トム ヨシダブログ


第175回 サーキットを走りませんか?

サーキットには速度制限がありませんし、ツートーンカラーのクルマもいません。対向車も来ませんし、人もあるいていません。スピードを出して走ろうと思えば、いくらでも速く走ることが可能です。愛車の性能をとことん味わうこともできます。

ところがいざ速く走ろうとすると、クルマの都合を考えて操作をしなければならない、という現実に直面します。この状況は高速道路でいかに速度違反をしたとしても、ワインディングロードをかっ飛んでみても体験できません。常にクルマの限界を探りながら操作を続けなければならない、という日常ではありえない領域の話だからです。

我々はふだんクルマに守られて運転しています。クルマの運動力学に反する操作をしても、たいがいの場合は良くできた機械であるクルマがそれと気づかせることなく補正してくれます。極端な言い方をすれば、間違った運転をしてもそこそこは走れる、ということです。

しかし、瞬間的かも知れませんし、ひょとすると気がつかないうちに収束しているかも知れませんが、サーキット以外でもクルマが限界に達することはあります。ブレーキが間に合わないとか、道路からはみだしそうになるとか。
そうならないにこしたことはありませんが、多くの人に混じってクルマを運転する人であれば、クルマが限界に近づく時にどんなことが起きるのか、どう対処すればいいのかを知っておいたほうがいい、というのが持論です。

クルマは自動車メーカーの技術によってより安全な乗り物になりつつあります。しかし、だからと言って誰もが安全を享受できるというわけではありません。クルマの安全性というものは、あくまでもパッシブセーフティです。個人個人の運転技術の足りなさを補填してくれるものではありません。間違った操作をすれば、安全なクルマでも安全ではなくなります。運転する側にアクティブセーフティの意識があってこそ生きてくる技術なのです。

そのアクティブセーフティへの第一歩は、ご自身の運転の見直しから始まります。

ユイレーシングスクールがドライビングスクールやサーキット走行を勧める理由はそこにあります。ふだんは体験できない環境で、クルマを動かすためにやってはいけないことと、やらなければならないことの仕分けを経験するために、です。ユイレーシングスクールではそれに加えて、やったほうがいいこともお教えします。

そこでお誘いです。3月26、27日(土日)に富士スピードウエイでYRSツーディスクールを開催します。1日目に広い駐車場で基本的な操作を練習して、2日目にショートコースを走ります。2日間クルマの運転にドップリと浸かる贅沢なプログラムです。

・FSWショートコースはこんなところ

1日目のカリキュラム(リンクは新らしいウィンドウに展開します)は、
・ブレーキング
・スラローム
・フィギュア8
・オーバル走行

クルマを動かす手順が確認できたところで2日目にサーキットを走りますから、過去の例をみてもほぼ全員が安全に限界域を体験できました。もちろん、サーキットだからと言って実力以上に速く走る必要はありません。できる範囲で速く走ろうと意識するだけで十分です。

YRSツーディスクールの案内頁に申し込みフォームへのリンクがあります。言い方が適切でないことを承知の上ですが、「上司にゴマすり、同僚を欺き、部下を脅かし、今まで以上の家庭サービスに努め、借金してでも受講する価値のあるスクール」です。

あなたもサーキットを走ってみませんか?


第174回 YRSライディングスクール

ユイレーシングスクールは様々なカリキュラムを通じてクルマを意のままに操るコツを学んでもらっているが、今年から2輪のライディングスクールも開催することにした。

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理由は、意外とバイクの乗り方がわかっていないバイク乗りが多いことを知ったからだ。
交通事故統計を集計した時にもバイクの乗り方を教える必要性を感じていたのだが、バイクも持っているYRS卒業生と話していると理にかなった操作方法を教えてくれるところが少ないらしい。

理にかなった操作を教えるには、クルマという機械が動く原理を説明して、クルマがその機能を発揮するために必要な操作と、クルマの性能をスポイルするやってはいけない操作を理論的に説明する必要がある。練習も合理的な方法で行なわないと整合性に欠ける。

クルマがちゃんと機能するように動かすことができれば、それは安全につながるしサーキットでは速さにもつながる。
そんなユイレーシングスクール流の道具の使い方を2輪を対象に公開してみようと思う。

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開催は暖かくなってからになるけれど、既にYRSスタッフとYRS卒業生に協力してもらって基本的なカリキュラムの構成は終わった。
バイクを最短距離で止める方法はもちろん、不安定な乗り物であるバイクだからこそ、両手をハンドルから離して行なうスラロームや、当然のことだけどライディングフォームの確認も行なう。2輪メーカーがやっているライディングスクールとはかなり趣きが異なるスクールになるはずだ。

高校の時にオリンパスという500ccの単コロを転がしていた以外はバイクから遠ざかっていたから、YRSライディングスクールでの仕事は用務員。座学をやってデモランを見せるのは、バイク用のタイヤの開発をしたりレースに参加したこともある、ユイレーシングスクールの思想に賛同してくれたインストラクターが担当する。

詳細は決まり次第お知らせします。


第173回 ルーテシアⅢRS

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オイルとクーラントとブレーキフルードの交換に行ったルノー栗東でもらったカード立て

2010年のエンジンドライビングレッスンに参加したルーテシアⅢRSに一目惚れ。仕様を聞いただけで試乗もしないで注文した。

16歳で軽免許を取ってから50年。取材を含めるととんでもない数のクルマに乗った。
30年近くのアメリカ生活ではアメリカでしか乗ることのできない何台かのOHV-V8パワーのクルマや15mのトレーラーや13.5mのモーターホームも所有してこれでもかって堪能した。レースにも参加した。
そんなこんなで、日本に戻った頃は触手が動くクルマはなかった。

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スクールを10年続け、そろそろ歳だからくたばるまで付き合えるクルマがあってもいいな、と漠然と思っていた時に現れたのがルーテシアⅢRS。不明にもその存在を知らなかったのだが、決定的に欲しいクルマが見当たらなかった当時、本当に久しぶりに、たぶん人生3回目ぐらいに「このクルマ欲しい」と思った。

目に狂いはなく、中立付近からのステアリングの素直さ。日本の道を走るには十分な、スロットルではなく気分に呼応するように高まる加速度。妙な荷重移動を起こしにくいトレッド/ホイールベース比。そしてリアサスペンションの粘り。その全てを完璧に理解するには、残りの人生で足りるかどうか。それが楽しみと言えば楽しみなのだが。

ルノー・ジャポンからお借りしているルーテシアⅣRSもいいクルマだ。現代にあって、ルノー・スポールはクルマ作りにまじめに取り組んでいる。2台をいつも乗り比べることができるのは望外の幸せで、両方に乗ることができるからこそ、時代が求めているものが変化しているのがよくわかる。

しかし古い人間の部類に入るからかも知れないが、個人的には自分の能力が寸分の違いなく評価できる素のクルマに近いルーテシアⅢRSを終の相棒に選んだことは正解だった。変わらぬ尺度として、この先の指針になってくれるはずだ。


そんな相棒との生活も5年が経ち、ルーテシアⅢRSは2回目の車検を迎えた。
今まで通りディーラーで必要なところだけ手を入れてもらい、琵琶湖の東岸にある車検場に連れて行った。

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できることは自分でやってあげたい
※ブラックボックス化されたエンジンや地面が見えないエンジンベイでは昔のように面倒を見ることが難しいけど

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もらったシールを自分で貼ると次の2年へ気持ちが新たになる

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相棒の調子が上がるのはこれからだのオドメーター

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先輩と後輩

さ、2016年も運転を楽しむぞ。
みなさん今年もよろしくお願いします。