運転の上達のためには短期間に集中して練習するほうが効果的、というジムラッセルレーシングスクールの校長の教えを守って開催するYRSツーデースクール。
今回は4台のルノー・スポールが参加してくれた。
埼玉のTさんと東京のNさん。Nさんはサーキットが初めて
滋賀県から来てくれたWさんと千葉のHさん
YRSツーデースクールは1日目の午前中にブレーキング、スラローム、フィギュア8で基本操作を、午後のオーバルでイーブンスロットルとトレイルブレーキングを練習。うまくできてもできなくても、1日目に経験したことを2日目のサーキット走行に生かすことを最大の目標とする。
手前味噌ではなく、これでみなさんホントに上手くなる。今回はサーキット初体験の方が5名いらしたが、最後には全員がクルマをイキイキと走らせていた。
2日間でクルマの操り方がわかるユイレーシングスクールの目玉商品だ。
ルーテシアRSが全開でストレートを駆け下る
ルーテシアRSがロードホールディングに勝るロードスターを追い詰める
メガーヌRSがいい音を立てて疾走
ここ数年、またサーキットがにぎやかになってきて日程の確保が難しくなってきたけど、なんとか今年中にもう1度ツーデースクールができないかと画策中だ。
RSはサーキットが似合う
ルノー・ジャポンのブログでユイレーシングスクールのことを知ったKさん。昨年3月に愛車ルーテシアRSとともにYRSオーバルスクールに参加してくれた。
その後、YRSドライビングワークアウトやYRSトライオーバルスクールなど昨年中に4回、今年に入ってYRSオーバルスクールにも参加してくれた。
Kさんがサーキット走行を楽しまれていることは知っていたから、ことあるごとに「YRSのスクールレースに出ると運転の幅が広がるしスクール以上の効果がありまっせ」とささやき続けたのが功を奏したのだろう、2月のYRSスプリントレースに参加してくれた。
レースと言っても、ドライビングスクールの一環として行なっている卒業生を対象としたスクールのようなもの。一度でもYRSのドライビングスクールを受ければ参加する資格はあるし、クルマにも特別な準備をする必要はない。とにかく、とかく敷居の高い日本のモータースポーツ界にあって、少しでも多くの人にヨーイドンの醍醐味を味わってもらいたいと思って始めたのがYRSスプリントレースとYRSエンデューロレース。
だから、レースでの走り方も教えるしレーシングマナーも教える。サーキットを走ったことがあって、YRS流のクルマを意のままにコントロールする方法を知ってもらった人は誰でも参加できる。
と言っても、レース内容もそれなりかというとそうではない。続けて参加している人のレベルはかなりのもので、彼らが公式なレースに出ようと決心さえすれば上位に食い込むのも難しくはない。
実際、Kさんが今回参加してくれたYRSスプリントレースを卒業してライセンスを必要とするレースに参加し、優勝したりシリーズチャンピオンになった人が何人もいる。
さて、サーキットを走ることには慣れていたKさん。初めてのヨーイドンでどんな振る舞いをするか興味深く見させてもらった。
結果は上出来。結果は別としてしっかりとレースをしていた。
8月に行なうYRSスプリントレースにも参加してくれるそうだし、その前にYRSオーバルスクールにも来てくれるそうだから、その時にでもあと1、2台を食う方法をアドバイスしようと思っている。
後日初めてのYRSスプリントの感想を求めたら、 Kさん自身のブログ にまとめましたと返信があったのを付け加えておこう。
ローリングスタートからヨーイドン
気持ちのいい瞬間
コーナリングスピードに勝るツーシーターを追いかける
気分が透明になったかな?
追って追われて
だけど2台とも突っ込みすぎ!
レース中何を考えているのか?
いや、何も考えてはいないはず
勝とうと思ってレースを走って、レースに勝った人はいない
最初にやるべきことは自分がミスなく走り続けることだ
レース中のラップタイムを見ながら
「フムフム、悪くないんじゃない」
photo:YRS + Rumi Masuda
扱い方さえしっていればどんなクルマでもニュートラルステアで走らせることができる
1979年9月。2200台のクルマをお腹いっぱいに詰め込んだ輸出専用船に乗り込み千葉港を出帆。10日目にはバンクーバーで半数のクルマがおろされ、12日目にはポートランド港で続々と埠頭に向かって走るクルマを横目に下船。初めて海路アメリカに渡った。
まだ秋口だというのにアリューシャン列島付近では大時化。船内の傾斜計が30度を示す中、船長はカウンターステアを切って平衡を保つのだと教えてくれた。
双子の息子が4歳になってレースを再開した。大人6人が快適に寝ることができる15mのモーターホームでレーシングカーを載せたトレーラーを引き、800キロ離れたレース場を往復した。モーターホームがなければレース再開の許しは出なかった。
アメリカに拠点を移してから飛行機で199回太平洋を渡った。一度だけ、成田を飛び立って1時間ぐらいして機材の故障で引き返したことがあったが、それ以外は快適な空の旅だった。そして400人の命を乗せて飛行機を操縦するパイロットに、いつも畏敬の念を抱いたものだ。
船、クルマ、飛行機。交通機関の発達は我々人間の生活を、空間的に時間的に精神的に拡大してくれた。ことにクルマはふつうの人々の日々の生活を発展させてくれた立役者ではある。
しかし、人が移動に使う船にしても飛行機にしても、それを操る人はふつうの人ではない。厳しい国家試験に合格した人だけが、人を乗せて移動することを許される。
ところがクルマだけは、動かしたいと思った人はそれほど困難をともなわずに免許証を手にすることができる。人間や物を載せて、人間がとうてい及ばない速さで移動する点では同じなのにだ。
我々は職業運転手ではないと言えばそれまでだが、自分ひとりであっても人を乗せて移動する交通機関を操るという意味に違いはない、というのがユイレーシングスクールの考えだ。
だから、スクールやスクールレースの時におりに触れてこう言うことにしている。
『クルマを運転している時、みなさんは交通体系の中でクルマの性能を損なわない範囲でなら自由を謳歌することができます。しかしその時、みなさんの後ろには誰もいないんです。全ての責任を負わなければなりません。そのことを忘れないようにして下さい。一方でクルマを運転するということは、自分で脚本を書き、自分で演出し、自分で主役を張り、自分が観客になり、自分で自分を称えることができる、社会生活の中でも稀な機会です。大人が一生懸命になる価値があります。粋にクルマを動かすためにも、今一度、これからどのようにクルマと付き合っていくのか、改めて考えてみてはいかがですか』。
クルマは操り方によってはアンダーステアになり
操り方によってはオーバーステアになる
「クルマだからできること」 終わり
手元にある資料の最も古い数字を探すと、半世紀前の1966年の自家用自動車の登録台数は271万台とある。この年、日本の人口が9,903万人で、2輪と4輪を合わせた運転免許の保有者数が2,286万人。免許が取得できる16歳以上の人口に対する保有者数の割合が31.5%と記されている。
最も新しい数字は2013年で、自家用自動車の登録台数が5,991万台。50年前に比べて22倍以上に膨れ上がっている。人口も12,730万人28.5%増加したけれど、運転免許保有者も3.6倍の8,186万人に増えた。
50年前。10人に3人しか運転免許を持っていなかったのに、今や10人中7.5人がクルマを運転する時代になった。
1965年に高校1年で軽自動車免許を手に入れてから50年。クルマの発達とクルマ社会の拡大を目の当たりにしてきた者として隔世の感がある。
昔はクルマを運転することが多少なりとも特殊なことだったのだが、今ではクルマがそこにあることは当たり前で、運転すること自体ごくふつうのことになった。クルマが空気や水のような存在になったと言うと大げさに聞こえるかも知れないが、クルマがそれだけ我々の生活に浸透していることは疑いない。
同時にそれは、人のクルマへの接し方にも変化をもたらした。所有欲を満たすクルマ。移動の利便性を優先させたクルマ。自己表現の対象としてのクルマ。等など。クルマから派生する価値観の多様化は止まるところを知らない。
しかしその反面、クルマを動かすのは人間であるはずなのに、クルマという道具を使うことに没頭する人の数は昔と変わらないような気がする。免許人口が増加しクルマが増え続けてきたのに、モータースポーツにいそしむ人の数もサーキット走行を楽しむ人の数も、こと日本においてはその増加に見合っただけ増えているとは思えない。
クルマが空気や水のような存在になってしまったからなのだろうか。日本の環境の問題なのか。クルマが生活の一部になったから、もはや運転は目的にはなり得ず手段でしかない、ということなのだろうか。何かもったいないような気がする。クルマが道具である限り、思いっきり使ってみなければその本当の価値はわからないと思うのだが。
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このブログを見てYRSドライビングスクールに参加してくれたKさん。YRSオーバルスクールに始ってYRSドライビングワークショップ、YRSトライオーバルスクールと基本カリキュラムの全てとYRSタイムトライアルに参加してくれた。そのKさんが2月7日に開催するユイレーシングスクールのスクールレースに申し込んでくれた。ルーテシアRSをどう扱うのかじっくり見させてもらうことにしよう。
予選タイムの逆順に並んでワクワクのローリングラップ
スタート 反応の早い人も遅い人も我先に
レースはいつも混戦
次のヒートは前のヒートの着順でローリングラップ
ここにいたる駆け引きと透明な時間こそレースの醍醐味
1コーナーに並んで進入
3コーナーでも並んだまま
写真は2008年10月に富士スピードウエイショートコースで開催したYRSスプリントロードスタークラス。ふだんの足に使っているクルマで、そのへんにいるおじさんとお兄さんとお姉さんの走りです。
「クルマだからできること最終回」に続く