トム ヨシダブログ


第98回 タイヤは動く

鈴鹿サーキット国際南コースでドライビングスクールを開催した。

もともとはカートコースとして作られた通称南コース。全長は1,264mで、筑波サーキットのコース1000(1,039m)や富士スピードウエイのショートサーキット(ユイレーシングスクールが使用しているレイアウトは880m)よりは長い。

しかしカートレースを前提としたレイアウトなので、ここを4輪で走るとなるとかなり忙しい。ひとつひとつのコーナーは単純な形だから理論通りに走ればいいはずなのだが、特に前半のテクニカル部分ではコーナーが連続しているので最適な走り方を探すのが難しい。だから練習しがいがある。
速いクルマでも平均速度が70キロ/時にやっと届くぐらいだから絶対的な速度は速くない。速く走るためには『加速できない』区間であるコーナーをいかに速度を乗せて走るかが肝心なので、加速から減速、そしてターンインへの流れの中で、その時の状況に合わせ、かつ速度を高く維持するための操作を見つけ出す必要がある。その意味でドライビングスクールを開催するにはうってつけのレイアウトだ。

で、午前中が雨、午後が晴れという理想的なコンディションで開催できた今年のYRS鈴鹿サーキットドライビングスクール南。参加者が走るセッションの合間にビデオの撮影をした。
今回のテーマは動く足。ほんとうはサスペンションアームの動きを撮りたいのだが小さいトゥィンゴにはカメラを収めるスペースがない。それで前輪の動きから想像してみることにした。

結果はと言うと想像通り。縁石に乗るとかの大きな入力を受けない限り、そしてトランジッションを意識して走る限り、バウンドもリバウンドも最小限。足を締め上げたルノー・スポールだからとも言えるが、上屋を支える足が安定している様は感動モノ。
やっぱり、クルマはスムーズに、途切れなく走らせることが大切なのだなと。

同じラップの外撮り、車載、前輪アップをまとめた動画がこれ

※今だからこそドライビングスクールにうってつけだと思えるけれど、来日中の1989年7月に南コースのオープンに招待されて鈴鹿サーキットが用意したノーマルのシビックで走った時には奥のヘアピンがいやでいやで仕方なかった。なんのことはない。当時は単に低速コーナーが嫌いなだけ!?だったみたい。そんなことを思い出しながらの撮影だった。
※外撮りの動画は東京から参加された中沢 隆さんが撮影してくれました。
※カット写真は大阪から参加された目代英一郎さんが撮影してくれました。


第97回 目線×視野=情報処理速度

あるテレビ番組で、弓道の学生チャンピオンという女性に弓道を経験したことのあるテレビタレントが挑戦するという企画をやっていた。スポーツ番組と言うよりもエンターテイメント性の高い構成だった。
結果はと言うと、もちろん勝者は学生チャンピオン。にわか仕込みだったり現役を離れて久しい人が、その道を邁進する人に勝てる訳がない。ま、タレントが奮闘した場面もあったから、そのあたりが企画の狙い目だったのだろう。

で、内容は別にして、番組を観ながらいつの間にか真剣になっている自分に気がついた。学生チャンピオンの動作が印象的だったのと、自分にもそんな経験があったからだ。

もちろん弓道の経験はない。弓矢といえば、小さい頃に細く割いた竹とタコ糸で弓を作り割り箸の矢を飛ばした記憶があるぐらい。
それでも「的を射るのは大変なんだろうな」ぐらいの想像はつく。実際、チャンピオン以外の出演者はみな、これでもかと穴の開くほど的を凝視し続けてから矢を放っていた。
が、その女性は的に向かって姿勢を作るところまでは同じなのだが、矢を引く段になると目線を上のほうに泳がせるのだ。つまり的から目を背けることになる。的を見ないで矢を引いてゆき、矢を目一杯引いて静止する頃、矢を放つ寸前にその女性の目線が再び的とらえているように見えた。

サーキットや高速道路など速い速度で運転している時、自分も意識的に目線を目標から外すことがある。もちろん外したままなのではなく、ある時点で目標たるべきものを視野に入れるために目線を戻すのだが、その一連の動作に女性チャンピオンのふるまいが重なった。
その昔。初めは意図せずに無意識のうちに目線をそらせたと思うのだが、戻した時の目に飛び込んでくる景色があまりに鮮明だったので、今ではそのほうが効果的だと思う時にはそうするような段取りを意識してできるようになった。

女性チャンピオンが目線をそらす理由を知るべくもないし、彼女が何を得るためにそうしているのかもわからないが、ひょっとすると自分と同じことを狙っているのではないか、と興味がつのったわけだ。

それにしても、放たれた矢があれほどワナワナと震えながら、しかも矢の先端があれほどブレながら飛んでいって的を射るとは知らなかった。矢の軌跡は理論的に説明がつくようなものではないはずで、ならば最後には人間の感覚が的への道筋を探っているのだとすれば、弓道もとんでもない人間技なんだと思い知しることができた番組だった。


第96回 タイヤは回る

クルマは4本のタイヤでしか地面に接してはいない。
つまり、クルマの性能はタイヤを介してしか発揮することはできない。
と言うことは、人間の行う操作もタイヤを通じてしかクルマに伝わらないということでもある。
だから、タイヤの使い方はクルマを動かす上では非常に大切だ。

クルマの性能が高くてもタイヤの使い方が間違っていればその恩恵にあずかることはできない。
逆に、タイヤのグリップがそこそこでもキチンと使いさえすればクルマはその性能をフルに発揮することができる。

な~んてことを考えているからタイヤがどんな具合に働いているのかをいつも知りたい。なかなかこれといったアングルにたどり着かないのだけれど、今回はタイヤを正面からとらえてみた。

今いちばんの夢。コーナリング中にタイヤのコンタクトパッチがどう変形するか動画で見ること。もちろん不可能な話だろうけど。


第95回 スピードの出る乗り物

昔からスピードの出る乗り物が好きだった。

自分が運転することなど想像できない幼い頃は、それがバスだったり山手線だったり。
小学校に上がれば、それがゴム動力の模型飛行機からエンジン付きのUコントロール機に変わったり。
中学生になれば、友達と解体屋さんに安く譲ってもらったスクーターのエンジンを載せたミニバイクを作って夏休みの工作として提出したり。
高校生になれば、とにかく免許証を手に入れレンタカーを走らせる。

いつの時代も自分より速く動くことのできる乗り物が唯一興味の対象だった。

やがて自動車雑誌の仕事をするようになり自分では手の出ないような高価なクルマや、プロのドライバーが操るホンモノのレーシングカーにも乗った。全てはスピードの出る乗り物が好きだったから。

しかし、クルマと触れ合っていくうちに自分の中のスピードに対するイメージが鮮明になってきた。

速さからすればクルマは飛行機にはかなわない。クルマ同士を比較しても軽トラックはフェラーリにはかなわない。そんなことは承知の上。当たり前のことだ。だからこそ、自分の求めるもの、好きなものがはっきりしてきた。

スピードの出る乗り物が好きなのはまぎれもない事実なのだけれど、今の自分にとっては「最高速度」よりも「加速度」が何十倍も心を揺さぶる。300km/h出るって言われるよりも、0-100km/hが6秒切りますという速さにゾクゾクする自分がいる。

しかも、それが等身大の速さであることが大事なのだ。300Km/h出るクルマの魅力は承知している。しかしその速さを実現する環境は少ないし、たいがいその手のクルマは乗り降りがひと仕事。0-100Km/hが4秒と言ってもその加速を味わう機会はめったにあるものではない。

自分にとっての速さはそれが実現できなければ意味がない。だからクルマの中で全長4m前後のホットハッチが大好物
だから、そんなことはあるわけがないのだが、フェラーリを1年間貸してくれるという話があっても辞退するだろう。

結局、漠然としたあこがれだったスピードが、歳を重ねるうちに生活の中の速さ、手の届く速さに昇華したということなのだろう。
まもなく免許をとってから49年になる。我ながら、いつまでクルマ好きでいるんだろうかね・・・、と。

小さい頃は、目の悪い自分には無理だとわかっていてもパイロットになりたかった。今でも大空を自由にはばたく飛行機も好きだ。

※この項の写真は全て、飛行機もクルマも好きなユイレーシングスクール卒業生の勝木 学さんが撮影したものです。ルノーのブログのためにお借りしました。


第94回 桜、さくら、サクラ

1週間ばかり留守にしていたら、地元の桜は見ごろを過ぎていて残念

1週間かそこいらの短い期間のために、残りの莫大な時間を準備のために費やしこれでもかと咲き誇る桜。いいなぁ。

桜の木の下で。この時ばかりは白いトゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールで良かったなと。

– – – – ここから追記 – – – –

4月第2週の週末。富士スピードウエイ近辺の桜が満開。13日はポルシェクラブ千葉のメンバー向けドライビングスクールだったのですが、参加された方もあでやかな桜を満喫されていました。ー