トム ヨシダブログ


第192回 レースで腕を磨く

ユイレーシングスクールは卒業生を対象にレースを開催している。レースと言ってもライセンスも要らないし、ふだん乗っているクルマで参加できるし、観客もいないから、日本で一般に認識されている自動車レースとは少しばかり趣きが違うかも知れない。

しかし、『クルマを道具として用い、速さを勝敗の要因とする競技』という自動車レースの定義からすれば、れっきとしたレースだ。しかも知っている人は知っているけど、YRSスクールレースの常連はレベルが高くしぶとい。

なので、手軽に参加できる割に敷居が高いのだろうか、新規の参加者がなかなか増えない。そこで、6月と7月にレースデビューキャンペーンをやることにして、初めてYRSオーバルレースに参加する人には参加費大幅割引の特典を用意した。

で、6月のレースには4名のYRS卒業生がレースデビューを果たした。ユイレーシングスクールはレースに出ることもドライビングテクニックの向上に役立ちます、といつも言っているけれど、実際に初めてレースに参加した当人がどう思っているか、感想文を読んでもらったほうが手っ取り早い。今回は2名の方が送ってくれた。

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YRSオーバルレースはローリングスタート

・Mさん 51歳 VWポロ
今回、YRSオーバルレースを大変楽しませて頂きました。オーバルレースと言えばインディ500とかありますが、今まで全く興味なかったんですよ。それよりルマンとかニュル耐久レースの方が本物のレースと思っていました。がしかし、目から鱗でした。やはり食べず嫌いではダメですね。以下、私の感想です。
‐ まず、今回初めて参加の人達に、参加費用含めてハードルを下げて頂いたので気軽に参加できました。他の初めて参加者の方たちも同様のコメントされてました。従いまして、間口を広げるために継続されてはいかがでしょうか。
‐ いつも前後左右に車がいるため、常に360度注意を払いながらドライブをするよいレッスンになりました。
‐ 他の車がいつも近くにいるので相手との駆け引きみたいな状況が生まれて、考えてドライブする癖をつけるよいレッスンだと思いました。
‐ 相手が差し迫るとミスしがちですが、レースでもメンタルを冷静にする必要がありますね。勉強になります。
‐ サーキットの走行枠で走るのと違い、相手がいるので時にドライブのセオリーを無視した状況下に陥ることもままありましたが(コーナーで鼻先を先に入れたいがために突っ込み過ぎるとか)それも含めてレースなのかなと面白かったです。
‐ 車の性能差を気にせずレースが出来る安心感がありました。
‐ アイドルタイムが少なく多くのセットを周回出来るので、費用対効果大と感じました。(普通の走行会やレースだと20-30分2本とかで費用も高い)
‐ やはりFMラジオを通じてリアルタイムにアドバイスを頂けるのがためになります。(後でこうでしたよと言われても、もう忘れている場合がほとんど)
‐ みなさん、レースとはいえマナーが大変良いと感じました。私が参加する走行会では赤旗や、強引なせめぎあいなど気分を悪くするケースが多いのですが、それが無さそうですね。サーキットでのレースになれば変わってしまうのかもしれませんが。
‐ 都合が合えば、また参加したいと思います。
‐ オーバルのみならず、FSWのショートコースや筑波1000あたりでも開催して頂ければいつか参加したいです。


・Oさん 50歳 NDロードスター
先日のオーバルレースではお世話になりました。
1日中、自分的にはかなりの距離を走ることができ、昔に比べてクルマを制御するレベルは格段に上がったのではと認識しています。やはり、たくさん走れるのがユイレーシングスクールおよびレースの良い点かと思います。同じ動作の繰り返しで単調な部分はありますが、自身のスキルが低いこともあり、毎周違う状況が出てくるのでそれを克服し再現性を高める意識が出てくること、1周毎に失敗・トライと修正・改善を短時間のうちに繰り返しできること、クルマの限界部分の思わぬ挙動を余裕をもって対処しスキルが習得できること、がオーバルのメリットかと考えます。
一方で、こちらから取りにいかなければいけない部分かもしれませんが、自分が客観的に見てどのくらいのポジション・スキルにいるのかが可視化できればいいなとも思いました。参加しているクルマは同じ車種でも中身はそれぞれで、どのくらいが自分のベンチマーク・ターゲットなのかが容易に意識できるといいなとも感じました。
それから個人的な悩みですが、このままノーマルで走り続けるのがいいのか、少しはクルマに手を入れたほうがいのかよくわからないところです。自分の運転スキルを上げていくことが目的なので、経済的にあまり余裕が無い中、いじることより走ることにお金をかけた方がいいと思っていること、クルマをいじると自分のレベルアップなのかクルマのレベルアップなのかわからなくなること、からしばらくはノーマルのままで走っていこうと考えていますが、それでいいのかどうか正直よくわからないところです。
7月のレースもできれば参加したいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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性能差が表れにくいコースレイアウト

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動力性能が勝っていても抜けない

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自分がミスをせずに

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相手がミスをした時しか抜けない

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ノーマルの足でも

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SUVでも参加できる


7月のYRSオーバルレースもキャンペーン中です。YRSオーバルスクールを受講したことのある方はぜひ遊びに来て下さい。


第191回 なぜYRSドライビングワークショップなのか 最終回

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ユイレーシングスクールではテキスト形式のメールマガジンを発行しています。以下はその最新号の抜粋です。

『YRSドライビングワークショップでは午前中にスラローム、ブレーキング、フィギュア8の練習をみっちり行い、午後はYRSオーバルスクールのさわりの部分を体験します。午前中に練習した加速、減速、旋回に対するスロットル、ブレーキ、ステアリングの各操作を高い速度で連携させる練習です。

オーバル走行の最後のほうになると、ユイレーシングスクールに来るまでスロットルを全開にしたことがない人も、本人が納得しているかどうかは別として、十分なペースで走行します。たった一日とは言え、参加したみなさんが「失敗の数」を減らそうと努め、「うまくいったかな?の数」や「まぁまぁ成功の数」を増やすことをあきらめなかったからです。

ユイレーシングスクールを受講されたことのない方の中には、『速く走ることと運転が上手くなることと関係があるの?』と疑問に思う方がいるかも知れませんが、速く走ることのできる人は間違いなく運転がうまい人です。
速く走るということは、クルマが動く仕組みを頭で理解できていて、クルマをどう動かしたいかイメージができていて、クルマの動きを残さず身体で感じ、必要な操作を必要な時に必要な量だけ正確に行なえる、ということです。つまり速く走ること自体、ドライビングポテンシャルが高いことの証明です。

かって、YRSオリジナルビデオ用に「ドアンダーを出しているシーン」を悪い例として撮影しようとしました。しかし運転を担当したスタッフは、いつもアンダーステアに悩まされている受講生を身近に見てますから、その気分になってブレーキをドン、ステアリングをバキッとやるのですが、アンダーステアが顔を出すのはほんの一瞬。気をつけて見ていないとわからないレベルで、当然ながらアンダーステアの映像にはならずボツになりました。

つまるところ運転というものは実は考えてやるものではなく、自然に身体が動いてクルマを動かしているわけです。アンダーステアを出すということを、もはやイメージできないスタッフが無意識に修正してしまっていたのも無理からぬことなのです。その域に達することができれば、運転は間違いなく上手いと言えます。

クルマを運転するからには運転が上手いほうがいいに決まってます。そのほうが運転していて楽しいはずですし安全でもあります。楽しいと感じられれば、それだけ運転に必要な情報を取り入れることができます。『その域』に達するのは特別な人だけではありません。ステアリングを握っている人なら、誰でも『その域』に近づくことはできます。

日本ではスピードを出さないことが安全だと言われていますが、それは違います。高速道路を例に取れば、100キロしか出したことのない人が100キロで走るのは危険です。しかし150キロを体験していて、その速度でもクルマを意のままに操れる人が100キロで走るのが安全だとユイレーシングスクールは考えます。そこにクローズドコースであらゆる速度域での操作を練習できるドライビングスクールの存在意義があるのです。

何をもって運転が上手いと感じるかは人さまざまです。上手い下手よりも、「今よりクルマをもっと理解したい」と思っている方はぜひユイレーシングスクールに遊びに来て下さい。』

・YRSオーバルロンガー

クルマの動かし方に興味のある方は6月12日開催のYRSドライビングワークショップに遊びに来てみませんか。


第190回 なぜYRSドライビングワークショップなのか その3

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ユイレーシングスクールではテキスト形式のメールマガジンを発行している。以下はその最新号の抜粋です。

『YRSドライビングワークショップFSWでは午前中にスラローム、ブレーキング、フィギュア8の3つのコースを走ります。参加者を3班に分けて各コースを一定時間でローテーションするので、参加者は常に走りっぱなしです。もちろん、できるだけ反復練習の回数を増やして、「失敗の数」を減らし、「うまくいったかな?の数」や「まぁまぁ成功の数」を増やすためです。今回はフィギュア8についての話です。

二つの円の周りを八の字を描くようにできるだけ速い速度を保って回る。YRSドライビングワークショップのフィギュア8練習です。

速く走るためにはクルマが性能を発揮しやすい状態を創る必要がある。性能を発揮しやすい状況は理論的に最適な操作から生まれる。
加速をしたいのなら舵角はゼロのほうが効率がいい。定常円旋回中は加速ができないから、旋回を始める時の速度が重要になる。円と円を最短距離で結ばないとロスになる。アンダーステアではクルマが前に進まない。

つまり、半径22mの二つの真円を前にして、どう走れば理論的に最も速いかを探る過程でやるべきことが見つかり、それを実行する過程で具体的な操作ができるかできないかを検証し、なぜできないかの疑問を自問する過程で間違いなくクルマと貴方の距離が縮まる。そのために考案したカリキュラムだ。』

・YRS流フィギュア8
※少し長いですが(4分27秒)速くない走り方と速い走り方の違いを比較してみて下さい)

クルマの動かし方に興味のある方はYRSドライビングワークショップに遊びに来てみませんか。


第189回 なぜYRSドライビングワークショップなのか その2

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ユイレーシングスクールではテキスト形式のメールマガジンを発行している。以下はその最新号の抜粋です。

『YRSドライビングワークショップFSWでは午前中にスラローム、ブレーキング、フィギュア8の3つのコースを走ります。参加者を3班に分けて各コースを一定時間でローテーションするので、参加者は常に走りっぱなしです。もちろん、できるだけ反復練習の回数を増やして、「失敗の数」を減らし、「うまくいったかな?の数」や「まぁまぁ成功の数」を増やすためです。今回はブレーキングについてお話します。

ブレーキングの理想は、『そのクルマの制動性能の全てを使い、できるだけ短い距離で減速しクルマを止めること』です。それができれば公道での危険回避にも、サーキットを速く走るのにも役立ちます。

ですから、YRSドライビングワークショップのブレーキング練習は100キロぐらいまで加速して、できるだけ短い距離でクルマを止める練習をします。ところが練習を開始するとブレーキペダルを踏んでいるのに速度が落ちない例や、ABSが作動して制動距離が伸びてしまっている例がたくさん見られます。

実際の操作を見るすべがないのであくまでも想像ですが、「できるだけ短い距離」でという呪文に惑わされてスロットルペダルからブレーキペダルに一気に足を踏みかえると同時に踏み込んでしまった結果ではないかと。これでは制動距離を縮めることはできません。クルマが減速する理屈が無視されているからです。

クルマが減速するためにはタイヤのグリップが必要です。ブレーキローターとブレーキキャリパーが生む制動力よりもタイヤのグリップのほうが重要なのです。タイヤのグリップは加重が抜けていると少なくなっています。加重をかければタイヤのグリップは増しますが、急に加重をかけもそれだけ増加することありません。

理想のブレーキングは、ブレーキペダルにかける力=踏力の増加に比例して減速G=マイナスの加速度が立ち上がること、とも言えます。それを実現するためには、加重移動に敏感になり、加重の移動に合わせて踏力を連続して変化させられるようになる必要があります。

何度も何度もブレーキングの練習ができますから、いろいろ試せばいいのです。「ドカン」とブレーキペダルを蹴飛ばしたらABSが介入した。次は蹴飛ばすのをやめればいいのです。車速が思ったより落ちない。ブレーキング中に踏力を増やせば状況が変わるかも知れません。

試したことは身体が覚えてますから、どんなブレーキペダルの踏み方が《4輪が地面にはりついてクルマがめり込むような制動》をするかを探し続ければ、間違いなくクルマと貴方の距離は縮まります。』

・YRS流ブレーキング (スレッショールドブレーキング)

・YRS流ブレーキング (下手なブレーキング)

・YRS流ブレーキング Ver.2 (右足の動きがご覧になれます)

クルマの動かし方に興味のある方はYRSドライビングワークショップに遊びに来て下さい。


第188回 なぜYRSドライビングワークショップなのか その1

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ユイレーシングスクールではテキスト形式のメールマガジンを発行している。以下はその最新号の抜粋です。

『YRSドライビングワークショップFSWでは午前中にスラローム、ブレーキング、フィギュア8の3つのコースを走ります。参加者を3班に分けて各コースを一定時間でローテーションするので、参加者は常に走りっぱなしです。もちろん、できるだけ反復練習の回数を増やして、「失敗の数」を減らし、「まぁ成功の数」や「うまくいったかな?の数」を増やすためです。順を追って、なぜそのような練習をするかお話します。

まずスラロームです。20m間隔のスラロームでは連続してクルマの向きを変えなければなりません。クルマ側から見ると、一定の時間が経つとロールの方向が連続して逆になるということです。逆にロールするということは、大きなウエイトトランスファーを伴いますからクルマがバランスを崩しやすい状態にあるということです。イーブンスロットルでスラロームを行うならまだしも、少しでも速くスラロームを抜けようとしてスロットルをいじると、クルマには左右のローリングモーションに加えてピッチングモーションが加わります。クルマ側から見ると、絶えず4輪のグリップそれぞれが変化している状態です。と言うことは、そのクルマ本来のロードホールディングが期待できないということです。
そのため、速く走ろうとするとスラロームコースの先のほうで軌跡が変わりパイロンをクリアできなくなったり、それほど速度が高いわけでもないのにテールがスライドしたりするわけです。

ですが、スラロームを速く抜ける方法はあります。正確に言えば、『速度を落とさずにスラロームを抜ける』ことはできます。等間隔でパイロンが並んでいるスラロームでは加速を続けながら走り続けることは不可能ですから、まず1本目にアプローチした速度を維持することを優先します。
ブレーキは一切使いません。ギアは2速。スロットルのオンオフとステアリングだけでパイロンを縫って走ります。この時、対角線の加重移動をできるだけ少なくし、舵角を減らしてタイヤのグリップを加速に振り分けることができれば、速度を落とさずにスラロームを抜けることができます。慣れれば速度を上げながら抜けることもできます。

スラロームの練習の眼目は、「スロットルとステアリングの操作とクルマの動きを連携させること」にあります。
スロットルを開けている時間がほんの少しでも長いとステアリングをバキッと切らなくてはいけなくなります。アンダーステアを出さないためにゆっくりステアリングを切ろうとすれば、速度を落とさざるを得ません。状況は様々です。
クルマの動きを感じながら、どのくらいの瞬間、どのくらい強くスロットルを踏むか。ゆっくり切り始めてどこまでステアリングを回すか。果たして瞬間的にステアリングを戻せるまでに回しているか。

うまくいかなくてもいいんです。クルマが性能を発揮しやすい操作がイメージできて、それに向かう努力を絶え間なくできれば、それから外れないように意識することができれば、外れたと感じたら次の次のパイロンまでに修正する覚悟ができれば、間違いなくクルマと貴方の距離は縮まります。』

・YRS流スラローム動画 その1 (漫然とした操作とクルマが性能を発揮しやすい状況を意識した操作の違いをご覧になれます)

・YRS流スラローム動画 その2 (速度を上がられない走り方と上げられる走り方の違いをスローモーションでご覧になれます)

クルマの動かし方に興味のある方はYRSドライビングワークショップに遊びに来て下さい。