トム ヨシダブログ


第331回 あ~あっ

ユイレーシングスクールのカリキュラムでは駐車場に並べたパイロンで作ったコースを使うことが多い。サーキットより近くでクルマの動きを観察できるので参加者がどんな操作をしているか把握しやすいからだ。反復練習がたくさんできるから練習にはうってつけなのも理由だ。

いくつかあるパイロンコースのひとつにYRSトライオーバルというのがある。トライオーバルというのは、ストックカーのデイトナ500が開催されるデイトナインターナショナルレースウエイに代表されるおむすび形のコーナーが3つあるオーバルコースのこと。
アメリカのそれは左右対称に作られているけど、YRSトライオーバルは練習のためにデザインしたので3種類のコーナーを設定した。2速に落とすコーナーが2つと3速全開のコーナーがひとつ。

どんなコースなのか、動画が用意してあるので興味のある方はご覧下さい。

・YRSトライオーバル(車載動画:屋根にカメラを固定)
・YRSトライオーバル(車載動画:左サイドにカメラを固定)

で、実は12月に開催したYRSオーバルレースがYRSトライオーバルを使ったので、新型メガーヌRSの4コントロールの動きを可視化してやろうと意気込んでレースの合間にビデオカメラを積んで走ったのはいいのだけど、なんと、なんと、室内に固定したWi-Fiで操作するカメラがこともあろうに走り出したとたんに停止してしまっていた。

左後輪の後ろに取り付けたカメラのほうはしっかり録画していたので、がっかりしながらもなんとか編集したというおそまつ。ステアリング操作と後輪の動きがどう関連しているかを絶対に見てみたいので、また来年、機会があればやりますとも。


というわけで、コーナリング中のクルマのサスペンションは動きっぱなし。タイヤは上下動するしトー変化もする。だから、タイヤのショルダーとフェンダーの距離が変化するのが4コントロールによるものだと断定はできないけど、まぁ、YRSトライオーバルを走っている時、メガーヌRSの左リアタイヤはこんな動きをしていますよ、ということで。

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動画から直線とコーナーでキャプチャーしてみたけど
静止画ではわかりにくい
どうすればいいかどなたかアイディアをお願いします


YRSトライオーバルを走るメガーヌRS (2周目にスローモーションを挿入)




第329回 自転軸

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2018年最後のYRSオーバルスクール
参加者全員で記念撮影


ユイレーシングスクール一押しのカリキュラムがYRSオーバルスクール。
「楕円形のコースをグルグル回るだけで面白いの?」という声があるのは知っているけど、それはオーバルコースを走ったことのない人が言う言葉。オーバルコースを走るのは間違いなく面白いし楽しいし、ためにもなる。

なぜか。一方向にしか走らないオーバルコースでは、速く走ろうとすると全周にわたってタイヤの限界を余すところなく使い続けなければならない。左右のコーナーがあるロードコースではどこかで妥協しながら平均速度を上げていくという作業が必要だけど、オーバルコースでは限界の線上でクルマを操り続ける必要がある。

クルマが加速、減速、旋回を繰り返す時、タイヤは駆動力、制動力、コーナリングフォースを発生する。クルマを限界で走らせるには、例えば10のグリップがあるタイヤを履いていた場合、タテとヨコに使うグリップの和が常に10になっていなければならない。摩擦円の理論だ。タイヤに余力が残る9.5でもだめだし、限界を越えてしまう10.3でもだめだ。その上、走行中のタイヤのグリップはタイヤにかかる荷重とタイヤの滑る量で変化する。設計上はグリップ10のタイヤでも、走行中は8になったり13になったりする。すると今度は増えたり減ったりするグリップに応じてタテとヨコの和が常に100%になるように操作する必要がある。しかも、クルマにはそんなあやふやなタイヤが4本もついているのだ。

YRSオーバルスクールは常連の参加が多いけど、彼ら彼女らはまずアンダーステアを出さない。速く走っているのにアンダーステアとは無縁だ。それは駆動方式に関係なく後輪を使ったコーナリングができるからだ。つまりターンイン後に、後輪にもスリップアングルがつくような操作をしているから、ちょうど4コントロールの逆位相が機能した時のようにホイールベースの中心あたりに自転軸をおいたようなコーナリングができる。

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クルマは自転しながらコーナリング(公転)をする
(写真はカタログから拝借)


4コントロールが装備されていないクルマの場合、操舵装置のついていない後輪にスリップアングルがつけるのには遠心力に頼るしかない。速度が上がれば遠心力も増すから、フロントが逃げない範囲でより高い速度からターンインすれば後輪にも十分なスリップアングルをつけることができる。この時、舵角を必要以上に増やさないのがコツだ。前輪のスリップアングルがアンダーステア方向に大きくなっていくと後輪のそれはそれ以上大きくならないからだ。

4コントロールがついていれば、コーナリング中にステアリングを切り足せば旋回半径を小さくできるから、真っ直ぐ進入して真っ直ぐに出て行くような走り方も可能なはずだ。いずれにしろ、クルマは後輪を使って曲げなければならないのは同じだ。

ある程度クルマを速く走らせないと『 どうするとどうなる 』といった人間の操作とクルマの挙動の因果関係を理解しにくい。だから、慣れれば100キロ超からターンインできて、10秒に1回同じコーナーが現れるオーバルコースでの反復練習がうってつけなのだ。

もちろん、常連組も最初から速かったわけではないし、失敗なしで走っているわけではない。失敗はするけど大きな失敗はしないし、失敗してもごまかす方法を知っているからクルマを前へ前へと進めることができる。そのうちにとんでもなくうまくいく時がある。そのうちにタイヤの限界を越すすれすれの状況を維持できるようになる。そんな、自分とのやりとりを延々と続けられるのだからオーバルコースが面白くないわけがない。


◎ YRSオーバルスクール動画
IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい。

↑ ブレーキングで前に荷重がかかりすぎている場合はターンインして下り始めると右前輪が悲鳴を上げる。前過重を抜かないようにフロントを拾う。

↑ 下のコーナーのアプローチは斜滑降のようなもの。外に逃げようとするクルマの向きを変えるのは永遠の課題。

↑ 下りかけるとフロントがストンと落ちる。その直後、前過重になり軌跡が変わる。




第328回 スリップアングル

クルマが旋回運動を始めると弾性体であるタイヤは遠心力を受けてよじれる。よじれるとタイヤの接地面ではズレが生じる。ズレが生じることでタイヤはグリップを発生するのだけれど、その結果タイヤが回転しながら進む方向は、実はタイヤが向いている方向と一致せずにその外側に軌跡を描くことになる。この差をスリップアングルと言う。クルマの操縦性を語る時に非常に重要な要素だ。

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スクールでこんな話をする。

片側2車線で右折車線のある交差点。右折車線から対面交通の隙間をぬってUターンしようとしたクルマ。しかし1回で回りきれずに停止。切り替えしてUターンしたものの運転というものがわかっていないことを露呈してしまった、という話。

なぜ1回でUターンすることができなかったのか。その原因を考える。

対向車が来る前にUターンしてしまおうと思ったご仁はステアリングを切りながら加速した。過重は後方に移動し前輪の荷重が減少。車輪にかかる荷重こそグリップの源だというのにそれが抜けたのだから、前輪のグリップが減った状態でステアリングを回したことになる。グリップが減少しているのだからいくら大きな舵角を与えたとしても、フロントが逃げクルマの向きは変わらない。

こんなことが実は起きていた。その時、4本のタイヤの接地面を見ることができれば、前輪のスリップアングルがとてつもなく大きく、後輪のそれは無に等しかったはずだ。それではクルマが向きを変えるわけがない。アンダーステアとも言う。そんな状況をこのご仁は知る由もない。

スクールではどうすればUターンが成功したかを説明する。1発でUターンを成し遂げるためには、右折車線で直線的に加速しスロットルを閉じるか、あるいは軽くブレーキングをしながらステアリングを切り始めなければならない。要するに回頭性がよくなければUターンはかなわないのだから、理論的には前輪よりも後輪のスリップアングルが大きければ回頭性がよくなるのだから、必然的に前輪のグリップを高め後輪のグリップを弱めるために前過重でステアリングを切らなければならない。結果としてフロントが逃げないから前輪ののスリップアングル < 後輪のスリップアングルの状態を維持できる。だから回頭性が高まり小回りできることになる。

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深夜の交差点でちょっとオーバースピードで飛び込んだ時。アウト側前輪に荷重が集中する前にクルマが旋回運動を開始した。

湖西道路から自宅へ続く道にある左の鋭角コーナーで、いつものように左手で迎えにいってステアリングを切る。「あれぇ、変だな。切っている途中で戻し始めないとならないね。ルーテシアRSだと切った後にホールドしている時間があったのにねぇ」。

もっといろいろな場面で確かめないたい気が湧いてきたところで。理論的には、前輪にしか操舵装置のついていないクルマはの旋回中心は、後車軸の延長線と舵角のついた前輪に対する垂直線の交点だからあくまでも後ろより。常にホイールベースの長さ分だけ後輪が前輪を追いかける図式になる。だからアンダーステアから逃れることができないし内輪差も生じる。人間がなんとかしないと前輪のスリップアングル > 後輪のスリップアングルという呪縛がつきまとう。

前輪にある条件で舵角が与えられた場合、間髪を入れずに後輪にも舵角がつく4コントロールでは、クルマの旋回中心が前後タイヤに対する垂直線の交点になるから、言ってみればホイールベースの中心付近のどこかを軸にクルマが円運動をすることになる。だから前輪だけ操舵のクルマに比べて少ない舵角でコーナリングができるし、アンダーステアが出やすい状況でもそれを抑制することが可能になる。これが逆位相の効果のひとつだ。

対向車の直前でUターンをするなど品のないことをしてはいけないけど、例のご仁も新型メガーヌRSに乗っていたら1発でUターンが成功したかも知れない。


【追記】 個人的な話ですが、4コントロールの効用が少しずつわかってきました。しかしながら4コントロールに頼り積極的に利用して走ろうとはしないほうがいいと思います。ユイレーシングスクールは4コントロールの恩恵にあずかれるのは、クルマをきちんと動かせる技術があってのことだと思っています。新型メガーヌRSのオーナーの方はクルマとの対話を進めるためにぜひユイレーシングスクールに遊びにきて下さい。



第279回 軌跡

しばらく前に、スタッフのKさんがフェイスブックにアップした写真。なんでも、Kさんが駐車場を出た後に奥さんが撮ったものだというが、ここまでクルマの動きを想像させるものは貴重。薄っすらと雪が積もった状況もめったにあるわけではないし、再現するのは難しいだろうし。

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4輪の軌跡が明確に示されているからあれこれ見えてくるものがある
・まず前輪が進む軌跡と後輪の軌跡の違いが明白だ
・前輪と後輪が同列上で発進し徐々に内輪差が生まれコーナリングの終わりに収束するのがよくわかる
・次に内輪差の大きさに注目しなければならないだろう
・こんなに大きいのだ
・だが外側前後輪より内側前後輪の内輪差ほうが大きいね
・内側前後輪のほうが回転中心に対して近いからだな
・でも前後輪の軌跡から想像するとホイールベースが長いと内輪差が大きくなるのがわかるね
・それにしても、据え切りしたまま発進しないで直進状態で発進して転舵しているのは
・だけど右コーナリングが終わり左コーナリングに移ると内輪差がない !?
こういう状況だとKさんがやらないわけがないけれど
本人曰く
「ゼロカウンターくらいだけど右に左に少し滑らせて出てったの分かっちゃう?(^^;)」
やっぱりね



第241回 新しい靴

ルーテシアⅣRSがやってきたのは2015年3月の初め。それ以来2年とちょっと。長尺の荷物を運ぶために何度かフィットRSで行ったり、たまにはエンジンを回してやらなければとルーテシアⅢRSを2度ほど連れ出した以外は毎回スクールで使ったから、5月の末にはオドメーターが47,300キロをさすほどに。

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入稿時には5万キロ近くにも


鈴鹿サーキット、富士スピードウエイのレーシングコーストショートコース、筑波サーキットのコース1000、阿讃サーキット。スクールを開催しているサーキットは全て走った。お世辞ではなく懐の深い、具体的に言えば伸び側のダンピングが秀逸なサスペンションをしっかり堪能できたし、パドルでもフロアセレクターでもできるシフトチェンジはたいそう楽で楽しかった。

とは言え、サーキットと駐車場にあつらえたパイロンコースを含め5万キロ近く走ったのだから、ショルダーの磨耗が進むのはいたしかたなかった。スクールの参加者に乗ってもらった時にもタイヤをこじらないようにアドバイスしたのだけど、そこはハイパワーのFF。ショルダーのエッヂが丸ぁるく削れるのを避けられなかった。

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一度前後のローテーションはしたけどFFでサーキットを含む5万キロでこれなら悪くない

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以前に左前に履いていたタイヤ


立っていたエッヂがなくなると微舵角の時の反応を得にくくなる。ショルダーが削れると、ことに扁平率の小さなタイヤでは横方向のグリップに対してだらしなくなる。そこで、まだまだ使えるタイヤではあるけれど、一度リセットするために定期点検の時に磨耗が進んでいると言われていたフロントのブレーキパッドとタイヤを交換することにした。

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新しい靴はダンロップDZ101の205/45R17を通販で安く買った
こんな荷姿で到着
安いから古いタイヤなのかなと思ったけど製造年月日は2016年9月上旬
生産国がインドネシアだったけど最近のアジアンタイヤのレベルを知っていれば・・・

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お世話になっているルノー滋賀栗東
今回は持ち込みタイヤを快く換えてくれた
※将来持ち込み部品の取り付け/交換は別途費用が発生する可能性もあるそうです

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外したタイヤはエッヂを気にしなければまだまだ使えるレベル
裏表を換えればあと4万キロはいきそうだけど
だけど扁平率の小さなタイヤは基本的に一度外したタイヤは使わない主義

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新品の時の溝の深さは測ってないけど浅いところで4mm深いところで5mm強残っていた

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交換したフロントのブレーキパッド
左右どちらもピストン側より固定されている側のパッドの磨耗が進んでいた
残り3mmと4mm

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ダストの少ないパッドにすることもできたけどパーツの耐久性もみたいから純正品を選択
新品のパッドの厚みは12mm
ローターにも問題なし

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エッヂが立ってシャキッとした

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ガレージの中の弟は惰眠をむさぼったまま(笑)

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今回の代車キャプチャーも良かった



第223回 プッ

某タイヤメーカーのCM。パソコンに向かって音声だけを聞いていたのだけれど、思わず吹き出してしまったぜ!


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ついたよ。                   <沈黙>
どしたの ?

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おりたくない。
もっとのってていい ?             <間>
あなたはおりて !

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えっ !?



※写真は某タイヤメーカーのウェブサイトに公開されている動画をキャプチャーして無断で使わせていただいています。支障がある場合はご連絡いただければ幸いです。


第172回 コンタクトパッチを意識する

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最大加速度は思っていたよりも手前の地点で0.452

自分で言うのもおかしいけれど、クルマの運転に関してはケチだと思っている。

もちろん、ケチと言ってもクルマにお金を使わないということではなくて、無駄な費用が発生するようなことはしないという意味だ。
例えばタイヤ。サーキットを走ったりすると、前輪のショルダーが削れてしまうことがある。アンダーステアになっていてタイヤの向きとタイヤが進む方向が一致していないのが最たる原因なのだが、いったんショルダーが丸くなってしまうとエッジが使えなくなって微舵角での手ごたえをスポイルしてしまうから、そうならないような操作を最優先している。
その結果、ショルダーを使って走るよりも遅くなったとしても(遅いとは思っていないけど)、それはそれでかまわない。タイヤが地面に接するコンタクトパッチの形状(大きさではない)が変わるような走り方はしない。クルマはに走らせたい。そう思う。

YRSのスクールでもたまにショルダーを痛めてしまう人がいる。アンダーステアが出ないような操作をして、4輪を使ってクルマを曲げるようにすればそうならないのだけど、「速く走ってやろう」なんて邪心があると(笑)クルマさんの事情を無視してしまうことになる。口を酸っぱくして「対角線に荷重が移動しないようにして下さい」、「こうすれば修正できます」とアドバイスしても理論より熱い思いが先走ってしまう人が少なくない。

昔からタイヤの変形を本当に意識して運転している。もちろん目視することはできないから想像の範囲でのことだけど、できる限りタイヤの断面が横方向に変形しないように心がけて全ての操作をしている。その上で、レースではいかに速く走るか、公道ではいかに危険な状況に踏み入れないか、に集中してきた。
クルマの性能を引き出すにはタイヤに頼るしかないし、タイヤがきちんと路面に接していなければクルマはその性能を発揮しない。逆にタイヤがしっかりと地面をつかんでいれば、想像する以上簡単に安全も速さも手に入る。それが自動車だと思っている。

で、筑波サーキットコース1000で外周だけ走るとオーバルコースに似たレイアウトをとることができる。そこをタイヤの接地面=コンタクトパッチをいかに変化させないかをテーマに3周だけ走ってみた。そのうちの加速度にメリハリがあった周の動画がこれ。

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1コーナー手前の最大減速Gは-0.795

0oval減速g2
最終コーナー手前の最大減速Gは-0.837

0oval横2
最終コーナーを回っている時の最大横Gは0.994

0oval横g
最終コーナー立ち上がりの最大横Gは0.931

※図右下のコース上で×印があるのがそれぞれの加速度を拾った地点

グラフを見ればわかるけど、加速度というものは決して一定ではない。計測に使ったパフォーマンスボックスというGPSを使ったロガーの精度も関係しているだろうけど、減速以外はかなり加速度に波がある。と言うことは、タイヤにかかっている負担も刻々と変化しているわけで、つまりタイヤも絶えず変形している可能性もあるわけで、加速はスロットルは開けっぱなしにしてクルマに頼るしかないけれど、ステアリングはただ切ればいいというものではないことが想像できる。

中には、速さが手に入るのならショルダーの磨耗も仕方がないと思っている人がいるだろう。でも、そうやって手に入れた速さって、その人の本来の速さとは違う。タイヤを痛めてもかまわない、という前提の上での速さだから。
逆に言えば、タイヤを痛めていいのならそれなりの速さは手に入る。ただし遅かれ早かれ、痛めた時と痛めなかった時の速さにそれほどの差がないという現実に行き当たるだろうけど。

タイヤを意識して走っている限り速くは走れないんじゃないか、と言う意見もあるだろう。けれど心配はご無用。
余裕を持ってコンタクトパッチを意識して走っていれば、タイヤがグリップしている状況がわかるようになる。タイヤの限界を超えないように走っているとどんどんタイヤへの負担が減る。すると、タイヤがずれていない区間でクルマの性能を引き出していないかがわかる。それがわかるから、速く走る必要ができた時に何をすればいいのかがわかっている、という寸法だ。

アメリカでレースをやっていた時も、お金がなかったせいもあるけど、とにかくタイヤの使い方には最大限の努力をした。
予選でタイムが出ないことがあっても、自分なりに、タイヤを痛めない範囲での速さで十分と言い聞かせていた。だから、どんどんマージンがたまっていった。
運転している意識としては「全開」だったことはない。いわゆる、プッシュする前の状態で常に走っていた。だから、50レースぐらいやったし全米6位にもなったけど、1度もスピンをしたことがないのが自慢と言えば自慢。
で、レースになってここぞという時に、かっと目を見開いて次のステップへのスイッチを入れるのだけど、それでもタイヤを痛めることはまれだった。タイヤにタイヤとして最大限の仕事をしてもらうために、タイヤ断面とコンタクトパッチの変形にいつも気を配っていたおかげだったな、と今でも思っている。

だから、ひょっとすると運転が上手くなるための方法のひとつは、ケチになることかも知れない。



今回のベストラップは27秒7だったけど、あと1秒は簡単につめれるだろう。
走りながら、いくつかの場面でタイヤの限界に挑むことを躊躇していた。ショルダーに負担をかけまいとするがあまり、ショルダーを使わない区間でも遠慮があった、というわけだ。
そんなタイヤに余力があったところを修正し、使いきれていなかったクルマの性能を引き出し速さを手に入れる。そんな流れがユイレーシングスクールが目指す本来の運転だ。

【追記】減速Gのグラフでは、1コーナーも最終コーナーもマイナスの最大加速度がターンインの1秒から1秒半ほど前に発生している。その後、減速Gが急激に減るのと並行してクルマがコーナリングを始める。これが4輪を使ったコーナリングの第一歩だ。


第145回 それなりに

オドメーターの数字が5000を超えたばかりなのに鈴鹿、阿讃に次いで3つ目のサーキット、筑波サーキットコース1000を走った。その時の動画がこれ。

YRS筑波サーキットドライビングスクールの昼休みに走ったので時間は限られていた。だから、回す気にはなっていたけれどルーテシアRSの性格をつかむところまではいかなかった。懐の深い足回りの入り口ぐらいまでは体験できたけど。

振り回せばもっと速く走ることもできると思うのだが、それは主義ではないし、タイヤのコンタクトパッチの形状をできるだけ変えずに走りたいのでもう少し走りこむ必要がある。

個人的にもユイレーシングスクールとしても、クルマに負担をかけて速く走ろうとするのには賛成しかねる。

例えば、FF車にその傾向が強いのだが、前輪のショルダーまで使ってコーナリングすることだ。ショルダーを使うほど攻めたって気持ちにはなるかもしれないけど、それで速く走れるかというとむしろ逆だ。荷重がアウト側前輪だけにかかった状態ではクルマが前に進まない。

大切なのは、それなりに走ることだ。今回もショルダーを痛めない範囲で、どれだけ短い時間でルーテシアRSの特性をつかみ、前後のスリップアングルを均等にしながら走れるかをテーマにした。だから、ショルダーが巻き込みそうな時は何もしない時間を作った。

それでも合計8周した前輪のトレッドには、アウトに逃げた形跡があった。右も左もだ。悔しいけど、まだリアタイヤが使えていない証拠。ただ、どうすればいいかはわかったので次回に試してみたい。クルマに負担をかけなくても、速さを追求する方法はいくらでもあるのだから。

写真は走行後のタイヤ

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145-1FL

ルーテシアⅣRSには、中低速の回り込んだコーナーが多いサーキットより、高速コーナーや短いコーナーのあるサーキットが似合いそうなの雰囲気なので、機会を見つけて4つ目のサーキットを走ってみたいと思う。


第103回 ホットハッチ考 2

GD1フィットをそう呼ぶのには異論があるだろうが、1.3リッターSOHCエンジンにCVTの動力性能であっても自分にとってはまぎれもないホットハッチだった。
移動の道具として、機材を運ぶ手段として、現在の日本の交通事情を考えて、なおかつ燃費とか税金とかを含めた効率を考慮に入れればクルマとして十分な価値を備えていた。しかも、9万キロ余りドライビングスクールを支えてくれたのだからお互いに良い出会いだったと思う。


最後に撮った写真 タイヤは14インチのスタッドレス

そんなGD1フィットなのだが、最初に乗った時には少しばかり戸惑ったことがある。減速中に停止寸前の速度になると、フットブレーキ以上の減速度が立ち上がるのだ。CVTの構造からしておおよその想像はついたが、どう踏力を変えてもその性癖は治まらなかった。
技術的に確かめたわけではないのだが、おそらくある一定の速度まで減速するとドライブ側のプーリー径が機械的(電気的?)に小さくなる設定なのだろう。それで、車速に忠実なドリブン側のプーリーの回転に抵抗が生じて急激なエンジンブレーキがかかったような速度の落ち方をしたのだろう。特に減速の直前までしっかり加速をしていた時にその傾向が強かった。

そんなCVTだったが、非力な1.3リッターエンジンを補う活躍をしてくれたのも事実。これがGD1フィットをホットハッチだらしめた大きな理由でもある。
CVTとしては初期のデザインに属するのだろう、急加速が必要な時にスロットルを開けてもエンジン回転が上がるだけで車速が伸びない。スロットルを開けても、まるで駆動力が必要だと判断されたかのようにドライブ側のプーリーが小さくなる、当然ギア比(?)が大きいままなので加速しない、そんな感じだ。
そこで一計を案じた。急加速が必要な場合にはローレンジにダウンシフトする。当然エンジン回転はそれ相応に上昇する。それを待って、少しばかりスロットルを開ける。開け続けても車速は伸びないので、ある程度開けたところで止める。セレクタをドライブレンジに戻してから、今度はスロットルをゆっくり少しずつ戻す。すると、GD1フィットは2クラス上のセダン並みの加速をしてみせる。

ストットルを開けてもドリブン側のプーリーが小さくならないようなので、エンジン回転を下げることでドライブ側のプーリーが大きくならないかなと考えたのだ。

そんな使い方が正しいのかどうかわからないが、時たまそんな使い方をしながらもエアコンのコンプレッサー以外に不具合もなく走り回ってくれた。

なにしろ全くのノーマルで乗り続けていたのだが、重い機材を乗せて走っていると踏ん張りが足りないと思っていた。それで、純正のタイヤの溝が少なくなってきたのを期に、タイヤとホイールを換えることにした。
ホイールは純正の5.5Jx14のスチールから6.0Jx13のアルミホイールに。オフセットは15mm小さくした。タイヤは純正の175/65R14からごくふつうのBSスニーカーの185/60R13に換えた。

これが大当たり。踏ん張りがきくようになり、ごくわずかな舵角でも前輪にかかる応力が診てとれるようになった。もっとも、ハイトが高くなった分だけほんの少しだけ応答性は悪くなったが、そこはそれ、操作の開始を手前にもってくることでなんなく修正した。
コーナーの続く道ではサスペンションに手を入れたロードスターになんなくついていけたほどにロードホールディングが高まり、タイヤ幅の増加に合わせて空気圧を5%ほど高めていたから、燃費はついぞ16キロを割ることはなかった。

結局、オイル交換以外はエアコンのガスを1度、ブレーキパッドとブレーキシューを1度交換しただけ。タイヤとホイール以外はショールームストックの状態での9万キロだから、クルマの使い方としてはそれほど悪くはなかったかなぁ、と思っている。

ホットハッチ考 続く


第98回 タイヤは動く

鈴鹿サーキット国際南コースでドライビングスクールを開催した。

もともとはカートコースとして作られた通称南コース。全長は1,264mで、筑波サーキットのコース1000(1,039m)や富士スピードウエイのショートサーキット(ユイレーシングスクールが使用しているレイアウトは880m)よりは長い。

しかしカートレースを前提としたレイアウトなので、ここを4輪で走るとなるとかなり忙しい。ひとつひとつのコーナーは単純な形だから理論通りに走ればいいはずなのだが、特に前半のテクニカル部分ではコーナーが連続しているので最適な走り方を探すのが難しい。だから練習しがいがある。
速いクルマでも平均速度が70キロ/時にやっと届くぐらいだから絶対的な速度は速くない。速く走るためには『加速できない』区間であるコーナーをいかに速度を乗せて走るかが肝心なので、加速から減速、そしてターンインへの流れの中で、その時の状況に合わせ、かつ速度を高く維持するための操作を見つけ出す必要がある。その意味でドライビングスクールを開催するにはうってつけのレイアウトだ。

で、午前中が雨、午後が晴れという理想的なコンディションで開催できた今年のYRS鈴鹿サーキットドライビングスクール南。参加者が走るセッションの合間にビデオの撮影をした。
今回のテーマは動く足。ほんとうはサスペンションアームの動きを撮りたいのだが小さいトゥィンゴにはカメラを収めるスペースがない。それで前輪の動きから想像してみることにした。

結果はと言うと想像通り。縁石に乗るとかの大きな入力を受けない限り、そしてトランジッションを意識して走る限り、バウンドもリバウンドも最小限。足を締め上げたルノー・スポールだからとも言えるが、上屋を支える足が安定している様は感動モノ。
やっぱり、クルマはスムーズに、途切れなく走らせることが大切なのだなと。

同じラップの外撮り、車載、前輪アップをまとめた動画がこれ

※今だからこそドライビングスクールにうってつけだと思えるけれど、来日中の1989年7月に南コースのオープンに招待されて鈴鹿サーキットが用意したノーマルのシビックで走った時には奥のヘアピンがいやでいやで仕方なかった。なんのことはない。当時は単に低速コーナーが嫌いなだけ!?だったみたい。そんなことを思い出しながらの撮影だった。
※外撮りの動画は東京から参加された中沢 隆さんが撮影してくれました。
※カット写真は大阪から参加された目代英一郎さんが撮影してくれました。