第17回 クルマはタイヤでしか走らない
ず~っと昔。「クルマはタイヤで走ります」というタイヤメーカーのCMがあったと記憶する。
そのメーカーが何を意図してそのCMを流したかはわからないが、クルマを運転する者はみな、このフレーズを頭に入れておいたほうがいいし、ドライビングスクールを主宰する身としては、そんなCMが復活してほしいとさえ思っている。
サスペンションの第一機能はタイヤを地面に貼り付けること。
クルマにはタイヤの存在が不可欠なのは誰にでもわかるが、その性能を発揮するのにはタイヤが路面をつかまえる力=グリップが必用なことをきちんと認識している人は少ない。
グリップがいいタイヤを履けば速く走れると単純に信じていたり、その特性を知らずにかっこうだけを理由に超扁平タイヤを履いてみたり、グリップの本質から離れたところでタイヤと向き合っている。タイヤはクルマが機能するために欠かせないものではあるが、それでも、クルマを構成する部品のひとつ。それだけをいじってもクルマの性能が向上するわけではない。まして、クルマを走らせるのが『曖昧な人間』ときているから、人間が間違いを犯せば、いくらグリップのいいタイヤを履いていてもクルマが言うことを聞いてくれるとは限らない。
「今度はグリップのいいタイヤを履いたからタイムアップは間違いなし」と言い切ったのに、それまでのラップタイムを更新できなかった人。小さくなった扁平率が操縦性にどんな影響を与えるか、考えもしないでアンダーステアを出しまくっている人。ユイレーシングスクールではほとんど見かけないが、日常的にそんな例は枚挙にいとまがない。
クルマが走る時。クルマには必ず加速度が働いている。加速中にはプラスの加速度。減速中にはマイナスの加速度。旋回中には遠心力。その加速度は速度とともに変化し、それに車重を加えた大きなエネルギーを支えながらタイヤは仕事をしている。
路面をつかまえることがタイヤの仕事の全てだ。しかし、タイヤのグリップは無限ではない。加速度の大きさと向きによってはタイヤが支えきれない場合があってもおかしくない。人間がそうしたいと思っても、そうならない場合があるのはそのためだ。
だから、発想を変えて、どうしたら『グリップを損なわない』操作ができるかという視点でクルマを動かすと、クルマは人間の言うことを聞きやすい。特に、1輪だけでなく4輪全てのグリップを常に維持することを念頭におけば、クルマにとって正解となる操作の方法が見つけやすい。
昔に比べてクルマが高性能になり、タイヤの性能が格段によくなった。確かに我々人間にとっては嬉しいことだが、だからと言ってクルマ任せ、タイヤ任せでクルマを走らせられると思うのは間違いだ。逆に、高性能と安全という言葉が人間に油断をさせてはいないかを考えてみる必要がある。
クルマの運転はそれだけで無条件に楽しい。しかし、クルマの動かし方、それはタイヤの使い方であり、4輪のグリップを維持する方法なのだが、それを知れば運転はもっと楽しくなる。
ひとりでも多くのクルマ好きに運転の楽しさを知ってほしい。それがワンボックスであろうと、SUVだろうと、タイヤが4本ついていればどれも同じ。タイヤの使い方を知りたい人、もっと楽しく運転したい人。ぜひユイレーシングスクールに参加してみてほしい。
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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
■ 7月23日(土)YRSオーバルスクール奥伊吹 案内頁
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=oso
◆ 7月28日(木)YRSドライビングワークショップFSW 案内頁
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=dwf
■ 7月29日(金)YRS + エンジン ドライビングレッスン
エンジン(03-3267-9681)編集部にお問い合わせ下さい。
■ 7月30日(土)YRSオーバルレースFSW
http://www.avoc.com/2race/guide.php?c=sr&p=yor
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
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