トム ヨシダブログ


第725回 Oさんの場合

Oさんは昨年12月に開催したアルピーヌドライビングレッスンに申し込んでくれていたものの間際になってキャンセル。年が明けて、どうしているかなと思っていたら、開催日の2ヵ月半も前にYRSドライビングワークショップに申し込んでくれた。例によってあつかましくも感想文をお願いした次第。

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クルマ屋さんだとは知らなかった

 

私のアルピーヌA110 GTが納車されたのは2022年7月末になるのですが、以前6年ほど所有していたメガーヌ3RSでは、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、成田モーターランドなどいくつかのサーキットを走行した経験があります。A110は5年ぶりに所有するスポーツカーであること、また、初めてのMRということもあり、この先長く付き合うことになる愛車の特性をクローズドスペースでしっかりと経験しておきたいとの思いから、納車間もない2022年12月にENGINE主催の鈴鹿サーキットでのドライビングレッスンがあることをアルピーヌジャポンのHPで見つけ、すぐに申し込みをしました。その時のプログラム実行者がYRSさんということで、そこで初めてYRSの活動、トム ヨシダさんを知るきっかけとなりました。

その後レッスンの2週間ほど前になったところで、自宅近くのコンビニの駐車場でフロントバンパー、ラジエーターコアサポート一式を交換するほどの当て逃げにあってしまい、残念ながら修理のためレッスンはキャンセルせざるを得なかったのですが、2か月ほどして車の修理が完了したところで、改めてYRSのHPから、FSWでのドライビングワークショップの申し込みをさせていただいた次第です。
当日は自己紹介をし損ねましたが、私は日産自動車で車両のレイアウトパッケージを計画する仕事に長く携わっており、これまでY50フーガ、V36/37スカイラインセダン、Z34フェアレディ―ZなどFR系車両の開発を担当してきました。ただし、業務の中でテストコースをハイペースで走行することはあっても、限界の挙動の確認や評価を実施するようなことは専門外であり、私がプライベートでサーキット走行をすること自体は単なる趣味でしかないのですが、そういった経験を積むことで自身の設計業務の糧になっていると自負をしています。

今回、初めてYRSのドライビングレッスンを経験させていただきましたが、車を速く走らせる理論については、社内外でもそれなりに情報を持って、理解、実践をしてきたつもりですが、改めてヨシダさんの理論を拝聴させていただき、以下の点で新たな発見をさせていただきました。

・コーナリング中の速度を一定にすることで、タイヤ4本に掛かる接地荷重を最大化する。
・ステアリングの手ごたえを元にタイヤグリップの限界を使いきれるようにコーナリング中のスピードを最大化する。
上記を実践することで、コーナリングを安定してより速く走れるということに気づくことができました。

と、頭では理解したものの、慣れ親しんだ操作方法がついつい顔を出してしまうこともあり、実践するにはまだまだ練習が必要とも思いました…。

今までは、ブレーキングポイントギリギリまでアクセル全開で来た後、アクセルから素早くブレーキペダルに踏みかえ、ABSが効くほど強く踏みつけ、そこからブレーキを7割程度リリースしつつ、ステアリングを切り込み始め、クリップ手前までさらに減速しつつ舵角を増やしながらコーナリング、のような感じで操作をすることで、タイヤ摩擦円の淵をなめる様にGを回すイメージで操作をしていましたが、プロドライバーならいざ知らず、素人の私がターンインでタイヤのグリップを最大限使えていたかと言えば、そんなことはなく、ましてやギリギリまでアクセルを踏んでいる操作は、ブレーキの開始タイミングが少しでも遅れると、クリップにつけず大回りになってしまったり、そのリカバリーで強めのトレイリングブレーキをしてしまう事でスピンを誘発してしまうリスクがあり、結果、ラップタイムは安定せず、遅くなってしまうということが経験上でもあったのですが、今回ご教示いただいた理論は操作ミスをさせにくいので、結果タイムも安定し、しかも速くなるということで、かなりの衝撃をもって受け止めました。

このレッスンを受けるあたって、レッスン前後で、どのくらいサーキットのタイムが変わるのか確認してみたいと思っていたので、レッスン前に富士のレーシングコースを走行しています。タイムは2分8秒くらいでしたが、ご教示いただいた操作方法を自然とできるようになるまで練習をした後、再度富士を走って、どのくらいタイムが変わるのか確認をしてみたいと思っています。

改めて、今回レッスンを受講できて良かったと思うことは、以下の点です。

・しっかりと理論の講義があること
・サーキットではなくオーバルを使ったコースだったので、何度も反復練習ができること
・今回は特に受講者が極端に少なかったので、さらに走行機会が増えて良かった(終わるころにはヘトヘト…)
・車の限界挙動が雨のおかげもあって、比較的低いスピードレンジで体験できたこと
・A110がMRにもかかわらず、挙動が穏やかで非常にコントローラブルな車であることを確認できたこと
・とにかく、丸一日思いっきり走れたこと

非常に大満足のレッスンであまり物申すところもないのですが、強いて言えば、レッスン前後での自分の成長が測れるように、レッスン前に走った時のオーバルのタイムとレッスン後のオーバルのタイムが分かると良いかな、と思いました。

オーバルコースを使ったレッスンは他にもあると思いますが、コースの走り方をレクチャーするレッスンとは違い、YRSは理論ありきのレッスンなので、理論をしっかり理解して、実践できるようになれば、走るコースが変わってもいくらでも対応が効くと理解しましたので、多くの人にお勧めしたいと思いました。

また私も是非、時間を見つけて、別のレッスンにも参加してみたいと思いましたので、その際はまたよろしくお願いいたします。

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当日は終日ウエット
箱根の山々と小山町にたなびく雲を背景に
A110が滑るように走る

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A110を思い通りに動かす秘訣の第1歩はドライビングポジション
「ボクはこういうところに気をつけて座ります」と説明中

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雨脚は時に強く時に弱く
オーバル走行の最初は小さなオーバルで
直線もコーナーも指定した速度で走る
イーブンスロットルの練習
Oさんのターンイン直後のショット

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けっこうな雨量のFSW駐車場
なのにこれだけノーズをもたげるのは
Oさんの踏みっぷりがいいのもあるけど
やっぱりミッドシップだからだなと

 



第724回 明日に向かって

ある日電話がかかってきた。「息子はまだ免許を持っていないのですが運転を教えたいと思います。参加を認めてもらえますか」と。YRSドライビングワークショップアドバンストコーチングFSWは私有地を第3者が入ってこれない専有の状態で借り切って開催するので運転するために免許証が必要なわけではないし、ユイレーシングスクールとしては運転を学びたい人は誰でも大歓迎だから問題ありませんと伝えておいた。

やがて申込みフォームが送られてきたのだけど、年齢欄を見て驚いた。Kさん12歳。車名はフェアレディZ34 ニスモ。次いで電話があって、Kさんとクルマをシェアして受講するというIさんから申込みフォームが。こちらは16歳。はからずも平均年齢が大幅に低くなったYRSドライビングワークショップアドバンストコーチングとなった。

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レーシングカートをやっているKさんはスクール当日13歳になっていた
レーシングカートをやっていたIさんは現在F4でFSWレーシングコースを走っている
IさんがF4車載ビデオをもってきたから昼休みに即席クリティーク
 
ふたりともFSWまではお父上のクルマに乗って
それではと記念撮影
こういうのいいね!

 

Kさん、Iさん。また練習に来て下さい。親父さん達も遊びに来て下さい。



第723回 ルノークラブ走行会

コロナ禍で3年間休止をよぎなくされていたルノー徳島主催のルノークラブ走行会が再開。ゴールデンウィーク真っただ中、四国は徳島の阿讃サーキットに行ってきました。

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<ルノークラブ走行会/阿讃サーキット関連ブログ>
・2015年 第142回 ルノークラブ走行会
・2015年 第143回 ルーテシアRS 阿讃サーキットを駆ける (車載映像)
・2016年 第186回 四国再訪 阿讃サーキット (車載映像)
・2017年 第235回 四国でルノークラブ走行会
・2018年 第297回 GWはいつもの四国への1
・2018年 第298回 GWはいつもの四国への2
・2018年 第299回 Lutecia de Asan Circuit (車載映像)
・2019年 第372回 ルノークラブ走行会
・2019年 第379回 MEGANE RS de ASAN Circuit (車載映像)

ルノー徳島の一宮さんが主宰するルノークラブ走行会はユイレーシングスクールより歴史が長い。その昔、お客さんが雨の峠道で事故を起こしたのをきっかけに運転操作を練習してもらうために始めたと聞いた。初期の頃はスピンする人やコースアウトする人もいたそうだが、ユーザーの運転に対する意識は確実に変わったと。
クルマがどんどん良くなり危なげなく走るようになった今、一宮さんは今後どのような方向に進めるべきか考えているようす。でも、とりあえず来年も5月3日に阿讃サーキットでルノークラブ走行会は開催するそうです。

 

photo:hiroaki terauchi,technical note



第722回 ルノー仲間が増えました

今年最初のYRSドライビングワークショップアドバンストコーチング。申し込みフォームを整理していたらNさんの名前が。んが、車名が違う。
しかししかし、スクール当日真新しいメガーヌから降りてきたのは紛れもなくNさん。

「クルマ変えたんですか?」
「こういうクルマはもう手に入らないんじゃないかと思いましてね」
「去年の12月に納車でした」
「そうでしたか。類稀なクルマです。大切に長く乗り続けたいですよね」

Nさんがユイレーシングスクールに初めて参加してくれたのは2006年11月にFSWで開催したYRSドライビングワークショップ。アルテッツアに乗っていた。その後ロードスターに乗り換えてエンジンドライビングレッスンやYRS筑波サーキットドライビングスクールに何度も遊びに来てくれた。今回が9回目。ユイレーシングスクールに来てから運転が楽しくなったと言ってくれたのが嬉しかった。

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クルマに乗り込む時に間違わないようにしないとねお互い、って
YRSスタッフを巻き込んで大いに盛り上がりました

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メガーヌRSトロフィーを終のクルマに選んだNさん
このブログの影響大だとか
しかもMTには脱帽

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NさんがYRSオーバルFSWロンガーのバックストレッチを快走します

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NさんがYRSオーバルFSWロンガーの下のコーナーに飛び込みます



第721回 YRS鈴鹿サーキットドライビングスクール その2

この日。32歳から79歳まで平均年齢56.7歳のクルマ大好き運転もっと大好きな青年達が、セッション1は29台が473周、セッション2は28台が432周の合計905周を走破。セッション2でスピンの報告が2件あったのが残念だったけどインシデントはそれだけ。鈴鹿サーキットを初めて走った8名の方も大満足。ユイレーシングスクールの面目躍如。

またやりましょう。鈴鹿サーキットを走ったことのない方はユイレーシングスクールのいずれかのスクールを受講してみませんか。そして安全にかつ1日でレーシングコースを十分に味わえるYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールに参加してみて下さい。日常とは全く違う世界を覗くことができます。

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第720回 YRS鈴鹿サーキットドライビングスクール

ユイレーシングスクールでは卒業生を対象にYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールを開催している。ここで言う卒業生とはユイレーシングスクールが主宰する各種ドライビングスクール、エンジンドライビングスクール、ルノー・ドライビングレッスン、アルピーヌ・ドライビングレッスンを受講された方のこと。今回はルノー組が少ないかわりに昨年開催したエンジン+アルピーヌドライビングレッスンに参加された方が4名走りに来てくれた。

ユイレーシングスクールでサーキットデビューをされた方は多いけど、ほとんどの場合は1周1キロほどのサーキット。だから1度は5速全開で回るコーナーのあるサーキットを心行くまで走ってほしいと思っている。今回は29名が参加。うち8名が鈴鹿サーキットレーシングコース初体験。安全に理にかなった運転を目指すことを目的に、ドライビングポジションの話、ブレーキのかけ方の説明、鈴鹿サーキットを走る上で注意すべき点を網羅した資料を事前に配布。ユイレーシングスクール制作の鈴鹿サーキット車載映像の数々も見てもらって当日を迎えた。

ここ3年雨にたたられたYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールだったが今回は晴れ。参加者全員が名うての高速コースを堪能することができた。

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鈴鹿サーキットを占有する場合サーキット走行のルールを徹底するため
鈴鹿サーキット側のブリーフィングがある
 
その後ユイレーシングスクール独自のガイダンス
初心者もベテランも速いクルマもそうでないクルマも
誰もが自分のペースでサーキット走行を楽しむために

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専有走行の場合はサーキットスタッフの完熟走行が必要だけど
ユイレーシングスクールではボクに任せてもらっている
 
鈴鹿を走ったことのない方をリードカーの直後に並んでもらい
ストレートは全開でコーナーは控えめに
リズムを作れるようなペース配分で引っ張る

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YRSツーデースクールやYRSオーバルスクール常連のSさんも
鈴鹿サーキットは初めて
 
それでもセッション終盤には相当速いペースで走っていた

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昨年のエンジン+アルピーヌドライビングレッスンに参加してくれた
Gさん(黄A110)とOさん(青A110)も
鈴鹿サーキット初体験
 
改めてビックリ
A110のストレートスピードの速いこと
もちろんGさんもOさんもかなりのペースで

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香川県からYRSツーデースクールに通ってくれているIさん
YRS鈴鹿ドライビングスクールで鈴鹿は何度も体験済みだけど
新しく手に入れたルノー メガーヌRS トロフィーRでは初めて
 
リードフォローは鈴鹿サーキット未経験者がリードカーの直度に
その後ろに経験者が並びセッション1は2周セッション2は1周の慣熟走行を

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YRSツーデースクールFSWやYRSオーバルスクールFSW常連のOさん
YRS鈴鹿サーキットドライビングスクールにも来てくれました
 
4月末のYRSトライオーバルスクール試走会にも
申し込んでくれています
 
写真3台目のMさん(青A110)は鈴鹿経験者

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ピットロードに参加車が並び
コースオープンのカウントダウンを待ちます

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橙色のIさんポルシェからは
鈴鹿サーキット経験者が並ぶ
 
Iさんはこの日の1番時計

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セッション1が終わり
結果表が届くまで
ピットに設けられたタイミングモニターとにらめっこ

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ちょっと見にくい写真だけれど
セッション中は走行中の全車のラップタイムが
リアルタイムで表示続けられます

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ミーティングが多いのも
ユイレーシングスクール主宰のドライビングスクールの特長
 
セッション間のインターバルには質疑応答
スタッフが気が付いたことをアドバイス
 
サーキットの管制からレポートが上がってくるので
誰がいつどこでコースアウトしたとかわかるシステムになっています

スクールの進行をしながら撮ったから出来はわるいけど。今回のルノー/アルピーヌ組の走行写真。

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Iさん
ルノー メガーヌⅢRS トロフィーR

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Oさん
ルノーメガーヌⅢRS

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Oさん
アルピーヌ」A110S

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Gさん
アルピーヌA110

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Mさん
アルピーヌA110S

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Sさん
ルノー メガーヌⅢRS

 

ルノー/アルピーヌ乗りで鈴鹿サーキットを走ったことのない方。機会があればぜひレーシングコースを全開で走ってみて下さい。間違いなく新しい発見があります。何よりもクルマを動かす喜びを感じられます。クルマも喜ぶはずです。



第719回 ローンチコントロール

駐車場だから加速距離は長くないしスタート地点には砂が浮いているからメガーヌRSトロフィー本来の性能ではないと思われるけれど、ローンチコントロールを可視化したらいろいろ見えてきた。


トライは2回だけ。1回目は完全に止まる前録画中にしゃべってしまいボツ。記録は1回目が良かったのだけれど。

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横軸が経過時間
左目盛の赤線が速度を表し右目盛の青線が加減速Gを表す
 
グラフ左端から0.19秒で速度ゼロから発進

YouTubeにあげた動画と同じランだけど記録した数値に違いがあるのはパフォーマンスボックスやiPhoneの取付位置や取り付け方によるものか、それぞれのデバイスのデータの拾い方によるものなのか現時点では不明。

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発進から1.21秒で最大加速度0.586Gを記録
その時の速度が」13.68Km/h
 

発進時は明確なホイールスピンが起きた。しかし昔ながらの高出力のマニュアルシフト車でクラッチをドンとつないだ時のようなホイールスピンではなかったような気がする。経験からすると、エンジン出力から考えれば空転に近いホイールスピンが起きてもおかしくはなかった。何かが介入していた?

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0.5G以上の加速が4.5秒ほど続く
スタート後4.46秒で72.27Km/hを記録
 

この間、時間の経過とともにエンジン回転が上昇しそれに見合った加速度の増加があるはずなのだけど、それが見られなかった。それでも速度が確実に上昇していることを考慮すると、滑りやすい路面、あるいは大きなエンジン出力に対応するため、加速度を押さえる方向でなんらかの制御が入っているものと推察される。
スタート後3.4秒あたりで速度の上昇によどみがある。1速から2速へのシフトアップだろう、加速度にもわずかな落ち込みが見てとれる。対して2速から3速へのシフトアップは5.3秒あたりか。こちらは動画の音声からもわかるが一瞬加速度の鈍化が感じられる。いずれにしろシフトアップ時に加速度がマイナスに振れないシームレスなシフトアップはさすがEDC。

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スタート後7.40秒でこのランの最高速度110.30Km/hを記録
この時の加速度はプラス0.062G
加速度がマイナスになるのは7.46秒時で110.22秒/-0.002G
 

スタートから7.3秒あたり。最高速度に達する前に加速度は大きく減少を始めている。と言うことは、それ以前にスロットルが閉じられていることになる。換言すればスロットルオフ後もクルマは加速した、ということになる。しかも最高速度を記録してからコンマ5秒ほど110Km/hあたりを維持している。運動エネルギーが持つ一面。
スロットルを開けつづければそれだけ運動エネルギーが増加する。スロットルオフと同時にクルマが減速を始めることがないとすれば、状況によってはスロットルを閉じてもクルマがさらに加速する可能性があるわけで、サーキットでブレーキを我慢してスピンしたりコースアウトする人やブレーキをオーバーヒートさせる人はブレーキを遅らせることで短くなった減速区間で速度を落とそうとクルマが加速状態のまま=荷重がリアにかかり前輪のグリップが低下している状況で過大な制動力を立ち上げているのではないか、ユイレーシングスクールで言うところの『蹴とばしブレーキング』をやっているのではないかという仮説がなりたつ。スピンやコースアウトは速度が十分に落ちなかったかターンイン時にクルマが前のめりだったのが原因だろうし、オーバーヒートはブレーキローターの回転が落ちなかったせいだろう。
ブレーキを我慢すれば周回路を速く走れると思うのは錯覚にすぎない。

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最大の減速Gはスタート後8.30秒で-1.004G
その時の速度が96.42Km/h
 

と書いてきて、穴があったら入りたい! 猿も筆の誤り! (笑)
効率的なブレーキングは、加速中リアにあった荷重をフロントに移動させ前輪の輪荷重を増やすように制動力を立ち上げなければならない。輪荷重が増えれば増えるほど前輪のグリップが増加するから本来の制動力を発揮することができて減速Gも大きくなる。だから、最大減速Gは減速区間の後半で記録されるはずだ。つまりグラフの加速度を見る限りこれは明らかに『蹴とばしブレーキング』なのだ。実際、
・スタート後8.5秒から10.5秒までの間、速度は落ちているが減速Gの大きさが横ばい
・11.3秒から13.2秒の間、速度が一定と言うかわずかではあるが上昇している
・減速加速度が跳ね上がり11.5秒から13.6秒の間加速度ゼロ、つまりブレーキをかけているのに速度が落ちていない時間があった
・その後減速Gが回復し速度も低下
これはABSなりなんらかのデバイスが介入した結果だと言わざるを得ない。その原因を作ったのはボクだけど。ブレーキング中に速度の落ちていない時間があれば制動距離が延びるのは自明の理だ。だからブレーキングは上手くなったほうがいい。

※ 加速距離を稼ぎたかったので、このランはスロットルオフを遅らせクルマが完全に下り坂に降りてからブレーキングを開始した。下り坂で前輪に急な荷重がかかった結果である可能性もある。 って、言い訳ですけど。

『蹴とばしブレーキング』の動画

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スタート後14.91秒で-0.374Gを記録した直度に停止したはず
 

しかしグラフを子細にいてみると、速度がゼロになった瞬間がない。最も速度が低下したのは記録によるとスタートから14.91秒後に時速0.04キロになった瞬間だった。速度が落ちて止まったなと思ったからブレーキをリリースしたのだけど、クルマが完全には止まっていなかった=運動エネルギーを開放しきってはいなかったってことになる。もっとも、その前の減速度の大きさにもよるだろうけど。以前、ドライブレコーダーを使った運転診断で「一旦停止ではもっと確実にしっかり停止しましょう」と言われたのはこのことだったのかも知れない。一旦停止で切符を切られるのはこういう運転かも知れない。

クルマの運転って楽しい。クルマの機能、性能を味わうのも面白いし楽しいけど、やっているつもりでやっていなかった自分とか、できていると思ってやっていたのにできていなかった自分を発見するのも楽しい。運転は学習の連続。まだまだ先は長い。

ところで、4月29日(土)に富士スピードウエイ駐車場でYRSドライビングワークショップアドバンストトレーニングを行います。Gセンサーを使って参加者全員のブレーキング、オーバル走行のデータを記録し、教室でモニターに映してアドバイスします。言葉のアドバイスに加えて視覚的にも理解を深められるカリキュラムです。興味のある方は 開催案内 をご覧下さい。ぜひ多くの人に体験してほしいと思います。



第718回 富士山と桜とFSWと食

4月あたまのドtライビングスクール2連ちゃん。タイヤの慣らしを兼ねて東に向かう。

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3月31日
朝9時3分
御殿場市山の尻から富士山を仰ぐ

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足元にはつくしがこんにちは

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春休みで沼津港は大賑わいのとのニュース
それならばとお昼は御殿場のきく川で
 
ホントは沼津港が良かったのだけれど

 

次の写真5点は3月10日12時40分撮影

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3月のYRSツーデースクールFSWの時には
沼津港市場正面のむすび屋さんに

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まずは地アジ刺し
味が濃い

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次いでやりいか刺し
コリコリ/プリプリ

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中トロ鉄火丼
溶けるぅ

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ごちそうさまでした
 
 
4月末にまたうかがいます

 

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3月31日午後
コース作りの前に富士霊園におじゃまして

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ところどころに蕾もあったけれど
今年はドンピシャのタイミング

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桜と富士山は無条件で沁みる

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FSWも春ど真ん中

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4月1日
朝6時51分
御殿場市山の尻から富士山を仰ぐ
快晴
さぁスクール1日目



第 717回 Renault Assistance Service

過日。筑波サーキットからの帰り道。新東名を走っていたら突然ステアリングホイールから細かな振動を感じるようになった。何が原因なのかわからない。直線部分で両手をステアリングホイールから手を離してみる。進路が乱れることはない。少なくとも前輪のパンクかバランス不良ではないと判断。レーンの中でごくゆっくりスラロームをしてみるがクルマの動きは振動が出る前と変わらないように感じた。それでも振動の原因を確かめるべきだと思ったのだけど、高速道路上にクルマを停めたくはなかった。クルマが動かなくなればしかたがないが、それまでは走り続けようと。

その昔、高速道路を走っていて長く大きな絨毯を巻いたようなものが落ちていたから、片側2車線の路側帯にクルマを停めて非常電話で通報したことがある。初めての経験だった。走行車線を走る大型トラックがクルマの脇ギリギリをうなりを上げてすり抜けて行く。身の危険を感じた。そして非常駐車帯であろうと高速道路上にクルマを停めるのはやめようと心に決めた。パンクしてタイヤやホイールがダメになってもクルマが動く限りSAかPAまで走るべきだと。

外の音が聞こえるように運転席と助手席の窓を少し開け、ステアリングホイールを親指と人差し指でつまむようにして振動の大きさが変化しないか確かめながら、第1車線を100キロ前後で走る。距離はそれほどでもなかったけど、駿河湾沼津SAまでの道のりがとてつもなく長く感じた。

なんとか無事にたどり着き、ガソリンスタンドにクルマを停めタイヤを確認。前輪は案の定なんともない。後ろに回って驚いた。右の後輪の空気が抜けている。後輪がパンクしてその振動がステアリングホイールに伝わって来るとは思わなかった。4コントロールと関係があるのだろうか。

ガソリンスタンドのスタッフにパンクの修理をお願いするも、基本的に高速道路を走ってきたクルマのパンクは修理できないと冷たい返事。さてどうするか。ならばと、クルマを置かせてもらう許可だけもらって、検索して出てきた近隣のタイヤショップに電話をかける。ところがかけた4軒とも245/35R19の在庫がない。

こうなればいたしかたないとルノーアシスタンスを頼ることにした。2010年にルノー・ジャポンからトゥインゴGTを借りた時にルノープレミアコールのことは聞いていたので、スマホに入れておいたアプリから緊急電話。電話を受けてくれた加藤さんに、右後輪がパンクしたこと、近くのタイヤショップではタイヤの手配ができないことを伝える。
ルノーアシスタンスとして交通費もしくは宿泊費の補助ができると説明してくれたのだけど、その日のうちに大津市に帰る必要があることを伝える。加藤さんは、それならばルノー沼津に相談してみましょうと。しばらく待っていると、加藤さんから電話。ルノー沼津にメガーヌⅣRSトロフィーを持ち込んで、もしホイールが装着できると確認できればルノー沼津が在庫している中古ではあるけどメガーヌⅢRSのホイールとタイヤを貸してくれるとのこと。朗報。とにかくSAにいてはことは進まない。加藤さんに積載車の手配をお願いする。

結論から言うとメガーヌⅢRSのホイールは問題なく装着できて、その日のうちに大津の自宅に戻ることができた。パンクしたタイヤはルノー沼津に預けておいて、新品のタイヤを手配してもらって組み換え。翌週のFSWのスクールに行く時によって交換してもらうことにした。残りの3本は後日、ルノー栗東で新しくしてもらった。

ルノーアシスタンスの加藤さん、ルノー沼津の林さん、ルノー栗東の井上さん。その節はお世話になりました。いち時はどうなるかと思いましたが、なんとか無事に翌日の仕事に穴を開けずにすみました。ありがとうございました。

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駿河湾沼津SAにて
積載車のお世話になるメガーヌRSトロフィー

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ルノー沼津に到着

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きれいで大きなルノー沼津のショールーム

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臨時に装着してもらったメガーヌⅢRSのホイールとタイヤ
ルノー沼津にあったのがオプションの19インチタイヤだったことが幸いした
ホイールの幅は確かハーフインチ狭いけど
リアに履くのだから問題なし

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パンクの原因はクギやネジではなく
薄い金属の板
なぜこんなものを拾ったのか見当がつかない



第716回 続・人間の操作がクルマを動かす

第708回加速度と速さ 第709回人間の操作がクルマを動かす で取り上げた、YRSオーバルFSWロングを走った時のSさんとボクの走行データ。今回はブレーキングの仕方と減速Gの立ち上がり方の関連を比較検証。と言っても、たった1周の操作を比較するのだからもちろん厳密なものではないし、こうするとこうなるという因果関係みたいなものが導き出せればと思う。
ちなみに選んだラップは2人が下のコーナーのターンイン手前で最も大きな減速Gをたたき出した周。下のふたつの図は速度と減速Gを同じ座標軸に置いた。赤いグラフが速度で左目盛、青いグラフが減速Gで右目盛。右の楕円形の線図はこの周に走った軌跡で線上の小さな緑の丸がスタート/フィニッシュライン。それぞれのX印が下のコーナー前に最大減速Gを記録した地点。図は上がSさんで下がボク。

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Sさんはスタートから0.99秒でマイナス0.889Gのブレーキングをして99.33キロまで減速。トレイルブレーキングを使いながらターンイン。第709回でも触れたけど、加速から減速へも、強りブレーキングからの抜き方にもトランジッションが不足している印象を受ける。

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ボクはスタート後1.1秒でマイナス0.972Gのブレーキングで97.10キロまで減速。ボクはというと、フロントが跳ねないようにブレーキのリリースに時間をかけ、その後のトレイルブレーキの効果を高めようとしている。それぞれのブレーキングがそれがその後のトレイルブレーキで相対速度という視点からどんな影響を与えるか。

下の図は比較しやすいように1周のラップをスタート後10秒で2分割して並べた。図中の赤い横線が減速Gゼロを示す。
※ Sさんの赤線がイラストレーターで制作中に少しズレたのに気づかないまま画像にしてしまった(泣)。

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・Sさんは最大減速Gを発生させた強いブレーキングの後でブレーキを抜いて2秒強引き摺っていると思われるが、減速Gの減少がゆるやかでしかない。減速Gがマイナス0.3Gまで減少するのが2秒後。と言うことは、この間も速度も低下していることになる。3秒後に減速Gが1瞬プラスマイナスゼロに戻るけどその後が安定していないからいぜんとして速度の低下が続く。ボクの場合は強いブレーキのリリース後すぐに減速Gがマイナス0.3Gまで減少し、減速Gは安定しないものの最大でもマイナス0.5Gを超えない範囲で推移しているから、トレイルブレーキング中に速度の低下が緩やかになっている。
・結果として下のコーナーのボトムスピードは60キロ対55キロでSさんの方が速い。Sさんの場合スタート後4.5秒あたりで1瞬60キロになってから速度が上昇を始めるけれど、ボクの場合はスタート後4秒あたりから約1.5秒の間55キロを維持している。
・ボトムスピードを記録してからSさんは加速を続けるけど下のコーナーの立ち上がりで70キロに達したのはスタート後約8秒。対するボクは7.3秒あたり。Sさんのグラフはその後急に立ち上がりプラス0.3~0.4Gの加速を10.7秒あたりまで続けるけど、ボクはイーブンスロットルを始めた4秒からは減速Gが大きくマイナスに振れることなく加速を続けそれに見合った速度を得ている。

・周回路のラップタイムは距離が決まっているので平均速度の裏返しになる。そして周回路ではコーナリング速度より直線での速度のほうが圧倒的に高い。何よりもほとんどの周回路では直線を加速している時間よりコーナーの中にいる時間のほうがずっと長い。例えばYRSオーバルFSWロングを20秒で走るクルマを数えてみると、直線を「1、2、3・・・」くらいで駆け抜けるのに、コーナーを回っている時間は「1、2、3、4、5、6、7・・・」となる。だからコーナリングではボトムスピードを高く維持することも大切だけど、コーナリング区間の平均速度を上げるのがもっと重要になる。
・コーナリング区間というのは直線でスロットルから足を放した時から、コーナーを抜けて立ち上がり舵角がゼロになってフルトラクションをかけられるようになるまでのことを言う。この区間でクルマが失速せずに前に前に進めば平均速度は上昇する。速く走りたい人が陥りがちなブレーキを遅らせることや、立ち上がり速度よりもスロットルを全開にすることを優先することが、果たして平均速度を上げることにつながるかは絶えず検証が必要だ。

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・結果、裏のストレートでSさんが100キロを超えたのはスタート後10.5秒あたりで到達速度が105キロ弱。対するボクは9.7秒あたりで100キロに達し108キロまで加速。
・そこから上のコーナーへのアプローチが始まるのだけど、ターンイン手前でSさんが強いブレーキングをしていないのが見てとれる。対してボクは1瞬だけだけどマイナス0.9G付近までしっかりと減速している。
・上のコーナーはフラットに見えるけど実はうねりがある。それでも下のコーナーほど神経質になる必要はない。減速の後には加速という流れを作りやすい。
・Sさんもボクもスタート後同じように14.5秒あたりで同じ様なボトムスピード57キロを記録。ボクはイーブンスロットルにして加速に備えるけど、Sさんはスロットル瞬間開けたのかも知れない。15.2秒あたりで0.7Gに達しようかという加速度のスパイクが記録され瞬間的に速度も上昇している。この瞬間、加速度もマイナスを示していてコーナーの脱出速度に影響したものと思われる。
・結果、ロールを残しながらコーナーを脱出するのだけど、Sさんが70キロに到達したのが約17.3秒でボクが約16.8秒。直線に出てからの加速については、#2 横Gと速度のグラフ―後半スタート後11.5秒から にも表れているけどSさんはスロットルをステアリングを戻すのよりスロットルを開ける量が多いのかロールを消せないまま加速している。1周20秒のコースでコンマ3秒の差がつくということは、ここに書いたことだけではなく実に様々な要素=クルマを前に進めるための操作がからんでいる。

 

時間のある方はぜひ、709回で触れた横Gと速度の関係のグラフも、『どうするとこうなるのか?』 という観点から見ていただければ幸いです。
#1 横Gと速度のグラフ―前半スタート後11.5秒まで
#2 横Gと速度のグラフ―後半スタート後11.5秒から

 

繰り返しになるけど、運転とは走行中のクルマの状態を把握し、自分の経験なり知識を基にして目的を達成するためにはこういう操作が必要だという仮説を立て、それを実行に移す作業だと考えている。ところが仮説がいつも正しいとは限らないから、間違いを犯さないためにも知識と経験を積み重ねる努力を続ける必要がある。また仮説が正しくてもわずかな操作の違いで結果が目的から外れたり、場合によってはそのつもりなのに自分の立てた仮説通りに操作できていないこともあるだろう。その場合には修正が必要になるのだから、どちらの方向に修正すべきかを瞬時に判断するための知識と経験も必要だとユイレーシングスクールは考えてオリジナルのカリキュラムを展開している。

 

最後に、ここ数回に登場してくれたSさん。ブログの手伝いをしてくれたことを感謝します。ありがとうございました。文中ではあれこれ言いましたが、Sさんが目指す運転の方向性は間違っていません。新たらしい仮説を探すための経験を積みにまたスクールに遊びに来て下さい。