今回は長文です。
折に触れ、ドライビングスクールに参加した人に言っている。「機会があったらいろいろなクルマにのったほうがいい。タイヤが4本ついている限りFRだろうがFFだろうがMRだろうが基本的な操作は同じ。ただクルマによって求めるものが異なるから、その違いを見つけようとすることが上達につながるから」と。
今回は速く走るために作られたフォーミュラカーに乗る機会を用意した。速く走るためのメカニズムは速く走ろうとする時に求められる操作を機械的に具現化したものだ。なぜそうするかを想像するだけでドライビングポテンシャルは向上するはずだ。FJ1600については第477回を参照して下さい。
以下はYRS FJ1600ライドに参加した方から寄せられた感想文です。
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Mさん
今回は素晴らしい機会をつくっていただき、本当にありがとうございました。参加できて、乗れて、本当によかったです。
年末のアルピーヌもでしたが、「違うクルマに乗る」は本当に勉強になりますね。フォーミュラカーに乗ってみた後で、911と自分の関係も、良い方向に変わったように思います。あの後雨だったのですが、911が訴えてくるものをより注意深く聴き、いっそう理にかなったドライビングが出来たように思います。以下、感想文です。
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ここ数年、お正月に「今年は本格的なレーシングカーを一度は体験する」という目標を立ててきました。以前YRSでVITAの試乗がありましたが、仕事の都合がつかず泣く泣く見送りました。以来「今年こそは、どこかで、なんとか」と思い続けて数年、今回、ついに叶えることが出来ました。すばらしい機会を作っていただき、本当にありがとうございました。
当日朝、シート合わせで対面したWEST04Jは、ものすごく小さく見えました。ドライバーがかろうじて入るスチールのハコに4輪とエンジンをつけた、みたいな乗り物。スタッフの近藤さんからは「入りますかねぇ、あ、頭が無理かも」と散々な言われようです。でも、この小ささなら、それもあながち、と不安が募ります。
午前中のプログラムが進み、いよいよ自分が乗る順番に。両足を何とか収め、両肩まで収めると、四方八方から手が伸びてきて4点式のシートベルトで締め上げられます。ハコ車では下ろさなかったヘルメットのシールドも下ろすように言われました。すべてが初めての体験。フォーミュラカーってやっぱりすごいんだな…
キルスイッチON、スターターを回すと、ほぼ一発でエンジンに火が入ります。ちょっとアクセルを開きながらクラッチをつなぐと、想像していたよりもずっとスムーズに動き出しました。エンストせずに走り出せてよかった…
コースイン、1コーナー手前でブレーキを踏んでみると、鉄板みたいなブレーキだけど、ちゃんと効いてくれます。何とかなるかな?それにしても、お尻の両サイドが、ものすごく痛い。お尻の肉が、じゃなくて、骨盤の幅がシャシフレームよりも少し広いようで、それを無理して収めてシートベルトで縛り付けられて走っています。ヘッドレストも前すぎるようで首が上がりません。上目遣いで1コーナの出口を捉えます。シフトは右足と干渉して、3速4速、手を前後させるのも一苦労です。苦しくて気が遠くなりそう。これで与えられた10分、本当に走り切れるんだろうか?これほど酷い、拷問のような身体状態で、こんなスピードでぶっ飛んでいるなんて、これは現実なんだろうか?
それでも、コースを一周する頃には、恐ろしくクイックな運転感覚に夢中になっていました。手首を5ミリか1センチか動かすだけでノーズは瞬時に向きを変えます。乗用車ならリアが動き出すまで一瞬の「タメ」を待つ必要があるけれど、フォーミュラカーはフロントが動き始めると瞬時にリアタイヤにもスリップアングルが発生する感じ。最終コーナーを注意深く立ち上がり、横方向の動きが消えたのを確認してフルスロットに。30年以上前のスバル製のエンジンは軽い車体を気持ちよく加速させてゆきます。指定された5500回転を前に、5300回転で4速にシフトアップ。身体に風が当たるのが気持ちいい。ブレーキング。アシストがなくてブレーキは重いけど、分かりやすく調整しやすい。ブレーキを抜きながら、操作を重ねる量に気を付けながら、少しずつステアリングを動かし始めると素直に向きを変えてくれます。ものすごく運転しやすい…と思い始めました。
チェッカーが振られるまでの時間、コース1000の各コーナーで、フロントとリアに同時にスリップアングルが発生するコーナリングを楽しみました。もう少しドライビングポジションがマトモなら、この常時ケツ責めの痛みさえ無くなれば、1コーナーで、前輪後輪を同じ量だけ滑らせるコーナリングに持ち込みたかった。そんなドライビングに手が届きそうなほどに多くの情報を与えてくれましたが、同時に、理にかなわないドライビングに対する許容度もゼロと感じました。タイヤの摩擦円の外側は深い崖、という感じ。滑らせるドライビングは、ドラポジを合わせることが出来た時の楽しみにとっておくことにします。
サスペンションとシャシーをつなぐ部分のゴムブッシュはクルマの快適性には不可欠、でも、ゴムは弾性があるので、複数のゴムブッシュが作り出す動きの遅れや振動は大変に複雑であり、タイヤの荷重を変化させて不安定さを発生させる、と理解しています。途中にブッシュが介在しないクルマの運転感覚はこれほどにビビットなのか、と強く印象に残りました。
この体験を、普段のブッシュ満載のクルマでのドライビングにどのように還元してゆくのかは難しい課題ですが、考え、トライを続けたいと思います。トムさんが常々指摘されている「一旦イーブンを経て次にトランジションする」ことの必要性を、違う角度から見せてもらったように感じました。
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Kさん
先日ありがとうございました。また、FJ1600の貴重な体験走行の機会を頂き感謝申し上げます。
さて、FJ1600の体験走行の感想ですが、MTシフトと3ペダルの操作にてこずり、あっという間に時間が来てしまってレーシングカーを走らせた感はありませんでした。またこのような企画がありましたら、是非もう一度チャレンジしてみたいと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。
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Wさん
前日はご指導どうもありがとうございました。FJ1600とても楽しくてハマっちゃいそうです!笑 こんな素晴らしい世界があるんだなと感動しました。また機会がありましたら参加させていただきます。
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Tさん
感想です。これまでいろいろな車を所有したり試乗したりしましたが、先日のFJ1600試乗はとりわけ鮮烈な体験で有り、人生経験でした。
体のすぐ後ろにあるむき出しのエンジン。低い位置の乗車ポジション。路面情報のダイレクトさ。等など、市販スポーツカーに対しては自分の言語力では筆舌に尽くしがたい違いがあります。
事前のレクチャーの甲斐も有り、どうにかスピンはしないで完走しました。ステアとブレーキが重なってはいけないというのは車から濃厚に伝わってきました。トムさんの言ったとおり、普段の運転の仕方が変わるなと思っております。わずか10分の試乗ですが慣れるにつれて強いブレーキングや高速でのコーナーリングになり、フォーミュラカーの性能のほんの一部ですが感じられたかと。
これは機会があればまた乗りたいなと真剣に思います。どうもありがとうございました。
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Tさん
FJ1600はハマりそうです。シフトミスのリベンジをしたいと思っています。一方、自分は昨年後半カートの練習をしていたので、カートの経験があったのでFJのダイレクトさを更に深く実感できたと思います。同様の企画があれば、絶対に参加したいです。今後ともよろしくお願いします。
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Oさん
先日はありがとうございました。FJ1600ライドは本当に楽しかったです。クルマの姿勢がフラットなら幾らでもハンドルを切った分曲がってくれそうな感触。一方前荷重気味だと簡単に回りそう、後ろ荷重だと曲がらない。姿勢変化が小さい分その見極めが難しいが慣れてくると、より慎重なブレーキ・アクセルワークによって思いのままに操れそうでした。
1本だとまだまだ走り足りない感じでした。機会があればまた乗りたいです。その後自分のクルマに乗り換えると、よりクルマの姿勢変化を敏感に感じ取れるようになったと思います。大変有意義な体験でした。ありがとうございました。
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Yさん
11日は大変お世話になりました。コロナ騒ぎで、結構長いブランクがあった後でのスポーツ走行でしたが、一日楽しんでリハビリ?することができました。
FJ1600体験は、、素晴らしい!! の一言です。是非また開催して頂きたいです。そして、自分自身でも他の体験走行があれば申し込んでみたいとも強く思いました。それほどに、楽しく、また勉強になる、、ということがハッキリ判りました。これまで箱車以外では、レーシングカートに何度か乗ったことがある程度でした。今回のFJ体験、ぶっつけ本番のコースインで、最初ちょっとあたふたしましたが、最後には物足りなさ一杯で車を降りました。順を追って感想を書いてみたいと思います。
・シート合わせ0スタート
乗り込んで驚いたのが、足元のスペース。確かに、普通のスニーカーではアクセル・ブレーキ両方踏んでしまいそうな間隔です。
床から直立したオルガン式のペダル。踵を軸につま先側できっちりとペダルを踏むために、ポジション合わせが非常に重要という事を感じました。
ペダルへの踏力を確実に伝えるために、パッドを入れていただきました。
そして、車と身体を一体化させるほどのシートベルトの締め付け。キツイ!と思いましたが、コースインしてこれが非常に重要なことを改めて感じました。
エンジンを始動し、アクセルレスポンスの鋭さに感動し、そして発進時の繊細なクラッチ操作に驚き、、全てが新鮮でした。
・コースイン0周回
コースインして最初の数周、車の動きを感じ取ろうと、恐る恐るアクセルを入れ、ブレーキを踏み、、してみます。
当初、大丈夫かな、、と思ってた、右手シフトのMTも、意外と違和感無く操作してる自分に気付きます。
エンジンのレスポンスと、車重の軽さからか、車の動きが全身に伝わって来ます。
アシスト無しのブレーキはしっかり踏力を伝えないと、減速Gが立ち上がってきませんし、ラフに踏み込むと、リアの動きが心もとなくなるのを感じます。
ここで、ギチギチに締め上げたシートベルトの効果で、車の動きを腰で、背中でしっかり感じ取ることが出来ていることに気づきました。
段々速度を上げていきます。1コーナーでは、朝一のレッスンで受けた、イーブンスロットルを心がけ、時にはブレーキを長めに引きずってみたり、
短くギュッと減速してみたり、色々試してみます。そして、操作を変えると、車の動きがちゃんと違うものとして感じ取れることに、改めて感動しつつ楽しさが更に高まります。
操作に対し、車がわかりやすく動きを変えるので、自車での走行よりも、遥かに頭を使えますし、またそれが非常に楽しくもありました。
そんな事を考えながら周回しているうちに、あっという間にチェッカー。スピンは元より、危なっかしい挙動に至ることも無く、無事にチェッカーを受けられて何よりでした。
ただ、最後まで慣れなかったのは、左右の位置が判りにくいシフト。
3→4、3→2へのシフトで、本当に入れたいギアに入ったのか、毎回右手に結構神経が向きながらのシフト操作でした。まぁ、結局は「慣れ」なのでしょう。
・全体を通して
欲を言えば、自車での周回走行をしたあとに、(自車での走行時間を減らしてでも)もう一度乗ってみたかったです。(11日は雨になっちゃいましたが)
FJとメガーヌ、全く違う形の乗り物ではありますが、同じコースを走りながら、運転手に対して、それぞれが違う言葉で車の動きを語りかけてくれてる様に感じました。
それらを再度、自分の中でシンクロさせる為にも、もう一度乗り換えて走る事ができたら、更なる気付きもあったように思いました。
昨年、A110の体験に参加させていただきました。同じ箱車でありながらも全く違った動きを体験できましたが、今回のFJ体験は、更に輪をかけて多くの気付きを与えてくれる場だったように思います。
そう頻繁にできる事ではないかとも思いますが、機会があれば、またこうしたチャンスの設定を期待したいです。そして、その際は、是非とも参加させていただきます。
改めまして、11日は大変お世話になりました。非常に楽しい一日を過ごすことができました。ありがとうございました。
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Yさん
筑波の帰りは大雨でしたが、無事に帰宅してます。今回もありがとうございました。
FJ1600の感想です。
ロール感が無く、腰というか自分のみぞおちを中心に真横に遠心力(横G)を感じます。
視覚に頼りすぎないようにして、YRSの教え・理論をもとに想像力をフル回転させて各タイヤの荷重を探りますと操作、反応、操作、反応と状況は刻々と変わりますが車との対話が楽しいです。素晴らしい体験でした。
以前VITAを体験させていただいたのが役に立っているのかもしれません。その経験を踏まえて予習してきたせいか、VITAよりもFJ1600の方が乗りやすいと感じました。
改めて運転技術の向上心・探求心に刺激を大いに受けました。ありがとうございました。
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Tさん
簡単ですが、感想を。
・スマートな人しか乗れないよ!って感じで172cm/90kgの私には想像を絶するほど狭すぎるコックピット
・シート無しでF1ドライバーみたいな姿勢で乗り込んだので、走行中に何度も腹筋が釣りそうになった
・車で一番重要なパーツはシートだろ!と確信(笑)
・そんな状態での乗車でも、Vitaよりも車の状態がわかりやすく、すべての情報がダイレクトで癖がない
・エンジンは市販車とは比べ物にならないレスポンスで操作がシビア
・アクセルのわずかなオンオフでヘルメットをフレームに打ちまくるし、荷重も動きまくる
・車重が軽くて遊びをそぎ落とした車は操作を重ねるのはダメということを嫌というほど体感
一度、過剰な方向に動いたら修正できないから、徐々に積み上げていくというか切り詰めていくのが重要なこと体で覚えられる教育的な車で、無理して参加して本当によかったです。
VitaやA110で満足したいた私にさらに上のものを体験する機会を与えてくれて感謝です。あらためて、F1やIndyのドライバーがばけもの度合いがわかる体験をできました。
帰宅後、風呂に入ったらフレームに当たっていた肩にフレームの後が残っているのに驚きました(笑)
ボクが主に日本語クラスのインストラクターをしていた時期、ジムラッセルレーシングスクールでは初級クラスでもフォーミュラフォードを使っていた。大きさも動力性能もFJ1600に似ていた。と言うより、FJ1600が入門用フォーミュラとしてフォーミュラフォードをお手本に作られたというのが事実。
今回YRS FJ1600を開催するにあたり最も気がかりだったのが、雑な操作をしてスピンしたりコースアウトすることだった。実際、何台かはスピンしたけど筑波サーキットコース1000のコース幅は最低11mあるのでまずクラッシュはしない。スピンした人はスピンした理由がわかったはずだけど。と言ってもスピンしないに越したことはない。なにしろブレーキを蹴とばせばストレートを走っていてもスピンするのがフォーミュラカーだから。
でも、ある程度の速さで走って遊びのないクルマの醍醐味を味わってほしいとも思う。ホント。自分が機械を操るということはこういうことなのだ、と実感できる。スピードを上げないとレーシングカーは乗りにくくもある。けれど、時間が経つと無節操に速さを求めるのが人間の性。ユイレーシングスクールの卒業生であってもだ。悩ましい。ま、全員の走行が終わるまで胃痛に耐える覚悟ができたらまた開催することにしよう。
ジムラッセルレーシングスクールの模様は 第116回 で触れています。