第65回 YRSドライビングフラッシュ
ご覧になったことのがあるかも知れないけど、ユイレーシングスクールのウェブサイトに掲載してあるコンテンツを紹介。
□ ターンイン
■ エクジット
クルマが思うように動いてくれるのはすばらしいことです。
ご覧になったことのがあるかも知れないけど、ユイレーシングスクールのウェブサイトに掲載してあるコンテンツを紹介。
□ ターンイン
■ エクジット
クルマが思うように動いてくれるのはすばらしいことです。
全長3,610mm 全幅1,690mm、ホイールベース2,365mm。こんなに小さなクルマが、それこそ手となり足となって、運転手の思い通りに動いてくれるとは。なにしろ、横幅を無視すれば軽自動車と変わらない大きさなのに、だ。
繰り返すが、これはルノーの宣伝のために書いているのではない。それこそありとあらゆるクルマに乗って来たクルマ好きとして、幸いにも知ることができたその個体の価値を、自分だけのものにしておくのはもったいないからしたためている。
どんなクルマに乗る時でも、個人的な流儀で低いギアではあまり引っ張ることをしない。低いギアでは駆動力が大きいのは当たり前だし、回転を上げられるとしても瞬間的なものだ。高回転を保てば駆動系にも負担がかかる。第一、燃費に悪い。
ターボで加給されていたとは言え絶対的な排気量が小さかったトゥインゴGTは、2,000回転以下ではやはり、トルクの細さを感じた。しかしルノー・スポールの1.6リッターエンジンは下から上まで不足がない。
発進してすぐに2速に入れ、あとは1,500回転も回してやれば、3速30Km/h、4速38Km/hに達し十分に流れをリードする加速を見せる。タウンスピードでの5速は1,500回転回るかどうかで4速ホールドにしたい気持ちにはなるが、5速のままでも痛痒は感じない。もちろん、トゥインゴ ゴルディーニ RSに乗る時は街中でも5速を多用する。メーターに表れる瞬間燃費を見ても、そのほうが経済的だから。
しかし、高速道路に乗り込む時になるとその経済観念はどこへやら。『サーキットを走る時のためにふだんはできるだけガソリンを使わないように』と心に決めているのだが、4,000回転に近づくにつれてどのギアでも「もっと回してもいいですよ!」と語り掛けて来るエンジンの誘惑に抗うのが難しい。
安全のためにも本線の流れをわずかに上回る速度まで加速してから合流するものだから、そんな時は4,000回転回せば100km/hに達する4速がピッタリ。スロットルで速度をコントロールしながら余裕を持って合流することができる。回している時間はほんのわずかだし、経験的に燃費に影響することがないこともわかった。
だが、このエンジンの真骨頂はタコメーターの針が4,000に近づこうとするあたりから始まる。とにかくよく制御されたエンジンは、経済観念をポケットにしまい前だけを見てスロットルを開ければ、イエローゾーンが始まる6,500回転までなんのためらいもなく吹け上る。しかも回転の上昇とともに盛り上がる≪パワーの出方≫はレーシングエンジンのそれに似ていて、思わず「そうだよな。そうなんだよな」とうなづいてしまう。
もっとも、昔の、オーバーラップ105度のカムを入れツインチョークのソレックス2基でガソリンを浪費するレーシングエンジンでレースをしたことのある者にとっては、あの爆発的な加速感が味わえないことにいちまつの寂しさを感じる。しかし現代は昔ではない。誰もがもっと先を目指すことを許された時代ではない。
今という時代を考えれば、トゥインゴ ゴルディーニ RSが与えてくれる洗練された強烈な加速が市場に残っているだけでも喜びとしなければならない。昔流に言えば決して硬派なクルマではないけれど、だからこそより多くの人が機能を追い込んだクルマを味わえるのかも知れない。
そして。計算上7,000回転で137Km/hに達する3速。条件が許されれば180Km/h近くまで伸びるであろう4速。市販車でありながら、回転が上れば上るほどにストレスがなくなるようなフィーリングは今の時代だからこそなのだろう。
話がエンジンに偏ってしまったが、トゥインゴ ゴルディーニ RSは足も速い。車格からして当然の短いホイールベースに起因するピッチングによる上下動は小さくないが、ルノー車に共通するのかトゥインゴGTや昨年代車で借りたカングーに似たリアサスペンションの落ち着きは秀逸。
前にも書いたが、ノーズダイブとテールスクワットに対する制御は他のクルマでは見られない種類のもの。一度ルノーのエンジニアにその秘密を聞いてみたいものだ。
とにかくエンジンが速いだけではなく、足も速い(と言うことはボディも)。それも日常生活に必要ではないレベルに踏み込んだ速さだ。
使い切ることのできない機能を備えたクルマだからこそ、クルマ文化の証しとして、また運転が好きな人が味わえる機会が増えるように、末永くルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポールが売られ続けることを願わずにはいられない。