カリフォルニア州モントレー郊外にあるラグナセカレースウエイ。ボクがSCCAのレースで走っていた頃は1コーナーが、5速全開からノーブレーキで4速に落としてターンインという超ハイスピードコースだったけれど、1987年に二輪の世界選手権を開催するためにFIM公認のコースに生まれ変わった。かっては現在の2コーナーと5コーナーがつながっているレイアウトだったのだけど、規定に合わせるため全長を延ばすことになりインフィールドにコースが新設された。現在では1周3.6Kmになっている。
ラグナセカの名物と言えばターン8にあたるコークスクリュー。下りながら左、右と切り返すS字コーナーは4階建ての高さを駆け降りると言われている。
ターン7までは空しか見えない登り。登り切って着地するやいなやブレーキング。ターン8へのターンインではターン9の出口が見えないコークスクリューは過去幾多の名勝負が繰り広げられた。
今回紹介するのは2008年MotoGP AmericaGPでの名シーン。この年ラグナセカで初勝利を収めたバレンティーノ・ロッシが3周目のターン8のブレーキングで先行するケーシー・ストーナーのインを刺し、切り返しで勢い余ってダートに飛び出しながらも追い抜きに成功する。4輪ではあるけれどコークスクリュー手前のブレーキングとターンインの難しさを知っている身としては、バレの走りはただただ驚きでしかない。
ことの始まりは、
※ラグナセカを周回する動画は こちらです
2021MotoGP最終戦バレンシアGP
自身432回目で最後となる世界選手権レースを10位で終え
お約束のウィリーで観客に別れを告げる
バレンティーノ・ロッシが引退した。1996年から四半世紀以上、26年間にわたり二輪ロードレース世界選手権に参加。出走回数の実に55.3%にあたる235回で表彰台に上り、9回の世界チャンピオンを獲得した伝説のライダー。近年は往時の鋭さこそなりを潜めてしまったが、時折見せるレースに勝つための走り、レースの読み解き方は彼独特のものだった。個人的には、ワタクシを含め世界中で最もファンの多いGPライダーだと思っている。
F1ドライバーをして「MotoGPライダーは頭のネジが1本抜けている」と言わしめる彼らのバランス感覚と張りつめた雰囲気。その中でひとり、いつも笑顔を絶やさなかったバレンティーノ・ロッシ。いつもレースに勝つことを追い求めることに貪欲でありながら心底楽しそうで、チェッカーを受ければこれでもかと全身から無邪気さが漂う。
靴として160Kgは決して軽くはないけれど、彼にとってGPモーターサイクルは両足のようなものだったのだろうね。さしずめ後輪が軸足で、けんけんするぐらいにたやすいことだったのかも知れない。これからは見ることのできない彼のウィリーを。
そして彼の妙技を。
どこかの動画にバレンティーノ・ロッシがインの段差のある縁石に肘をこするものだから腕が震えていたシーンがあった。肘もバンク角を計るセンサーなのだと解釈した。
とおの昔からF1マシンはダウンフォースを武器に速さを増してきた。今やオポジットロックを見ることもない。一方、MotoGPマシンは動力性能とタイヤの性能向上で速さを身につけてきたけど、操るのはむき身の人間。MotoGPライダーをなんと形容すればいいのか。言葉を失う。
・バレンティーノ・ロッシの引退を惜しむべくMotoGPを統括する Dorna Sport から彼の勇士を記録した動画が次々と配信されている。中でもチャンピオン経験8回のマーク・マルケスとの争いは見もの。 https://www.youtube.com/watch?v=pfmcMjB64NE
・ヤマハ発動機公式チャンネルも16年間ともに世界で戦ったバレンティーノ・ロッシへの感謝を綴っている。2輪ファンではない人にもぜひ見てほしい。稀代の英雄の姿を。 https://www.youtube.com/watch?v=2iVtflczNC8&t=21s
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