トム ヨシダブログ


第11回 トゥインゴ試乗会開催

寒波が襲った3月上旬。御殿場の早朝の気温はマイナス8度!!!
前日のスクールでは会場が一面氷に覆われ四苦八苦。
当日は快晴ながらも、こんなに裾野まで雪をかぶった富士山は初めて。

『外観はちっちゃくて、とてもかわいらしいデザイン。乗り込んでみると狭くない。結構ゆったり。そしてハンドルの真ん中に見えるタコメーターがおしゃれ。
今日の試乗コースはYRSオーバルロンガー。走り出すとボディーの重さを感じずスルスルスル~っと加速。アクセルを踏み込めば踏んだだけ勢い良く加速。流石GT!でもターボらしさは感じないセッティングですね。
コーナーに入る。フロントがズルズル~っと逃げていくFFらしい挙動。オーバースピードだったかな?
今度は丁寧に曲がってみる。フロントとリヤの荷重量がつり合うようにアクセルコントロール。結構コントロールについてくる。サンルーフ仕様だけどボディーの剛性感もありますね。
次はコーナー中にあえてラフなアクセル操作をしてみる。直線ではあんなに勢い良く加速するのにエンジンはすごくマイルドに反応。安全な制御が入っているんですね。でも普通に操作している分は違和感は全くなし。
ハンドルさばきの良し悪しをちゃんと表現してくれる一方、ハイパワーにより危険領域に達してしまわぬようにちゃんと制御もされているって感じです。
車高の高さや椅子の高さも手伝いコーナーを頑張る車ではないけれど、街中をキビキビ走るにはとても楽しそうです。』

 3月上旬。今年最初のYRSオーバルレースが開催された日。レース参加者を対象にトゥインゴGTの即席試乗会を開催。上の一文は、当日試乗したオーバルレース参加者からの感想文。

YRSオーバルレースの昼休み。
「トゥインゴの試乗会始めます」の声に集まる、集まる。
もともと運転が大好きな連中。代わるがわるステアリングを握る。

 この日の参加者は最多11台のロードスターを筆頭に、MR-S、BMW Z3、ジネッタG4、ロータスエリーゼ、インプレッサにインプレッサワゴン。
  敷居が低いと言っても、中身は本物の自動車レースなので速いクルマか、振り回せるクルマか、ランニングコストが安いクルマか、過去に参加したFFは10指に満たない。
  FFに乗っている人は少ないが、それでも運転大好きなYRS卒業生でYRSスクールレース参加者は、我先にとトゥインゴの運転席に。
 
  コース幅14メートルのYRSオーバルでドアツードア、スリーワイドの争いを繰り広げる彼らは、間違いなく運転がうまい。操作だけでなく、クルマがどんな状態になっても立て直してやろうという意識が高い。そんな彼らがトゥインゴに対してどんな反応をするか興味深かった。

一人で運転する人がいれば、リアシートからライバル(?)が
どんな運転をするか見てやろうという人まで。
  もうひとつメールを紹介する。この日の参加者の中で紅一点。

『素直で扱いやすい車だと思いました。トルクやパワーは充分です。最近、新型のマーチを試乗したのですが、足が妙に硬くて乗りにくかったです。でも、このトゥインゴは何も考えなくても運転できました。
私はコーナリングが苦手で、特に他人のくるまでは恐怖感があるのですが、トゥインゴは、(ロールが安定しているのか?よくわかりませんが)安定感があって、とても安心してコーナリングできました。予想に反してアンダーもでないし、(私にとっては)ナチュラルステアで楽に運転できました。
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最近はミラ アビイ(私の思う軽の一番おしゃれな車)でも、オプションをつけると込みこみで180万ぐらいします。トゥインゴはそんなに、高くないかもしれませんね。(^_^;)』

  コーナリングが苦手と言うこの人は主婦。実は、ご自身のポテンシャルの高さに気がついていないだけなんです。


加速しているからリアが沈んでいるだけではなく、4人乗車で走っているから。

『トゥインゴの印象。エンジン:低回転からトルクがある。小排気量でもシフトチェンジが忙しくない。サス:FFの小型車にもかかわらず、リアの接地性が良い。車体:重心(着座位置)が高いので、オーバルを走ると、ちょっと違和感がある。』
などの意見も。


レースの準備をしながらもクルマ談義に花が咲く。

  他にもいろいろな印象が届いている。みんなの意見を要約すると、
・ボディ剛性が高い ==> サスペンションがちゃんと動いている
・リアサスペンションのストロークが長い ==> 挙動が乱れない
・出力特性は十分以上 ==> ずぼら運転もできる
・小さいから取り回しが楽 ==>オーバーハングが小さいので見切りが楽
・室内の広さは十分 ==> 室内高があるので圧迫感がない
・着座位置が高い ==> ロールをまともに感じる
・トラクションコントロールを解除できない ==> ちゃんと運転できる人には物足らないしもったいない。
とまぁ、こんなところ。

  車両価格を聞いて驚いた人もいるけど、人それぞれクルマに求める価値が異なるのは当たり前。個体としてのトゥインゴGTに対して否定的な見方をした人はいなかったことを付け加えておく。

寒さのせいかこの日の参加者は少なかったものの、とりあえず全員集合。

YRSオーバルレースに参加しているのはどこにでもいそうなオジサン、お兄さん、おねえさん。
  YRSスクールレース参加者はもちろん、ユイレーシングスクールを訪れる大多数の人がマニュアルシフト車に乗っている。だから、当たり前のことなのでみんなの感想にはでてこなかったけれども、トゥインゴGTがマニュアルシフトであることも評価されるべきだ。
  マニュアルシフトのクルマに乗っている人は、単にシフトするのをいとわない人種なのではない。クルマを動かすという行為の中にギアシフトが含まれていることを自然だと思っている人たちだ。
  この日の参加者は25歳が最年少。あとは30代40代から50代の半ばまで。みんな「クルマを動かすこと」が好きな人ばかり。

  社会がクルマに「気軽」を求めている時代に、昔ながらの運転を「手軽」に楽しめるクルマを供給しているルノー・ジャポンに拍手。


トゥインゴに乗っている時のみんなの顔は笑顔、笑顔、笑顔。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第10回 クルマの性能は使い方次第

初めに、このたび未曾有の震災にあわれた被災者のみなさまに心からお見舞いを申し上げるとともに、犠牲になられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

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  ユイレーシングスクールは卒業生のためにスクールレースを開催している。
  ドライビングスクールやオーバルスクールで基本的な運転操作を教えることはできるのだが、その人のドライビングポテンシャルに幅を持たせることはなかなか難しい。そこで、ひとつの目的に向かって大勢で走ることで運転操作とは別の『運転意識』を養ってもらおうというわけだ。


ルマン式スタートでレースは始まり、

  運転が上達するということは、人間が成長することに似ている。
  子供は伸長期と充実期を繰り返して成長すると言われているが、クルマを運転する時の能力も同じように向上していく。ある程度経験があれば、運転操作はこなれていく。免許証をとったばかりのギクシャクさは影を潜めるはずだ。ドライビングスクールで基本的な操作を学べば、思い通りにクルマを安全に速く走らせる技術はが身につく。例えて言うならば、これが伸長期だ。
  しかし、それだけではクルマの運転は完結しない。我々がたった一人で走る機会などあるわけがないのだから、仮に運転操作に長けていてもそれだけで十分ということはない。同じところを走るにしても日によっては条件が異なるかも知れないし、本人の体調だって同じではないこともある。
  だから。同じ目的を持った人と競い合いながら運転することで、他人を意識することを養ってもらい、同時に自分の思い通りにならない環境でクルマを走らせることで、目的に対する意識を鮮明にすることを期待してスクールレースを開催している。
  どこを走っても同じような速さで走れる。他人と競り合いながらも目的から逆算して、その時に行うべき操作をはじき出す。その練習だ。これが充実期を豊かにする。むろん、運転意識の生長は運転操作のレベルを底上げする効果もある。


我先にとクルマに駆け寄り、

 ユイレーシングスクールが開催しているスクールレースの種類は3つ。YRSエンデューロ、YRSスプリント、YRSオーバルレースだ。今回はその中のYRSエンデューロの話。

  YRSエンデューロは130分の耐久レース。もっとも2001年の開始時には120分だったのだが、卒業生が目標をクリアしてしまったので難易度を上げたしだい。とは言うものの、この難題もクリアしてしまったのだから、まさに運転技術の向上に終わりはない。
  YRSエンデューロのルールはこうだ。レースはチェッカー優先の時間レース。決められた時間を走り切り、なおかつできるだけ遠くまで走った者が勝者になる。これは参加者全員に等しく、過給器つきのクルマもNAのクルマも大排気量車も同等に扱われる。
  つまり、どんなクルマに乗っていようと所定の時間が過ぎてチェッカーが振られた時にコントロールラインを通過できなければ、それまで大量のマージンを築いて独走していようと、周回数は少なくてもチェッカーを受けたクルマよりは上位にならない仕組み。
  そして、競争はコース上だけにしたいのと、ピットでの危険を排除するために、2分半のピットストップを3回義務付ける。ピットロードの制限速度は10キロ。だから、ピットインで順位を上げようとしても徒労に終わる仕組みになっている。
  耐久レースだからチーム参加が原則。当初は卒業生同志でチームを組んで参加することがほとんどだったが、耐久レースの走り方がわかってくると一人で走り切りたいという希望が続出。最近では半数以上のチームがソロエントリ。一人で130分を走り切ってしまう。


一瞬の静寂の後、

  2001年4月28日。第1回YRSエンデューロのその日。1周1キロちょっとの筑波サーキットコース1000のグリッドには7台のクルマが並ぶ。コースの反対側にはイグニッションキーを持ったドライバーが立っている。グリーンフラッグが振り下ろされるやいなや、ドライバーがクルマに駆け寄り、乗り込み、もどかしそうにシートベルトをしてエンジンをかけ、慌てふためくようにグリッドを離れていく。
  それから2時間近くが経過。トップを走るのは赤いロードスター。他のクルマを全て周回遅れにして余裕の走り。
  と、そのロードスターが最終コーナーでスローダウン。フィニッシュまで5分を切っている。137周目のできごと。ピット前のストレートにたどり着いたドライバーがピットクルーとなにやら話している。どうやらガス欠。

  チェッカーを受けなければ、ラップタイムは遅いもののコンスタントに走っている軽自動車のスバルヴィヴィオに追い越されてしまう。
  結局、ドライバーがクルマを押してコントロールラインをまたぎ、最下位になることはまぬがれる。


脱兎のごとくグリッドを後にし、

  時は移り2010年7月31日。ところは同じ筑波サーキットコース1000。この日、35回目のYRSエンデューロが開催された。参加したのは15台。6台がチームエントリで9台がソロエントリ。
  特別ルールが適用され135分の時間レースとして開催されたこのレースを制したのは、170周を走破したロードスター。2位には同じロードスターが169周で入り、同じ距離を走った性能で勝るS2000を押さえ込んだ。
  上位3台が2時間以上全開で走った末に僅差でフィニッシュしたこともレースを大いに盛り上げたが、それ以上に、レース時間が5分延長されたとは言え、1位のクルマが170周、約177キロを走り切ったことが注目された。


ライバルを牽制しながら、

  さて、2001年の137周と2010年の170周。この数字を少し詳しく見てみたい。
  2001年のレース時間は120分。1回3分のピットストップが3回義務付けられていたから、コース上にいた時間は実質111分。それで137周したので時間当たりの周回数は74周。2010年はレース時間が135分で2分半のピットストップが3回義務付けだったから、実際に走行していた時間が127.5分で時間当たり80周したことになる。
  74対80。距離にして時間当たり6キロ強遠くへ走ったことになる。しかも、2001年は燃料を使い切ってしまっていたから、それ以上遠くへ行けなかった。それに対し2010年は燃料タンクにまだガソリンが残っていたから、行こうと思えばまだ先まで走ることができた。
 
  この差はどこから来るのか。


少しでも優位に立とうとペダルが折れんばかりにスロットルを開け続ける。

 たかが6キロの差ではあるが、それが競争という極限状態でクルマを走らせていたら。
 
  速く走ろうとすると、人間は機械に頼りがちになる。速く走ろうと思えばむやみにスロットルを開け、短い時間で減速しようとし、クルマの都合など考えずに目標を達成しようとする。自分の能力ではないのにも関わらず、それが自分の分身のごとく振舞う。
  しかし、サーキットで耐久レースに参加して好成績を修めるというテーマを考えれば、間違いなく運転は合理的でなければならない。ガソリンしかり。タイヤ、ブレーキパッドしかり。クルマの機能を発揮させるために、それを高いレベルで保つためには理詰めのアプローチが必要になる。
  ユイレーシングスクールがモータースポーツ、そしてスポーツドライビングを『知的遊戯』と呼ぶゆえんだ。自動車レースは、決して肉弾戦ではない。


と言ってもプロのドライバーの話ではない。どこにでもいるオジサン、お兄さんが主役だ。

  2001年の第1戦の後。ユイレーシングスクールではYRSエンデューロ参加者に、どうすればより遠くに行けるか、その方法をアドバイスしてきた。時間はかかったが、純粋にクルマを使って楽しんでいる内に、彼らのドライビングポテンシャルは確実に向上した。
  伸長期と充実期を繰り返すことによって、クルマの性能に頼って走るのではなく、クルマの性能を制御しながら目的を達成する方法を身に付けた。
  間違いなく、彼らは市街地であろうと高速道路であろうと、あるいは峠道であろうと、必要最小限の消費で安全に目的を達成する術を知っている。運転操作と運転意識が融合した結果だ。

  第35回YRSエンデューロの優勝者が初めてユイレーシングスクールを受講した時、どうアドバイスしてもアンダーステアを出しながらコーナリングしていたのを思い出す。ドライビングスクールだけでなくスクールレースをやっていて良かったと思う瞬間である。
 
  あなたも少しばかり運転に興味を持ってはいかがですか。


トゥインゴにむらがる運転好きなオーバルレースの常連。詳細は次回。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第9回 速さと安全

  ユイレーシングスクールが主催するドライビングスクールでは、「今日は自分のイメージより少し速く走る努力をしてみて下さい」と言うことにしている。速く走ることを奨励している。
  もちろん、安全が確保できるクローズドコースで、なおかつ、クルマの動きを見ただけで運転している人がどんな操作をしているかがわかるインストラクターが目を光らせている環境での話。
 
  理由はクルマの運転理論は速く走らないと理解できない部分があるのと、速く走ることによって感じることがあるからだ。
  正確に言うと、速く走ることによって『クルマの挙動を拡大して観察する』ことができるからだ。
 
  クルマを思い通りに動かすためには、何をさておいても、クルマの動きがわかるようにならなければならないのだが、よくできた現在のクルマは、運転手が操作と挙動の因果関係を検証することが難しい、という事情がある。そこで速く走ろうとした時に、速く走れない原因をさがそうというわけだ。その原因こそクルマを動かす時にやってはならないことであり、その原因を取り除くことがクルマを安全に速く走らせることにつながるという仕組み。
 
  もちろん、無制限に速く走ってもらうわけではない。操作の習熟のために作ったカリキュラムの中で、インストラクターが一人ひとりの走りを観察しながらペースを上げていってもらう。決して無秩序に速く走ることを奨励しているわけではない。


YRSオーバルスクール上級編で全員集合。

  2月上旬。この日は過去にYRSオーバルスクールを受講したことのある人を対象に、さらなるドライビングポテンシャルを引き出すための特別カリキュラムを実施。
  通常のYRSオーバルスクールでは半径22m、直線60mのYRSオーバルFSWを運転が最も難しい『インベタ』のラインで走ってもらうのだが、上級編では半径22m、直線130m、幅員14mのYRSオーバルロンガーを使いアウトインアウトのラインで走る。1周400m強のコースでも到達速度は120キロになるから、エネルギーを制御する練習にはうってつけ。ほとんどのクルマが2速と3速を使うから、ブレーキングとターンインとシフトダウンを同時にこなすのが実に気持ちいい。


コース自体は単純だが。

  この日は特別カリキュラムのためにオーバルコースをアウトインアウトのラインで走ってもらったが、通常のオーバルスクールは1日中インベタ(イン側に置かれたパイロンに沿って)で走ってもらう。実は、このインベタで走るほうが難しい。
 
  さて、「今日はオーバルコースを走ります。自分のイメージより少し速く走る努力をしてみて下さい。もちろんできる範囲でかまいませんから」と言われた時、あなたはどうやってオーバルコースを速く走りますか?
 
  オーバルコースはレイアウトこそ単純だが、単純がゆえにクルマの3つの機能をきちんと引き出すことができなければ速くは走れない。ここで言う速さとはラップタイムのこと。1周にかかる時間。1周の平均速度の裏返しでもある。

  例えばYRSオーバルのような楕円形のコースでもいい。ある形をした周回路を走る場合、直線の後に控えるコーナーに進入する時には減速が必要になる。コーナーを回り終えれば加速することができるが、次のコーナーの手前では再び速度を落とさなければならない。その繰り返し。
  速度を上げるにはスロットルを全開にしている時間を長くすればいい。すばやく速度を落とすには急ブレーキをかければいい。速く走ろうとする時、そう考えるのは間違いではない。初めのうちは受講生のほとんどがそう考える。しかし、それだけででは速く走れないばかりかクルマのバランスを崩す可能性が高い。


どこに自分のクルマを持っていくかが難しい。

  少し考えればわかる。周回路を走る時、まず間違いなくストレートよりもコーナーの速度が遅い。速さの目安になるラップタイムは平均速度の裏返しだから、クルマが自由に加速できるストレートではなしに、いかにコーナーの速度を高く保つかが周回路の速さの鍵になる。
  なのに。速く走ろうとする時。人間はできるだけ長くスロットルを開け、短い時間で速度を落とし、コーナリング中もスロットルを開けようとする。
  しかし、それができる人はまずいないし、我々が乗っているクルマはそのような走りをするようには作られていない。そんな走りをする人は、自らクルマの動きを理解して運転していないと白状しているようなものだ。
 
  ストレートを思いきり加速するのはいい。ドライビングスクールでも「クルマをまっすぐにしてスロットルを床までドンと開けて下さい」と言う。ただし、コーナーが迫ってくるのにスロットルを開け続けているのは間違いだ。
  コーナー直前までスロットルを開けているということは、スロットルを閉じてからターンインまでの短い距離で強いブレーキをかけることになる。その時に何が起きるか。
  急ブレーキをかけることで、加速中にリアにかかっていた荷重がフロントに激しく移動する。前輪の荷重が増える。前輪のグリップが高まる。逆に後輪のグリップは低下している。そこへもってきて、コーナー直前の操作に慌ててステアリングを『バキッ』と切る。増えた荷重に苦しみながらも前輪は、コーナリングを開始しようとするものの、舵角が抵抗になってさらにフロントの荷重が増す。特にアウト側前輪は荷重のほとんどを担うことになるから、飽和状態をとうに過ぎているはずだ。

  秀逸なカリキュラムで行うユイレーシングスクールでは見かけないが、ターンイン直後にアンダーステアを出してコーナーを回れなかったり、ターンインするやいなやスピンするクルマがあると聞いたことがある。そんなクルマは、人間がクルマの都合などおかまいなしに操っているわけだ。
  しかし、当の本人は定められたコースを速く走ろうとしていたはずだ。それがスピンしてしまっては速さどころの話ではないではないか。


ターンインからリアがロールを初め、

  コーナリング中にスロットルを開けようとするのも、人間の勝手な思い込み。確かにコーナリング中にスロットルを開けることは速く走る上で必要なのだが、それには根拠が必要だ。
  コーナリング中のクルマのタイヤは、そのグリップのほとんどを遠心力に抵抗することに使っている。つまり、限りあるグリップが主に横方向に使われてしまっている。ただでさえ進行方向のグリップが不足気味のところにもってきて、速く走りたいからとスロットルを開けたら何が起きる。
  スロットルを開けると荷重がリアに移動する。必然。前輪のグリップは減る。開けたとたん、それまでかろうじて円弧を描いていた前輪も、減ったグリップにその舵角では遠心力に抗えずにアウト側に流れる。アンダーステアが発生する。
  速く走ろうとしているのに、アンダーステアを出して大回りするのもどうかと思うが、それよりもコーナリング中にスロットルを開ける気持ちになることのほうが問題だ。
  速く走ろうとして、仮にそのクルマの限界速度でコーナリングしていれば、まずスロットルを開ける気にはならない。わずかなスロットル操作でクルマが姿勢を乱すからだ。何気なくコーナリング中にスロットルを開けられるのは、その時の速度が限界速度よりずっと遅いからだ。
 
  急ブレーキで速度が落ち過ぎたのかどうかは別として、周回路を速く走ろうとしたのだから、行き当たりばったりで運転するのではなく、目標に向かって合理的なアプローチをするべきだと思うのだが。


フロントと同等のロールがリアに発生し、

  コーナリングの後半にスロットルを開けてアンダーステアを誘発してアウトにはらむ人はユイレーシングスクールでも見かける。ストレートが見え始めるとついつい加速を開始したくなる。その気持ちをわからなくはないが、コーナリング中のスロットル操作と同じで、前輪に舵角がついている限りクルマは自由に加速しない。速く走るためにスロットルを開けたいのなら、最初にするべきなのは、コーナリングの後半でステアリングを戻せるラインにまずクルマを乗せることだ。
  ステアリングを戻しただけ、つまり前輪がコーナリングの担当から解かれるほどにクルマは加速できる態勢にになる。
  タコメーターの針が踊っても、エンジン音が高まっても、コーナリング中のクルマは加速しない。速く走っているつもりでも、実車速は上っていない。
 
  自動車メーカーは、できるだけ特別なテクニックを必要とせずに運転できるようにクルマを作っている。誰でも高性能を享受できるように努力を続けている。しかし、それでも最後はクルマを運転する『その人』に全てを委ねなければならない。
  委ねられた人が、もしクルマの扱い方を知らなかったら。その人から運転する楽しさも、安全も、快適さも遠のいていく。


ステアリングを戻してロールを消すとコーナリングが完結する。

  日本では、速く走ることが一律に危険であると喧伝されている。いち時期など、大新聞ですらサーキットを走る人を暴走族と同じに扱っていた。しかし、速く走ることが危険なのではなく、やってはいけない操作を知らないことこそが危険なのだ、とユイレーシングスクールは主張する。
 
  免許証を持っている人全てがサーキット走行を体験することは不可能だろう。それでも、機会があれば、少しでも多くの人に速く走ることに挑戦してほしいと思う。少しだけ速く走ろうとするだけ、自分が気がつかなかったクルマの動きがわかるようになり、クルマを安定させて動かすためにどんな操作をしたらいいのかがわかる。もちろんキチンとしたアドバイスが受けられる環境での話。
 
  それだけでなく、速く走ろうとすることで、むしろ速さと人間の能力を超えたクルマに畏怖の念を抱くことができると思うのだが。


別の日に筑波サーキットで開催したドライビングスクールにやってきた兄弟。
Eさんはサーキットを走るのは初めて。それでも最後には「もっとずっと走っていたい。
自分のクルマがこんなに走るとは思っていなかった。
できるなら明日も走りたいぐらい」と、スポーツドライビングの虜に。

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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
  特に3月19/20日に開催するツーデースクールはクルマの動きを理解し、操作と挙動の因果関係を把握するための短期集中カリキュラムとして好評です。
   
■ 3月19、20日(土、日) YRSツーデースクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=2ds

◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/