。そこをタイヤの接地面=コンタクトパッチをいかに変化させないかをテーマに3周だけ走ってみた。そのうちの加速度にメリハリがあった周の動画がこれ。

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1コーナー手前の最大減速Gは-0.795

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最終コーナー手前の最大減速Gは-0.837

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最終コーナーを回っている時の最大横Gは0.994

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最終コーナー立ち上がりの最大横Gは0.931

※図右下のコース上で×印があるのがそれぞれの加速度を拾った地点

グラフを見ればわかるけど、加速度というものは決して一定ではない。計測に使ったパフォーマンスボックスというGPSを使ったロガーの精度も関係しているだろうけど、減速以外はかなり加速度に波がある。と言うことは、タイヤにかかっている負担も刻々と変化しているわけで、つまりタイヤも絶えず変形している可能性もあるわけで、加速はスロットルは開けっぱなしにしてクルマに頼るしかないけれど、ステアリングはただ切ればいいというものではないことが想像できる。

中には、速さが手に入るのならショルダーの磨耗も仕方がないと思っている人がいるだろう。でも、そうやって手に入れた速さって、その人の本来の速さとは違う。タイヤを痛めてもかまわない、という前提の上での速さだから。
逆に言えば、タイヤを痛めていいのならそれなりの速さは手に入る。ただし遅かれ早かれ、痛めた時と痛めなかった時の速さにそれほどの差がないという現実に行き当たるだろうけど。

タイヤを意識して走っている限り速くは走れないんじゃないか、と言う意見もあるだろう。けれど心配はご無用。
余裕を持ってコンタクトパッチを意識して走っていれば、タイヤがグリップしている状況がわかるようになる。タイヤの限界を超えないように走っているとどんどんタイヤへの負担が減る。すると、タイヤがずれていない区間でクルマの性能を引き出していないかがわかる。それがわかるから、速く走る必要ができた時に何をすればいいのかがわかっている、という寸法だ。

アメリカでレースをやっていた時も、お金がなかったせいもあるけど、とにかくタイヤの使い方には最大限の努力をした。
予選でタイムが出ないことがあっても、自分なりに、タイヤを痛めない範囲での速さで十分と言い聞かせていた。だから、どんどんマージンがたまっていった。
運転している意識としては「全開」だったことはない。いわゆる、プッシュする前の状態で常に走っていた。だから、50レースぐらいやったし全米6位にもなったけど、1度もスピンをしたことがないのが自慢と言えば自慢。
で、レースになってここぞという時に、かっと目を見開いて次のステップへのスイッチを入れるのだけど、それでもタイヤを痛めることはまれだった。タイヤにタイヤとして最大限の仕事をしてもらうために、タイヤ断面とコンタクトパッチの変形にいつも気を配っていたおかげだったな、と今でも思っている。

だから、ひょっとすると運転が上手くなるための方法のひとつは、ケチになることかも知れない。



今回のベストラップは27秒7だったけど、あと1秒は簡単につめれるだろう。
走りながら、いくつかの場面でタイヤの限界に挑むことを躊躇していた。ショルダーに負担をかけまいとするがあまり、ショルダーを使わない区間でも遠慮があった、というわけだ。
そんなタイヤに余力があったところを修正し、使いきれていなかったクルマの性能を引き出し速さを手に入れる。そんな流れがユイレーシングスクールが目指す本来の運転だ。

【追記】減速Gのグラフでは、1コーナーも最終コーナーもマイナスの最大加速度がターンインの1秒から1秒半ほど前に発生している。その後、減速Gが急激に減るのと並行してクルマがコーナリングを始める。これが4輪を使ったコーナリングの第一歩だ。


第171回 満16歳

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御殿場に着いたらいつもの場所に直行

12月18、19日。今年2回目のYRSツーディスクールを開催した。2日間でたくさん走りいろいろな経験を積むことができるからか、今回は台湾からのご夫婦や、宮崎、宝塚、尼崎、名古屋、常滑など遠方からの参加が多かった。

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記念撮影には富士山が欠かせない

ブレーキング、スラローム、フィギュア8、大小のオーバル走行と盛りだくさんのメニューを1日目にこなし、880mのショートコースをじっくり歩くことから始まり、リードフォロー、同乗走行と続けば、5名のサーキットを走ったことのない方も2日目の終わりにはさっそうと、破綻のない走りを見せていた。

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今年2月のYRSツーディスクールでサーキットデビューを果たしたNさんがまた来てくれた

さっそうと走るビデオはこちら

※ メリハリがあっていいでしょ?


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帰り道。ショートコースを後にすればきれいな富士山が

さて、1999年12月に産声をあげたユイレーシングスクールも満16歳になった。今年の受講者はルノー・ジャポンのトレーニングに参加した方を除いて610名。16年間の受講者は14,043名を数える。

ありがたいことだと感謝しつつ、来年はどんなカリキュラムにしようかと頭をひねっている。


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おまけの1
居酒屋へ行くいつもの道の風景

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おまけの2
居酒屋で堪能した景色



第170回 プレシーズンセール開催

今回はまんまユイレーシングスクールの宣伝です。

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ユイレーシングスクールは実際のスクールで理にかなった運転がどういうものなのかお伝えしていますが、それ以外にもいろいろなコンテンツを用意しています。今回紹介するYRS座学オンCDもそのひとつです。

桶川スポーツランドで初めてのスクールを開催してから筑波サーキット、浅間台スポーツランド、成田スポーツランドと活動の輪を広げ、富士スピードウエイ、鈴鹿サーキットでも開催、最近では和歌山や三重や徳島でもドライビングスクールを開催しました。

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しかしながら「九州ではやらないのですか?」とか「筑波は遠いのですが」といったメールをいただくこともあり、なんとかドライビングスクールに来るのが難しい方々にも理にかなった運転のいろはをお伝えできないか、と考えたあげくに作ったのが今回紹介するYRS座学オンCDです。
で、実際のスクールに来れない方にも同等の情報を提供したいと思っていたら、最終的には音声だけの5時間30分のCDになってしまいました。

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ですが収録されている内容はクルマの運転に役に立つことばかりです。運転技術に後退はありません。学ぼうとする限り向上していきます。将来のため、明日のために聞いてみてはいかがですか。

そのYRS座学オンCDのプリシーズンセールを行ないます。以下の申し込みフォームに記入の上で送信。3日以内に料金をお支払い下さい。

プレシーズンセール期間:2016年1月4日(月)から9日(土)
価格:通常送料込み4,500円のところ3,990円(消費税込み)
発送:セール期間に申し込まれた全数を14日(木)にクロネコネコポスでお送りします。

※ 振込先:ジャパンネットバンク スズメ支店(002) 普通預金 2047309 有限会社ユイレーシングスクール

・YRS 座学オンCD 購入申込みフォーム

参考のために収録されている音声の一部を聞くことができます。数字をクリックすると再生が始まります。

[6] 道具を使う
[11] アンダーステアとは
[12] オーバーステアとは
[32] こんなことがありました
[42] 運転の決まり
[49] ドライビングポジション
[53] 試してみましょう
[59] こんなことがありました
[63] 加速の意味

行頭の数字がテーマです。テーマは全部で124あります。全てのテーマをご覧になりたい方はYRS座学オンCDのさわりをご覧下さい。


※ YRS座学オンCDはmp3フォーマットで録音しています


第169回 17回目の冬

12月4日(金)
週末にスクールを開催するのでコース作りに富士スピードウエイへ。

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御殿場インターを降りてガソリンスタンドに給油に立ち寄ったら、ルーテシアⅣRSも給油していた。目が合ったので会釈すると「走行会ですか?」の問い。こちらはスクールなのだけど「今日走行会があるんですか?」と聞いてみると、ルノー・スポール中心の走行会がショートコースで行なわれるという。時間があれば寄ってみます、と分かれたのだけど、ブログを読んでもらっているというのにお名前を聞くのを忘れた。申し訳ないことをした。兄弟の写真だけは撮影させてもらったけど。

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今回は終の相棒を連れ出した。で、いつものように富士スピードウエイに行く途中で寄り道。晴れていたから本当なら、朝日に輝く富士山を拝めたはずなんだけど、富士山の裏側が荒れ模様のようで、しかもとんでもなく強い北風で、次から次へと雲が越えて来るから全貌は拝めず。それでも、勢いよく動き回る雲が朝日に照らされて染まるのを見ることができたのは悪くなかった。

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打ち合わせがあったので御殿場に戻る道すがらにもう一度寄ってみたけど、状況は変わらず残念。

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久しく終の相棒の写真を撮っていなかったので、お気に入りの場所で。

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富士スピードウエイに戻ってショートコースに行ってみると、ルーテシアⅣRSを中心としたルノー・スポールがわんさか。数えてはいないけど60台以上は集まっていた感じ。ルノー・スポールを対象とした走行会があるなんて知らなかった。失礼しました。

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風は強かったけど天気は最高。グループに分かれて走っているのか、コース上には絶えずルノー・スポールが。圧巻。

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ルノー・スポールが好きな人の集まりなんだろうけど、クルマを共通言語として時間を共有できる機会があるのはスバラシイ。

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写真では3色だけだけど、パドックにいるのを含めるとルーテシアⅣRSだけでも実にカラフル。

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感心したのは走っていた人がみんなクルマを丁寧に扱っていたこと。RSバッヂがついているクルマは粋に乗りたいからね。


12月5日(土)
YRSオーバルレース最終戦

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6時20分の富士山。日の出前に宿を出るから、少し赤みを帯びたところしか撮れなかったのが残念。予報どおり快晴で風もおさまったけど、放射冷却なのか寒いこと寒いこと。フロントウインドは凍っているし車載温度計はマイナス2度。今の時期に凍るとは思っていなかったから、建物に向けて停めなかったのだけど。

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前日の寒さに耐えてコースを作ったご褒美か、まれに見る快晴。雲ひとつなし。
YRSオーバルレースの参加者が集まりだした。今回は遠く郡山からの参加も。

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YRSスクールレースは、ユイレーシングスクールが主催するいずれかのドライビングスクールに参加したことのある人を対象に開催している。参加者はみな顔見知りだから運営も自主的にしてもらうことが多い。それぞれがどうすればより運転を楽しめるかといつも真剣。

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恒例の記念撮影。

YRSオーバルレースはローリングスタートを採用。フォーメーションラップはこんな感じ

オーバルレースのスタートはこんな感じ

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YRSオーバルレースが終わって次の日の準備ができたから、しつこいようだけど富士山を背景にパチリ。


12月6日(日)
ポルシェクラブ千葉の安全運転練習会

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朝6時30分の富士山。ずいぶんと明るくなるのが遅くなったんで、出発までに赤富士が撮れるか微妙なところ。この日もなりかけだけ。

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朝早くからポルシェクラブ千葉のメンバーが集まってきた。

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恒例の記念撮影。安全運転練習会のインストラクターを仰せつかってから7年。息子さんと一緒に参加する方も増えてきた。みんなきれいにクルマを動かします。「所有欲から使用欲への転換」をしつこく、しつこく訴えてきた結果だと自負しています。

安全運転練習会はこんな感じ


12月8日(火)
満16歳の誕生日。

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1999年のこの日。桶川スポーツランドで第1回YRSドライビングワークショップを開催してから16年の月日が流れました。
クルマを運転するのが大好きです
写真左が1999年に作ったディキャル。右が今年作ったディキャル。

クルマという道具の合理的な使い方を知ってほしいと、もっともっとクルマを楽しむ場を用意したいと始めたユイレーシングスクール。

楽しみながら、クルマを思い通りに動かせるようになることを目指して、17年目の活動に入ります。