トム ヨシダブログ

第401回 ブレーキペダルとかかと 2

398回衝撃の事実 で意見を聞かせて、とお願いしたところ、さっそくメールをもらったので紹介します。かかとを床につけて操作することへの否定的意見も聞きたいと思いますのでよろしくお願いします。

398-1


Mです。いつもブログを拝見しています。

私は自動車学校に行かなかったのでどのように教えているかは分かりませんが、私自身は最初から踵をつけていました。先入観無しに操作すれば自然とそうなると思います。これに関しては専門的な立場から後ほどお話しします。実は私は神経科学(ちまたでは脳科学ということばを良く聞きますが)や運動生理学を専門にしています。

踵を支点としてアクセルとブレーキを操作するのは操作を確実にするという観点から理にかなっていると思います。ブレーキペダルをつま先で踏む動作を考えます。ブレーキペダルの位置を推定(機械だと実測できますが人間だと運転中は実測できませんので反復練習を行うことによって脳が予測値を獲得していると考えられています)して、つま先の現在の位置(これは人間でも実測していますが、時間遅れがありますので、推定値を用いていると思われます)に対する相対的な位置を計算して、それを元に運動指令を計算する必要があります。

アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いというのは、つまるところ、上記の課程の中で生じているわけです。特に(頭や体幹を動かすなどして)姿勢を変えた後や途中でブレーキペダルを操作する場合、通常の姿勢でブレーキペダルを操作するのと同じくらいの回数を姿勢を変えた状況で反復練習していれば別ですが、そうでないと、つま先の位置に対するブレーキペダルの位置の計算に誤りが生じているのでしょう。

また、踵を支点としてアクセルとブレーキを操作するのは(股関節を支点とする場合に比べて)操作量を少なくするという観点から理にかなっています。操作量が少ないということはブレが少ないということにつながります。つまり、意図した動作を毎回正確に実行できるということです。これはかなり専門的な話になりますが、脳が運動指令を出す際、(神経系の特性として)その出力の強度に依存したノイズが入る事が知られています。ですから、操作量が少ない、つまり脳からの出力強度が小さいということは、信号に重畳しているノイズも少ないということになります。

最後に、脳はかなりのサボリやさんのようで、目的が達成されれば途中経過は気にせずに消費エネルギーを少なくするという戦略を取っているようです。ですから、何も教えられずにブレーキとアクセルを操作すれば自然と操作量が少なくなる踵を支点とする操作になると思います。

ただ、私の妻のように足が小さいと、踵を支点にするとつま先がブレーキペダルに届かない場合もあるようです。ここらへんの問題は、作り手の論理から使い手の論理へ、さらには真の人間工学を啓蒙していく必要があるでしょうね。

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もっといろいろな方のお話をお聞きしたいと思います。ぜひご意見をお寄せ下さい。
ユイレーシングスクールメールアドレス:yuiracingschool@gmail.com



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