ブログにふさわしい話題かどうか迷ったのだが。
筑波サーキットでドライビングスクールを開催した帰り道で事故に遭遇した。
深夜1時過ぎ。東名高速大井松田IC手前にある電光掲示板に「右ルート事故」の表示。事故で渋滞している可能性もあるし左ルートを選ぶこともできたけど、日本に戻ってから一度もトラックの多い左ルートを使ったことがないのと大急ぎで帰らなければならないわけではないので迷わず右ルートへ向かった。
右ルートに入ってから10分ほど。右300R、左600Rと東名高速にしてはきつめのコーナーを抜け、続くブラインドコーナーの左320Rを抜けるころ視界の左隅に燃え盛るクルマが飛び込んできた。「これか!」
ガソリンに引火しているようで火の手は大きく周囲は昼間のように明るい。とっさに状況を確認すると燃えるクルマの手前に停まっているクルマが1台、通過しながら確認すると燃えるクルマに乗っていた人らしき姿が見えない。「どういうことだ!」
自分が停まったからといって何かできるとは思えないが、炎を上げて燃えるクルマを横目に乗っていた人の無事を確認しないまま通り過ぎることも難しい。幸いこの場所は昔バス停があったところでたいそう広いスペースが路肩にある。左手の土手にそって停めれば本線までに十分なスペースがあると判断し、十分に距離を置いてからクルマを停める。
クルマを降りて燃えるクルマに向かう。火の暑さをなんとなく感じるところで、立ちつくす2人のシルエットが浮かび上がった。「大丈夫ですか?」声をかける。近寄ると男性と女性。ふたりとも立っていられるほどだからそれほどの負傷はしていない様子。男性は頭や顔や腕から出血しているけど、女性と会話しているから緊急を要する事態ではないと見た。
「通報はしましたか?救急車は呼びましたか?」そう聞くと、女性が「前に停まってくれた人がしてくれました」。裸足の女性は「ふたりとも携帯がクルマの中で・・・」、「この人を座らせてあげたいんですけど・・・」と続け、男性に「大丈夫だからね、大丈夫だからね」と声をかけている。
ルーテシアRSに取って返し、スクールで使うブルーシートと洗いざらしのタオル数枚、封を切っていなかった500ccの水、ホテルから持ってきた使い捨てのスリッパを抱えて戻る。スミマセンと繰り返す女性。少し興奮気味の男性に横になってもらうことぐらいしか、自分にできることが見つからない苛立ち。
クルマを停めてから5分は立っている。通報はその前にされているという。大井松田の電光掲示板に「右ルート事故」の表示があったのだから、その時点で管理者は事故の発生を認識していたはず。それから10分は走ってきている。パチパチと音を立ててバブルキャブのトラックが燃え続けている。
それにしても、こんなにも救助を待たなければならないのか。119番に電話すればいいものを、こちらも焦っていたのか110番に電話してしまう。「はい。事件ですか事故ですか?」。またか。いつものことだ。
「東名右ルート75.8キロポストあたりでトラックが燃えています。2人が負傷しています。救急車、消防車は出動していますか?確認して下さい。」つい乱暴な口調になる。
手配済みと言われれば待つしかないが、それにしてもこの時間は絶望的だ。
やがて1台のクルマがやってきて火災現場の手前で停車。すでに20分が経過している。道路管理者とおぼしき人が火の勢いの弱まったトラックの横を通りこちらにやってくる。「乗っていたのは?」と聞くから、「このおふたりです」と答えたら、「大丈夫ですね。もうすぐ救急車が来ますから」。たったそれだけ言って戻ろうとするから、「救急車はいつ来るんですか?」と聞くが、「間もなくだと思います」だと。なんなんだ、いったい。
それから5分ほどしてようやく消防車が2台やってきて、その影から救急車が現れた。投光器で現場が照らされ、ようやく男性がストレッチャーに乗せられ救急車の中へ。
最悪の場合も想定してクルマを停めた。今回はふたりとも軽傷ですんだようだが、どんな理由があるにしろ事故を起こしては絶対にだめだ。
便利な自動車を運転していて怪我をするのも、乗っている人や他人に怪我をさせるのもだめだ。
クルマは人が傷つくためにあるのじゃない。
大げさではなくて、事故を起こしてしまったら誰も助けてくれない、ぐらいの意識を持ってもすぎることはない。
事故を起こさないためにも、もう少し真剣に運転してみてはどうだろう。もう少し運転に集中してみてはどうだろう。事故を起こさないために何をすべきかを考えてみてはおうだろう。
ボクは、『絶対に事故は起こさない』という覚悟を持って運転している。運転中は音楽も聞かない。外の音を聞きたいから雨の日でも窓を少し開ける。周囲の状況にこれでもかと気を配る。自分のことよりも交通の流れを優先する。
自分がクルマを、クルマが自分を裏切る状況におちいりたくないから。
【 追記 】
やってきた救急車と消防車は小田原消防署のものだった。調べてみたら小田原市消防署以下、消防署が1ヵ所、出張所が6ヶ所、分署が2ヶ所ある。大井松田ICのそばには松田分署がある。75.7キロポスト付近の駿東郡小山町は松田分署の管轄に入っていないので、他の消防署か出張所から出動したのだろうか。大井松田ICから事故現場まで18.1キロしかないから、どう考えてもあれだけ時間がかかるとは思えないが、消防の都合でそうなったのだろう。
しかし、もしあの事故が一刻を争う事態にあったならばと考えると、今さらながらにゾッとするのだ。
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そのコーナーアプローチ
そのコーナー立ち上がり
※写真は2枚ともGoogle Earthから借用
実はこのコーナー、以前にも2回事故を目撃している。1回目は雨の日にスポーツカーがひっくりかえっていた。2回目は雨でもないのに軽トラックが横転していた。どちらも救急車は来ていなかったが、すでに何台ものクルマが停まっていて、何人もの人が立っていたから自分の出る幕ではないと判断して通過したことがある。