第208回 ユイレーシングスクールを受講された方のレポート
Iさんから先日受講したYRSオーバルスクールの体験記を掲載したと連絡があった。めったにないことなので、よそのメーカー系のサイトだけど紹介したい。
ユイレーシングスクールは運転が好きな人はどなたでも、どんなクルマでも大歓迎です。
Iさんから先日受講したYRSオーバルスクールの体験記を掲載したと連絡があった。めったにないことなので、よそのメーカー系のサイトだけど紹介したい。
ユイレーシングスクールは運転が好きな人はどなたでも、どんなクルマでも大歓迎です。
晴れ男を自認していたのだけれど、今年は降られることが多かった。特に10月は。
もっとも、ユイレーシングスクールが目指す『上手い運転』は、根底にある『どんな状況でもクルマの性能を引き出せる運転』 がはずせないわけで、ウエット路面での練習は大いに歓迎すべきもの。散水車をレンタルする必要もないし。準備と後片付けはつらいけどね。
雨が降ると参加者に「今日はラッキーですね」、「今日はお日柄もよく」といつも言うものだから、常連はもちろん初めて受講する人もウエット路面に対する抵抗感は少ない。せっかく練習するのだから、操作が正しいかどうかはっきり結果の出る雨は願ったりかなったりではないか。
たまに、雨だと滑るとかたくなに思い込んでいてうかぬ顔をしている人がいるけど、雨だから滑るのではなくて、厳密に言えばクルマは絶えず滑りながら動いているものであって、雨だとドライ路面に比べて滑り方が違うだけだ、滑る量が増えて滑る速度が速くなるだけだ、と説明する。
滑る表現すると違和感を感じるかも知れないけれど、実際問題クルマは路面に張り付いて走っているわけではない。タイヤは路面に対して常にズレながら、つまり実際はごくわずかにこすれながらクルマを動かしている。でなければ、走行距離を刻んだタイヤが減るわけがないではないか。タイヤが路面とこすれるからグリップが生まれる。消しゴムのように。
だから、タイヤが路面とズレる状態を滑ると解釈すればいい。『滑りにくいはずのドライ路面』でも、ズレすぎないようにムズムズしていたフロントタイヤが堰を切ったように滑り出せばアンダーステアになって曲がらないし、遠心力を必死になってこらえていたリアタイヤがズレすぎて突然大きく滑ればスピンもする。
クルマ側から見ると、アンダーステアもオーバーステアもなんらかの操作をした結果であって、運転しているクルマが自然にそうなった、ということはありえない。
結局、『そうなりやすいウエット路面』が敬遠され、あるいは雨イコール滑りやすいと思い込まれているのだろうけど、実際は極端に操縦性が変化するわけではない。クルマの限界というものは我々が考えるところよりずっと上にある。
クルマの性能はそれまでと同じなのだけど、タイヤが接している路面のほうの摩擦係数が小さくなるので、タイヤが路面をつかむ力は低くなるし限界を超えた時の挙動も唐突になるのは事実ではある。だけど、短絡的に雨は危ないと決めつけて消極的になり、ウエット路面での操作を積極的に学ぼうとしない人が多いのはドライビングスクール主宰者としては残念だ。
結論を言えば、タイヤがグリップを損なわないように走れば雨でもドライの時に近い走りができるし、そういう操作ができることが安全につながり、サーキットでは速さを生む。そして、そういう操作は練習すれば誰にでもできるものだ。
考えればわかる。アンダーステアもオーバーステアも前輪か後輪の2本しか滑ってないではないか。クルマは自分の重さやとてつもなく大きな慣性力を4本のタイヤで支えながら走っているのに、『運転手の手違い』で前か後ろの1本だけ、あるいは2本に負担を集中させることになればタイヤが悲鳴を上げるのは当然だろう。そんな操作をすればドライ路面でも何かが起きる可能性があるのだから、ウエット路面なら目も当てられたものじゃない。
では、どうすればウエット路面を克服することができるか?
タイヤが滑るのであれば4本が滑るような操作をすればいい。エネルギーが同じだと仮定すれば、2本だとこらえられない場面でも4本ならこらえられる可能性が高まる。2本だと滑る速さも速く、滑る量も大きくクルマがバランスを崩すかも知れないけれど、4本なら滑らないかも知れない。例え滑っても、それは穏やかなはずだから、大事には至らない場合が多いはずだ。ひょっとすると、滑ったこと自体気がつかないかも知れない。
だから、4本のタイヤをキチンと使ってあげるのが運転の基本だ。
そんな、タイヤ4本を使った走り方を身につけるお手伝いをするのがユイレーシングスクールのカリキュラム。
そういう走り方をイメージすることができて、実行する意思があれば、ウエット路面ほど楽しくて効果的な練習環境はない。
だから雨が降りそうな時こそ、ユイレーシングスクールに参加することをお勧めしたい。
◎ 翌日のYRSオーバルスクールも雨 雨なら雨でそれなりに
某月某日午後5時少し前
いつものところに いつものように
そこにいるとホッとする
一杯飲みに行く道で目にするキャトルにブログで触れてから1年あまり。あれ以来、なんどとなく赤提灯に行ったのだけど、そこにいなかった時もあってやきもきしたり。それでも大方はそこにいた。
相変わらずつややかな赤をまとうそいつは、今回、リアにラゲッジラックを背負って目に飛び込んできた。ずいぶん前のことだけど一番最初に目にした時は、確かルーフラックもついていなかったと記憶するから、また装いが新たに。
失礼を承知で駐車場に入ってぐるり。『こういう造形は心が温まるよな』、といつもの独り言。勝手ではあるけれど、ずっとそこにいてほしいと思う。個人的にだけど、無機質なデザインや奇抜なデザイン、これでもかっていうデザインが増殖するクルマ社会にあって、こいつを見ると目尻が下がる思いになるからね。
また赤提灯に行こうと思う。
※車名を前回はカトルと表記しましたがネット上で多数派と思われるキャトルに変更しました
at Tsukuba Circuit Course 1K
2002年の5月。町田市に住むHさんがアルファロメオ155に乗って筑波サーキットのジムカーナ場で開催していたYRSドライビングワークショップにやってきた。
YRSドライビングワークショップのカリキュラムはブレーキやスラロームなどクルマの基本操作を練習するのだが、現在ではより広いスペースが使えるFSWで開催している。
同年8月にもYRSドライビングワークショップ筑波を受講したHさんは、9月のYRS筑波サーキットドライビングスクールに参加。翌年には浅間台スポーツランドで開催していたYRSオーバルスクール浅間台にも参加してくれた。
2004年5月のYRS筑波サーキットドライビングスクールから少し時間の空いた11月のYRS筑波サーキットドライビングスクール。Hさんはランチャデルタで颯爽と登場した。
またまた時間が経って2006年11月のYRSドライビングワークショップ筑波。Hさんが今度はルーテシアⅡRSでやってきた。ルーテシアⅡRSでは2007年4月に富士スピードウエイで開催したYRSオーバルスクールと2009年4月のYRSドライビングワークショップ筑波に来てくれた。
その後2回。2010年8月の富士スピードウエイショートコースのYRSドライビングレッスンFSWと2014年7月のYRS筑波サーキットドライビングスクールにはランチャデルタで参加してくれた。
鎌首をもたげて最終コーナーを立ち上がる
カッコイイ
本人は見えないだろうけど
しばらく顔を見ないね、と思っていたら10月6日に開催したYRS筑波サーキットドライビングスクールに申し込んでくれた。
申し込みフォームを整理して名簿を作っていると、Hさんの車名がルノークリオV6になっていた。またクルマを換えたのかなと、当日聞いてみるとランチャデルタはまだ持っているそうで。
9月に次いで参加してくれた郡山のSさんを引き込んでの記念撮影
一時は正規輸入もされたというルーテシア ルノースポール V6。Hさんのはフェイズ1なのかな。
こんなクルマはもう登場しないから大事に乗ったほうがいいですよ、と余計なお世話でした。
隣町に用事があって行った時に、今ではめったに見ることのできないクルマに出会うことができた。なんか懐かしい友達に会ったような感じがして嬉しくて、忙しそうに作業をしているオーナーにずうずうしくも声をかけてしまった。
なんと、そのマツダT2000は現役なんだそうで、運転がちょっと独特で難しいね、とおっしゃるオーナーがたまに転がしているそうだ。
1960年代のクルマがまだ現役で走っているのはすごいことだ。古いクルマに優しくない我が国にあって、維持してその上運転を楽しんでいるというのだから。
その昔。東京の下町にあった自宅の前の道を行き来するのはアメリカ兵が乗るジープ、八百屋さんのオート三輪、米屋さんのオート三輪、近所のお偉いさんを乗せた大きな外車と、汲み取りにくるバキュームカーだった。
八百屋さんも米屋さんも、バキュームカーから伸ばしたホースでたくみにボールを吸い込んでいた人も、みんなみんなボクのヒーローだった。小学校時代の作文に「将来はバキュームカーの運転手になりたい。毎日クルマに乗れるから」と書いたことがあると、いつだったか法事の時にいとこに聞いたことがある。
懐かしさと嬉しさを運んできてくれた出会いだった。
オーナーのこだわり の1
なんとブレーキラインはステンレスブレイデッドホースに換えてある!
オーナーのこだわり の2
乗る頻度が少ないのかバッテリーには保護のためにカットオフスイッチが追加されている
気持ち大径のステアリングホイール
シフトレバーはステアリングコラム右にある
現代の水準からするとクルマとしての機能は低いかも知れないけれど、それだけで存在が否定されるべきではないし、人間を乗せて走り回れるうちは長く長く現役でいてほしいと思うぞ。
アメリカではオーバルレースのことをモメンタムレースと形容することがある。
momentum 【名詞】〔力学〕運動量; 惰性; はずみ,勢い.
反時計回りのコーナーしかないオーバルコースでは、つまり、常に左コーナーを回ることになる。
コーナーが2つのオーバルコースに始まって、デイトナインターナショナルレースウエイのようなコーナーが3つのトライオーバルコース、インディアナポリスレースウエイのようなコーナーが4つあるレキュタンギュラーオーバルがあるけれども、どれも最高速に達するであろうストレートエンドの速度ではターンインできないという宿命にある。
そこで、コースオーナーはコーナリング速度を高めるためにコーナーにバンクをつけてハイスピードのレースを実現する。オーバルレースに参加するチームは、右側後輪を大きくしたり右前輪にマイナスキャンバー左前輪にプラスキャンバーをつけたり、規則で許される範囲であらゆる手を使いマシンが左コーナーだけをより速く走れるようにする。しかし、それでもコーナーに入るのには減速するかコーストしなければならない。
だから、オーバルレースで勝つのにはできるかぎり直線での速度を保ったままコーナーに入りコーナーを抜けることが重要になる。しかも、ほとんどの場合オーバルレースはコーナーが回りこんでいるのがふつうで、速度域が高く空気抵抗も走行抵抗も大きいから、一旦速度を落としすぎると回復するのは不可能に近い。
それで、『ストレートで蓄えたエネルギーをできるだけ殺がずにコーナリングにつなげる』ためのクルマのセットアップが重要になり、それを生かすための走り方が求められる。そんな思想を表したのがモメンタムレースという言葉だ。
因みに、ロードレースのことはトラクションレースと形容することがある。
ユイレーシングスクールがスクールやスクールレースで使っているオーバルコースは、高々130キロぐらいしか出ないけれど、そこを速く走るためには加減速よりも慣性エネルギーを意識する必要がある。加速時間を長くしたり、減速時間を短縮して速さを狙うとます失敗する。
実際、ほんの些細なことで失速するから操作より走り方、意識がラップタイムの向上につながる。だからロードスターがポルシェを「食う」なんてこともありうるから、オーバルコースは面白い。オーバルレースでは、優位に立っていたドライバーがリアビューミラーに大きくなった後続車を見つけたとたんにリズムを崩して後退するなんてことが頻発するから、オーバルレースは面白い。
◎ YRSトライオーバルFSWのオンボード映像
◎ YRSトライオーバルFSWを走るインカーカメラの映像
◎ 9月18日YRSオーバルスクール
◎ 9月17日YRSオーバルレース
速度はそれほど高くないし、セーフティゾーンも広すぎるぐらいだから、ご自身のクルマを目いっぱい加速させてスピードを落とさずにコーナリングしてみたい人にはうってつけのYRSオーバルスクールと、ヨーイドンから最後まで集中を切らしたら終わり、駆け引きを存分に楽しめるYRSオーバルレースです。
みなさん、お待ちしています。
郡山に住むSさんが初めてスクールを受講したのは、2013年4月4日に筑波サーキットで開催したエンジンドライビングレッスン。いささか暴力的な加速を見せるC63AMGに乗ってやってきた。
スポーツドライビングが好きだと言うSさん。その後もユイレーシングスクールのオーバルスクールやツーデースクールやオーバルレースに参加してくれていたのだが、11回目を数えた2014年11月27日のYRS筑波サーキットドライビングスクールを最後に顔を見なくなった。
C63AMGを速く走らせようとするとフロントタイヤのショルダーを削ってしまうことになる。クルマが重いからある程度は仕方ないんですよ、と言ったのがいけなかったのかと。
2015年9月12日に富士スピードウエイで開催したYRSトライオーバルスクールの申し込みフォームにSさんの名前を見て安心したのだが、クルマはケイマンGTSに変わっていた。
富士は遠いんですよねぇ、と言うSさんはそれでも、2015年に富士スピードウエイで開催したスクールに6回参加してくれた。
今年8月。半年ぶりに富士スピードウエイのYRSドライビングワークアウトに顔を出したSさんは、ずいぶんと気持ちよく独特の排気音を響かせて走っていた。
で、帰り際。片づけが終わってルーテシアRSに荷物を積んでいるところにやってきたSさん。ルーテシアRSを指差しながら『これ買ったんです』。一瞬なんのことかわからなかったけれど、『トムさんがいいって言ってたので』と言われて思い出した。そうだ、以前、ルーテシアRSのことを聞かれたから「いいクルマですよ」と答えたのだった。
9月。前日に予定していた今年3回目のエンジンドライビングレッスンを台風のせいで中止にしたのだけど、翌日のYRS筑波サーキットドライビングスクールは快晴。Sさんが強い日差しに映える純白のルーテシアRSトロフィーでやってきた。
オドメータはまだ1600Kmだけどパワーが上がってシフトが速くなったというトロフィーをここぞとばかりに味見
ミッドシップもFFも難なく乗りこなすSさん。でもまだ先があります。また遊びに来て下さい。
8月最後のスクール、YRSドライビングワークアウトの参加者は6名だけ。昨年に比べると全般的に減っているが、それでも今年に入ってからの受講者は323名にのぼる。で、今年12月にユイレーシングスクール17年目が終われば延べ1万5千人あまりの方に運転の楽しさ、面白さをお伝えしたことになる。
ここ数年、初めてユイレーシングスクールを受講してくれる人が増えているのが大きな励みだが、数あるドライビングスクールの中でユイレーシングスクールを選んだ理由を聞いてみると、「教科書を読んで納得がいった」とか「教科書から方針が読み取れた」とか、ユイレーシングスクールの教科書が直接間接の動機付けになっているようだ。
なんでも合理的にモノが運ぶアメリカから日本に来てドライビングスクールを始めるにあたって、どの道、屋内制手工業的なスクールになるはずだったから、ユイレーシングスクールの主張をはっきりさせるために教科書を作って公開した。
84頁にわたるそれは、それまでの経験から、道具というクルマを動かす時のルールのようなものを自分で再確認するように作ったものだ。
遠方の人は教科書を呼んでユイレーシングスクールのCDを買って運転が上手くなったとメールをくれた。全頁をプリントアウトしてスクールの合間に読んでいた人がいた。実際のスクールを受けると教科書に書いてあったことが理解できたと喜んでくれた人がいた。
そんなユイレーシングスクールの教科書。もっとたくさんの人に読んでもらえると嬉しいと思い、ブログ200回目のテーマにした。
はっきり言って、時間のある時にでも読んで損はないと思います。そして知識と実技のギャップを埋めるのが練習です。教科書の内容を理解しやすいカリキュラムを用意しているユイレーシングスクールにも遊びに来て下さい。