2018年最後のYRSオーバルスクール
参加者全員で記念撮影
ユイレーシングスクール一押しのカリキュラムがYRSオーバルスクール。
「楕円形のコースをグルグル回るだけで面白いの?」という声があるのは知っているけど、それはオーバルコースを走ったことのない人が言う言葉。オーバルコースを走るのは間違いなく面白いし楽しいし、ためにもなる。
なぜか。一方向にしか走らないオーバルコースでは、速く走ろうとすると全周にわたってタイヤの限界を余すところなく使い続けなければならない。左右のコーナーがあるロードコースではどこかで妥協しながら平均速度を上げていくという作業が必要だけど、オーバルコースでは限界の線上でクルマを操り続ける必要がある。
クルマが加速、減速、旋回を繰り返す時、タイヤは駆動力、制動力、コーナリングフォースを発生する。クルマを限界で走らせるには、例えば10のグリップがあるタイヤを履いていた場合、タテとヨコに使うグリップの和が常に10になっていなければならない。摩擦円の理論だ。タイヤに余力が残る9.5でもだめだし、限界を越えてしまう10.3でもだめだ。その上、走行中のタイヤのグリップはタイヤにかかる荷重とタイヤの滑る量で変化する。設計上はグリップ10のタイヤでも、走行中は8になったり13になったりする。すると今度は増えたり減ったりするグリップに応じてタテとヨコの和が常に100%になるように操作する必要がある。しかも、クルマにはそんなあやふやなタイヤが4本もついているのだ。
YRSオーバルスクールは常連の参加が多いけど、彼ら彼女らはまずアンダーステアを出さない。速く走っているのにアンダーステアとは無縁だ。それは駆動方式に関係なく後輪を使ったコーナリングができるからだ。つまりターンイン後に、後輪にもスリップアングルがつくような操作をしているから、ちょうど4コントロールの逆位相が機能した時のようにホイールベースの中心あたりに自転軸をおいたようなコーナリングができる。
クルマは自転しながらコーナリング(公転)をする
(写真はカタログから拝借)
4コントロールが装備されていないクルマの場合、操舵装置のついていない後輪にスリップアングルがつけるのには遠心力に頼るしかない。速度が上がれば遠心力も増すから、フロントが逃げない範囲でより高い速度からターンインすれば後輪にも十分なスリップアングルをつけることができる。この時、舵角を必要以上に増やさないのがコツだ。前輪のスリップアングルがアンダーステア方向に大きくなっていくと後輪のそれはそれ以上大きくならないからだ。
4コントロールがついていれば、コーナリング中にステアリングを切り足せば旋回半径を小さくできるから、真っ直ぐ進入して真っ直ぐに出て行くような走り方も可能なはずだ。いずれにしろ、クルマは後輪を使って曲げなければならないのは同じだ。
ある程度クルマを速く走らせないと『 どうするとどうなる 』といった人間の操作とクルマの挙動の因果関係を理解しにくい。だから、慣れれば100キロ超からターンインできて、10秒に1回同じコーナーが現れるオーバルコースでの反復練習がうってつけなのだ。
もちろん、常連組も最初から速かったわけではないし、失敗なしで走っているわけではない。失敗はするけど大きな失敗はしないし、失敗してもごまかす方法を知っているからクルマを前へ前へと進めることができる。そのうちにとんでもなくうまくいく時がある。そのうちにタイヤの限界を越すすれすれの状況を維持できるようになる。そんな、自分とのやりとりを延々と続けられるのだからオーバルコースが面白くないわけがない。
◎ YRSオーバルスクール動画
IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい。
↑ ブレーキングで前に荷重がかかりすぎている場合はターンインして下り始めると右前輪が悲鳴を上げる。前過重を抜かないようにフロントを拾う。
↑ 下のコーナーのアプローチは斜滑降のようなもの。外に逃げようとするクルマの向きを変えるのは永遠の課題。
↑ 下りかけるとフロントがストンと落ちる。その直後、前過重になり軌跡が変わる。
クルマが旋回運動を始めると弾性体であるタイヤは遠心力を受けてよじれる。よじれるとタイヤの接地面ではズレが生じる。ズレが生じることでタイヤはグリップを発生するのだけれど、その結果タイヤが回転しながら進む方向は、実はタイヤが向いている方向と一致せずにその外側に軌跡を描くことになる。この差をスリップアングルと言う。クルマの操縦性を語る時に非常に重要な要素だ。
スクールでこんな話をする。
片側2車線で右折車線のある交差点。右折車線から対面交通の隙間をぬってUターンしようとしたクルマ。しかし1回で回りきれずに停止。切り替えしてUターンしたものの運転というものがわかっていないことを露呈してしまった、という話。
なぜ1回でUターンすることができなかったのか。その原因を考える。
対向車が来る前にUターンしてしまおうと思ったご仁はステアリングを切りながら加速した。過重は後方に移動し前輪の荷重が減少。車輪にかかる荷重こそグリップの源だというのにそれが抜けたのだから、前輪のグリップが減った状態でステアリングを回したことになる。グリップが減少しているのだからいくら大きな舵角を与えたとしても、フロントが逃げクルマの向きは変わらない。
こんなことが実は起きていた。その時、4本のタイヤの接地面を見ることができれば、前輪のスリップアングルがとてつもなく大きく、後輪のそれは無に等しかったはずだ。それではクルマが向きを変えるわけがない。アンダーステアとも言う。そんな状況をこのご仁は知る由もない。
スクールではどうすればUターンが成功したかを説明する。1発でUターンを成し遂げるためには、右折車線で直線的に加速しスロットルを閉じるか、あるいは軽くブレーキングをしながらステアリングを切り始めなければならない。要するに回頭性がよくなければUターンはかなわないのだから、理論的には前輪よりも後輪のスリップアングルが大きければ回頭性がよくなるのだから、必然的に前輪のグリップを高め後輪のグリップを弱めるために前過重でステアリングを切らなければならない。結果としてフロントが逃げないから前輪ののスリップアングル < 後輪のスリップアングルの状態を維持できる。だから回頭性が高まり小回りできることになる。
深夜の交差点でちょっとオーバースピードで飛び込んだ時。アウト側前輪に荷重が集中する前にクルマが旋回運動を開始した。
湖西道路から自宅へ続く道にある左の鋭角コーナーで、いつものように左手で迎えにいってステアリングを切る。「あれぇ、変だな。切っている途中で戻し始めないとならないね。ルーテシアRSだと切った後にホールドしている時間があったのにねぇ」。
もっといろいろな場面で確かめないたい気が湧いてきたところで。理論的には、前輪にしか操舵装置のついていないクルマはの旋回中心は、後車軸の延長線と舵角のついた前輪に対する垂直線の交点だからあくまでも後ろより。常にホイールベースの長さ分だけ後輪が前輪を追いかける図式になる。だからアンダーステアから逃れることができないし内輪差も生じる。人間がなんとかしないと前輪のスリップアングル > 後輪のスリップアングルという呪縛がつきまとう。
前輪にある条件で舵角が与えられた場合、間髪を入れずに後輪にも舵角がつく4コントロールでは、クルマの旋回中心が前後タイヤに対する垂直線の交点になるから、言ってみればホイールベースの中心付近のどこかを軸にクルマが円運動をすることになる。だから前輪だけ操舵のクルマに比べて少ない舵角でコーナリングができるし、アンダーステアが出やすい状況でもそれを抑制することが可能になる。これが逆位相の効果のひとつだ。
対向車の直前でUターンをするなど品のないことをしてはいけないけど、例のご仁も新型メガーヌRSに乗っていたら1発でUターンが成功したかも知れない。
【追記】 個人的な話ですが、4コントロールの効用が少しずつわかってきました。しかしながら4コントロールに頼り積極的に利用して走ろうとはしないほうがいいと思います。ユイレーシングスクールは4コントロールの恩恵にあずかれるのは、クルマをきちんと動かせる技術があってのことだと思っています。新型メガーヌRSのオーナーの方はクルマとの対話を進めるためにぜひユイレーシングスクールに遊びにきて下さい。
ユイレーシングスクールのカリキュラムのひとつ、YRSオーバルスクールを舞台にルノー・ジャポンが新型メガーヌRSドライビングアカデミーを開催した。
座学ではいつものビークルダイナミックスをひと通り解説した後、新型メガーヌRSに搭載された4コントロールやハイドロリック・コンプレッション・コントロールがなぜ有効なのかを操り手の視点から説明した。
実技ではいつもの小さいオーバルでのイーブンスロットルとトレイルブレーキングの練習をした後、大きいオーバルの直線部分に20m間隔で立てたパイロンでスラロームを体験。次いで100km超からのターンインができる大きなオーバルをインベタとアウトインアウトで走る練習。参加した新型メガーヌRSのオーナーとメディアのみなさんは、これでもかっていうぐらい元気に走り回っていました。
新型メガーヌRSを購入された方は、4コントロールと4HCCとダブルアクシスストラットと40Kgmのトルクで押し出される強烈な加速を味わいに、ぜひYRSオーバルスクールにおいで下さい。座学ではその効果の理由を理論的に説明します。実技ではその効果を実際に体験してもらうことができます。
新型メガーヌRSドライビングアカデミーの模様は近日中にウェブメディアでご覧になれると思います。
2010年からユイレーシングスクールの活動を応援してくれているルノー・ジャポンが
新しい相棒を送ってくれた
今までに
トゥィンゴGT
トゥィンゴRS
ルーテシアRSシャシースポール
ルーテシアRSシャシーカップ
楽しいクルマばかりだった
今回は、 メガーヌⅣRS 。嬉しい限り。感謝、感謝です。
速さの異なる3種のホットハッチが巣くう
今週末はこのクルマで新型メガーヌユーザーを対象としたドライビングアカデミーを開催します。
来年1月19日(土)の2019年第1回YRSオーバルスクールではこのクルマに試乗する機会を作ろうと画策中です。
まだスロットルを全開にしたことはないから、どんな走りをするか今週末が大いに楽しみ。
自宅のあるファンテンバレー市からクルマで20分ぐらいのサンタアナにAARがあった。All American Racers。日本ではあまり知られていないが、1966年から1969年までイーグルの名前でF1GPに参戦していた。当時のドライバーがダン・ガーニー。AARの総帥。
その後インディ500で2度優勝。インディカーシリーズ用のマシンを購入したカスタマーチームの優勝も数知れず。トヨタワークスチームとして参加していたIMSAスポーツカーレースでは1987年にせりカでGTOクラスのシリーズチャンピオンを獲得。1989年にはスポーツプロトタイプGTPクラスに参戦。デイトナ24時間レース、セブリング12時間といったヒストリック耐久レースを制しながら1992、1993年のGTPシリーズチャンピオンに輝いている。
しかしながら、トヨタ以外のチームがGTPクラスからの撤退を始めたことで統括団体のIMSAはGTPクラスを1993年をもって廃止することを決定。GTPチャンピオンマシンのイーグルMkⅢは走る場所を失おうとしていた。
1982年に米国トヨタワークスチームの設立に携わった者として、F1ほど日本での露出が多くなかったIMSAスポーツカーレースだからこそ、どうしても記事にして残したいとダンに頼み込み、アリゾナ州のフェニックスインターナショナルスピードウエイでチャンピオンマシン、イーグルMkⅢの試乗が実現した。
カーグラフィック1993年12月号
IMSA(InternationalMotorSportAssociation)はアメリカのレース統括団体の一つ
デイトナ24時間レースやセブリング12時間レースが有名
デイトナや試乗したフェニックスはもともとオーバルコースだけれど
インフィールドの部分を合わせて使う
とにかく爆発的な加速に思わず歓声を上げたことを覚えている
それと3速に入るころ身体全体が下に押し付けられるようだったのを覚えている
ダウンフォースがそれだけ強烈なのだ
あれは得がたい体験だった
それとロックツーロックが2回転もないステアリングには驚いた
その上パワーステアリングなのに重かった
イーグルMkⅢの心臓部は排気量2140cc直4ターボエンジン
730psを7500回転で絞り出し
5200回転で97.2kgmのとてつもないトルクを発生した
イーグルMkⅢの車重は912Kg
200Km/h時に1680Kgものダウンフォーズで押さえつけられるから
天井を裏返しになって走れることになる
インタビューの中でGTPが終焉を迎え安価なWSCクラスに移行することを聞いた
F1,インディカー、GTO、GTPといった技術の粋を尽くしたマシンを作ってきたダンは
コスト低減のために始まる参加者主導型のツーシーターのWSCには
AARとして興味がないと明言した
根っからのレース屋
残念ながらダン・ガーニー氏は今年1月14日に亡くなりました
いろいろと無理を聞いてくれたダンに感謝しました
この時の体験はその後の
クルマの動きの理解と
情報収集 → 解析 → 行動(操作)の習熟
に大いに役立っている
※ 誌面の写真は幸田サーキットドライビングスクールに参加してくれたFさんの蔵書を撮らせていただいた。
10月のYRSツーデースクールから3週末連続、6日5回のスクール開催。ちょっと欲張りすぎの感もあるけれど。それも今週末のFSWショートコースを使ったYRSドライビングスクールFSWと駐車場を使ったYRSオーバルスクールロンガーでひと区切り。
10月最後の週末御殿場について給油しようとして驚いた
ガソリンが高くハイオクだからなおさら
そのことをフェイスブックに書いたら沼津に住むスタッフが
「先週はもう5円高かった」
いつも立ち寄るガソリンスタンド
これだけ高いとクルマを動かすのを躊躇する人もいるだろうね
閑話休題
前日からの雨は上がったものの路面は完全にウエットのYRSトライオーバルスクールが始まって、これ幸いと、前輪を押しつぶすように踏力がかけられるようなブレーキングの練習をして、リードフォローでトライオーバルのレイアウトに慣れてもらい、路面はまだ濡れているものの参加者が単独走行を始める頃、実に幻想的な光景が広がった。曇ってはいるものの気温が上がりだしたのだろう、霧が路面にただよい走るクルマにまといつく。
次は深まるルノー色(るのーいろ)の話。
2003年に参加してくれた後スタッフとしてYRSを支えてくれているKさん
Yさんの後を追うように長年乗りなれたロードスターをルーテシアⅢRSに乗り換えた
ロードバイクが趣味のKさん
ロードバイクを積むキャリアがきれいに収まっていた
もうかれこれ17年もユイレーシングスクールに通ってくれているWさん
ポルシェ911でYRSオーバルレースに参加してくれているけど
もう一台のポルシェをルーテシアRS18に乗り換えた
バラセませんがお歳を聞いたらみなさん驚かれますよ
最後は
10月28日。朝5時56分の富士山
冠雪が朝日に染まる