トム ヨシダブログ

第765回 25年目のユイレーシングスクール その2

<長文です>

第764回 25年目のユイレーシングスクール から続く。

1999年11月中旬にアメリカから一時帰国。同年12月8日に埼玉県にある桶川スポーツランドで初めてのユイレーシングスクールを開催。インターネットだけの募集だったけれど、確か定員いっぱいの16名が参加してくれた。

764-2
ユイレーシングスクールを開校した目的は運転を
理論的に理解してもらい合理的に練習してもらう環境を用意すること
免許取立ての時期にそんなスクールがあればもちろん受講していただろう
そんな運転の正解を伝えるドライビングスクールをやりたかった
運転は一生モノだから一度は運転を教わったほうがいいと思う
だから自分の経験を全て公開するつもりのスクール
 
写真は2000年2月12日に開催した第2回YRSドライビングスクール桶川
スポーツランド桶川の事務所で
ビークルダイナミックスを説明したイラストを配っての座学

 

軽免許も普通免許も公安委員会の試験場で取ったからいわゆる自動車学校には行っていない。運転というものを一切教えてもらったことがなかった。だから自分の運転はまさに我流だった。要するに自分の運転方法が正しいのか確かめる術がなかった。

クルマを運転するからにはうまくなりたいと思っていた。うまくなれば危険な目にあう確率も低くあるだろうし、何よりも楽しいだろうし、鼻が高いだろうしレースに出ればそこそこの成績を修められるはずだと思っていた。だから日常的に運転がうまくなる方法を探していた。

アメリカに渡りSCCAのレースに参加した時、自分の運転のうまさ加減を知ることができた。デビュー1年目でカリフォルニア地区1位、南太平洋地域2位、全米で28人中6位になることができた。それはそれで満足だったが上には上がいた。自分ひとりの努力では限界があることを知った。

ジムラッセルレーシングスクールの実体を知り、こういうスクールを10代後半か20代前半に体験していれば全米1位も夢ではなかったかなと。日本にもこういうドライビングスクールがあればいいのにと思った。

80年代後半。当時の日本にも運転をキチンと習いたい人がいるのに違いないと思い、ジムラッセルレーシングスクール・カリフォルニア校に交渉して日本語クラスを創ってもらった。もちろんインストラクターはボク。延べ243名の方が日本からフォーミュラカーで行われる3日間コースを受講しに来てくれた。費用が高かったにも関わらずこれだけの参加をみたことは、日本にも運転が上手くなりたい、運転を習いたい人が確実にいることを確信した。

ツインリンクもてぎの北米代表としてCARTインディーカーとNASCARストックカーの招聘に携わり成功裏に終わった。オープン前、関係者向けに輸入したミヂェットやNASCARストックカーの乗り方講習もやった。次にツインリンクもてぎでドライビングスクールを開校したいと申し出たのだけど、「トムさんはレーシングドライバーでないしホンダの契約ドライバーではないから」と断られた。レーシングドライバーが教え上手だとは思っていなかったが。結局ツインリンクもてぎを辞し、『こういうスクールが自分の若い頃にあればなぁ』的なドライビングスクールを始めることにした。

やるからにはジムラッセルレーシングスクールのように理論と実践をリンクさせたドライビングスクールにしたいと思った。ちなみに当時のジムラッセルレーシングスクールには年間で初級クラス約2,000人、上級クラス約1,600人の参加者があったけどレースに参加する人はごく少数で、ほとんどの人が運転を理解すること、運転の上達を目指して参加していた。ジムラッセルレーシングスクールのカリキュラムはそれに応えていた。

ユイレーシングスクールのWebサイトを立ち上げ全84頁の教科書を公開した。メールマガジンの配信を始めた。教材用のイラストを起こした。運転が上手くなってくれることと運転を楽しんでもらうことをスクールの第一義とし、次のような方針を決めた。

・スクールの始まりには必ず座学を行う。クルマの動き方を理論的に説明して、実際の操作でやってはいけないこととやらなければならないこと、やったほうがいいことを明確に伝える。
・実技は人間の操作がクルマをどう動かすかわかりやすく、かつ反復練習を繰り返せるコース設定とし、できるだけ距離を走ってもらう。
・スクールを通して運転に興味を持ってもらえるようにアドバイスをする。
・将来的にサーキットを走るつもりのない人にも受講しやすく、日常の運転にフォードバックできるようなカリキュラムにする。
・ワンボックスやSUVなどどんなクルマでも参加できること、サーキットを走る際に改造することが必ずしも必要でないことを十分に告知する。
・受講中にはインストラクターのアドバイスで上達するが、その後も自身の解析によって上達し続けられるようなたたき台を提供する。
・サーキットを走ろうとする人には速さを追いかけるのではなくクルマの性能を発揮させる操作を優先するようにアドバイスする。

 

結果、
・一度受講した人が再度受講してくれた。年間21回開催していた筑波サーキット公式スクールに8回参加してくれた人もいる。それ以降リピート率は90%を下らない。
・筑波サーキット公式スクールのある日。朝の座学で受講者に過去サーキットでも公道でもスピンした人に手を上げてもらった。参加32名中30名が経験者だった。しかしその日。誰ひとりスピンすることなく、ほぼ全員がタイムアップを果たした。
・過去24年間。1,000回近いドライビングスクールとスクールレースを開催し延べ18,000人近くが受講した。しかしスクール中のクルマの損傷事故は5指に満たない。
・ドライビングスクールの卒業生で各地のレースに参加した人がレースで優勝したりシリーズチャンピオンになった。
・スズキジムニーや三菱スペースギアでの参加があった。
・現在までの最高齢受講者は78歳。最年少は13歳だった。
・受講した人が娘や息子を連れて参加してくれた。ご夫婦での参加もあった。
・受講した人が知り合いに受講を勧めてくれるようになった。
・ユイレーシングスクールの実績を元に雑誌エンジンがドライビングレッスンの運営を任せてくれた。昨年までに計76回のドライビングレッスンを開催。今年エンジン・ドライビングレッスンは22年目を迎え3回の開催を予定している。
・評判を聞いたアイディングやポルシェクラブ千葉などいくつかのカークラブからワンメイクドライビングスクールの依頼があった。現在はポルシェクラブ東京銀座のドライビングレッスンを年3回開催している。
・ルノー・ジャポン/アルピーヌ・ジャポンのドライビングレッスンを担当させてもらいルノー/アルピーヌユーザーに直接クルマの楽しさをお話しすることができた。

この20年あまりで時代は変わった。いろいろな意味で。向こう数年でまた変化があるかも知れない。開校前に立てた方針がそぐわないことが起きるかも知れないが、スクールを続けることでまだまだ成長している自分を感じることができている。だからスタッフより速く走れるうちは今の路線のまま続けたいと思っている。

 

2月3日(土)。24年間ブレずにドライビングスクールを開催してきたユイレーシングスクールが25年目の活動に入ります。舞台は富士スピードウエイの広大な駐車場。安全に配慮した環境で運転の基本を理論的に解説し合理的に練習するYRSオーバルスクールFSWを開催します。この機会にぜひ運転の正解を探してみませんか。詳しくは以下の頁にあります。
・2月3日(土)開催 YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク



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