トム ヨシダブログ


第865回 Kさんの場合

先日のYRS筑波サーキットドライビングスクールの開催2日前に電話が鳴った。「神戸のKです。あさってのスクールに参加したいのですが・・・」。

当日集合時間50分前にコース1000のゲートに着くと既にKさんが。「前泊したのですか」と聞くと、「昨夜9時に出て朝早く着きました」。いつもながらタフなKさん。  スクールが終わって「泊まって帰られるんですか」と聞くと、「このまま帰ります」。いつもだけどKさんのバイタリティに驚く。それが初めての筑波サーキットコース1000の走行にどう影響するかが見もの。

865-1 写真は2022年3月のツーデースクールで撮影

865-2ルノー乗りが全員集合で前列左端がKさん

少々Kさんの身を案じていたのだけれど、翌日にはメールが届いて安心したので断りなしに公開します。

 

昨日は酷暑の中、本当にお世話になりました。とても有意義な時間が過ごせました。当初は「つくばかー? さすがに遠いなぁ」と申込を躊躇していたのですが、過去に菅生まで行った自分がいたので「ダメもとで早く申し込め!」との心の叫びに従いました。

結果は初見、初走行のコースで43’75と自分ではそこそこ満足のできる走りができました。(が、まだまだタイムアップへの欲がありますが・・・)
それもこれもトム先生のお陰でございます。オーバル、トライオーバル、ツーディで徹底的にトレイルブレーキングとイーブンスロットルを練習させていただいた結果だと考えております。(個人的には雨のオーバルが一番勉強になっております)

ただ、サーキットをガンガン走っていると、どうしてもタイムを詰めたいがあまり突っ込みが癖が強くでて、レイトブレーキング→強引なコーナリング→立ち上がりが遅い→タイムが出ない(タイヤが減るだけで遅い)の悪循環に陥っておりましたので、(車さんを支配しようとしてしまっていたのですね。)今回はそのリハビリの意味でも大きな収穫が得られたと思います。今年の秋以降のサーキットハイシーズンに向けた良い機会となりました。ありがとうございました。

気持ちのいい運転ができる、運転のイメージが具現化できる何度も、集中して同じポイントを練習できる。トータルで周回トライへの落とし込みとタイムでの確認。つくばレッスンは、わたしにとって、まさにベストなレッスンです。(TC1000が、こんなに良いサーキットとは思いませんでした。反省。)
また、急なお申込みをさせていただくかも知れませんが懲りずに今後ともよろしくお願い致します。

 

865-4FSWショートコースで格上のメガーヌRSを追い回す

長くなるけれど、メールの中でKさんが勉強になったというYRSオーバルスクールFSW。タイヤが浮くぐらいの豪雨の日、アンダーステアが出ているのにスロットルを開けたがるKさんを助手席に乗せてデモランをした。「流すのなら2輪だけではなく、4輪を流せばクルマは前に進む」と説明して。

敢えてターンインから厚いトレイルブレーキング。アンダーステアが顔を出す。わざと切り足してフロントが逃げるようにしむける。
「アンダーが出たのを感じるとKさんは曲げようとしてステアリングを切り足しますよね」。うなづくKさん。

次に減速量を減らしターンインの速度を上げてごく薄いブレーキでにしてからターンイン。フロントが動いたら手を一瞬止める。リアがブレイクすると同時にステアリングを切り足すして後輪のスリップアングルを増やす。右足のイーブンスロットルと連動させてステアリングを足したり引いたり。
KさんのルーテシアRSはピッチングすることもなく、気をつけていないとそれとわからないぐらいのアンダーステアとオーバーステアを繰り返しながら、要するにホイールベースの間のどこかを軸としてプラスとマイナスの自転を繰り返しながら円運動を続ける。コーナリング速度が高いからこそなせる技。ターンインから立ち上がりの舵角ゼロまで前後輪のスリップアングルの和が等しくなるのを目指す。

Kさんは笑いながら、「これですよ、これ。これをやりたかった」。

865-32024年3月のYRSトライオーバルスクールFSWのKさん

Kさん、ユイレーシングスクールがお役に立てばそれほど嬉しいことはありません。また走りに来て下さい。



第863回 ヨーイドンをやりませんか?

実は、一時期ユイレーシングスクールを受講した方を対象にスクールレースを開催していたことがある。

1999年に当時自動車メーカー系では見られなかったドライビングスクールを開校した目的はふたつ。ひとつはクルマに興味はあるけど動かすことにはそれほど熱意が湧かない人に運転を上手くなってもらうこと。これが『所有欲から使用欲への転換』。もうひとつは運転が好きな人にもっと運転を上手くなってもらうためにレースを体験してもらうこと。これが『絶対的な速さから相対的な速さへの転換』。

ひとつめの目的は比較的簡単に達成することができた。2000年から筑波サーキットの運営母体である財団法人日本オートスポーツセンター(当時)の委託を受けて年間20回余りのドライビングスクールを開催したから、サーキット走行なんて縁がないと思っていた人が大勢参加してくれた。ユイレーシングスクール流のカリキュラムをこなしてもらえば運転が上手くなり、サーキットもそれなりに走れるようになるのは実証済みだ。

サーキットなんか危ないとか関係ないと言っていた人がYRSドライビングスクールを通じてサーキットを走ることにはまった。ふだんでは出せないスピードで走り、公道では経験できない加速度を感じる。愛車の性能を存分に発揮してあげられる。筑波でもFSWでもユイレーシングスクールの卒業生がライセンスを取得しスポーツ走行にいそしむ光景が繰り広げられた。
それは喜ばしいことなのだけど、こんな声も聞こえてきた。「なかなかタイムが縮まらない」、「だれだれさんに負けた」、「タイヤを換えないとタイムがでないのか」等々。要するにサーキットを走るなら速くなければならないという思い込みが底辺にあった。

しかし何度も言うけど、スポーツドライビングを含むモータースポーツは世界でもっとも不公平なスポーツだ。乱暴な言い方だけど、銭このある人にはかなわない。クルマの改造がその典型。とにかく費用をかければ優位に立てる。しかしそれは、絶対的な速さを追いかけているだけで、必ずしも運転手が速くなることとイコールではないのも事実。

そこで運転を教えている立場上、クルマの速さではなく、運転手の上手さと頭脳が速さの決め手になる場を用意することにした。ヨーイドンで競争して誰の運転が速いか決めようというわけだ。しかもクルマの速さだけでは勝てない工夫を織り込んだ。ただモータースポーツには危険が伴う。だから参加するにはユイレーシングスクールを受講してクルマを思い通りに動かす術を学ぶことをスクールレースの参加条件にした。

こうしてユイレーシングスクールの卒業生を口説き、最初に始めたのがYRSスプリントとYRSエンデューロ。

20250720yrs
FSWショートコースのゾクゾクする
YRSスプリント ロードスタークラスのスタート
ショートコースの同時出走は15台までだけど
安全を重視するユイレーシングスクールには特例が認められた

 

YRSスプリントは強化クラッチをおごる意味がないようにローリングスタートとした。スタートとゴールの興奮を何度も味わえるように予選プラス3ヒート制にした。都合4回もチェッカーフラッグを受けられた。2004年に開催したYRSスプリント筑波の結果を見てもらえばどんなレースだったか想像がつくと思う。
・2004年2月28日開催 YRSスプリント筑波 結果

20250721yrs
FSWショートコースの息を飲む
YRSエンデューロ のスタートシーン
オリジナルのルマン式スタートにこだわった
ドライバーがエンジンキーを持って走る

 

YRSエンデューロは不必要な競争を避けるためにピットインの時間をキッチンタイマーで制限した。ユイレーシングスクールが日本で初めて披露した。早くピット作業が終わってもコースインできないのだから慌てる必要はなかった。速いクルマが勝ってばかりじゃ面白くないし、全開で走ると勝てるのもつまらないから、130分の時間レースとして燃費を気にしながら走らないとガス欠でゴールできないようにした。2005年に開催したYRSエンデューロの結果を見てもらえばどんなレースが繰り広げられていたかがうかがえる。
・2005年7月30日 YRSエンデューロ筑波 結果

YRSスプリントもYRSエンデューロもそれなりに好評を博し、サーキットなんて縁がないと思っていた人やレースなんて危ないといぶかしがっていた人も、他人と競争することにのめり込んでくれた。ロードスターがポルシェに勝つ楽しさを覚えてくれた。ラジアルタイヤでSタイヤより速く走る技術を身につけた。まさに『絶対的な速さから相対的な速さ』への転換だった。

そして最後に始めたのがYRSオーバルレース。サーキットを借りるのはそれなりに費用がかかるから参加費も高くなる。できるだけ手軽に(決して気軽にではない)多くの人にヨーイドンをしてほしいと思っていたのだが、YRSオーバルスクール卒業生に水を向けても「グルグル回るだけでしょ」とか「危ないんじゃない」とつれない。一計を案じてYRSオーバルスクールの開催日に試験的にやってもらった。

結果は。FSWジムカーナ場にパイロンで作ったオーバルコースで8周のヒートレースをしただけで、クルマから降りた参加者は地面にへたり込んだ。走り慣れていたサーキットならそんなことはなかったのだろうが、常に周りにクルマがいて、一方方向にしか曲がらず、長い間横Gに翻弄されるオーバルレースは勝手が違った。
笑いながら言ってやった。「みなさんの運転力はそんなもんですか? 邪まなことを考えて走っていたのではないですか? もっといけると思いますけどね」。

20250721yrs2
YRSオーバルレースFSWの原点
FSWジムカーナ場に作ったパイロンコースを
息を飲んだまま走る参加者
みんな一生懸命走っていた

 

それからというもの、広い駐車場にパイロンを並べて作ったオーバルコースでのヨーイドンがユイレーシングスクールの代名詞になった。2004年に開催したYRSオーバルレースFSWの結果を見てもらうと、いかに充実したレーシングスクールが行われていたかが想像してもらえると思う。
・2004年6月13日 YRSオーバルレースFSW結果

と言う訳で、 来年YRSオーバルスクールを受講した人を対象にYRSオーバルレースFSWを再開します。いずれかのYRSオーバルスクールを経験された方はぜひ参加して下さい。運転操作が一皮もふたかわもむけること請け合いです。

 

次のふたつの動画はYRSオーバルレースFSWのシーン。初めて参加する人はここまでの接戦は難しいだろうから、並走の練習をしたり追い越しの練習をしたり、とにかく無意識に走れるようにアドバイスをします。YRSオーバルレースFSWを開催するコースは幅が14mもあります。高速道路の3車線より幅広です。大井松田からの下りをヒラリヒラリと走るのと同じです。

ユイレーシングスクールを受講してくれた方々が、大の大人が一生懸命になって走るのが好きです。過去にYRSオーバルスクールを受講された方、来年開催するYRSオーバルスクールFSWを受ける予定の方は、ぜひヨーイドンを味わうことを想像してみて下さい。



第853回 Kさんの場合

853-1
Kさんは今年2月のYRSドライビングワークショップFSWに初めて参加してくれた
当日はウルティムの試乗が並行して行われていてドタバタ
初めて参加したルノー仲間にお願いする感想文のことを失念
 
YRS鈴鹿サーキットドライビングスクールにも参加してくれたので
改めて感想文をお願いした

 

昨年2時間程鈴鹿サーキットを走りましたが、闇雲に走る事に怖さを感じ始めました。その前後に何度か鈴鹿でスクールの様なものには参加しましたがどう走ったら良いかは掴めませんでした。
そこで雑誌「エンジン」で時折記事を拝読していたYRSにお邪魔しました。2月のFSWでのオーバルは楽しく無意識にコーナーの走り方が身に付く様な気がしました。当日は快晴で富士山もとても美しく最高の気分で帰路につきました。
先生の教本にある「楽しく安全に速く」が実現出来たらと思いますが、今回の鈴鹿では他の皆さんの速さにとてもついていけませんでした。
今後また漠然とサーキットを走るしかなく、どういう事に気を付けたら(練習をしたら)良いのか教えてもらえる機会がもっとあればと思います。

 

関西にお住いのKさんは簡単にはFSWや筑波には来られないかも知れないから、サーキットを走る上でのアドバイスをメールでしようと思います。

853-2
半径22m直線60mのYRSオーバルFSWで
Kさんを横に乗せてKさんのクルマで
イーブンスロットルとトレイルブレーキングのデモラン

853-3
YRSオーバルFSWでKさん自身がイーブンスロットルを実践します

 

Kさん 機会があればまた遊びに来て下さい。



第843回 Iさんの場合

843-1
YRSオーバルスクールFSWにIさんが遠路はるばる参加してくれた
 
 
 
 
 
例によって感想文をお願いした

 

今回のオーバルスクールに参加するまでの経緯:
・鈴鹿サーキットレーシングコースを走りたいと思い、中古のルノー ルーテシアRSを購入
・ネットでYRSのブログを見つけ、2022年10月のYRSツーデースクールに参加
・スクールで習ったことを思い出しながら、鈴鹿サーキットで練習
・車には手を加えずに、プロの人がルーテシアRSトロフィーで出した2分38秒(https://www.youtube.com/watch?v=oTd_SZlzKxg)に近づくのが目標。車の性能差(エンジン出力、足回り)があるので、42秒台ぐらいが目処か
・サーキット走行後は、ドラレコのGPSデータ・映像をスマホアプリ(RaceChrono)に取り込んで自分の走りを振り返り
・2分44秒台で走れるようになったが、ここから2秒短縮するには各コーナーでコンマ何秒かずつ縮める必要がある
・トレイルブレーキング、イーブンスロットルは意識してやっているつもりだが、ちゃんとできているか確認・復習のために今回のオーバルスクールに参加

今回参加して:
・同乗走行の時に、リアがロールするのを待ってから、イーブンスロットルを入れていくと教わりました。
・いざ一人で走り始めると、速く走ろうとアクセルを踏み始めるのが早すぎ、アンダーが出てコースアウトしてしまいました。
・「ブレーキを引きずるのを止めるのが早すぎる」とアドバイスをもらい、クリップ付近まで引きずるよう意識すると安定して走れるようになりました。
・今回は参加台数も少なく、たくさん回数をこなせたので、トレイルブレーキングからイーブンスロットルへ繋げていく流れをつかめたように思います。
・ただ、後日スタッフYさんの同乗走行の映像を見ると、改めて上手だなと思いました。私の走りと比べると、最初のブレーキングが弱く、進入速度が高く、旋回Gも高い。

843-4
同乗走行時の最速ラップと、私の同程度のタイムのラップとの比較
加減速G:明るい色の線が私。最初のブレーキングが強すぎる

843-5
上と同じ部分の速度の比較
後半(山側)の速度の落ち込みが大きい

 

・次の点を意識しながら、今後練習したいと思います。最初のブレーキングはやや弱めにして、極薄いブレーキを引きずりながら、リアのロールを意識して、イーブンスロットルを入れていく
・ある程度できるようになったと思ったら、あるいは煮詰まってしまったら、ちゃんとできているか確認のため、またスクールに参加したいと思います。が、やっぱりFSWはちょっと遠いです…

843-6
前回のツーデースクールの時は曇っていて、富士山の姿が全く見えませんでしたが、今回は綺麗な富士山を見ることができて良かったです。

 

※ Iさん、遠いですけどまた走りに来て下さい。4月には鈴鹿もあります。

843-2
Iさんの走りを観察

843-3
アドバイスをすぐに実行してくれていた



第726回 ルノー仲間再来

726-1
5月のルノー仲間は左から
スタッフのY
Hさん
ワタクシ
Gさん
Sさん
この日は朝から濃霧

726-2
ユイレーシングスクールでは走り方を理論的に説明します
前輪操舵車はなぜ初期アンダーが出るのか
4輪それぞれの軌跡がもたらす影響は
クルマの公転と自転の間に何が起きている
前後輪のスリップアングルを均等にし続けるためには
どうするとクルマが思い通りに動いてくれるか
ホワイトボードに図を描いて説明します

726-3
けっこうな雨量の中
最近はリアタイヤが発熱するようになったSさんが床まで踏みこみます

726-4
ユイレーシングスクールのルーテシア3RSブームに影響されて
購入したGさん
向こうに見える仲間のHさんのほうが早かったかな

726-5
フラッと顔を出したHさん
山中湖に用事があったのか
ちょっと走ってみればと

726-6
かってやっていたトライオーバルはガードレールとの距離がなく
左回りしかできなかった
でも3速全開踏みっぱのコーナリングを体験してほしいから
YRSオーバルFSWロンガーにコーナーをひとつ足してトライオーバルに
4月最後の日曜日に有志に集まってもらい試走会
雨と霧でスロットルを戻す人が多かったけど
次はドライで大きな横Gを感じてもらおう

726-7
試走会に来てくれたKさん

726-8
同じくOさん

 

ユイレーシングスクールが主宰するYRSオーバルスクールFSWはクルマの加速、減速、旋回の3大機能を高い次元でまとめ上げる練習をします。サーキットを走る人も走らない人も1度体験すればクルマとの会話が進みます。次回は6月10日(土)開催。ルノー乗りの方はぜひ参加してみて下さい。

・6月10日(土) YRSオーバルスクールFSW開催案内へのリンク

6月11日(日)にはYRSオーバルスクールを体験された方を対象にYRSオーバルレースFSWを開始します。単独で走って絶対的な速さを追い求めるのも楽しいですが、理論的にクルマを動かそうとする仲間と相対的な速度を追求するのは運転に幅を持たせてくれます。ルノー乗りでYRSオーバルスクールを経験された方は1度ヨーイドンを安全な環境で味わってみて下さい。自分の運転を客観視できるようになりますます運転が楽しくなります。

・6月11日(日) YRSオーバルレースFSW開催案内へのリンク