
第770回 TC1Kのルノー仲間
小雨そぼ降るとんでもなく寒い先週の木曜日。筑波サーキットコース1000(TC1K)を終日使って今年1回目のYRS筑波サーキットドライビングスクールを開催。
冠水こそしていないものの路面は完全にウエットで凍りそうなほど冷たくタイヤは温まらない中、コーナー毎に区切った練習をした参加者は滑る路面を大いに楽しんでいました。
写真左から
メガーヌRS(MT)乗りのEさん
メガーヌRSのワタクシ
顔出しNGの
ルーテシアRSのTさんと同じくルーテシアRSのライバルのSさん
A110の軽快さに目覚めつつあるWさん
撮影しているスタッフYの20万キロ走破のルーテシア3RS
YRS筑波サーキットドライビングスクールの特長は1つひとつのコーナーを区切って反復練習を行いコーナー毎の習熟度を上げるカリキュラムです。特定のコーナーに対する走り方をリアルタイムでアドバイスするので、操作に対する理解度が飛躍的に高まります。
ちなみに、ユイレーシングスクールは2000年から2004年まで当時の社団法人日本オートスポーツセンターの委託を受け、公式筑波サーキットドライビングスクールを開催していた由緒あるスクールです。当時のカリキュラムは現在のエンジンドライビングレッスンが受け継ぎ、ユイレーシングスクールはサーキットを走るつもりのない方も視野にいれたYRS筑波サーキットドライビングスクールを開催しています。
次回YRS筑波サーキットドライビングスクールは7月18日(木)に開催します。
第769回 荷重移動をコントロールする
3速の最大トルク発生回転あたりでイーブンスロットルを保ちつつコーナリング。立ち上がりでステアリングを戻す量と正確に反比例するだけスロットルを開けて4速に。そのまま加速すると速度超過になるから4速に上げてからはスロットル一定。もちろん上り坂になれば開けるし下り坂ならば閉じる。
次のコーナーが迫る。イニシャルブレ ーキングで減速Gを立ち上げてから踏力を抜く。パッドとローターが離れない範囲の最小限の踏力を維持。前後荷重が均等になるのを確認してから右足をブレーキペダルに置いたままターンイン。最初はごく微舵角。直進方向に進んでいた運動エネルギーがステアと連動しているのを確認してから切り足す。ブレーキは、まだパッドの摺動抵抗を感じながら引き摺り続ける。ターンインの瞬間にわずかに肩で感じた遠心力がややあって腰で感じられるほどにクルマがロールする。
ヤッタ! 直線を走っている時に合致していたクルマの向きと運動エネルギーの方向を、クルマを曲げてもなお、ほぼ一致させ続けることができた。
クルマの運転でこれほど楽しいことはない。本来ならば人間が御しきれない大きな力を高い感性と繊細な操作で自在に操る。
それが何だ、と言われればそれまでだけれど、周りはみんながクルマの動きなど意に介せずにクルマ任せで走っているのを見るにつけ、もったいないと心から思う。ユイレーシングスクールのスタッフと比べてもボクが最も奥までブレーキを引き摺る。なぜ奥まで引き摺るのか。なぜって、クルマは一度も失速することなくブレーキングからターンイン、コーナリングから加速へと流れ続ける。その筋道をつけているのが自分自身だと認識できることが楽しい。
まぁ、人から見ればそんなたわいのないことを楽しむのが富士スピードウエイから須走の定宿、扇屋さんに行くまでのワインディングロードの往復。基本的に須走に向かって登り、FSWに向かって下りだけど、どちらもそれなりの楽しみがある。
YRSツーデースクールFSWの時に
扇屋さんに泊まる参加者に配る地図
東ゲートを出て須走に向かうと
将来小山スマートインターができるあたりにラウンドアバウトができたから
若干実情とは異なるけど
富士霊園から先のワインディングロードはそのまま
今のクルマは良くできているしタイヤもしっかり路面をつかむから、なにげなく運転してもクルマの動きはほとんどが運転手の手柄になる。運転手は自身の操作に疑問を持たない。
しかしクルマは動き出した瞬間にエネルギーを蓄え始める。速度が上がるほどにそれは巨大な力になる。それは人間ひとりでは絶対に手に負えないシロモノ。それを味方につけるための努力が、イコール運転を楽しむことと言っても言い過ぎではないだろう。それを味方につければ安全にクルマを走らせられるし、速く走ろうと思えばそれも可能だ。それを味方につけるためには荷重移動のコントロールが極めて重要になる。
ターンイン時に左右前輪に荷重がかかっていないと
ステアした瞬間に直進しようとしていた運動エネルギーが
アウト側前輪に集中しイン側前輪はロールによってリフトする
ターンイン時にイン側前輪の荷重が抜けていなければ
フロントのロールが抑えられると同時に
リアのロールも抑制されるから
結果としてクルマは向きを変えやすい
ユイレーシングスクールでは次のドライビングスクールを開催します。ロールコントロール、荷重移動のコントロールを実際に体験してみませんか。
・2月22日(木) YRS筑波サーキットドライビングスクール 開催案内
・2月24日(土) YRSドライビングワークショップFSW 開催案内
・3月31日(日) YRSトライオーバルスクールFSW 開催案内
第768回 Tさんの場合
先日のYRSオーバルスクールFSWで初めてユイレーシングスクールを体験されたTさんが感想を寄せてくれた。
■■初めてのドライビングレッスン■■
メガーヌRSに乗り始めて約2年、殆ど夫の運転での移動と、近所への買い物で使う程度だった車生活でした。ある時、母と箱根の温泉旅行に運転して行ったら、メガーヌRSの乗りやすさと、バランスの良さを実感。それからもう少し車の運転を楽しみたくなり、夫指導のもと、箱根ターンパイクで何度か走りに行っていました。
でも、コーナーでクルマのコントロールがうまくできず、乗っている人に安心して乗ってもらえない感じがして、運転が上手くなりたいなあ・・、何が悪いのかどうすればいいのかわからない、これは一度正しい運転を教えてもらうしかない、ユイレーシングスクールに行きたい!と思っていました。
そんな中、同じメガーヌRSに乗るKさんに、ドライビングスクールを受けてみると話をしたら一緒に行きたい!!とのことで、早速2人で参加しました。
当日、座学の時に、スクールに参加した目的は?と聞かれて、皆さん、コーナリングでのボトムスピードを上げたいとか、新しく購入した車の特長を理解したいとか、もう何度もスクールに通われているベテランばかり、レベルの高いお話されていて、私は、運転上手くなりたいんですーなんて、ど下手であることを宣言している私・・まずい、ここは別世界・・と感じつつ、練習開始。
普段狭い世田谷の住宅街を時速20㎞ぐらいで走る程度で、【アクセルベタ踏み】をしたことないし、そもそも小心者の私。
ミニオーバル内を35㎞で走りましょう!!と言われても、それすら怖い・・そしてどんどんスピードが上がってきて…皆さんに引き離され、周回遅れになりながら、練習開始。同じ初参加のKさんは、軽快に走っていて、自分のダメさを感じながらのスタートでした。
見かねて、グループを離脱し、恐怖心を徐々に外しての練習、トムさんの横で個人指導も頂き、シートポジション、目線の改善、コースで反復練習をしながら、運転とスピード、ブレーキポイント、イーブンスロットル・・と徐々に慣れていきました。
だんだん、アクセル、ブレーキを強く踏むこともできるようになり、終わるころには運転にも慣れ、コツもちょっと掴み、楽しくなってきて一回目のスクールを、最後まで事故なく走ることが出来ました。
練習中は孤独に一人で悶々と走るのですが、トムさんはじめスタッフの方のカーラジオからのお声がけがタイムリーにいい感じに厳しくて、緊張感をもって練習し続けることが出来ました。(とてもよく見て下さっていて、心の中まで見てるのか??って感じました)
翌朝、2人とも肩がパンパンに凝っていて、徐々に脇腹、背中、右腕と痛くなり、運転はハードなスポーツだということと、シートポジションが悪いことを痛感しました。
またスクールに参加して、反復練習に励みたいです。トムさん、スタッフの皆さん そして、迷惑をかけてしまった皆さん ありがとうございました。またよろしくお願いします。
第767回 Wさんの場合
ユイレーシングスクール初参加は
2017年3月のYRSツーデースクールFSW
それ以来
いつもご夫婦で来てくれるWさん
ご主人は顔出しNGだから例によって
ルノー乗りになったWさんには早速感想文を
昨年12月に中古でトゥインゴGTを購入しました。
実はトゥインゴGTにはかなり前から興味があり、中古車サイトをいろいろと物色していたのですがなかなかいい出会いに恵まれていませんでした。11月にルノー沼津の三島アプルーブドカーセンターで認定中古車が出てきて妻と二人で実車を確認して、1日悩んで購入を決意しました。オプションがてんこ盛りで購入後もほとんど手を入れる必要が無さそうだったのと、前のオーナーが大事に扱っていたことが感じられたのが購入の決め手でした。(ディーラーの担当者も非常に良い方でした。)
トゥインゴGTに興味を持った理由は、以下となります。
・5ナンバーサイズでコンパクトなこと
・RRレイアウトという駆動方式
・ルノースポールによるチューニング
・MT車が選べる
・フランス車(ルノー車)ってどんな乗り味なんだろう?
ある意味、今後二度と出てこない変態車に心引かれてしまいました(笑)
現在の愛車はトゥインゴGT以外に下記の2台に乗っています。
・718ケイマン
・NCロードスター
後輪駆動のMT車という共通点以外はレイアウトも車の乗り味も全く違う3台となります。
乗り比べると
718ケイマン
・非常にソリッドで、ステアリングからのインフォメーションもわかりやすい。
・足回りは堅いが、しなやかさも持っている。
・自身の直後にあるエンジンからの振動、音もその気にさせる。
・シフトレバーも節度やコクっとしたフィーリングで気持ち良い。
・ブレーキのタッチ、効き、耐フェード性はこれまで乗った車の中で最高。
・意外と低速トルクが無いため、他の車であれば2速でいけるところが1速まで落とさないと前に進まない。
・雨の日の挙動(スクール参加時やサーキット走行時)は正直怖い。電子制御を入れてもスピンしやすい。
NCロードスター
・車体は緩いが、挙動はわかりやすい。
・軽量な車体とエンジンパワーのバランスが取れている。
・MTでもイージーなドライブができる。
・オープンドライブは一度味わうとやみつきになる。
・雨の日に電子制御を切っても安心して操作できる挙動(スクール参加時やサーキット走行時)。
購入後は町乗りメインで使っていたので、トゥインゴGTの実力を知るためにオーバルスクールに参加させて頂きました。
スクールで自分の腕なりに車を操作して反応を確認し、以下の感想を持ちました。
・挙動はかなりクイック(前が軽い事と、ホイールベースが短いためだと思います)。
・目線は高いがコーナリング中に車が転倒するような気配は感じなかった(当たり前ですが)。
・パワーは無いですが、後ろが重く、後ろから押される感覚は新鮮。
・絶対的なスピードが遅いため、私のような未熟者でも手の内感を持って操作ができる。
・シフトレバーの感触が緩い、横Gがかかっているとシフトが入りづらい事がある。
・ブレーキのタッチがこれまで乗ったどの車とも違う(遊びのストロークが長い)ため違和感があったが、連続して乗ることが感覚は掴めた。効きに関しては問題ない。
小さい車をMTで操って乗るのは、もの凄く楽しい事を再確認しました。以前乗っていたマーチ12SRを思い出しました。
これまでの愛車歴
マーチ12SR
ランサーエボリューションX
BRZ
ゴルフGTIクラブスポーツトラックエディション → YRSに参加し始めた
E90 M3セダン
F87 M2クーペ
NCロードスター
718ケイマン
トゥインゴGT
以上です。
第765回 25年目のユイレーシングスクール その2
<長文です>
第764回 25年目のユイレーシングスクール から続く。
1999年11月中旬にアメリカから一時帰国。同年12月8日に埼玉県にある桶川スポーツランドで初めてのユイレーシングスクールを開催。インターネットだけの募集だったけれど、確か定員いっぱいの16名が参加してくれた。
ユイレーシングスクールを開校した目的は運転を
理論的に理解してもらい合理的に練習してもらう環境を用意すること
免許取立ての時期にそんなスクールがあればもちろん受講していただろう
そんな運転の正解を伝えるドライビングスクールをやりたかった
運転は一生モノだから一度は運転を教わったほうがいいと思う
だから自分の経験を全て公開するつもりのスクール
写真は2000年2月12日に開催した第2回YRSドライビングスクール桶川
スポーツランド桶川の事務所で
ビークルダイナミックスを説明したイラストを配っての座学
軽免許も普通免許も公安委員会の試験場で取ったからいわゆる自動車学校には行っていない。運転というものを一切教えてもらったことがなかった。だから自分の運転はまさに我流だった。要するに自分の運転方法が正しいのか確かめる術がなかった。
クルマを運転するからにはうまくなりたいと思っていた。うまくなれば危険な目にあう確率も低くあるだろうし、何よりも楽しいだろうし、鼻が高いだろうしレースに出ればそこそこの成績を修められるはずだと思っていた。だから日常的に運転がうまくなる方法を探していた。
アメリカに渡りSCCAのレースに参加した時、自分の運転のうまさ加減を知ることができた。デビュー1年目でカリフォルニア地区1位、南太平洋地域2位、全米で28人中6位になることができた。それはそれで満足だったが上には上がいた。自分ひとりの努力では限界があることを知った。
ジムラッセルレーシングスクールの実体を知り、こういうスクールを10代後半か20代前半に体験していれば全米1位も夢ではなかったかなと。日本にもこういうドライビングスクールがあればいいのにと思った。
80年代後半。当時の日本にも運転をキチンと習いたい人がいるのに違いないと思い、ジムラッセルレーシングスクール・カリフォルニア校に交渉して日本語クラスを創ってもらった。もちろんインストラクターはボク。延べ243名の方が日本からフォーミュラカーで行われる3日間コースを受講しに来てくれた。費用が高かったにも関わらずこれだけの参加をみたことは、日本にも運転が上手くなりたい、運転を習いたい人が確実にいることを確信した。
ツインリンクもてぎの北米代表としてCARTインディーカーとNASCARストックカーの招聘に携わり成功裏に終わった。オープン前、関係者向けに輸入したミヂェットやNASCARストックカーの乗り方講習もやった。次にツインリンクもてぎでドライビングスクールを開校したいと申し出たのだけど、「トムさんはレーシングドライバーでないしホンダの契約ドライバーではないから」と断られた。レーシングドライバーが教え上手だとは思っていなかったが。結局ツインリンクもてぎを辞し、『こういうスクールが自分の若い頃にあればなぁ』的なドライビングスクールを始めることにした。
やるからにはジムラッセルレーシングスクールのように理論と実践をリンクさせたドライビングスクールにしたいと思った。ちなみに当時のジムラッセルレーシングスクールには年間で初級クラス約2,000人、上級クラス約1,600人の参加者があったけどレースに参加する人はごく少数で、ほとんどの人が運転を理解すること、運転の上達を目指して参加していた。ジムラッセルレーシングスクールのカリキュラムはそれに応えていた。
ユイレーシングスクールのWebサイトを立ち上げ全84頁の教科書を公開した。メールマガジンの配信を始めた。教材用のイラストを起こした。運転が上手くなってくれることと運転を楽しんでもらうことをスクールの第一義とし、次のような方針を決めた。
・スクールの始まりには必ず座学を行う。クルマの動き方を理論的に説明して、実際の操作でやってはいけないこととやらなければならないこと、やったほうがいいことを明確に伝える。
・実技は人間の操作がクルマをどう動かすかわかりやすく、かつ反復練習を繰り返せるコース設定とし、できるだけ距離を走ってもらう。
・スクールを通して運転に興味を持ってもらえるようにアドバイスをする。
・将来的にサーキットを走るつもりのない人にも受講しやすく、日常の運転にフォードバックできるようなカリキュラムにする。
・ワンボックスやSUVなどどんなクルマでも参加できること、サーキットを走る際に改造することが必ずしも必要でないことを十分に告知する。
・受講中にはインストラクターのアドバイスで上達するが、その後も自身の解析によって上達し続けられるようなたたき台を提供する。
・サーキットを走ろうとする人には速さを追いかけるのではなくクルマの性能を発揮させる操作を優先するようにアドバイスする。
結果、
・一度受講した人が再度受講してくれた。年間21回開催していた筑波サーキット公式スクールに8回参加してくれた人もいる。それ以降リピート率は90%を下らない。
・筑波サーキット公式スクールのある日。朝の座学で受講者に過去サーキットでも公道でもスピンした人に手を上げてもらった。参加32名中30名が経験者だった。しかしその日。誰ひとりスピンすることなく、ほぼ全員がタイムアップを果たした。
・過去24年間。1,000回近いドライビングスクールとスクールレースを開催し延べ18,000人近くが受講した。しかしスクール中のクルマの損傷事故は5指に満たない。
・ドライビングスクールの卒業生で各地のレースに参加した人がレースで優勝したりシリーズチャンピオンになった。
・スズキジムニーや三菱スペースギアでの参加があった。
・現在までの最高齢受講者は78歳。最年少は13歳だった。
・受講した人が娘や息子を連れて参加してくれた。ご夫婦での参加もあった。
・受講した人が知り合いに受講を勧めてくれるようになった。
・ユイレーシングスクールの実績を元に雑誌エンジンがドライビングレッスンの運営を任せてくれた。昨年までに計76回のドライビングレッスンを開催。今年エンジン・ドライビングレッスンは22年目を迎え3回の開催を予定している。
・評判を聞いたアイディングやポルシェクラブ千葉などいくつかのカークラブからワンメイクドライビングスクールの依頼があった。現在はポルシェクラブ東京銀座のドライビングレッスンを年3回開催している。
・ルノー・ジャポン/アルピーヌ・ジャポンのドライビングレッスンを担当させてもらいルノー/アルピーヌユーザーに直接クルマの楽しさをお話しすることができた。
この20年あまりで時代は変わった。いろいろな意味で。向こう数年でまた変化があるかも知れない。開校前に立てた方針がそぐわないことが起きるかも知れないが、スクールを続けることでまだまだ成長している自分を感じることができている。だからスタッフより速く走れるうちは今の路線のまま続けたいと思っている。
2月3日(土)。24年間ブレずにドライビングスクールを開催してきたユイレーシングスクールが25年目の活動に入ります。舞台は富士スピードウエイの広大な駐車場。安全に配慮した環境で運転の基本を理論的に解説し合理的に練習するYRSオーバルスクールFSWを開催します。この機会にぜひ運転の正解を探してみませんか。詳しくは以下の頁にあります。
・2月3日(土)開催 YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク
第764回 25年目のユイレーシングスクール
1999年11月中旬にアメリカから一時帰国。同年12月8日に埼玉県にある桶川スポーツランドで、明確な目標の元に初めてのユイレーシングスクールを開いた。
報道関係者ビザを取得し1979年9月に拠点をアメリカに移す前のこと。いくつかの雑誌に原稿を書いていた。自動車雑誌は嘱託契約があったので八重洲出版のドライバー誌のみに執筆。ワープロもパソコンもなかったし字はうまくなかったけど(笑)取材して原稿を起こす作業は楽しかった。
当時は印刷媒体全盛の頃
データーマン・アンカーマン編集方法がどうの
クラスマガジンがヒットするとか
これからはムックだとか
なんて話が飛び交っていたの
連載をまとめて
店頭に並んだのは渡米後だったけど
当時ドライバー誌は隔月刊で5日号と20日号があった。ビレル製のフレームにパリラ製のエンジンを積んだレーシングカートを走らせていたのと少しばかり知識を持ち合わせていたので、2年間に渡り20日号で「トムヨシダのレッツカート」を連載した。5日号の連載は「星野一義のレーシングテクニック」で担当は編集部のYさんだった。そのYさんから聞いた話。
取材の時にYさんが星野さんに「あのコーナーはどうやって曲がるんですか?」と聞くと、「あそこはね、ガーンといってギュッでクルッ、ガーン!なんだよ」と言われたそうだ。その時の情景はわからないけど、速い人は簡単に走り方を教えてくれないものなのかな、と思った記憶がある。
当時、日産ワークスドライバーの先輩を脅かすような走りを見せていた星野選手。Yさんからこんなことも聞いた。チェリークーペのレースカーの開発を担当していた星野さん。タイムを出すことが至上命令だったらしく富士スピードウエイを走り込む毎日だったらしい。想定したタイムが出るまでピットに戻れなかったらしい。それでタイムアップを図るべく走っていて、1月で2台のレースカーをひっくり返したらしい。速く走るのには練習しかないのかなと思ったのと同時に、速い人でも事故は起こすもんだと知った。
ある日、当時の日産のワークスチームが報道関係者向けのレーシングスクールを開催することになった。ドライバー誌のモータースポーツ関係を主に担当していたので、レーシングスーツを片手に筑波サーキットに乗り込んだ。
用意されていたマシンは当時の特殊ツーリングカークラスに分類されるオーバーフェンダーと前後のスポイラーがいかつい連戦連勝のB110サニー。レース仕様らしく5速直結のT/Mを積んでいた。レース時には消火器しかない助手席部分にバケットシートが取り付けられ報道関係者を待っていた。傍らには日産のワークスドライバーの面々。
最初にワークスドライバーが運転するB110サニーの助手席からその性能を体験。確か都平健二が運転するB110サニーに乗せてもらったのだけど、あの時の驚きは今も記憶に残る。一言で言えば速い。ただ速いだけではなく、ねじ伏せているのにクルマがバランスを崩さないと言うか。とにかく第2ヘアピンをカウンターステアを切りながら立ち上がって裏のストレートをフル加速。なんとなんと、最終コーナーに向けて全開のままステアリングを切り始め、それからブレーキング。クルマが旋回を始めて強烈な横Gを感じてからシフトダウン。それらの操作が流れるようにつながっていて乗っていて猛烈なGは感じるけどショックは感じない、クルマを運転するという概念が完全にひっくり返ってしまった瞬間だった。クルマはこんなふうに操ってもちゃんと走るもんだと知った。もっと運転がうまくなりたいと思った。
次に報道関係者が運転する番になり、バケットシートに座ると日産のメカニックの人が4点式ベルトを締めてくれた。重いクラッチを踏んで左手前の1速にシフト。人生初めてのレーシングカーを走らせる。
どこをどう走ったか今となっては定かではないけど、『もっと運転のことが知りたい!』と痛烈に思わせる出来事は記憶に残っている。
報道関係者の中にはレースに参加している人も何人かいて、その人達は嬉々としてクルマを走らせていた。ボクはというとサーキットを走った時間もほとんどなく、ましてレーシングスピードでクルマを走らせるという経験は皆無。それでもクルマを壊さないように、かと言って遅く走っては意味がないからとそれなりに速く走ろうとしていた。しかしRの大きな1コーナーはまだしも、どうしても第1ヘアピンでクルマが曲がらない。クルマの向きが変わらない。
その日はワークスドライバーがコースに散って報道関係者の走りを見てくれていたので、クルマを降りてから当時の日産レーシングスクールの校長だった辻本征一郎さんに曲がらない理由を聞いてみた。すると辻本さんは笑顔で一言。「それは吉田君が速いからだよ」と。冗談めかしておっしゃったのかも知れないけれど、期待していた答えではなかったし問題の解決にはならなかった。
当時は運転に対して初心だった。自分の運転に確信が持てず不安があった。運転の仕方は教えてもらうものではなく、練習して自分で見つけなければならないのかも知れないけれど、理論的に裏付けされた運転の仕方を教えてくれるところがあればいいのにな、と。高校の時に教わってからいたく道具の使い方に興味があったので、クルマの動かし方の正解を教えてくれるスクールがあれば真っ先に受けていただろうし、もっと早くクルマの運転を見極められたのではないかと。
原始的な道具である包丁
その使い方を教えてもらったことが自分の原点
なぜそうするのか
なぜしてはいけないのか
ユイレーシングスクールの思想です
目を通していただけたら幸いです
第147回 道具の使い方
第6回 道具を使う
<続く>
2月3日(土)。ユイレーシングスクールは25年目の活動に入ります。舞台は富士スピードウエイの広大な駐車場。運転の基本を理論的に解説し合理的に練習するYRSオーバルスクールFSWを開催します。この機会にぜひ運転の正解を探してみませんか。詳しくは以下の頁にあります。
・2月3日(土)開催 YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク
第763回 2023年12月の富士山とFSWと食
年を越してしまったけれど、今さらながらに2023年最後の富士山とFSWと食。
と、その前に。 昨年新装になったYRSトライオーバルFSWはこんな感じです。
2023年最後のFSWはホントに久しぶりの雨
停めてはいけないところに停めて慌ててたから
半ドアだけど
コース作りの段取りつけて沼津へ直行
2023年最後のむすび屋さんは
まず生桜海老から
甘くて透明な味が何とも言えず
そしてやっぱり地アジ刺し
その昔
沼津港で地アジが揚がらない寒い時期は
地アジ刺しも地アジ丼もメニューになかった
アジフライはあっても地物でないからと親父さんが出さなかった
暖冬なのかここ1、2年は冬でも食べられる幸せ
コースを作り終えてからの予定を決めていたので
2023年最後の沼津食は天丼に
さっさとコースを作ってホテルに取って返し
歩いて2023年最後のさかなや本店さんに
まずは頼むと間をおかずにでてくる
チーズの大葉巻
2023年の〆は
焼きむすび
すごく時間をかけて焼いてくれるここの焼きむすび
外がカリカリ中はもっちり
一度は食する価値があります
2023年最後で3回目のポルシェクラブ東京銀座のドライビングレッスン
初めてYRSトライオーバルを走ってもらうことにしました
午前中は路面がウエットだったのでみなさん楽しんでました
未明まで雨だったのでいつもの場所に向かうも
残念ながら富士山はかくれんぼ
翌日は快晴
朝6時25分の富士山を
扇屋さんの屋上から仰ぎます
2023年最後のスクールはYRSトライオーバルスクールFSW
参加者が集まる前に
メガーヌRSトロフィーに
カメラとパフォーマンスボックスを積んで
YRSトライオーバルの車載映像を撮影
この日のルノー仲間は4名
ルーテシアRSのNさんFさんを
メガーヌ3RSのSさんが追いかけます
巻尺で実際に測って
コース幅は14.2mです
高速道路の3車線より広いんです
遠くを見てコース幅いっぱいを使って走りましょう
この日は本当に寒かった
Tさんが貸してくれた防寒頭巾をかぶって運転していたら
スタッフが
「トムさん、すごく怪しいです!」
2023年最後のスクールを終えてゲートに向かう
リアビューミラーを見たら富士山が
クルマを停めて
2023年最後のご挨拶
第762回 YRS25年目始動 Oさんの場合
昨年暮れのYRSトライオーバルスクールFSWに参加してくれたルノー仲間に感想文を頼んでおいた。全員分が揃ってからと思っていたけれど届いた順に。
最近Oさんからメールが
なんでも沼津港に行くとか
楽しんできて下さい
トライオーバルスクール。
トライは挑戦の意にあらず。3つのコーナーを配したオーバルコースです。
これまで一度だけ走った記憶があるのですが、今回のは新設計の別物でした。
(新設計の恩恵で周回方向が左右とも可能に。以前は右回り不可)
さぁ、座学もそこそこに走行開始です。
コーナーの数が2→3個へ増えることで、必然的に直線区間は減ります。このため速度回復の区間が稼げないので、コーナリングで速度を落としすぎてしまうと、あっという間に後続車に追いつかれてしまいます。スクールではたびたび「走行中はあれこれ考えるな」と言われるのですが、まさしく考えているヒマはありません。当日参加していた方のコメントが実に的確だったので紹介します。
「コーナーがひとつ増えるだけで、やることが随分多くなる」
好天で路面状況にも恵まれ、走り納めにふさわしい回でした。来年もまたよろしくお願いします。
Oさん 地アジ刺しの効果はありましたか?
※ ユイレーシングスクールの25年目は2月3日(土)開催のYRSオーバルスクールFSWで始まります。ルノー乗りの方はぜひ走り初めに来てみませんか。
2月3日(土)開催 YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク