トム ヨシダブログ


第2回 トゥインゴGTは小粒で…

 高校1年で軽自動車免許をとってから45年間。数えられないほどのクルマを走らせてきたが、その中でもフランス車はほとんどといっていいほど記憶になく、トゥインゴGTがどのように躾けられているのか大いに興味があった。
 
  ルノー京都CADONOで操作の説明を受け、記念写真を撮ってから京都の町に乗り出す。
  最初の驚きは敷地から八条通りに降り立った時。わすかな段差を乗り越えたのだが、ボディがきしむでもなく、足が(サスペンションが)ボディと独立して動いているのが感じとれる。乗る前のイメージではもっと「ワサッ」という動きをすると思っていたので、これは嬉しい誤算。
  サイズ的にはスクール用品の運搬に使う初代フィットと同じようなもの。フィットの全長/全幅/ホイールベースが3,845/1675/2,450mmでトゥインゴGTが3,600/1,655/2,365mmだから、むしろひとまわり小さい。それでいてボディ剛性が高く足がちゃんと動くのには思わずニンマリ。もっとも車格が同じでも価格には開きがあるから同じ次元で比較することは難しいが、フランスでは小型車もきちんと作りこまれているのかと思うとうらやましさも感じる。
  


↑京都の小型車専用の駐車場にも似合う。京都で乗るにはちょうどいい大きさ。
 

 

  「いいねぇ」とうなづきながら走らせる。
  慣らしが終わるまでは3,000回転までと決めておいたのだが、4速で1,800回転(メーター読みで47Km/h)も回っていれば、スロットルを開けた途端に過給が始まるような加速を見せる。動力性能もスクールカーとして申し分ない。
  「これは慣らしが終わるのが楽しみだな」と流れに乗って走っているたのだが、いくつか細かなことが気になりだす。詳しくは追々述べるが、運転に支障のある類のものではないのでとりあえず慣らしを急ぐことにする。
 
  慣らしは同じような負荷を連続してかけておきたいから高速道路で行う。時間を見つけて走ってはみたものの、今年最後のオーバルスクールに連れ出してもオドメーターは600キロ。泣く泣く体力測定は来年に持ち越し。シーズンオフの間に距離を稼ぐつもりだ。
  
  

高速道路も快適。ボディ剛性が高いせいか3,600mmの全長とは思えないほど安定している。

 
  さて、そのオーバルスクール。今年最後ということもあるのだろう、定員いっぱいの24名が参加。富士スピードウエイの駐車場に設けた直径40mの半円を、100mの直線で結んだオーバルコースを舞台に朝から日没まで走り回った。初めてユイレーシングスクールに参加した人も、初めてオーバルコースを走った人も、初めて自分のクルマのスロットルを床まで踏んだ人も、最後にはかなりのペースでクルマを走らせることができていた。

 
 
  こうして11年目のユイレーシングスクールの活動は全て終了。今年は39回のドライビングスクールとスクールレースを開催し、延べ707名の方に参加していただいた。ひとつの事故もなく無事予定していた全日程を終えることができたのは、参加者一人ひとりの運転に対する意識の高さがあってこそと感謝している。
 
※  クルマはよくできた道具だから、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールは来年2月上旬までお休みですが、それまでにクルマの運転が上手になりたいと思う方はユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスを詰め込んであります。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


YRS座学オンCDは収録時間5時間34分の大作です。


第1回 ユイレーシングスクール

 日本でクルマの運転を教えるようになってから、もうすぐ11年。安全に思いどおりにクルマを動かすためのコツを、わかりやすく説明するささやかな活動も二巡目に入っている。この10月までにユイレーシングスクールを受講してくださった方は延べ11,111名。幅広い年齢層の方が、じつに様々なクルマで参加してくれた。


   
 

 今までの受講者の最高年齢は68歳。それ以降70歳になる今年も続けて参加してくれている。60歳で初めてスクールに参加された方はクルマの運転がよりいっそう楽しくなり、70歳になる今年もユイレーシングスクールが主催するスクールレースで孫ほどの歳の若者に混ざって優勝争いをくり広げている。
   もちろん若い人が主流ではある。1年間に10回もスクールに参加してくれた大学生もいた。何度かスクールに参加してくれた方が、免許をとる前の息子さんを連れて受講されたこともあった。20代で初めて受講した青年は、スクールとスクールレースに通っているうちに、四捨五入すると40歳になるオジさんになった。
 
  クルマの運転は楽しい。身体能力が高いからと言って、それだけで運転がうまいわけでもない。反射神経が多少衰えたとしても、そのことだけで運転がへたになるわけではない。血気盛んな若者が感じられないクルマの動きを年配者だから感じられることもある。運転技術満点の熟年者でも、集中力や体力では若い人にかなわないこともある。若い人も高齢者も、ことクルマの運転に関しては年齢や性別に関係なく同じ土俵で運転技術を磨くことができる。運転に興味を持てば、一生クルマと楽しくつき合っていける。
 
  ユイレーシングスクールではふだん使っているクルマでスクールに参加してもらう。クルマはなんでもかまわない。ランボルギーニのムルシェラルゴが注目を集めたスクールがあったかと思えば、スズキのジムニーが倒れそうになりながらコーナリングの練習をした日もあった。何度かのメールのやりとりで安心できたからと三菱デリカスポーツギアという背の高いワンボックスカーで来られた方もいた。
 
  クルマはよくできた機械だ。ポルシェと軽自動車の動力性能には確かに大きな隔たりがあるが、基本的な運転操作に変わりはない。運転が好きならば、どちらも同じようにクルマを動かすことを楽しめる。速くなければ楽しくない、というわけでもない。パワーなんてあってもなくても一緒。クルマを走らせる醍醐味は、クルマが思い通りに動いた時の快感なのだから。
 
  老いも若きも、どんなクルマに乗っていようとも、運転を楽しみたいという意識さえあればクルマは大きな喜びを与えてくれる。クルマは単なる移動の手段ではないし、リビングルームの延長でもない。クルマは大の大人が一生懸命になれるほど大きな存在だ。
 
  確かに名前にレーシングの文字が躍るものだから、特殊な運転を教えるのではないかと敬遠されることもあった。どんな内容なのか問い合わせもたくさん頂戴した。しかしクルマの運転は、走るところがサーキットであれ公道であれ操作自体に変わりはない。違いがあるとすれば、走る時の状況が異なるだけだ。具体的なカリキュラムを説明すると、迷っていた方も全員が受講してくれた。

  ユイレーシングスクールが目指すもの。それは、安全にクルマを思いどおりに動かすことのできる運転技術を身につけてもらうこと。そのために初心者からベテランまで楽しく練習できるカリキュラムを用意している。必要があれば車庫入れのアドバイスもするし、ドライビングスクール卒業生を対象にしたスクールレースも開催している。本格的なレースに参加するためのアドバイスもする。「クルマの運転のことなら任せて」という意味でのつけた名前だ。
 
  運転がうまくなるためには練習が必要だが、目的のはっきりしない練習は意味がない。運転操作についての知識も必要だが、知識と実際の運転が連携していなければ役に立たない。
  せっかくのクルマをもっと楽しみたい。それにはまず、運転に興味を持つことだ。
 
  いつもの交差点を曲がる時。あなたがステアリングを切るとクルマがどんな動きをしたか覚えておいでですか?
 
 
※  今年のドライビングスクールはまもなく終了するが、来年2月、ユイレーシングスクールは赤いルノー トゥインゴGTと一緒に12年目のカリキュラムをスタートさせる。このかわいらしいホットハッチ。ドライビングスクールの先導車として、あるいは教習車として使うためにルノー・ ジャポンが提供してくれたもの。大いに活用させてもらうつもりだ。

ユイレーシングスクール:http://www.avoc.com/