2003年9月28日のYRS筑波サーキットドライビングスクール。ロータス エリーゼに乗った黒滝さんが初参加。その年の12月13日に浅間台スポーツランドで開催したYRSオーバルスクールでオーバル初体験。翌年の5月にはユイレーシングスクール3回目の参加で早くもYRSオーバルレースに挑戦してくれた。
その後も、もてぎで開催した数少ないYRSオーバルスクールやYRSスプリント、YRSエンデューロに顔を出してくれていたのだが、2006年のこと。
10月21日に富士スピードウエイで開催したYRSエンデューロの参加者名簿を整理していた時、ダウンロードしたファイルを開けると黒滝さんの車名がロードスターになっていた。「なんで車名間違えるのかねぇ」とあくまで黒滝さん=エリーゼだと思っていたのだが、当日ショートコースのパドックに現れた黒滝さんは間違いなくロードスターに乗っていた。
「本当にロードスターなんだ。先月のオーバルレースはエリーゼだったじゃない」と聞くと、「ロードスターに乗っている人たちがあまりに楽しそうなんで、仲間に入れてほしくて換えちゃいました」とニコリ。だから、「うん。それもありだね」と言ったのを覚えている。
その黒滝さん。ここ数年はYRSオーバルレースの常連なのだが、ある日他の参加者と真剣な面持ちでスマートフォンを覗いていた。
聞けば、黒滝さんがラップタイム測定用のソフトを開発したのだと言う。その手のデバイスはいくつか市販されているしユイレーシングスクールでも使っているが、それを作るという発想はアナログ人間にはない。どういう仕組みなのかもわからない。
なので説明は全て引用で。
⇒ アプリケーションの機能としては下記の2つです。
(1)ラップタイマー機能
スマートフォン内蔵のGPS、又は市販のGPS受信機を使用してラップタイムを計測します。国内外のサーキット116ヶ所(うち国内は46ヵ所)が設定済みなので、メジャーな所であればコース設定等せずに計測を開始できます。走行データをGPS汎用のフォーマット(NMEA0183形式)のログとして記録し、下記(2)や他社製の解析ソフトに取り込むことができます。
(2)ログ簡易解析機能、
アプリケーションのログを解析し、車速グラフ形式(横軸を経過時間、縦軸を速度とする1周分のグラフ)、又はGoogleMapに走行ラインをプロットして表示することができます。
9月初めの時点で黒滝さんが開発したソフトのダウンロード数は47,000以上。15,000ほどの端末にインストールされていると言う。
黒滝さんが開発した”GPS Laps”の頁
車載映像に走行中のデータを重ねると一気に情報量が増える。
・黒滝さん鈴鹿サーキットを走るの動画
・黒滝さんYRSオーバルレースを戦うの動画
※どちらも黒滝さんのYouTubeから。
仲間と今日も
筑波サーキットコース2000では大きすぎるぐらい もっと小さいサーキットでもレースができる
今年から追加したカリキュラムにYRS VITAライドがある。鈴鹿を拠点とする日本有数のレーシングカーコンストラクターであるウエストレーシングカーズが製作したスポーツレーシングに乗って風のあたるマシンを体験する。
VITAと名づけられたそれは、エンジンとトランスミッションこそ中古のヴィッツから拝借したものだが、セミモノコックフレームに前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを備える。少しずつ台数を増やし、今や北海道の十勝スピードウエイでもツインリンクもてぎでも筑波サーキットでも、もちろん鈴鹿サーキットでもアマチュアドライバーを対象にシリーズ戦が組まれている。
筑波サーキットのコース1000では同じような動力性能のクルマより1周5秒速い クルマの性格が異なるから
昔。FL500という日本独特のカテゴリーがあった。軽自動車のエンジンを搭載した本格的なフォーミュラカーだった。FL500から育ったトップドライバーは数知れない。常に大きなレースの前座だったが、メインレースに引けをとらないこれこそレースという白熱した争いを繰り広げていた。
全日本選手権がかかったビッグレースはもちろん魅力的だが、純レーシングカーの底辺を担うFL500レースやVITAレースが盛んになると頂点がさらに光り輝くものだ。
ルノーも80年代にはアメリカでスポーツ・ルノーと呼ばれたVITAのような入門カテゴリーにエンジンを供給していた。一時は全米に300台近くが存在したSCCAの目玉カテゴリーだった。
体験した全員が「楽しいっ!」
ユイレーシングスクールでは日ごろ、「ご自身のクルマを自在に操るのもひとつの目標になるとは思いますが、少し目先を変えてどんなクルマでも乗りこなせるようになることを目指してはどうでしょう」と訴えている。
乱暴な言い方になるけれど、4本のタイヤがついていればクルマはクルマ。基本的な動かし方に変わりがあるわけがない。
むしろ、VITAのようなステアリングもブレーキもノンアシストのクルマを操ることを想定して練習をすれば、量産車からは得られない操作の機微がわかるというもの。
姿勢変化をしないのが速さの秘密 だから速く走らせるにはそれなりの操作が必要になる
モータースポーツにはいろいろなカテゴリーがあったほうがいい。妥協のきかないマシンのレースが、ふつうの人(レースにのめり込んでいない人という意)でも、やる気さえあれば手の届く範囲にあるとなお良い。
ボク自身、70を過ぎたらレース活動を再開しようと思っている。YRSの卒業生にもいろいろな体験をしてほしいと思っている。
今までにロードスターパーティーレースや富士チャンピオンレースでシリーズチャンピオンになったYRS卒業生もいる。VITAレースに参加する卒業生が出てきてほしいものだ。
そんなこんなで始めたのがYRS VITAライド。当面はユイレーシングスクールを受講した方を対象としているが、誰でもが体験できるシステムができないか熟考中だ。
一部の限られた人しか乗れないレーシングカーではない
体験すれば笑顔、笑顔、笑顔
興味のある方はウエストレーシングカーズのVITA開発レポートをのぞいてみてはいかがだろう。
トゥィンゴRSに苦手なコーナーはない
15年目のユイレーシングスクールはいくつかの新しいカリキュラムを追加した。
そのひとつがYRSドライビングワークアウト。参加者にコーンで作ったサーキットを模したコースを走ってもらい、思い通りにクルマを動かすコツを体験してもらおうというもの。
既に2回開催したがどちらも定員いっぱいの12名が参加。少人数制だから走行時間も多いし、アドバイスも細かく行なえる。加えて、同乗走行はもちろん、ユイレーシングスクールでは唯一のインストラクターが助手席に乗る逆同乗走行もするから、ほぼ全方位から参加者の走りを検証することができる。
参加者が悩んでいるなと感じたら即ミーティング
とにかく、参加者の走りを一望できるからアドバイスがしやすいし、参加者も自分が走らない時は他の参加者の走りを間近に見て自分の操作を振り返ることができるし、長年温めてきたアイディアを実行してよかったと思っている。
人の走りを見てイメージを膨らます
YRSストリートと呼んでいるそのコース。参加者は全員がおもしろいといってくれる。操作の反復練習にはうってつけだ。
一方、スタッフや長年通っている口さがない連中は、「さすが、いやらしいレイアウトですね」だと。水割りをなめながら、あーでもない、こーでもないと知恵をしぼったかいがあるというものだ。
簡単なコースではおもしろくないし練習にならない
で、YRSストリートをルノー トゥィンゴ ゴルディーニRSで走った時の動画がこれ。
どうやって走るか考えている時間はない。無意識に身体が動いてくれなければスムーズに走れない。YRSドライビングワークアウトの目的は参加者のドライビングポテンシャルを引き出すことだ。