
第736回 7月の沼津港
富士スピードウエイでスクールを3回開催した7月。乗じて沼津港を2回も訪問できた。好物を満喫して幸せ。
ここ数年欠かさないのが駿河湾で獲れる地アジ
この日は地アジ刺しで
たしか焼き魚を注文するのは初めて
前から興味のあった銀鱈の味噌漬け焼き定食
絶妙な焼き加減
身はプリップリで香ばしくもう最高
焼き魚もいいもんだ
昔は青魚は敬遠していたのだけれど
1度口にしたら虜に
赤身と違いなんというか涼しい味
この日も地アジ刺しを前菜で
この日のメインは天丼
ただしいつも食していた海老天丼ではなくふつうの天丼にしてみた
これが大正解
海老2本を初め小魚2種にアナゴにイカ
それに茄子にかぼちゃにししとう等の野菜多数
次に天丼を頼むならこちらにしようと思うほど
追加のタレがついているのも嬉しい
沼津港魚市場正面にあるむすび屋さん
ご主人の仕事が丁寧で目でも楽しませてもらっています
むずび屋さんの回し者ではありませんが
機会があれば1度行かれることをお勧めします
ワタクシの舌がまともだと理解していただくためにも
第735回 Nさんの場合
Nさんは2007年2月のYRS筑波サーキットドライビングスクールにRX-8に乗って初めて参加してくれた。ご自身がロードスターのパーティレースの常連でもあったたから頻繁に通ってくれていたわけではない。それでも2018年7月までエンジンドライビングレッスンを含めていろいろなスクールに合わせて20回参加してくれた。けれど、そのれきり顔を見なくなった。
ところが昨年7月。エンジン編集部から送られてきたアルピーヌ・ドライビングレッスンの参加者名簿にNさんの名前を見つけた。車両欄にはアルピーヌA110リネージとあった。「あ、やっぱり走り屋の虫がうずいたのね!」と。
つい最近
A110リネージュからA110Sに乗り換えたNさん
慣らしもそこそこにYDOに駆けつけてくれた
そこで例によってNさんにも感想文をお願いした
久しぶりにYRSのレッスンに戻ってきました。私にとってトムさんのレッスンは、運転練習の始まりでもありますが、運転に行き詰ったときに振り返る場所という意味で「ふるさと」のようなところです。
今回は新しい車両であることと、サーキット走行も含めて1年以上まともに走っていませんでしたので、あらためて、身体と頭の記憶を呼び起こすことを目的に参加を決めました。
また、今回のレッスンでは、Gセンサーを搭載したデータロガーで、運転の可視化ができるという内容が含まれていました。今まで感覚として捉えていた運転について、どこまでできるのか、またできていないのかを自分の目で見れること、さらにそのデータから、トムさんにしっかり怒られてみようという、密かな期待(?)も参加した理由です。
実は今回まだ慣らし中の車でしたので、FSWに到着するまでは全開走行をどうするか躊躇っていましたが、午前中の最初に行われた加速してフルブレーキングのレッスンから、慣らしのことなどすっかり忘れて全開走行となりました。
さらに、初めての車で初めての全開・フルブレーキングは、身体の目覚ましにはうってつけのレッスンで、ABSの掛かり方や、パドルシフトの使い方を知ることができましたし、そもそも「車の運転ってどうやるんだっけ?」ということ自体を頭から引っ張り出すことにもなりました。
その後は、
・定速(70キロ)からのブレーキング(同乗あり)
・スラローム練習
・イーブンスロットル
・トレイルブレーキング(同乗あり)
と、途中から雨が降り続き、靄もかかる中、一日中レッスンを楽しみました。
今回のレッスンの収穫として、ブランクがあったからこそ気づいた点がいくつもありました。
一つ目は、「運転は上手くいかないことの方が多い」ということです。
トムさん曰く「だから誤魔化す方法を考える」とのことですが、上手く操作しようとせず、トライ&エラーを繰り返しながら引き出しの数を増やしていくことの重要性を再認識しました。スロットルオフのポイント、ブレーキングポイントやターンインポイントをここと決めてかかると、ポイントがズレてしまうことがある。早めに操作を開始して、クルマの動きに合わせて修正、修正を繰り返すことで理論的な正に近づけることができるという意味でした。
二つ目は、「オーバルのレッスンはサーキットに通ず」です。
私は15年以上レースに参戦していましたが、オーバル練習とサーキットのラップタイム向上にどのような関係性があるのか、今一つ掴み切れていなかったことに気づきました。オーバル練習を行う際、私にはどうしても前の車を追いかけてしまう悪癖?があり、速く走ろうとするあまり、結局遅くなるという悪循環に陥ることがよくあります。
今回はトムさんに何度か同乗していただき、コーナー入口、中、出口での走らせ方の違いを肌で感じ、素人が速く走らせる(=車を前に進める)には、オーバル練習がいかに大事かということを思い知りました。
三つ目は、「やっぱり運転は面白い」です。
トムさんの同乗走行で思ったことですが、操作の仕方次第で、車の動きが大きく変わることで、車が生き生きとしていることに今更ながら驚きました。以前のレッスンでトムさんから「車は公転しながら自転している」と言われたことがありますが、車は宙に浮いている訳ではないので、そこに摩擦が加わります。地面とはタイヤでしか接していない訳ですから、いかに車の性能を最大限利用しつつタイヤの能力を発揮させるかが大事になると思います。勿論そのキモは腕次第なわけですが、残念ながらすぐには「正しく操作できない」ことが、逆に運転の楽しみを増やし、面白味に繋がっていることを興味深く感じました。
このようなことで、久しぶりのレッスンは得るものばかりで、少々お高いレッスン代の元は取ったと思っています(^^♪
後から送っていただいたオーバルの走行ビデオもとても参考になりました。
今度は今回の復習と、更なる引き出し増産のため、あまりブランクを空けることなく参加したいと思います。今後とも、宜しくお願い致します。
メガーヌRSトロフィーのリードカーに続いて
ブレーキ練習の完熟走行
1組目のコーンと2組目のコーンの間は30m
この間で踏力を永遠に増やし続ける
前輪のタイヤをひしゃげさせるように
前輪にどんどんどんどん荷重をかけ続ける
クルマ固有の制動性能を上回る減速Gを立ち上げるのが目的
これをブレーキング区間の半分までに終える
写真のピンが甘いけど
NさんのA110がこれでもかっていうほど
ノーズダイブしているのがわかる
前車軸ではなく
後車軸を中心にノーズダイブしているから
上昇した前輪のグリップと相まってABSは介入しない
加速からのブレーキ
定速からのブレーキ
イーブンスロットルでのオーバル走行
トレイルブレーキを使ったオーバル走行
各パートを走り終えるたびに教室へ
モニターにiPhoneのデータを再生して
参加者全員で全員の操作の見直し
Nさん また走りに来て下さい。待ってます。
第734回 MさんとGセンサ
先日のYRSドライビングワークアウトFSWアドバンストコーチング
iPhoneのGセンサーアプリで収集した参加者のデータを
解説を交えながらモニターで再生
巻き戻したり進めたり
モニターを食い入るように見つめる面々
最近Gセンサーでデータを取ることが多い。プラスマイナスの加速度と横向き加速度の変化を連続的に見ることができるので、具体的にどのような操作をしているか確認できる。もっとも検証するのに時間がかかるから走行時間が削られるという負の面もあるけれど、自身の操作を俯瞰する癖をつけるのにはうってつけ。
今回は加速性能に優れるクルマで参加したMさんのデータからどのような操作をしているか想像してみたい。当日は雨。滑りやすい路面でタイヤのグリップを有効に使う方法を探ります。
最初の動画は全開加速からトランジッションを意識したフルブレーキング。次の動画は半径22m直線160m幅員14mのYRSオーバルスクールFSWロンガーをトレイルブレーキングを使って全開で走行した時のモノ。
画面に現れる白い丸が運動エネルギーの方向を示しています。バーグラフの増減と白い丸の動きを追うと、操作がクルマにどのような荷重移動を引き起こしているかがよくわかります。結果としてタイヤのグリップに余裕を残した操作を想像することができます。
タイヤのグリップを使い切るには摩擦円の円周をなぞればいい、という話もあるようですが、ダイナミックな摩擦円自体が真円ではありませんし、円周をなぞること自体が対角線の荷重移動を伴うことでもあるのでユイレーシングスクールとしては否定的です。
その代わり、とりあえずクルマの高い性能を味わうことを目的に操作を重ねない運転を勧めています。加速、減速、旋回のそれぞれを単機能で扱い、次の操作に移る前にいったんクルマをフラットな状態にします。言ってみれば円周をなぞるのではなく、摩擦円の縦軸横軸の限界に達するように操作し、次の操作に移る前に原点に戻る。イメージ的には荷重を十文字に動かす、とでも言いましょうか。とりわけ、今のタイヤのグリップの高さとクルマの自己収れん性の高さからすれば、運転の上達には欠かせないアプローチだとユイレーシングスクールは考えています。
第733回 Wさんを追って
2001年7月の筑波サーキットタイムトライアルに50代なかばにして初めて参加してくれたWさん。その後、ほとんどのカリキュラムとスクールレースに参加してくれて、延べ参加回数は120回を超える。去年の12月のYRSオーバルスクールFSWロンガー以来顔を見ていないけど、そのWさんからメール。どうやら免許証の更新らしい。認知機能検査を含む高齢者講習も3回目だからもうベテラン。前回の更新の時は、講義中に早弁するおじいさんがいたり教官が開始と言う前に回答を始めるおじいさんがいたりひどいもんだ、と憤慨していたけど、今回は大丈夫なようだった。
当時2台のポルシェをお持ちだったけど、奥さんと旅行に行くのにセダンが必要だと言うのでルーテシアRSを勧めたのは2019年だったか。ある日、ケイマンと換えたという真っ黒なルノーでオーバルスクールに来てくれたっけ。
「また顔を出しますよ」とWさん。待ってますよ!
第732回 Oさんの場合
「第412回Oさんの場合」 と 「第573回OさんとYRSオーバルスクールFSW」に登場してくれたOさんが先日のYRS筑波サーキットドライビングスクールに来てくれた。例によって終日雨の中をどうやって走ったかOさん自身の走りについて感想をお願いしたのだが、感想文を紹介する前に後日Oさんと交わしたメールのやり取りを。
Q:Oさん、クルマを運転するときに注意していることがありますか?
A:
1) タイヤからのフィードバックをつかみ取る(グリップの様子、滑り出しの感触)
2) 車の挙動を体で感じる(ヨー、ピッチング、ロールの大きさ、回転の中心位置)
3) 自分の操作に対する車の反応の速さと遅れ(反応が遅いときは操作に無理がある)
インストラクターの同乗走行だと、自分の操作幅よりもはるかに大きな操作に驚きますが、自分で真似しようとするとなかなかメリハリのついた操作ができません。ほんのわずかなタメの後の操作のスピードと量が大きいのに対して、自分の場合はタメを意識すると、そのあとの操作のスピードが遅くて挙動変化がダラッとしているのが原因だろうと思いますが、この課題をなかなか克服できずにいます。
写真は昨年5月26日のYRS筑波サーキットドライビングスクールから
以下Oさんの感想文
2018年夏にメガーヌを手に入れてから、20ン年ぶりのMT車の運転を楽しむようになった一方で、なかなか車の能力を活かせていないことが大きな悩みとなってきました。しばらくあれこれと自分で試行錯誤を繰り返していましたが、一度ちゃんと教わってみようと情報を探したときにユイレーシングのことを知りました。
40年以上前、アメリカの情報を伝える雑誌に、当時カリフォルニア州のシアーズポイントを拠点としていたジム・ラッセル・レーシングスクールの紹介記事が強く印象に残っていたのですが、ユイレーシングの主宰者トム・吉田さんがもともとジム・ラッセルで教えていたということも、このスクールを選択する大きなポイントでした。
2019年のオーバルスクールに初参加して以来、年に数回は必ず顔を出して練習を重ねています。年齢が年齢なので、なかなか体得するのは難しく、同じことを繰り返しながらなんとか体に覚えこませていきますが、次回のスクールでは前回身に着けたと思っていたことがなかなか定着せず、時間をかけて思い出しながら少しずつは進歩しているのだろうと思っています。
ユイさんのスクールで一番いいと感じるのは、しっかりと理屈を教わったうえで、時間をかけて自分なりにわったことを反復練習できる点です。じっくり繰り返すという点ではオーバル、ツーデイズと並んでお気に入りなのが今回参加した筑波のスクールです。ほかの走行会では経験できない、外周をオーバル的に使ったイーブンスロットルとトレイルブレーキングの練習が、ユイさんのカリキュラムの特色を強く出した部分でもあります。
今回は練習開始直前から雨が降り始め、終日雨というコンディションでした。タイムアップという点では残念な部分はありましたが、練習という点ではまたとない機会となります。これまでと少し違い、イーブンスロットルやトレイルブレーキングの練習時に、「最終コーナーを舵角一定で回ることを意識してストレートに入るように」という課題が出されましたが、これが今回はとても大きな収穫につながりました。
イーブンスロットルの練習では、1コーナーのターンインから2コーナーの立ち上がり前まで、4輪にしっかりと均等に荷重がかかる姿勢を意識していきます。フロントに舵角を与えると走行抵抗が増えて必ず減速するので、その分をスロットル操作で補い同時にリアの荷重をしっかりかけてあげることをつかんでいきます。
トレイルブレーキングではストレートで少し早めにアクセルオフをして、減速のやや強めのブレーキングをしてからリリース。ブレーキを引きずりながらステアリングを操作していきますが、クリップに直線的に向かっていきがちなことを無線で指摘されました。練習の合間でインストラクターの方と議論をする中、ターンインの速度に気をとらわれすぎず、1コーナーを過ぎたあたりで全体減速せずに逆に加速するような意識で回ってみてはどうかというアドバイスをもらったところ、より強くイーブンスロットルを意識してのコントロールが少しずつできるようになっていきました。
午前中に2セッション、午後もたっぷりとコース周回を重ね、毎回課題を設定しながら走りこみます。最初のセッションでヘアピンの進入時のコントロールがうまくいかずにアンダーが出てクリップに着けなかったので、進入時の減速に注意しながら早めに減速のブレーキを完了させることを徹底すると、少しずつタイトに回ることができるようになりました。
そのあとのインフィールドセクションはラインどりが悩ましいポイントですが、今回は徹底してコンパクトに回ることに専念しました。
これまで、なかなかうまくまとめることができなくなった最終コーナー進入から立ち上がりの部分ですが、参加者が皆悩んでいるということもあって、トムさんの運転による同乗走行でラインどりをしっかり体感したのちに、自分の運転でそれをトレースしていきます。最終コーナー侵入の手前にステアリング操作でロールを消してからブレーキングをすることは今までもやっていましたが、トムさんが「その前に一度アクセルオンで加速してからブレーキングしている」と教わり、実践してみると直前の緩い左コーナーで生じたロールがアクセルオンで早めに戻り、少しあわただしい操作にはなりますがブレーキングからの進入も安定してくるようになりました。肝心の最終コーナーからの立ち上がり部分ですが、インストラクターの方から「だんだんとクリップからの立ち上がり時点でしっかり車が内側に向いてきた」と言っていただいたのが大きな自信にもつながりました。
筑波のTC1000で一番気持ちがいいのは1-2コーナーで4輪がわずかにスライドする感覚を経験できることです。今回は雨というコンディションで、より微妙なスライドを感じやすかったのも楽しく練習できた部分です。1コーナーから2コーナーの間で軽いアンダーがたときにアクセルオンでリアに仕事をさせることでスッと回り込む感覚は何とも楽しい瞬間です。
トムさんをはじめインストラクターの方がしっかりと見てくださっていて、要所要所で的確なアドバイスをしてもらえるのがユイレーシングスクールの一番のポイントです。ドライビングスキルの維持のためにも、スクール参加を続けていきたいと思っていますので、次回以降もどうぞよろしくお願いします。
写真は2021年5月のYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールから
Oさん また練習に来て下さい。
第731回 YRS筑波サーキットドライビングスクール
梅雨のさなかの先週木曜日。今年1回目のYRS筑波サーキットドライビングスクールはやはり朝から終日雨。時に雨量が多く部分的に冠水する部分も。それでもこの日参加した13名の方はウエット路面をモノともせず、滑りやすい路面でのコントロールを大いに楽しんでいた。
何故って? 滑りやすいから操作の間違いが即クルマの挙動に表れる。操作と挙動の因果関係を感じることができる。理論的に修正する方向は理解しているからギャップを埋める努力が楽しくなる。
座学の後は外周だけを走りながら1コーナーを使ってイーブンスロットルとトレイルブレーキングの練習。トランジッションで何故イーブンスロットルが必要なのか、ターンインで何故トレイルブレーキングが有効なのかの説明を身をもって体験してもらう。
イーブンスロットルの練習では70キロから徐々にペースを上げて最終的には85キロプラスまでノーブレーキで1コーナーへターンイン。トレイルブレーキングの練習ではデモランを見てもらい、スロットルオフから瞬間的なハードブレーキングとブレーキリリース、そしてターンインからのトレイルブレーキングのイメージを作ってもらう。ここまでで筑波サーキットコース1000のタイムアップに大切な1コーナーの攻略法が参加者にとって明確な根拠となる。
あわせてヘアピンを曲がらずに真っすぐ通過し直進状態から最終コーナーに向けてターンイン。実際は3つのRからなる最終コーナーをひとつの大きなRで、しかもイーブンスロットルを維持する練習を繰り返し、同じくタイムアップに重要な直線につながるコーナーの脱出速度を上げることと、長いコーナーの通過速度を上げる練習を繰り返してもらう。
外周を使っての練習が終わり、フルコースの最初のセッションはコースの確認のため追い越し禁止。2回目からは全開で。この日、午前中のセッション、午後の走行時間を半分に分けたセッションを2回。各セッションの参加者の周回数、ベストラップ、ベストラップを記録した周をまとめたのが下の表。数字から各人各様の走り方が見えて興味深い。
ユイレーシングスクールでは周回数を稼げるミニサーキットを使ってクルマを速く走らせる方法をアドバイスするドライビングスクールを開講しています。いわゆる走行会とは異なります。サーキットを走った経験のない方も安心して受講できるカリキュラムになっています。各ドライビングスクールの開催案内をご覧の上、速く走る=クルマの性能を引き出せる=安全に運転できる、を目指すユイレーシングスクールに参加してみませんか。
・7月20日(木)開催 YRS富士スピードウエイドライビングスクール開催案内
・8月3日(木)開催 YRS筑波サーキットドライビングスクール開催案内
第730回 コーナリング考察
クルマはコーナリングが苦手だ。直進状態から旋回に移る時に起きる荷重移動。それは直進方向の加速度をコントロールすることに集中できる加速や減速とは異なり、それらに加えてターンインの瞬間から横方向の加速度もコントロールする必要が生まれるからだ。しかもクルマは巨大な運動エネルギーを抱えて走っているからその向きを変えることは容易ではない。ターンインの速度が速くなると、かかる横Gの大きさは速度の上昇の二乗に比例して大きくなるからさらにやっかいだ。
ユイレーシングスクールがトランジッションにこだわるのは4輪を使ってできるだけ高い速度からターンインしたいから。コーナリングを始めたクルマは前輪の舵角が走行抵抗になって速度を殺がれる傾向にあるから、速く走ることが目的ならばターンイン時の速度はできるだけ高いほうがいい。しかしながら、高い速度でターンインをしても次の瞬間にアンダーステアを出したりオーバーステアに陥っては本末転倒だ。そこでターンイン時のクルマの姿勢=4本のタイヤにかかる荷重=タイヤのグリップをコントロールすることが重要になる。
次のふたつの動画は加速から減速、ターンインからコーナリングに移る加速度の変化をGセンサーで可視化したものだ。
最初の動画はトレイルブレーキングを使ってターンインをする時に、可能な限り前荷重にならないように。そしてコーナリング中に失速しないように明確なイーブンスロットルを心がけている。
次の動画はラップタイムの向上を狙ってスロットルオフを遅らせ強いブレーキをかけ、踏力を抜きながらターンインをした場合。走っていてアンダーステアは感じないものの、クルマの向きと運動エネルギーの方向が一致していない瞬間がある。つまり現象としてはアンダーステアの手前にあるのも事実。
速く走るためにはタイヤのグリップを有効に使う必要があるのは事実だとして、グリップの限界を維持するために摩擦円の円周をなぞることを目指すのがいいのかどうかは検証してみる必要がある。 【参考リンク】YRS教科書 37頁摩擦円回答
最初の動画はブレーキング後に極力前荷重を抜きターンイン時に前輪に負担がかかっていない状態を実現しようとしている。前後輪のグリップが均等な状態からターンインすることによって、ターンイン後はブレーキを引き摺っているにも関わらず減速Gは発生せず横Gだけが増えることになる。タイヤのグリップをコントロールする際に摩擦円の円周をなぞるのではなく、操作と操作の間に4本のタイヤに均等に荷重がかかっている状態を挟んでいるため、結果的に荷重は摩擦円の内側で十字型のように移動することになる。クルマの性能を引き出しやすいように、ユイレーシングスクールが進めているトランジッションを設ける=挙動と挙動の間でクルマをフラットにする、がこれに当たる。
次の画像は最初の動画に対応していて、横Gが立ち上がる瞬間にクルマが加速も減速もしていない状態にあることを示している。
下の3枚は2番目の動画からキャプチャーしたもの。ターンインのはるか手前で強く瞬間的なブレーキングを行い、直進状態にあるうちに踏力をゆるめる。
ブレーキをリリーズするタイミングが遅れた結果、前荷重のままターンインすることになる。
踏力を減らしているのに前輪の舵角が抵抗になって再度減速Gが増加。ステアリングを切るほどに横Gは増えるものの、グラフ上の白い丸が示しているように加速度=運動エネルギーの方向は斜め前に。摩擦円の円周をなぞってタイヤのグリップを確かめようとする時に見られる対角線上の荷重移動だ。
クルマは重いからヒョコヒョコとは動かない。減速に続いて加速をすることが速さにつながる保証はなく、減速と加速の間にコーナリングがあるのが普通で、コーナリング中は速度を維持するためにイーブンスロットルの状態=加速も減速もしない状態を高い速度で実現することが求められる。画像はコーナリング中に横Gを受けながらスロットルを小刻みに開けて前荷重になることを避けた瞬間。
クルマにどういう荷重移動を起こさせるのが速さに結びつくのか。クルマによってもタイヤによっても運転手によっても正解はマチマチだろう。ただ、ユイレーシングスクールではまずクルマの高い性能を見極めるためにも、摩擦円の中で直線的に限界に近づくことができる十字型の荷重移動を練習してもらっている。それがタイヤのグリップ限界をさぐりやすくするからだ。速さを手に入れることができれば、速度が低ければそれだけ安全性が増すことになる。タイヤのグリップを探りながらクルマの限界特性を経験する。それがユイレーシングスクールがオーバルスクールを続けている理由だ。
ユイレーシングスクールではいわゆるミニサーキットでこれからサーキットを走る方にうってつけのドライビングスクールを開催します。イーブンスロットル、トレイルブレーキングの練習を徹底しクルマの性能を引き出すコツをお教えします。ワンボックスカーでなければどんなクルマでも参加できます。事前に資料をお送りしますしサーキットを走る際のアドバイスも豊富です。愛車でサーキットを走ってみませんか。
・6月22日(木)開催 YRS筑波サーキットドライビングスクール開催案内
・7月20日(木)開催 YRS富士スピードウエイドライビングスクール開催案内
第729回 FSWレーシングコース
パフォーマンスボックスのファイルを整理していたら富士スピードウエイレーシングコースを走った時のデータが出てきた。懐かしい。なので、ちょっと手を加えて昔を振り返ってみることにした。
以前はレーシングコースでもドライビングスクールをやっていたのだけど、ユイレーシングスクールの場合はオーバルスクールなど他のカリキュラムに参加した人のみを対象にしていたので、参加者が伸び悩み尻つぼみに。と言うより、原因は1度レーシングコースを味わってしまった人はFSWの会員になってユイレーシングスクールに来るよりスポーツ走行枠を利用するのを好んだから、というのが正しい。
ということで、まずは2010年11月にルノー・ジャポンがユイレーシングスクールに最初に貸してくれたトゥインゴGTで富士スピードウエイレーシングコースを走った時のブログがこれ。 第7回 体力測定(その2) 。
次に、その時にパフォーマンスボックスで収集したデータを可視化したのが下のふたつの画像。それぞれ速度と加減速Gを、速度と横Gを座標軸にとってみた。トゥインゴGTはタイヤも何もかも全くのノーマル。
画像1
最高速は1コーナー手前200mの看板で162.39Km/hを記録
1コーナーへのブレーキングでは最大マイナス1.133Gを記録
ダンロップコーナー手前では155.72Km/h
最終コーナーのボトムスピードは68.23km/h
画像2
1コーナーの最大横向き加速度は0.847G、100Rが0.847G、ヘアピンが1.209G、ダンロップコーナーが0.962G
2013年春にルノー・ジャポンが新しい相棒を貸してくれた。その名はルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポール。もちろんタイヤ、ブレーキはノーマルのままで富士スピードウエイレーシングコースを堪能しましたとも。
・トゥインゴゴルディーニRS FSWレーシングコースを走る
・トゥインゴゴルディーニRS 吠える FSWレーシングコースでフル加速 (協力:富士スピードウエイ)
※最終コーナーからスタートして直線部分で停止するという条件でトライしたものです。
※ふたり乗りで行っています。
・富士スピードウエイレーシングコース 巡る (協力:富士スピードウエイ)
富士スピードウエイレーシングコースほど大きくはありませんが、ユイレーシングスクールではいわゆるミニサーキットでこれからサーキットを走る方にうってつけのドライビングスクールを開催します。イーブンスロットル、トレイルブレーキングの練習を徹底しクルマの性能を引き出すコツをお教えします。ワンボックスカーでなければどんなクルマでも参加できます。事前に資料をお送りしますしサーキットを走る際のアドバイスも豊富です。愛車でサーキットを走ってみませんか。
・6月22日(木)開催 YRS筑波サーキットドライビングスクール開催案内
・7月20日(木)開催 YRS富士スピードウエイドライビングスクール開催案内