トム ヨシダブログ


第793回 遠い昔の思い出 4

カリフォルニア州にあるベンチュラレースウエイをミヂェットで走ります

※試乗時はドライスリックトラックだったのでミヂェット本来の速さは実現できませんでした

当時、日本オフロードレース協会の事務局を担当してた関係で、今から48年前の1976年に初めてアメリカに取材に行った。
目的はメキシコの統治地区だったカリフォルニア半島のバハカリフォルニアで行われたBAJAインターナショナルオフロードレースに日本人として初めて出場した池沼純一選手の戦いぶりを記事にすることだったけど、滞在中の経験がその後の自分の人生を大きく変えることになる。

メーカーの広報を通じて手配し現地の日本車を何台かロサンゼルス周辺で試乗した。どのクルマも国内仕様よりパワフルだった。パワーがないとアメリカでは売れないのか、日本国内向けにはパワーがなくてもいいのかね、と思ったものだ。

土曜の夜にはガーデナにあったスコットパークにダートトラックレースを見に行った。少しばかりトイレがビール臭かったけど、ストレートでもカウンターステアを当てたまま轟音を上げてハーフマイルダートトラックを駆け抜ける30台あまりのスプリントカーに頭を強烈に小突かれた。全てが新鮮だった記憶がある。

オフロードレースにしてもダートトラックレースにしても、その実体は日本にいては推し量ることができない。その規模といい迫力といい日本のモータースポーツとは大きな開きがある。本気度と言うか伝わってくる本物度がまるで日本と違う。アメリカの、なんというか活発さというか、ダイナミックさは1974年にしばらく滞在したイギリスでは感じられなかった。使い古された表現だけど、アメリカがまぶしかった。到着した日にハリウッドで食べて虜になったアービーズのローストビーフサンドイッチもアメリカにいればいつでも食べられるのにな。そんな思いを抱いた初めてのアメリカだった。

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CG誌 1994年2月号

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オープンホイールのダートトラックレーシングは基本USACが統括しているが
同様のルールの元で派生したシリーズもある
その主なカテゴリーを列記すると以下のようになる
 
クォーターミヂェット(5歳から参加可能)
ハーフミヂェット(主にバイクのエンジン流用)
スリークォーターミヂェット(1,000㏄のバイクのエンジン流用)
ミヂェット(320馬力:CG誌面のマシン)
スプリントカー(V8の600馬力エンジン搭載)
アウトロー(V8の800馬力エンジン搭載で巨大なウイングを背負う)

 

アメリカのモータースポーツは統括団体(我が国だとJAFにあたる)だけでも7つあってレースカテゴリーに至っては星の数ほどありそうなので、少しばかり古い話になるけど、とりあえずレース場の数を当たってみようと1998年にその年にレースを開催したレース場の数を調べてみたことがある。

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レース場の総数は1,320ヶ所で内訳は多い順に
オーバルコース1,029ヶ所/ドラッグストリップ242ヶ所/ロードコースがたったの49ヶ所
オーバルコースがアメリカンモータースポーツの根幹をなすことがわかる
 
オーバルコースのうち772ヶ所がダートトラックで257ヶ所がペイブドトラック
そのうち1周1マイル(1.6キロ)以上のオーバルコースは40ヶ所しかなく
ダートにしろペイブドにしろ
クォーターナイルからハーフマイルのダートオーバルトラックが主流だ

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日本のモータースポーツはダートトラックレーシングと縁がないように見えるけど
実は日本にもクォーターマイルダートトラック(400m)と
クォーターミヂェット用の180mペイブドオーバルがあった
今の人は知らないかも知れないけれど
 
日本発アメリカングラスルーツモータースポーツの舞台として
冒頭のビデオで走っているベンチュラレースウエイを完全にコピーした
ダートオーバルトラックが確かにあった
そのインフィールドにクォーターミヂェット用のオーバルがあった

 

当初インディーカーやNASCARストックカーの招聘を見据えていたツインリンクもてぎの立ち上げに携わっていた関係で、小林初代社長に1周2.4キロのスーパースピードウエイだけではアメリカンモータースポーツを標榜するのは片手落ちなのではないか、トップカテゴリーに加えてアメリカのグラスルーツモータースポーツも導入しませんかと訴えて、日本初の本場アメリカのダートトラックのレベルに匹敵するクォーターマイルオーバルが実現した。

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ミヂェットの醍醐味をふつうのクルマの運転と比較するのは難しい
ブレーキをかけてもスロットルを空けてもテールがルーズ(ブレイク)して
カウンターステアを駆使してマシンを前に前に進めるセッティングだから
言うなれば物理学に逆らう運転になる
 
スクールで運転は物理学です
理にかなった操作が大切ですとくどいほどに言うのだけれど
ことミヂェットは物理学に反するというか
あるいは超越した運転が求められる醍醐味がある

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ミヂェットにはダートトラック用とぺイブメント用の2種類があるが
主流はダートトラック
 
鋼管スペースフレームのシャシーに前後ソリッドアクスルを吊るサスペンション
前輪ブレーキは左のみ
ミヂェットの後輪は右側のほうが直径が大きく
試乗車の場合左側タイヤとの外形差は17.5センチもあった
 
だからアクセルを踏むと左向きに進み
ブレーキをかけても左向きに進む

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サタデーナイトレースで知り合ったロン・ブランデルから多くのことを教わった
なぜダートトラックでほこりが立たないのとか
ダートトラックの創り方とか
ミヂェットのセッティングの仕方とか
 
この取材から数年して試乗したミヂェットを日本に送りロンにも訪日してもらい
ツインリンクもてぎの関係者の前でデモラン兼試乗会を開催した
 
車重514Kgに285馬力のマシンで
鈴鹿サーキットの2輪用ダートオーバルや
ツインリンクもてぎのできたてホヤホヤのダートトラックを走ったのが懐かしい

※ CG誌面の写真は過去に幸田サーキットドライビングスクールに参加してくれたFさんの蔵書を撮らせていただいた。