トム ヨシダブログ


第743回 スタート&ストップ

たまに写真のようなメッセージが出る。   『もっと強くブレーキペダルを踏みなさい!』 と。

メガーヌRSトロフィーが完全に停止した後、エンジンがかかった状態の時に現れるこのメッセージ。現れる原因は単純に、スタート&ストップを解除するのを忘れていたから。本来なら停止と同時にエンジンも止まるはずなのだけど、エンジンは回り続けている。 つまるところ、ブレーキ操作、要するにブレーキペダルの踏み方や踏力がブレーキシステムが想定している値と異なるとコンピューターが判断した結果、修正しなさいと警告されたのかなと。

過去に運転診断でブレーキング区間で減速Gが変化している点を指摘された。

市街地走行でもブレーキング初期に大きな減速Gを立ち上げイニシャルの慣性力を減らし、その後踏力を連続して減らすことで減速Gの減少を図る。それはカックンブレーキはかっこう悪いと思っているから、結果的に停止する寸前の減速Gを限りなくゼロにするための手段。停止寸前から完全停止までの姿勢変化=荷重移動がゼロで減速Gの変化も限りなくゼロ、いつ停止したかわからないけど目的の場所に停める、そんな運転がかっこういいと個人的に勝手に思っているし、それを常に意識することが運転力の維持に役立つを思っている。

ふだんからそんな運転をしているものだから、右足はブレーキペダルにのっているしメガーヌRSトロフィーは完全に停止しているのだけど、エンジンを止めるにはもっと強い踏力が必要だとコンピューターが要求するのだろう。

実は、ふだんの足に使っている7速パドルシフトのフィットRSにもアイドリングストップ機構がついているのだけど、今や解除スイッチをオンにしてもオフにしても停止時にエンジンが止まることはない。どのような働きになっているか、機能に変化があったのかは知る由もないけど、ブレーキをかけて停止する最後の瞬間の減速Gと踏力が無視できるほどなので、速度がゼロになってもクルマとしてはまだ動いていると認識してエンジンを止めるには至らない、とコンピューターがが判断しているのではないかと想像している。だからフィットRSではアイドリングストップはオンにしたままでもさしつかえないので、ついメガーヌRSトロフィーでもスタート&ストップの解除をしないまま運転してしまう。

743-1
警告が表示された
メガーヌRSトロフィーのインパネ

743-2
フィットRSのインパネ



第728回 ABS考察

ABS。Anti-lock Brake System。アンチロック・ブレーキ・システム。今やほとんどのクルマが装着しているであろうABS。

ブレーキング時に制動力がタイヤのグリップを上回った時や路面の摩擦係数が極端に小さい場合にタイヤがロックすると、タイヤは回転しないで路面上を滑走することになりステアリング操作をしてもクルマの向きが変わらなくなる。結果として危険回避の可能性が減少する。そこで、機械的に制動力を低下させタイヤに回転力を与え、タイヤが回転したら再度制動力を高める。これをごくごく短いサイクルで繰り返すことにより可能な限り平均的に高い制動力を維持しながらもタイヤのロックを防ぎ、かつステアリング操作でクルマの向きを変えることを可能にするのがABS。

経験的に、ミリセコンドの単位でもブレーキラインの油圧を減らすのだから減速Gは弱まるはずで、ABSが効いている間はそれが繰り返されるのだから結果として制動距離は伸びると思うのだけど、ABSの記述の中には『ほとんどの路面でABS非装着車と比較して制動距離が短くなる』と書いてあるモノがある。本当にそうなのか。

そこで、あくまでもユイレーシングスクール独自の方法ではあるけど、ABSが働いた時の減速Gの変化をGセンサーとパフォーマンスボックスを使って可視化してみた。
方法はこうだ。とにかく100キロ近くまで加速しユイレーシングスクールで言うところのブレーキを蹴とばす。操作としてはトランジッションを挟まず、スロットルオフと同時にブレーキペダルを一気に踏みこむ。ジムラッセルレーシングスクールで言うところのブレーキペダルをスクィーズするのではなくスタンプする。その結果が次の動画。

蹴とばしブレーキの減速Gの立ち上がり方をGセンサーで捉えたもの。開始8秒くらいのフラッシュ後は4分の1スローで再生。26秒くらいからバーが上下に大きく振れ落ち着かない。下に掲げたパフォーマンスボックスのグラフの④に該当すると考えられる。

728b

上の図はパフォーマンスボックスから速度と加減速Gを拾ってグラフにしたもの。赤い線が左目盛の速度。青線が右目盛の加減速G。そこには、経験的にこうだろうなとうABSが介入した時の減速Gの増減が見てとれる。

・加速して最高速が110キロプラスになるあたりでスパッとスロットルオフしてブレーキペダルを瞬時に踏みこむ=①左端
・たちまち減速Gが立ち上がありマイナス1Gを記録=②左端
・その後速度の低下は続くが減速Gの増加は見られない。タイヤのグリップを使い切っているのか=②
・ブレーキペダルを力いっぱい踏みこんでいるが減速Gが減少を始める=③左端
・1秒の間に加減速Gはプラスマイナスゼロに=③右端
・ABSが作動し加減速Gは2秒ほど横ばいで速度も13Km/hあたりで変化なし=④
・再度減速Gが立ち上がり速度も低下し始める=④右端
・速度がゼロになる直前に減速Gが減っているのは停止に備え踏力を抜いているから=⑤

ブレーキング中に何が起きているか正確に検証する術は持たないけど、パフォーマンスボックスが拾ったデータから、ブレーキを蹴とばすした場合ブレーキペダルを思いっきり踏み続けABSが介入している状態においては、クルマが減速をしていない=速度が低下しない時間があることがわかった。すなわちABSが介入せず速度が低下し続ければもっと短い距離で停止できたであろうことは想像に難くない。

ユイレーシングスクールではどのカリキュラムでも希望される方にはブレーキングの練習をしてもらっています。まだABSを働かせたことのない方、ご自身のブレーキングが蹴とばしているか確認したい方、直近のスクールは6月10日(土)開催のYRSオーバルスクールFSWです。
YRSオーバルスクールFSW開催案内をご覧の上、ぜひご参加下さい。クルマとの対話が進むこと請け合いです。