ブログ 第819回 カングー ヴァリエテ と
第820回 続・カングー ヴァリエテ
をアップしたことをFBに書いたら
ユイレーシングスクールの卒業生のMさんから書き込みがあった
『 私も次の通勤車は所謂dctといわれるツインクラッチ式のミッションにしました。ホンダがかつてつくってたハイブリッドです。フィーリングを楽しみにしています 』
『 Mさん ツインクラッチTMには驚かされっぱなしです。機械が人間の領域に入り込んでくるような錯覚を感じます。個人的にはまだまだ現役ですけど。(笑)820回の続編もどうぞ 』
『 カングーは車自体も現代の車として良くできてるのですね。でも現代の車は良くはできているのだけど、ドライバーは、車をコントロールしているのでなく、車のコンピューターに指令を出していて、車自体はコンピューターが操ってるのかなぁ~と。。。』
『 Mさん 考えさせられる表現ですね。その通りですね。今度使わせてもらいます 』
Mさんは2001年5月のYRS筑波タイムトライアルに初めて参加
以降YRSスプリントやYRSエンデューロYRSオーバルレースなど
速く走る&競争をテーマにしたプログラムに参加してきて
最近は年いちでYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールに
Mさんは走るだけでなくクルマへの造詣も深く
今回のやり取りも以下のようなMさんの書き込みに
ボクがコメントしたのがきっかけ
『 通勤車を乗り換えることにしました。これまで使っていたプリウスは、14年12万キロ走ってますが、まだまだ使えそうで、今後も親戚が使用することになってます。実用車としては、素晴らしい車でした。そこでプリウスという車のハイブリッド機構を振り返ってみます。
一番の特徴は、THSの動力分割機構でしょう。電気式cvtとうたっていいますが変速機構を持たない、つまり減速させた分によってトルクを増大させる概念でなく、エンジン回転上げた分は発電機を回しその電気でモータを駆動させトルクを補う考えであってると思います。たぶんね。そして、トルコンもクラッチもありません。発電機を回す抵抗を変化させてるんじゃなかったかな。
で、この機械的に見ると世紀の大発見と言ってもいい分割機構により、シームレスな加速、スロットルをラフに扱ってもあまりギクシャクしないので、妻には大好評でした。通常のcvtが好きな人にはあってるでしょうね。じゃぁ自分はどうだったのかと言うと最初は違和感ありましたけど、慣れれば問題無しですかね。パワーモード使えばレスポンスもいいし、ゼロ発進のモータトルクは強大であの加速は結構病みつきになりますね。
次の車にかわるまでもう少しの間あのトルクを味わいたいと思います。そして次の車はハイブリッド機構が対極の車ですので、その違いが楽しみだなぁ 』
クルマの進化は止まらない
進化の方向性も多様化を重ね続ける
だからクルマの進化は使い手に
さらなる多岐にわたる選択肢をくれる
Mさんの感じるところもわかるけど
いつの時代も人間が主体となってクルマと付き合えば
クルマはずっと相棒でいてくれるはずだ
せっかく登場してくれたのだから、今年のYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールに参加した時の Mさんの車載映像 をご覧下さい。
高速道路と一般道を合わせて846キロ。カングー ヴァリエテで走った小旅行とヨシダ流傾向と対策を自問自答。
琵琶湖東岸から西岸を望む
・ドライビングポジションの重要性
メガーヌRSウルティムと比べて130Kg重く8Cm長く40Cm背の高いカングー ヴァリエテは、当然ながらウルティムとは異なる動きをする。いくつかの差異があるけど、最たるものは走行中の姿勢変化の大きさだ。
当たり前なのだけどコーナリングすると背の低いクルマと比較して大きくロールして荷重が外側に集中する。少し速いコーナリングをすれば車体が大きく傾く場合もある。そんな派手なコーナリングをするユーザーはいないと思うけど、大きくロールするクルマで気をつけなければならないのがドライビングポジション。シートの上で身体が踊るとステアリングホイールを不必要にこじてみたり、スロットルを緩めるとバランスを崩すようなシーンでスロットルペダルが踏み込めないなど、クルマの動きを乱してしまう可能性がある。
運転操作の基本は、まずクルマの動きを把握するところから始まる。動いているクルマを目的に合わせて操作し続けるのが運転だ。クルマの姿勢変化を正確に知るためにはシートに身体が密着していて、かつ操作が横Gに影響されないドライビングポジションが大切だ。目安としてコーナリング中に横Gを受けながらも必要なだけステアリングを切り足したり戻したりすることができれば、上体は動いていないことになる。
ステアリングホイールのテレスコピックを最大限伸ばして手前に、チルトをステアリングシャフトの延長線が顎か口に向くようにセットした。シートは右足が自由に動く範囲で前に出す。結果として肩を動かさずにステアリングホイールを回すことができて、踵を動かさずにスロットルペダルとブレーキペダルを踏み換えられれば〇。ボクの場合は大きな横Gを受けた時にも背骨がバックレストの中心線から少しもズレずにステアリングホイールを押したり引いたりできれば良し、としている。
琵琶湖東岸から比良山系を仰ぐ
・スロットルオフは早めたい
20年近く前のことだと思う。当時新型のスイフトがスクールにやってきた。同乗走行でオーバルを全開で走った時、スロットルを閉じたのにクルマが加速を続けるという経験をして驚いた記憶がある。後に、濃い混合気がシリンダーに入った後は排気ガスを浄化するためにスロットルペダルをオフにしても電気的な制御でスロットルが開いたままになるから加速したように感じる、と聞いた。スロットルペダルとスロットルが物理的に結ばれていない、スロットルを閉じる=加速が終わらない場合がある時代の到来だった。
カングー ヴァリエテのスロットルも見えないところで電気的、機械的制御が入っているのだろう。スロットルオフ前の状態、定速走行なのか加速中なのか、はたまた平坦地なのか登り坂なのかによってはスロットルオフ直後にエンジンブレーキの効きを全く感じられない瞬間があった。空走する時間を設けて燃費を稼ぐためのシステムが設けられているのかも知れないけれど、エンジンブレーキへの移行=加速の終わりが走行している条件によって異なるから、減速開始の判断を早めるためにも先の先を見て運転して、スロットルを戻すタイミングが来ると思ったらブレーキは踏まないまでも、躊躇せずに右足を浮かしたほうがいい。
琵琶湖西岸に戻る道
遠くに琵琶湖大橋が
・ブレーキ:踏力のかけ方
正しいブレーキのかけ方ではないけれど1度だけブレーキペダルを蹴とばしてみた。瞬間的に制動力を立ち上げることによって、カングー ヴァリエテがどんな姿勢変化を起こすか、どんな減速Gが立ち上がるかの確認したかったから。
結果は、記憶が曖昧な部分もあるけど 先代(ブログ第51回 いいねぇ) と同じでノーズダイブの仕方がカングーらしかった。具体的にはフロントがだらしなく沈むような挙動を見せなかった。背の高いクルマではフロントが沈むと同時にリアがホップするような挙動を見せることがあるけど、その場合はピッチングの中心が前後輪の間にあるような感じの動きになる。対してカングーはそれが後輪付近に中心があって長いスパンの先にあるフロントのマスが穏やかに沈み込む感じ。リアが不安定になる兆候は感じられなかった。珍しくフロントと同じ大径のベンチレーテッドディスクブレーキがリアにおごられているのもひと役かっているのかも知れない。
カングー ヴァリエテのブレーキングでは踏力に変化をつけたい。踏力が一定のブレーキングだと前輪の荷重は大きくならない。フロントの荷重が増えれば前輪のグリップが増し減速Gに対する余裕が生まれる。速度の高いうちに漸進的に踏力を強め、初期の減速が達成できたら踏力を抜いていくほうがブレーキング時の姿勢は安定する。進んでいるうちに車速は落ちるから。
最初に減速Gを大きくしておいてから踏力を抜くわけだから、抜くほどにほんのわずかに車速は落ち続けるけど前後の荷重が同等になろうとする。ブレーキペダルに右足は乗っているのだけど車体はつんのめっていない。クルマ側にしてみれば停まったと感じられないからだろう、アイドリングストップを解除していなくてもエンジンが止まらないまま停止することもできる。それほど減速Gをコントロールできる。
大津市中心部にて
・マニュアルシフトがいいね
Dレンジで走行中にシフトレバーを右に倒すとマニュアルモードになる。スピードメーターの右にあるインジケーター”D”の横に数字が現れるのでそれとわかる。マニュアルモードではシフトレバーを前後することで意識的にギアを選ぶことができるのだけど、ちゃんと加速中のアップシフトは慣性の法則に従ってシフトレバーを後ろにクリック、ダウンシフトは前にとなってるのが嬉しい。そうでないクルマもあるからね。
さて、今回はマニュアルシフトを多用した。と言っても、1速でスタートしてアップシフトやダウンシフトを繰り返しながら走るという使い方ではなく、実際にはある特定の局面でごく短い時間マニュアルシフトに頼った、と言うのが正解。
例えば、上り坂で加速する必要はないけど駆動力を確保しておきたい時。前を走るクルマの速度が落ちて来て、それに合わせた自分のクルマのエンジン回転もパワーバンドから外れそうになった場合とか。スロットルペダルを踏みこんでダウンシフトする手もあるけど、それだと何速下がるかは傾斜の具合や踏みこみ方次第でクルマ任せになる。場合によっては2速ダウンシフトして加速しすぎるかも知れない。
シフトレバーを右に倒すと、その速度に応じたギアが選択される。駆動力を得るならシフトレバーを前に押してダウンシフト。ATモードに任せるよりも運転手の意図通りのギアチェンジができる。さらに駆動力が必要ならもう1度シフトレバーを前に押せばすむ。新しいカングーのEDCは7速なのでギア比が分散している。どのギアでも1回のダウンシフトでエンジン回転は500回転ほど上昇するだけだけど、十分に期待するトラクションが得られる。
マニュアルシフトをエンジンブレーキとして利用することもできる。緩やかな下り坂で速度が上昇しがちな時は、ブレーキで速度を落とす換わりにシフトレバーを右に倒してから前に1回押す。ダウンシフト1段ならばエンジンが悲鳴を上げることもない。希望する速度まで落ちたらシフトレバーを左に倒してDレンジにしてもいい。
ダイアル式のスイッチが受け継がれている
ブラインドタッチができるこれが好き
ルノーのデザイナーの良心
他にもスイッチ類の配置や操作が明快で
奇をてらったところがないのが〇
操作系のデザインに遊びはいらないかな
・シフトショック
それにしてもカングー ヴァリエテの7速EDCオートマティックトランスミッションには驚いた。Dレンジに入れっぱなしで運転する時間がほとんどだったのだけど、穏やかに走った時はシフトショックが小さすぎて、大げさではなくいつアップシフトしたのか感じられないことがあった。7速と多段化してギア比が分散した効果なのか、それとも他の制御が進化したのか。体感的には6速EDCのウルティムのほうが明確にシフトチェンジを感じる。
Dレンジで走っていてEDCがどのギアを選ぶかは、車速、スロットル開度、路面の状況、加速度など莫大なデータを拾って計算した結果だろうから、これといった決まりがあるはずがない。それこそ天文学的な組み合わせになるに違いない。そしてその恩恵は走行中に如実に。
トルコン式のATだと加速中にスロットルを緩めるとシステムが判断して上位のギアに自動的にアップシフトしてしまうことがあるけど、EDCは基本的に車速に応じたギアにとどまってくれる。例えば市街地の40~50Km/時でマニュアルモードにすると、状況にもよるけどギアは4速か低負荷の時に5速だった。あれこれ試してみたけど、7速はだいたい80Km/時以上が守備範囲のようだった。それでもエンジンは2,000回転も回っていない。多段化したEDCの面目躍如といったところか。80Km/時からでも必要な場合はマニュアルモードにして2段ダウンシフトして大きな加速度を得ることも可能なのも嬉しい。安全性も高まる。
北小松水泳場(!)から比良山系の遠望
・後輪荷重
スクールをやっているとスクール機材を詰め込んで高速道路を長距離移動することが多い。運転が根っから好きなのか長時間の運転も苦にならないけど、神経を使うのが風が強い日の高速道路。特に切通しのある新東名や吹きっさらしの伊勢湾岸では横風にあおられることが多い。そこで、科学的根拠はないし効果を確かめたわけではないけど、重たいものをリアのオーバーハングに積んで後輪荷重を増やして走るのが習慣になっている。前後の輪荷重が均等に近いほうが外乱を受けにくいかな、と。あくまでも想像の範囲を超えないけど。
今回はとんでもない風が吹いていたのと機材がほとんどなかったのでどうなるかなと思ったけど、拍子抜けするほどあおられることもなく進路を乱されることもなかった。
何か理由があるのだろうとウルティムとカングー ヴァリエテの重量配分を車検証からはじき出してみた。数値は車両重量なので実際の走行時にはこれに運転手の体重が加わるから、あくまでも目安にすぎないけれど。
ウルティムの前輪軸重が920Kgで後輪が550Kg。1,470Kgの車重から前後の重量配分を計算すると前62.6%:後37.4%の値。驚いたのはカングー ヴァリエテで、なんと前58.9:後41.1。ウルティムより重量配分がイーブンに近い。それも横風安定性に寄与しているのか、と思いたくもなる。サスペンションのしつけもいいのかも知れないし。いずれにしろあの外乱に対する抵抗力は見事。
で、なぜカングー ヴァリエテのほうが後輪荷重の比率が大きいのか気になって、両車とも前後それぞれの数値は提供されていないから数字の遊びでしかないけれど、前後のオーバーハングの合計を全長で割って、ホイールベースの前後にぶら下がる車体部分の長さがどのくらいの割合か見てみた。すると驚くことにウルティムが0.395でカングー ヴァリエテが0.394。前後オーバーハングの合計は両車とも一定の割合に収まっているのがわかった。FFならではの数値なのだろうか。だからなんだ、という話ではあるけれど。
掛け値なしにカングー ヴァリエテの完成度が高いことはわかった。ウルティムと性格こそ違うけど、ウルティムに通じるルノーならではのしなやかな足と必要にして十分な動力性能には感心させられた。おそらく遠い将来にはカングーを相棒にして時間を超越したクルマの使い方を楽しむ日が来るかも知れないけれど、あと5年、スクールを続けてるうちは上手さと速さを拠りどころに運転を続けるのだろうな、と思わせてくれた今回の小旅行だった。
前回満タンにしてから市街地を225.0キロ走破
と言っても大津市の北部は
ほとんど信号のない郊外みたいなものだけど
ハイオク16.86ℓを消費し燃費は13.34Km/ℓ
高速道路と変わらない好数値を示した
7速EDCの成せる業か
これは気が利いている
お子さんが後席に座った場合のコミュニケーションツール
写真は鏡を半分だけ引き出した状態
もみじマークをボンネットに貼ろうとしたら
スルリと落ちてしまった
『えっ!』である。
クルマのボディは鉄でできている。鉄板むきだしのダッシュボードを経験している世代は何の迷いもなくそう信じているだろうから、マグネット式のもみじマークがくっつかないなどとは決して思わない。まず何かの間違いだと疑う。
そう言えば、メガーヌRSのテールゲートにもみじマークを貼ろうとした時もそうだった。最初は、ホントになんで貼りつかないのかピンとこなかった。しばらくして、「ははん、たぶんアルミ製だからなのだろう」とブログに書いたら、ルノー・ジャポンのUさんが樹脂ですと教えてくれた。貼りつかないのにも驚かされたけど、複雑な形のテールゲートが樹脂でできているなんてワタクシ世代には刺激が大きかった。
ちなみに今回はブログを書く前に調べたら、新しいカングーのボンネットは軽量化のためにアルミでできているとあった。
閑話休題。
首都圏での用事を済ませ東名、新東名、伊勢湾岸、新名神、名神と乗り継いで大津までひとっ走り。風の強い日だったけれど横風にあおられることもなく快適なクルージングだった。自分の周りに大きな空間があって、自分を取り巻く空気全体と一緒に移動している感じがいつもと違ったけど。
新名神では流れをリードする速さでも走ったけど、やはりルノーの足はお世辞抜きにして良い。前も後もタイヤが路面を掴まえている感覚がステアリングホイールから伝わってくる。ブレーキング時の姿勢変化、ブレーキの効きも期待通りだった。
自宅に近いガソリンスタンドに立ち寄って
トリップメーターは518.6Km
容量54リッターの燃料タンクは
37.3リッターのハイオクを飲みこんだから
燃費は13.90Km/ℓ
空気抵抗が小さくないガタイの大きさや
走行ペースを考えれば上出来の部類
初めてのクルマだし、燃費のことを考えて、ずっとスロットルを抜きながら速度を維持する努力を続けたのが功を奏したのかも知れない。
給油後には見込みの足の長さが850Km
一般道では難しいかも知れないけど
長距離でも不安がないのは確か
3代目カングーの足がこれまた良かったので、過去にしたためたカングーにまつわるブログを紹介します。
・ブログ 第51回 いいねぇ
・ブログ 第243回 カングーがそそる