トム ヨシダブログ


第690回 Gセンサー その1

G-Sensorを利用してブレーキを蹴とばした時の減速Gの立ち上がり方を可視化した。
サーキットであれ公道であれ短時間でスピードを落とそうとブレーキを蹴とばすのだろうけど、制動力と減速度は別物。間にタイヤのグリップが介在していることを忘れてはならない。ここでは蹴とばした結果何が起きているかを検証する。

フラッシュの後の後半は25%のスローモーションで表示されるようにしたので操作と挙動の関係がわかりやすい
・ブレーキペダルを蹴とばしたので減速Gが瞬時に立ち上がっている
・減速Gの大きさを表すバーの数がある程度のところまで急進的に増えるが
・その後バーの数が減ったり増えたり減速Gが一定していないことがわかる
・これはABSが介入した結果で一定のサイクルで制動力が抜けていることを表している
・制動力が低下するということは減速Gも減っている
・必然的に制動距離が伸びることになる

ブレーキペダルは蹴とばさないようにしましょう。どのように踏力を加えればいいかは、12月10日(土)開催のYRSドライビングワークアウトFSWアドバンストコーチングで説明します。実際にどのように踏力をかければ最短距離で減速できるか体験していただきます。定員は12名。お申し込みはお早めに。
※ 最短距離で減速できるようになれば次の操作までに時間的な余裕が生まれるので、クルマを安定させた状態にしてから次の操作を行えます。クルマの性能を引き出す第1歩です。

➡ 12月10日(土) YRSドライビングワークアウトFSWアドバンストコーチング開催案内



第688回 Gセンサー

スタッフYが見つけてきたスマホアプリのGセンサー。すごくシンプルでクルマの加減速Gと横Gが見てとれる。録画もできるからモニターにつなげれば大人数でも操作の検証ができる優れモノ。これはスクールに生かしたい。

今回は初めて試したので便宜上写真のようにスタッフYのクリオRSのフロントウインドウに取り付けた。本来ならホイールベースの中心付近に取り付けるべきなのだろうけど、ここはアプリの作動を確認するのが目的なので。

いつもYと話しているのだけど、YRSオーバルを使ったスクールをやっているとほとんどの参加者がコーナリング中にクルマが前のめりになっている。つまりなんらかの原因でアンダーステア傾向が強いまま走行を続けている。その原因のひとつがクルマがイーブンスロットルになっていないこと。
状況を説明して、こうだからこうしてみてはどうですかとアドバイスするのだけど、言葉ではなかなかニュアンスを伝えるのが難しい場合もあった。そこでこのGセンサーを使って操作の可視化を図り、参加者に状況を把握してもらい操作を修正する手掛かりにしてもらおうというわけだ。理にかなったグラフと参加者のグラフを比べれば、操作の過不足が明確になるはずだ。

688

 

最初の動画は半径22m直線60mのYRSオーバルFSWをイーブンスロットルでインベタで周回した時のモノ。反時計回りに周回した。
イーブンスロットルはいわゆるアクセルだけで走行中のクルマが加速もしない減速もしない状況を作る、テクニックと言うより走り方の思想。クルマは加減速することで前後輪にかかる荷重が変化するから、それにつれてタイヤのグリップも変化する。だからイーブンスロットルを実現できれば理論上は前後輪のグリップが均等になるわけで、イーブンスロットルでコーナリングすればアンダーステアやオーバーステアに陥ることはない。結果的に望むならコーナリングスピードを上げることができる。

 

次の動画は同じYRSオーバルFSWを同じくインベタでトレイルブレーキングを使ってできるだけ速く周回したモノ。イーブンスロットルじと同じ反時計回りに周回した。
トレイルブレーキングはいわゆる引きずりブレーキングだけど減速のためのブレーキングとは目的が全く異なる。原理としてはターンイン時にフロントに荷重を残すことによってタイヤのグリップを前輪>後輪にして回頭性を上げる=ヨーモーメントを立ち上がりやすくする。ただし前輪に荷重がかかり過ぎているとターンインの瞬間にアウト側前輪が限界を越えてアンダーステアに陥る可能性が高くなる。ターンイン時にブレーキペダルに足を乗せていても前後輪に同じような荷重が乗っている状況が作れればクルマは思いの他高い速度からコーナリングすることができる。
ただトレイルブレーキングは回り込んだコーナーや中速までのコーナーには有効だけど、高速コーナーや短いコーナーではクルマがバランスを崩しやすいので注意が必要だ。

 

YRSオーバルをイーブンスロットルで走る場合、直線もコーナーも同じ速度で走りながら徐々にペースを上げていくように指示する。半径22mのコーナーならどんなクルマでも60キロ/時ぐらいまでならアンダーステアを出さずにインベタで周ることができる(正確に言うとクルマはアンダーステアでコーナリングしているのだけどパイロンから離れずに、という意味)。しかしそれ以上の速度になると前輪のグリップが運動エネルギーに負けてフロントが外に逃げ出す。
一方トレイルブレーキングを使う前提だと直線で加速できるからより高い速度でターンインすることができる。直線の終わりで必要ならば減速しブレーキを残してターンインするのだけど、踏力が適正ならばトレイルブレーキングの効果で前後輪のスリップアングルを均等に近い状態にすることが可能だから4輪を使ってコーナリングを始めることができる。コーナーに入る速度が高いのだからアプローチが終わって舵角による走行抵抗が増えたとしても、イーブンスロットルを実現できればコーナリング速度を上げることができる。横Gを示すグラフがイーブンスロットルで走る時より伸びる理由だ。



第680回 何でしょう?

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いつもいろいろな情報をもたらしてくれるスタッフのY
新しい秘密兵器を持ってきた
運転操作が理にかなっているか一目瞭然
やったことが丸裸になるという優れもの

 

「やってみますか」と言うからやってみたら、久々に燃えてしまったね。(笑) で、動画を再生してみると見事に言行一致。有言実行とも言うらしいけどさもありなん。思わずニンマリ。

680-2

 

このアプリはいい。その場で再生して何が足りないのか、何をやり過ぎなのかがわかる。具体的に言うと、バキ切りもバレるし、ブレーキを蹴とばすのもわかる。どんな使い方をするか鋭意検討中。乞うご期待。



第638 回 クルマは前に進めたい

紹介する動画は昨年のあるF1GPのあるコーナーを回るバルテリ・ボッタス選手の走り。録画しておいたものを再生中にテレビ画面を動画撮影したもの。
オーバースピードでターンインしたのか理由は定かではないけれど、マシンがオーバーステアにおちいってカウンターステアを当てているシーンだ。

以前からコーナリング中のF1マシンのタイヤがたわむのを見て、「あんなに変形するんだ」、「リムから外れないのかな」、「タイヤがかわいそうだよねぇ」、「ハイトが高いからああなっても前に進むのかな」、「タイヤがたわまなければサスペンションが壊れているね」、「ハイトの低いタイヤだと滑り出したらスパーッっていくのかな」、「たわみが反応を遅らせるから250キロのコーナリングができるに違いないね」、「だからF1はサイドウォールがたわみやすい13インチタイヤなのかね」、「F1パイロットでもミスはするんだなあぁ」、「クルマは前に前に進めなければだめだよな」なんて勝手に独り言ちて楽しんできた。

さて。シャーシから伸びるサスペンションアームの先にあるハブに取り付けられたホイールまでは剛体。一方、ビード部でのみでホイールに密着しているタイヤは弾性体だ。この共存する形の変わらないものと形の変わるものに力が加わった時、当然のことながら弾性体であるタイヤにまず変化が生じる。

円運動を始めると遠心力が働くのでクルマは円運動の外側に向かってふくらもうとするのだけど、4本のタイヤと地面の摩擦力=グリップが生むコーナリングフォースが求心力となって遠心力が相殺され、クルマはふくらむことなく旋回を続けることができる。コーナリングの仕組み。
ところが遠心力と求心力が釣り合っていたとしてもタイヤは形の変わる弾性体なので、実はタイヤが向いている方向と実際にタイヤが進む方向との間にズレを生じながらタイヤは回転している。タイヤは円運動の外側に向かってズレながら回転している状態にあって、このズレをスリップアングルと呼ぶ。スリップアングルは4本のタイヤ全てに発生している。このズレこそ弾性体であるタイヤに生まれる最初の変化。地面との間にズレが生じるということは摩擦力が増すことに他ならないので、結果的にタイヤのグリップもさらに高まる。だからタイヤが路面とズレること、すなわちはタイヤにスリップアングルが生じることは旋回性能の向上に寄与していることになる。ただし、それはある条件の元においてだ。

前輪のスリップアングルが後輪のそれより大きい走行状態をアンダーステア、後輪のスリップアングルが前輪のそれより大きい場合をオーバーステアと呼ぶことは度々触れてきた。前者はステアリングを切ってもクルマが曲がらない、後者はステアリングを切っている以上にクルマのリアが回り込む。いずれの場合も前輪なり後輪が横滑りを起こしているわけで、その間は駆動力なり制動力が進行方向に生かされていない。つまり失速していることになる。
この動画の場合、ある瞬間にリアタイヤが大きな横力を受けグリップを増して踏ん張るものの横力に押されて大きくたわむ。次に耐えきれなくなったリアタイヤがそれまでより大きくズレることで横力を開放するから元の形に戻る。グリップを回復したタイヤだけど横力に勝てず再びたわむ。その繰り返し。クルマが、タイヤが回転した分だけ前に進んでいないことが見て取れる。

この動画のような変形はしないにしても、我々が乗っているクルマのタイヤにも様々な力が加わって形を変えていることは容易に想像できる。タイヤがタイヤとして機能していない瞬間があるかも知れない。やはりタイヤをうまく使えるように心掛けることが運転の上達には欠かせないとつくづく思う次第。

2022年のF1GPはまもなく2月23日に行われるバルセロナでのプレシーズンテストで幕を開ける。新たに18インチ径のタイヤが採用されるなど車両規則が大幅に変更になり、史上最多の23戦を戦うという今年のF1GP。果たしてどんなシーンを届けてくれるのだろうか。開幕戦は3月20日のバーレーンだ。

 

それにしても、この動画に出会って思ったことふたつ。

本当にハイトの低いタイヤがいいのだろうか、というのがひとつ。技術の進歩がトレッドゴムを進化させて扱いやすくはなっているのだろうけれど、滑り出したらスパーッといきそうで全面的に肯定できないのが本音。おそらく時代の流れがそちらに行っても、自分にとっては永遠の課題なのかな、と。昔運転の下手だった自分でもテールが流れればカウンターステアを当てることで速さを手に入れることができたバイアスタイヤ。思い出は尽きない。

もうひとつは、クルマをスタートさせてから止めるまでどんなコースを走ろうと、たとえ速く走ることが目的であったとしても、まず速さに優先して、動き出してから止まるまでの前後輪のスリップアングルの合計が等しくなるような運転を目指してきたことは間違いではなかったし、これからもそうしたいなと。



第539回 腰で曲がる

SnapShot(0)
YRSオーバルスクールFSWロンガーでIさんのポルシェ911に同乗
 
Iさんのポルシェはタイプ991Ⅱの7速マニュアル
1,440キロの車重の60%が後輪荷重
タイヤはフロントが245/35ZR20でリアが305/30ZR20
ホイールはフロントが8.5Jでリアが11.5J
最高出力は420hp

 

RRだからリアが重い上にリアのオーバーハングマスが大きくて、リアの荷重を吸収するのと大パワーを受け止めるためにリアタイヤがフロントタイヤに比べてかなり幅広で、成り立ちとしてはインバランスなクルマでも4本のタイヤの限界を使って速いコーナリングをすることは理論的に可能だし、できない話ではない。それは、タイヤの幅に関わらずコーナリング中常に前後のタイヤのスリップアングルが均等になるような操作を行うことで実現できる。

クルマがアンダーステア気味かあるいはアンダーステアでコーナリングしている時、前輪のスリップアングルは後輪のそれより大きい。つまり前輪は限界付近か限界を越しているのに対し、相対的に言って後輪にはまだ余力がある状態なので4本のタイヤの限界を使ってコーナリングしていることにはならない。オーバーステア気味、あるいはオーバーステアでコーナリングしている場合はその逆。4本全ての美味しいところを使っているわけではないから、遅い。

アンダーステアを出すとフロントが逃げるのを感じるはずだし、オーバーステアではクルマが失速しているのを感じるだろう。どちらもクルマが予定された軌跡に乗って前に進んでいるわけではないのだから、結果的にそのコーナリングは遅いことになる。

ブレーキ、ステアリング、スロットルをトランジッションを意識して操作すれば、前後輪のスリップアングルを均等に持って行くことはできる。もちろんコーナリングをしているクルマの動きは複雑だから、瞬間瞬間の話ではなく、コーナリングのアプローチ、コーナリング、脱出の各パートにおいて、という話だ。

Iさんのポルシェに積まれていたロガーによると、YRSオーバルスクールFSWロンガーの下のコーナーで1.35Gの横向き加速度を記録している。太いリアタイヤのおかげか。それだけのコーナリングフォースを4本のタイヤが発揮したということは、クルマが受けていた遠心力がそれだけ大きかったということであり、それだけの遠心力を発生するほどコーナリング速度が速かったという証明に他ならない。クルマもタイヤも運転手もいい仕事をした、ことになる。

コーナリング初期にアンダーステアを出さないようにするのは簡単ではないけど、前後輪のスリップアングルの大きさに差が出ないように意識して運転していると、ターンイン後のアプローチで、肩ではなく腰で遠心力を感じ始めることができる。4WSでない限り後輪のスリップアングルの源は遠心力だけなのである程度の速度が必要だけど、その時には前後輪のスリップアングルが均等に近づいていると言ってもいいだろう。ヨーモーメントの中心もホイールベースの間に収まっているはずだから、4本のタイヤが同じように働いてくれる状況を作れたことにもなるからクルマは安定して旋回運動を続けることができる。

速度が低い場合は   遠心力やヨーモーメントの影響を受けることは少ないけれど、クルマが動いている間は全てのタイヤにスリップアングルが生じているのだから、前後輪のスリップアングルを意識した操作はバランスを崩さない運転につながるからスリップアングルを意識して損はない。

 

動画はIさんが提供してくれました。静止画は動画からキャプチャーしたものです。



第533回 Kinetic energy

無機の機械と心を持った人間が織りなす物理学の極致を見た。
人間という生き物のすごさに感動する。

(C) MotoGP