トム ヨシダブログ


第812回 視線と視野

812-1
昔から
どんな場合で
最右車線を走り続けることはない
その必要も感じない

 

高齢者の逆走が頻繁に起きているからか、ドライブレコーダーが普及したからか、ニュースで逆走しているクルマの映像が流れることを目にする機会が増えた。

逆走は交通体系を根本から覆すものだから、してはいけないし防ぐための対策も必要だ。しかし個人的にニュースを見て暗澹たる思いになるのは、高速道路で逆走車を避けたクルマの動きだ。幸いにして事故にはいたらなかったようなのだが、手放しで喜んでいいものでもない。

まず走行車線にクルマがいないのに追い越し車線を走り続けているクルマが多い。逆走車の運転手は自分にとっての走行車線を走っていると勘違いしている可能性が高いのだから、逆走車が向かってくるのは順送車の追越車線。追い越し車線の走行は必要最低限にするべきだ。

次に追越車線(逆走車にとっての走行車線)を向かってくるクルマを認識して回避するタイミングだ。定点カメラは焦点距離が長いからよせ効果で一概に距離感を断定することが難しいけれど、いくつか見たニュースでは追い越し車線を走るクルマが直前まで回避行動をしていないように見える。どこを見て、何を視界に入れて運転しているのか疑いたくなる。自分に置き換えた場合もそうだけれど、もっと早い時点で逆走車を認識してもよさそうにと思う。

ニュースではわざと逆走する人もいると言っていた。言語道断だけど逆走するクルマが現実にいることには変わりがない。それでもクルマを運転するのだから、クルマの動かし方を再考して、どう運転すべきなのか熟慮する必要があるのではないだろうか。

ある意味クルマの運転がどんどん楽になったから、そして運転する側の認識が薄っぺらくなってもクルマを動かすことができるから、逆走が起きるべき事象として起きているのならば、これほどやるせないことはない。

812-2
どこを見て運転しているか
 
正確に表現しようとするならば
どこも見ないで運転している自分がいる
 
あなたは
どこを見て何を見て
運転していますか

視線:眼球の中心点と見る対象とを結ぶ線で目で見る方向
視野:一点を凝視したときに見える外界の範囲

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

812-3
先週末開催した
ポルシェクラブ東京銀座から委託されて開催している
ドライビングレッスン
今回で12回目
次回は12月
FSWショートコースで開催します

812-4
掛け値なしに言って
会員のみなさん
すごく上手くなりました
クルマさんも間違いなく喜んでいるはずです。

 

※ 走行中の画像はウェアラブルカメラで撮影したものです



第807回 高齢者とクルマと自由

今年は高齢者による交通事故のニュースが多いような気がする。メディアも同じような認識なのかも知れない。最近いくつかの高齢者と運転をテーマにした番組が放送された。

807-01
この特集では交通事故鑑定を専門とする会社が開発した
スマホと連動して走行データが収集できる運行管理アプリを
高齢者の事故防止に役立てる試みを紹介

807-01a
高齢者人口の増加に伴い増加する交通事故

807-02
同社の笠原社長は過去の鑑定結果から
交通事故の原因は道路交通法違反にあり
道交法違反が少なくなれば事故件数は減ることを前提に
 
今回は運行管理アプリを活用し
高齢者がルールを守って運転しているかを検証
自身の運転の矯正に役立ててもらうという流れ

807-03
適性検査を受けた人の中には
思いの他評価が高かった人
自分の弱点を突きつけられた人
 
全国で
高齢者の運転の見直しが行われるようになって
交通事故を減少させたいと

807-04
同社のいろいろなデジタルデバイスを使うと
見えなかったものが可視化できる
 
これはアイカメラの結果
加齢による影響が大いにあるとされていた

807-05
番組向けに高齢者の運転適性を
運行管理システムを使って数値化
被験者の中には出た結果に愕然とする人も

807-06
適性検査は交通事故原因の上位に並ぶ
速度超過
一時停止
通行禁止
踏切停止
に対する遵法度を数値化

807-07
番組では
70歳から義務付けられる高齢者講習の現場も取材
 
自分の行いも他人事
教習所内だから無事ですんでいるものの
これが公道で起きていると思うと
ゾッとする場面も

807-08
高齢者が人の言うことを聞かない
独りよがりで独善であることが
浮き彫りにされていた

807-09
運行管理アプリを使った
公道で測定中のシーンも
 
アウディクワトロに乗るこの方
ステアリングホイールを握る手に力が
それにストレートアーム
いざという時に対応できるのか知らん

807-10
孫の送り迎えで毎日運転するこの女性
ステアリングの切り始めの操作がバラバラ
たぐりハンドルやら送りハンドルやら
その都度操作が異なる

807-11
安全運転を意識していなくはないのだが
具体的にどうするのがいいかのイメージはない

807-12
高齢になっても運転したい
それは…

 

現状で同社はアプリを使った運行管理を法人=主に社用車を対象に行っていて個人の適性検査はメニューにないけど、希望すれば個人でも自分の運転を見直すことができなくはない。例えば以前、自身で体験してブログでも紹介した、
・2019年7月1日 第392回 ブラッシュアップ講習 (第393回第394回第396回)
・2020年8月5日 第507回 運転技能自動評価システム (第508回第509回)
・2021年1月7日 第547回 高齢者安全運転診断サービス ( 第552回第553回第554回第555回 第556回 ) 等がある。
※それぞれ適性検査の進め方や結果を何回かのブログに分けて掲載してあります。興味のある方は当該号の続編もご覧下さい。

県警が行っている運転技能自動評価システム以外は有料だけど受けてみる価値はある。免許を取ってから自分の運転に投資したことのない高齢者ならなおさらだ。

自分の運転を見直す機会が増えるのはいいことだと思う。しかしながら運転を教えている立場から敢えて言わせてもらえば、道路交通法違反を守るだけでは交通事故の減少は期待できないと思っている。

とにかく。語弊があるのを承知で書くけれど、ここのふたつの番組に登場した人達の運転がはっきり言って下手。クルマをきちんと動かそうという操作が感じられない。まず操作が行き当たりばったりだし、操作の仕方に定石がない。おそらく、とりあえずクルマを動かせるのだから自分の操作には間違いがない、と思い込んでいる節がある。はっきり言って油断だ。経験を積むほどにクルマの運転をなめていると。

自分の運転を見直そうと思うのならば、真っ先に自分の運転操作が理論的合理性を備えているか振り返ることから始めたい。始めてほしいと切に思う。

807-13
一方で
高齢者の交通事故が多いから
高齢者は免許証を返納しろという空気がある
 
この番組では免許証の返納が
高齢者に与える影響という視点で構成されている

807-14
高齢者講習の一幕
急ブレーキの時に踵を持ち上げて
直線的にブレーキペダルを踏んでいる
 
その前にこの着座姿勢では足が伸びすぎ
これでは横Gに対して上半身を支えられないし
微妙な操作のしようがない

807-15
公道での運転も検証していた
15年運転していなかった方がプライベートの路上講習
 
助手席に乗るインストラクターが
ステアリングホイールはもっと軽く握りましょう
遠くを見るようにしましょう
とアドバイスできないものか

807-16
高齢者による交通事故件数は間違いなく増えている

807-18
高齢者の免許人口が増えているから
当然と言えなくもないけど

807-17
70歳以上の高齢者は講習を受けなければならない
75歳以上の高齢者は認知機能検査も受けなければならない
 
埼玉県では高齢者の免許更新のニーズが爆発的に増加
日本初の高齢者専用の教習所が開設された

807-19
あの悲惨な事故の後に免許証返納の機運が高まったけど
その後低調に
 
運転が上手い下手に関わらず
高齢者の生活と運転が切り離せないものになってきている
 
高齢者が現役でいる時間が長くなったからだろうか

807-20
その上で
番組に登場した精神科医の和田さんは
高齢者は免許証を返納すべきではないと説く

807-21
医学的な見地から
免許証返納を勧めない理由は

807-22
高齢者が免許証を返納することで

807-23
結果的に老いが進むことになる

807-24
運転をやめた高齢者は
筑波大の調査によると
6年のスパンで見ると要介護に認定されるケースが
運転を続けている人に比べて2.2倍に

807-26
国立長寿医療研究センターのデータでは
実に8倍になるという
 
運転という行為をやめることで
高齢者が
他人の世話にならなければならない率が
上るという事実がある

807-27
他方で高齢者の交通事故が増加している現実
 
高齢者と運転というテーマに正解はないように思える
 
高齢者と言っても千差万別で
身体能力にも個人差があるだろうし
運転に対する意識も異なるだろうし
生活に占めるクルマの割合にも差があるだろう

807-28
なぜクルマに乗るのですか

807-29
何歳までクルマに乗るつもりですか

807-30
何歳まで運転したいですか

807-31
何歳まで運転ができると思いますか

 
交通事故は高齢者だけが起こすものではない。クルマを運転している限り事故を起こす可能性は誰にでもある。繰り返しになるが、高齢が交通事故の直接的な原因であるよりも、年齢を問わず潜在的に事故を起こす可能性がある人が事故の当事者になっていると考える。

事故を防ぐにはまず、どんな状況でも道具であるクルマを思いのままに動かせられるほうがいい。そのためには道具の使い方が上手いほうがいい。上手くなるためには運転に集中する必要がある。運転に集中することができれば運転が楽しくなるはずだ。運転は一生モノだ。できることならば早いうちに一度真剣に運転に打ち込んでみることをお勧めしたい。

運転が上手ければ避けられた事故もあるだろうし、危険な目にあうこともないかも知れない。ユイレーシングスクールとしては運転が上手くなるためのお手伝いがしたい。そう心から思っています。身近に高齢者がいる方は、ユイレーシングスクールへの参加を促していただければ幸いに思います。ユイレーシングスクールはどんなクルマでも、どんな運転経歴でも年齢を問わず参加することができます。

・8月24日(土)開催 YRSトライオーバルスクールFSW開催案内と申込みフォームへのリンク
・9月21、22日(土日) YRSツーデースクールFSW開催案内と申込みフォームへのリンク
・11月2日(土) YRSドライビングワークショップFSW開催案内と申込みフォームへのリンク



第741回 交通統計令和4年度版から

交通事故総合分析センターから最新版の交通統計(令和4年度版)が届いた。警察庁に集められた全国の交通事故のデータがもれなく統計として整理され掲載されている。詳しくひも解けば日本の交通事故の全てがわかると言っても過言ではない一冊だ。

ユイレーシングスクールでは例年通り膨大なデータからユイレーシングスクールならではの数字を抽出し以下の数表を作成した。そこから見えてきたものは・・・、

・交通事故の発生件数は、2004年度の95万件をピークに連続して減少を続け2022年は30万件に。死亡事故件数も1992年の1万9百件のピークから2022年には2,550件まで減少した。
・交通事故による死者数も近年では1992年の11,452人をピークに年々減少を続け2022年度は2,610人となった。
・2019年度から3年連続で1万1千件を下回っていた単独事故発生件数が2022年度には12,148件に増加。
・2016年度から4年連続で3%を割っていた交通事故総件数に対する単独事故発生件数の割合は、2020年度から3.27%、2021年3.55%、2022年4.04%と増加に転じた。
・死亡交通事故件数に占める単独事故によるものの割合は2009年度から上昇傾向にあり2022年度には28%に達した。
・2022年度、交通事故100件のうち単独事故はわずか4件なのに、死亡事故に限ると100件中28件が単独事故によるものだったことになる。
・警察庁の分類による単独事故類型別割合では、2022年度は駐車車両衝突、路外逸脱、防護柵衝突、分離帯安全島衝突、その他工作物衝突の全てで減少しているのに。転倒だけが前年の42.2%から47.5%に増加。二輪車と四輪車を含めた数字ではあるが、転倒が運転者本人が避けようと思えば避けられたはずの事故の半数に迫る状況にある。
・2022年度の死亡事故に至った単独事故件数の割合を見ると、路外逸脱と防護柵衝突だけが高まっているのが見てとれる。

さて、自分は事故を起こさないと思っていても、事故を起こさないように注意して運転していても、クルマを運転している限り人対車両、車両相互の事故の当事者になる可能性がゼロになるわけではない。相手があることだから、自分ひとりの問題ではありえない。交通法規を守っていれば安全なのではなく、ゆっくり走れば安全というわけでもない。交通という流れの中にあって、自分本位にではなく、常に周囲の中の自分を意識することが大切だ。

ところが単独事故は原因の全てが運転している人間にある。理由はどうあれ、事故にいたる過程をさかのぼって見れば、結果的に事故を避けることができたであろう選択肢が必ず存在するはずだ。そこを見過ごした、あるいはおろそかにしたあまり悲惨なことになった例は枚挙にいとまがない。

交通事故件数にしても交通事故死者数にしても、8千万人という免許人口を比べれば無視してもさしつかえない数字かも知れない。人生で交通事故に遭遇しない人もいるだろう。交通事故を他人事と思っている向きもあるだろう。けれど、自ら事故を起こさないという保証はどこにもない。クルマという便利な道具の恩恵を被るためにも、運転そのものを楽しむためにも自身の運転を俯瞰する習慣をつけ、また運転技術の向上を怠らないようにしたいと、自戒をこめてそう思う。

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資料8-01
全ての交通事故に占める単独事故の割り合い
および総死亡事故件数に対する単独死亡事故件数の割り合い
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資料8-02
単独事故件数の推移および類型別単独事故の割り合い
<資料8-02 pdfファイル> 新しいウインドウに展開します

741-3
資料8-03
単独死亡事故件数の推移
および類型別単独死亡事故の割り合い
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741-4
資料8-04
交通統計から見えてくるもの
<資料8-04 pdfファイル> 新しいウインドウに展開します

 

※ 交通事故総合分析センターのサイトから1年落ちの「交通統計」(2021年以前の歴年)を無料でダウンロードできます。交通事故がいつ、どんなところで、どのように起きるか。交通事故にまつわる数字がこれでもかと並んでいます。興味のある方は覗いてみてはどうでしょう。



第676回 交通統計令和3年版から

免許人口の増加や車両保有台数の多さを考慮すると、発生した交通事故件数から見た我が国の道路交通はずいぶんと安全な方向に向かっていることが資料8-01の数字から読み取れる。
しかしながら交通事故総件数に対する単独事故件数が4%未満なのに、死亡事故件数からみると実に4分の1、つまり25%以上が単独事故によるものだというのは悲惨と言う以外にない。繰り返しになるが、単独事故とはすなわちひとり相撲をとったわけで第3者の関与はないのだから、事故原因がどうであれ運転していた人が避けようと思えば避けることが可能だった事故であることに間違いはない。
資料8-02には類型別の単独事故件数とその割合、資料8-03には類型別単独死亡事故の件数とその割合をまとめてある。車両の安全性が高まったことや、交通環境が整備されつつあることも要因なのだろう。時とともに単独事故の形態も変わってきてはいる。しかし原因がうっかり運転なのか操作ミスなのか、あるいは技量不足なのかは不明だが、事故を起こす前にできることはなかったのかと他人事ながらに悔やまれる。このブログに目を通していただいている方は単独事故とは無縁だと思うけれど。

自分は事故を起こさないと思っていても、事故を起こさないように運転していても、クルマを運転している限り人対車両、車両相互の事故の当事者になる可能性がゼロになるわけではない。交通法規を守っていれば安全なのではなく、ゆっくり走れば安全というわけでもない。クルマという便利な道具の恩恵を被るためにも、運転そのものを楽しむためにも自身の運転を俯瞰する習慣をつけ、また運転技術の向上を怠らないようにしたいと思う。

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資料8-01
全ての交通事故に占める単独事故の割り合い
および総死亡事故件数に対する単独死亡事故件数の割り合い
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資料8-02
単独事故件数の推移および類型別単独事故の割り合い
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資料8-03
単独死亡事故件数の推移
および類型別単独死亡事故の割り合い
<資料8-03 pdfファイル>
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第673回 数字から見えてくるモノ

公益財団法人交通事故総合分析センター発行の交通統計に載っている交通事故件数で最も古いのは昭和23年、1948年の21,341件。その年の交通事故死者数は3,848人とある。この年の死亡事故件数の記載はまだない。

交通事故件数、死亡交通事故件数、交通事故死者数、車両保有台数、人口、運転免許保有者数の数字がそろったのは昭和41年、1966年。今から56年前。この年、日本の道路には原付1種を含む2輪車から大型特殊自動車までありとあらゆる車両が1千8百万台走っていた。道路の総延長は98万9千キロ。乱暴な計算ではあるが全ての車両を1列に並べると549m間隔になる。
この年、42万6千件の交通事故が発生しうち13,257件が死亡事故。13,904人が亡くなっている。免許人口は2千3百万人弱。

車両保有台数が9千万台の大台に乗ったのは平成14年。今から20年前。道路の総延長は118万キロになったが、1列に並べた車両の間隔はおよそ13mに縮まる結果に。
この年、93万7千件の交通事故が発生し(過去最多は平成16年西暦2004年の95万3千件)、死亡事故は8,062件で8,396人の方が亡くなっている。免許人口は大幅に増加し7千6百万人強。

交通統計令和3年版に載っている最新の車両保有台数は91,253,654台。令和3年度の数字が掲載されていないので令和2年度の数字を借りると、道路の総延長は1,227,422キロ。全ての車両が日本全国の道路を13.5m間隔で走ることになる。
令和3年になると交通事故は大幅に減少し305,196件。死亡事故件数が2,583件。2,636人の方が亡くなっている。運転免許保有者は81,895,559人。

交通事故も交通死亡事故もひところに比べれば大幅に減少している。1966年より免許人口は3.6倍に増え車両の保有台数にいたっては5倍になったのだから、道路交通は間違いなく安全になっていると言ってもさしつかえないだろう。しかし死者数に関しては日本は24時間死者をカウントしているので救急医療が進み救急医療体制が整った現在、正確なところはわからない。もちろん死者数が減少傾向にあるのは歓迎すべきことだけど。
いずれにしろ交通事故そのものが減っているのは、クルマの運転を教えている者としては大いに喜ぶべきことではある。

しかしながら、事故を起こした人も起こそうとして起こしたわけではないのは百も承知だけれど、それでも事故は防げたのではないかと考えてしまう。

ここでは令和3年度にクルマと2輪車の交通事故がどのような状況で起きたかを知る手がかりとして、交通統計から引用した数字をまとめてみた。参考になるかどうかわからないがご覧いただければと思う。

673b
令和3年度事故類型別交通事故件数
 
pdfファイルでもご覧になれます
別ウインドウに展開します



第622回 こういう人がいるとは ‼

大阪狭山市のスーパーでの事故。パーキングブレーキをかけて停車していなかったことが暴走の原因ではないかという意味の報道があったけど、ATのセレクタをDレンジに入れたままフットブレーキだけでクルマを止めていたということか。ならば足の力を抜けばクルマが動き出して当たり前。駐車するならPレンジに入れるのが正しいクルマの使い方。その上でパーキングブレーキをかける。クルマは扱った通りに動く。横着はいけない。クルマに罪はない。

クルマの運転をなめないでいただきたい、心からそう思う。



第608回 エ~ッ !

スクールで留守にしていた間に録画しておいた番組を見ていて思わず声が出た。

今年6月に八街市で抜け道が常態化していた道路で起きたいたましい事故。番組ではその道路に施された様々な安全策が紹介されていた。

事故のことはニュースで知っていたが、驚いたのがこの画面とナレーション。安全のためにそれまでの制限速度60キロを30キロに変更したとの報道。
エ~ッである。今まで制限速度が60キロ、つまり速度規制の標識さえない道が通学路だったなんて信じられない。文字ニュースによるとその道の道幅は7mあるらしけど、当時ニュースで見た事故現場には中央線がなかった。正確なことはわからないけれど、中央線がないということはその区間の幅員が5.5m未満の道である可能性もなくはない。そんな道を子供たちだけで通っていたなんて、誰も危ないと思わなかったのだろうか。誰も子供たちを守る手立てを講じようとはしなかったのか。

当該の道路では安全対策としてガードレールで部分的に車線を1台分に規制したりハンプを設けたりしているが、番組の後半ではそれでもスピードを上げて走るクルマの映像を流していた。物理的な対策も必要だろうけど、最後はやはり運転する人の意識に頼らざるを得ないのが現実だ。番組のサブタイトルも、”仕掛け”で事故は防げるか、だった。
歩行者にとって危険と隣り合わせの道は日本中にあるに違いない。大津市にもクルマの往来が激しいのに中央線のない道がある。我が家の周りは4m道路だ。しかし道路のせいにばかりはしていられない。結局のところ安全はクルマを動かす者次第な部分がのほうが大きい。番組を見終わって、今さらながらに交通弱者に対してこれまで以上の配慮をしたいと強く思った。ステアリングホイールを握る者の責任として。

 


第597回 令和2年版交通統計から見えてくるもの

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交通事故発生状況の推移の頁には
昭和23年西暦1948年からの交通事故件数/死者数/負傷者数が載っている
表に死亡交通事故件数が追加されたのは昭和38年西暦1963年のこと
しかし類型別交通事故件数等は昭和45年西暦1970年を指標とし
毎年最新の13年間の数字のみ記載されている
 
交通事故総合分析センターのサイト で探すと
最も古い数字として昭和21年西暦1946年の交通事故件数12,504件が載っている

・免許人口は1980年の4千3百万人から2008年には倍の8千万人の大台を超え、2018年には過去最多の8千2百30万人あまりを記録したが、2019年から減少し始めた。
・車両保有台数は2017年に9千1百50万台の最多を記録。その後減少に転じている。
・交通事故件数は2004年に最多の95万3千件を記録したが、2020年には2004年の3分の1に満たない31万件にまで減少を続けてきた。
・死亡事故につながった交通事故件数は1992年の10,892件が過去最多だったが、それ以降は毎年減少を続け2020年には2,784件にまで減少した。
・交通事故で亡くなった方の数は1992年の11,452人が最多だったが、その後は減少に転じ2020年には過去最少の2,839人を記録した。
・車両単独の交通事故が最も多かったのは2001年の5万3千件あまりだが、それ以降は連続して減少を続け2020年には過去最少の10,099件を記録した。
・死亡事故にいたった単独事故件数は1992年の2803件が過去最多で、その後減少を続け2019年には最少の814件を記録したが、2020年には825件に増加。
・近年の交通事故に占める単独事故の割合は1993年の5.92%をピークに年々減少を続け2018年には2.62%を記録したが、2019年、2020年と増加に転じている。
・交通事故全体に占める単独事故の割合は記載が始まった1970年の7.30%から減少を続け、2018年には過去最少の2.62%を記録したが、2019年からは増加に転じ2020年には3.27%に達した。
・死亡事故全体に占める単独事故による死亡事故件数の割合は1985年が最多の27.26%だったが、その後減少に転じ2011年には最少の20.04%を記録。しかしながらその後増加に転じ2016年~2019年は25%前後で推移していたが、2020年には29.63%に増加し、死亡事故のうちの3割が防ごうとすれば防げたであろう単独事故によるものだった。
交通事故件数、単独事故件数とも昭和35年西暦1960年以降で最少を記録した2020年。しかしながら見逃せない数字がある。交通事故が100件起きるとそのうちの3件が車両単独で他は相手のある事故なのだが、死亡事故に限ると100件の事故のうちの30件が単独事故によるものという、いささか残念な数字がそれだ。
・単独事故を類型別にみると転倒は2008年の31.82%をピークに減少傾向にあったが、2018年から増加し2020年には過去最多の36.30%を記録した。2輪車の転倒事故が増加しているのが原因か。
・単独事故のうち2割強を占めていた路外逸脱による事故は年々減少を続け2020年には過去最低の5.62%を記録した。
・その形態を問わす交通事故で亡くなった方の数は第2次交通戦争期の1990年に記録した11,227人をピークに減少を続け2020年には4分の1の2,839人になったが、交通事故で亡くなる高齢者数は増加を続け2020年には70歳以上の死者数が全体の48%に達した。

自動車技術の発達で運転という行為自体が平易なものになり手軽に移動することができるようになった。交通体系の熟成が進んだ結果として交通事故件数が減少したのも間違いないところだろう。救急救命医療の発達が交通事故による死者数の減少に貢献しているのも明白だ。しかしその一方で、運転に対する危険意識が薄らいでいることはないのだろうか。
交通事故が減ったと言っても皆無になったわけではない。数字的に見れば単独事故そのものは年間1万件にすぎず、日常的に運転している人にとっても現実感が薄いかも知れないが、運転という行為をしている以上誰にでも事故を起こす可能性がないわけではない。相手がいる「車両相互」や「車両対人」の事故なら避けられない要素がからんでくるかも知れないが、避けようと思えば自分の意志で避けられたはずの「車両単独」の事故は起きるべきではないと考えている。
手軽さを気軽さと履き違えて自動車を自分の意志通りに自由に動かせると思い違いをし、運転という技術と集中力が必要な人間の行為を軽んじた結果、独り相撲で事故を起こしてしまっては本末転倒だ。自動車の便利さや楽しさを享受することは大いに奨励するけれど、人間より速く移動することができる自動車を操るのだから、畏怖の念だけはなくさないようにしたいし、してほしいと思う。

595-1
表1:全ての交通事故に占める単独事故の割り合い
および総死亡事故件数に対する単独死亡事故件数の割り合い
 
表1のpdfファイルダウンロード

595-2
表2:単独事故件数の推移および類型別単独事故の割り合い
 
表2のpdfファイルダウンロード

595-3
表3:単独死亡事故件数の推移および類型別単独死亡事故の割り合い
 
表3のpdfファイルダウンロード

595-4
表4:第1当事者から見た類型別死亡事故件数
 
表4のpdfファイルダウンロード

595-5
表5:年齢層別交通事故死者数の推移と割り合い
 
表5のpdfファイルダウンロード

 

※自動車保有台数とは自家用および事業用の乗用車、貨物車、大型小型特殊、特殊用途車、二輪車を含んだ数字をいう
※文中あるいは表中の交通事故死者数は24時間死者の数で事故後24時間以内に亡くなった方をさす



第592回 交通統計

592
令和2年版の交通統計が届いた
 
COVID-19に翻弄された2020年
交通事情もそれなりに変化が
数字にも表れているのだろうか