トム ヨシダブログ


第78回 仲間とともに

スクールで使うコースを作っていると、沈みゆく太陽が富士山の陰を雲に…。

クルマ好きがたくさんたくさん集まってくれた2004年の年間68回には及ばないが、今年、ユイレーシングスクールは32回のドライビングスクールを開催。運転がうまくなりたい方たちがユイレーシングスクール独自のカリキュラムに挑戦している。

8月に富士スピードウエイで開催したYRSオーバルスクールには、ルノー メガーヌRSに乗るHさんが千葉から参加してくれた。


YRSオーバルスクール参加者と記念撮影。ADバンで参加してくれた方も。


メガーヌRSに乗るHさんと

9月のYRS+エンジン誌のドライビングレッスンには横浜のIさんがトゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールで参加してくれた。


エンジンドライビングレッスンの記念撮影を撮影


同じトゥィンゴ ゴルディーニRSに乗るIさんと

9月末に開催した富士スピードウエイで2日間走りづめのYRSツーデースクールには水戸市からTさんがトゥィンゴRSで、MさんがルーテシアRSで宮城県白石市から参加してくれた。

ユイレーシングスクールに遠方からの参加者が少なくない。今回も水戸市、名古屋市、豊田市、西宮市、和歌山市から、理にかなった運転を身につけるためにはるばる駆けつけてくれたのが嬉しかった。

特にTさんは、このブログを読んでトゥィンゴRSの購入を決められたそうで、その上実際にユイレーシングスクールに参加してくれたのだからとても、とても嬉しい。

HさんもIさんもTさんもMさんも、もちろん。スクールが終わる頃には朝一番で走った時よりもずっとずっと、クルマとの対話を楽しみながら粋に走らせていましたとも。


YRSツーデースクールの1日目は広い駐車場で…


YRSツーデースクールの2日目はサーキットを歩くことから… (背景に見えるのが30度バンクの名残り)


YRSツーデースクールの記念撮影


ルノー・スポール兄弟とTさん、Mさんと記念撮影

※ユイレーシングスクールは12月初めまでドライビングスクールを開催しています。カングーでの参加も大歓迎です。ぜひ一度運転の楽しさを味わいに来てみて下さい。


第77回 タイヤは働く

クルマは4本のタイヤでその機能の全てを路面に伝えている。駆動力、制動力、遠心力を4本のタイヤが『分担しながら』クルマの走行状態を保つ。
4本であることが必要条件だから、4本のタイヤのうちの1本でもグリップを失うことになれば、クルマはその機能を発揮することはできない。

スクールで毎回説明していることだが、クルマはひとつの機能だけを使っている時には非常に安定しているものだ。加速なら加速、減速なら減速、旋回なら旋回。その動きが始まってしまえば、そしてその動きを続けている限りクルマのバランスはまず崩れない。

しかし、その動きが始まる瞬間、その動きに移る瞬間にタイヤがグリップを失うことは大いにあり得る。特に対角線上に加重移動が起きる場合、すなわちターンインがその典型。
グリップを失う原因は様々だが、四隅にタイヤが付いているクルマの宿命で、1本のタイヤのグリップを損なうとその対角線上、反対側のタイヤのグリップも損なわれる。つまり、クルマが4本のタイヤで支えられているという常識が通用しない事態が起きる。

クルマを思い通りに動かすことが目的ならば、アウト側前輪のグリップに最大限の注意を払うべきだし、そのグリップの限界を探る方法もある。(どうするかは実際にユイレーシングスクールを受講してみて下さい)

ということで、一生懸命働いてくれる前輪をフィーチャーした動画がこれ。

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スクールで行うリードフォローのリードカーとして、動画撮影のカメラカーとして大活躍のルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポール。こんなこともやりました。


於:富士スピードウエイレーシングコース


リアウインドにカメラをセット

※ 詳細は近日公開です。


第76回 あなたは?


掲載写真と本文は関係ありません

手元に財団法人交通事故総合分析センターがこの7月に発行した「交通統計平成23年度版」がある。全171頁に及ぶそれには、日本全国で起きた交通事故に関する数字がこれでもかというほどにならんでいる。
交通事故がどんな道で、どんな時間帯に起きたか、当事者の年齢、仕事中だったのか私用だったのか、何に乗っていたのか、事故の原因は何か、事故の状況は等々、過去に起きた交通事故の全体像を把握するには十分な情報が収められている。

それによると、日本国内で動いているクルマの総数(自家用および業務用の乗用車と貨物車と特殊車、原付以上の二輪車の合計)は2010年時点で約9,029万台。その年の人口が1億2千8百万人。運転免許保有者数が8千百万人となっている。日本人の63.3%がクルマの運転をする計算になる。

同じ年。725,773件の交通事故が起きているから、国内にあるクルマの1,000台に8台がなんらかの事故に関係したことになる。この年、事故が原因で事故発生から24時間以内に亡くなった方が4,863名。交通インフラの整備が進み、救急救命医療が発達し、なによりもクルマそのものが安全な乗り物になったから、一時の悲観的な数字というほどではないが、だからと言って、我々に利便性をもたらすはずのクルマが原因でこれだけの方が亡くなっているという事実から目を背けることはできない。

ちなみに、交通戦争という言葉が生まれた時代の1970年。1946年に統計が始まって以来最多718,080件の事故が発生し16,765名もの方が亡くなっている。クルマの安全性が叫ばれ始めた頃、1992年には近年最多の695,345件の事故が起きて11,451名の方が亡くなっている。統計上の数字がある2011年までで最も事故が多かったのが2004年。952,191件の事故が起き7,358名の方が亡くなっている。(以上の数字はいずれも24時間死者)

事故件数に対する死者数の割合は1970年が2.33%、1992年が1.65%、2004年が0.77%だから、クルマの安全性が向上し交通環境が整いつつある中で、事故が起きた場合でも最悪の結果に結びつきにくくなったと見るのが自然だろう。実際、最も新しい数字が得られる2011年では691,937件に対して4,863名だから0.70%となる。

クルマが好きで運転が好きな人間として、クルマを壊すことはもちろんのこと、クルマが原因で人が傷つくのは耐えられないという思いがある。クルマは乗り手にとって良き友達であってほしいと思いこそすれ、牙をむくなんてことはあってほしくないと思う。
しかし現実はそうではない。日本でドライビングスクールを始めてからできるだけ目を通すようにしているのだが、統計にはいささか残念な数字がならぶのも事実。

統計では交通事故を人対車両、車両相互、車両単独の3つに分けているのだが、車両単独事故での死者数が突出して多いのだ。

車両単独の事故は、駐車車両衝突、転倒、路外逸脱、防護柵衝突、分離帯・安全島衝突、その他工作物衝突に分類され、さらにその他が電柱、標識、橋梁等に分類されているが、表現が不適切なのを承知で書けば、要は乗り手が対象物とひとり相撲をとったのが車両単独事故の実態だ。だから、相手がいるわけでも不確定要素があるわけでもない。つまり乗り手がそうなることを避けることができれば、事故にはいたらなかった性格のものだ。なのに人対車両や車両相互の事故よりも悲惨な結果にいたることが多いというのは、なんともやるせないものだ。

2000年。この年の交通事故件数は931,934件。このうち車両単独に分類される事故が52,866件。事故全体に占める割合は5.64%。なのにである。同年の事故死者数は8,707人なのだが、車両単独の事故による死者数が2,092人で24.0%を占める。事故全体から見ると単独事故は多くないのに、死亡事故にいたったのは車両単独で事故を起こした場合が多い。
しかも、交通事故そのものが減り死者数も減少しているのに、死者数全体に占める車両単独事故による死者数は、この統計が始まった1999年が23.15%(5.36%=事故全体に対する車両単独事故の割合)、2000年が24.0%(5.67%)、2001年が23.45%(5.64%)%、2002年が22.92%(5.66%)、2003年が22.04%(5.60%)というように毎年20%を上回る数字が並ぶ。
最近の例を見ても2008年に19.60%(5.05%)、2009年に20.66%(4.84%)、2010年に20.99%(4.49%)と車両単独事故が原因の死者数は横ばいだ。2011年にしても車両単独事故は全体の4.18%なのに、車両単独事故死者は全体の19.77%を占める。交通事故で亡くなられた方の5人にひとりが車両単独の事故の犠牲者になる。

交通事故の総数が減少し交通事故全体に対する車両単独の事故件数も減っている。24時間死者の数字ではあるが事故死者数も減っている。しかし、車両単独事故が死亡事故につながることが多いのは昔も今も同じだ。避けようとすれば避けられる種類のものだけに・・・。

交通事故が起きるにはそれなりの理由がある。統計にはなぜ事故にいたったかの分析も載っている。
しかし、うっかりが原因であろうと速度の出しすぎが原因であろうと、つまるところ乗り手の運転のしかたに根本的な原因があるのは間違いない。少なくとも車両単独の事故は、乗り手の意識ひとつで回避することができると思うのだが。

街中を走っていると、本人にしてみればそれが当たり前で自覚はしていないと思うのだが、危険から遠ざかる努力をしながら運転している人と、たまたま偶然が重なって危険な目にあわずにすんでいる人の2種類の人がいる。
さらに言えば、この人は運転というものがわかっているなという人と、この人はクルマに乗せられているだけだなという人がいる。何も考えないで運転している人がいる一方で、刻一刻と反応して運転している人がいる。自分の得だけを状況判断の基軸にしている人がいて、他方、交通の流れに逆らわずに自己主張ができる人がいる。

どんな運転をしようと勝手だろ、と言われるかも知れないが、クルマをなめないほうがいい。クルマが内包するエネルギーは人間が推し量れるようなものではない。

たかが運転だろ、と言われるかも知れないが、ほんの少しだけクルマの運転にテーマを持ってみてはどうだろう。
運転に飽きたら、集中力が途切れがちだなと思ったら、燃費を稼ぐための運転をしてみるとか、速度を可能な限り一定に保てるように運転してみるとか。人間、何かに興味を持てば視界が開けるし意識が覚醒するものだ。その方法がわからなければユイレーシングスクールでいくらでも教えることができる。

とにかく、クルマという人間が自由を手に入れるための最高の伴侶を傷つけたくない。同時に、本来の主役である人間がクルマによって傷つくことも避けたい。どちらも不幸なことだ。

こんなことがいつも頭にあるものだから、ワインディングロードのの下りのコーナーで長々と真っ直ぐに続くブラックマークを見た時など、「あ、その人に運転を教えることができていたならなぁ」と、後悔のしようがないことを悔やんだりもする。


第75回 トゥィンゴ ゴルディーニ RS 躍る

ユイレーシングスクールでは、元社団法人日本オートスポーツセンターの委託で開催した筑波サーキットコース2000を使った筑波サーキット公式ドライビングスクールと、YRS卒業生を対象として鈴鹿サーキット西コースで開催したYRS鈴鹿サーキットドライビングスクール以外は、いわゆるミニサーキットと呼ばれる全長1キロ未満のサーキットでドライビングスクールを開催してきた。

理由はみっつ。ひとつは最高速度が高くないのでクルマへの負担が少なく、全くのノーマルカーでも必要なだけ走行を続けることができること。もうひとつは1周にかかる時間が短いのでサーキットの各コーナーを通過する回数が増えるため反復練習にうってつけなこと。
最後のひとつは、ミニサーキットでもモータースポーツを実践するために十分な施設であることを証明すること、だった。
実際、筑波サーキットコース1000や富士スピードウエイショートコースでは長年短距離レースのYRSスプリントや耐久レースのYRSエンデューロを開催し、多くのユイレーシングスクール卒業生が参加してくれた。

高性能のクルマを持っていると最高速度の高いサーキットを走りたくなるものだが、ミニサーキットこそドライビングポテンシャルの向上や、クルマを道具としたスポーツを満喫するのに最適だと考える。
アメリカのモータースポーツが盛んなのも、1,300ヶ所以上あるサーキットの中の半数を占めるミニサーキットで週末ごとにレースが開催されているからに他ならない。

話が横道にそれたが、NAエンジンがどんな振る舞いを見せるか試したくて、ルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールを富士スピードウエイショートコースに連れ出した時の動画を紹介したい。

スロットルペダルの動きにリニアに反応するエンジンは、実に快適に小さなホットハッチを走らせた。同じ向きのコーナーを走るオーバルコースでは足の粘りが印象的だったが、ロードコースを走らせてみると切り返し時に起きる逆ロールに対して滑らかに動く懐の深いリアサスペンションに感銘を受けた。
ビデオでは速度感が乏しいが、実施は全てのコーナーでリアタイヤはフロントタイヤに見合うだけスライドしていて、前後のスリップアングルの均一化が簡単にできたことを報告しておきたい。