トム ヨシダブログ


第34回 自動車レースと人


YRSエンデューロ

1880年代後半に最初に自動車が発明されてからわずか10年後。世界で初めての自動車レースが開催された。以来、自動車の発達は常に技術革新を求められる自動車レースとともにあった。

自動車レースはまた、すぐれたドライバーを育てることに寄与した。彼らの運転技術は現代へと受け継がれ、多くの人々に安全で快適なクルマ生活をもたらした。
実際、体系的なドライビング理論が確立してのは1960年代初めで、アメリカでインストラクターをやっていたジムラッセルレーシングスクールも、もちろんユイレーシングスクールも基本的にはその理論を応用させてもらっている。

自動車が市民の足として定着するのと平行して、やがて自動車レースはエンターテイメントとしての側面を充実させる。アメリカではストックカーレースがメジャーリーグベースボールを超える観客を動員し、インディカーレースは常にNBAなみの高視聴率を誇っている。
ヨーロッパとアメリカでは若干モータースポーツの発展形態は異なるが、クルマを道具するスポーツとして確立している点に差はない。しかし、自動車を走らせることをスポーツまでに昇華させた立役者はアメリカだ。特に1948年創立でストックカーレースを「ボールゲーム」並みのステータスまでに押し上げたNASCARと、1956年に創設されて以来インディ500を頂点とするアメリカンオープンホイールレーシングを育てあげたUSACはアメリカンモータースポーツの父と母と言える。


YRSスプリント

しかし残念ながら、我が国では自動車レースが認知されているとは言い難い。速度を競う自動車レースと、速度を出さないことが安全とする道路交通の施策が相入れないことにも原因の一端があるのだろう。
一般的に、自動車レースに参加する人や自動車レースに興味を持つのは一部の特殊な人達と思われているのも事実だ。クルマが好きでも自動車レースには興味がないという人もいる。かって大新聞が自動車レースに参加する人と暴走族を混同して報道したことが尾を引いているのだろうか。

しかし、ガソリンの値上がりが懸念される今日も世界を見回せば自動車レースに興味を抱き、自動車レースに参加し続ける人々がいるのもまぎれもない事実。世の中にクルマが存在する限り自動車レースが市民に受け入れられるのは自然な姿であり、我々に快適な移動を約束してくれる自動車は、そうやって130年余りの歴史を作ってきた。
そして自動車の発達が自動車レースと密接な関係にあるように、自動車レースはまた、人々に夢と昂揚感を与え続けている。

ユイレーシングスクールがスクールレースを始めたのは、ドライビングスクールを受講した人にもう一歩運転の幅を広げてほしいかったからなのだが、実はアメリカのように、どこにでもいるオジさんやオニイさんが自動車レースに参加できる環境を創るのが本当の狙いだった。
実際、YRSドライビングスクールを受講した時、「自動車レースに興味はありません」と言っていた人達が、ふだん乗っているクルマでYRSスクールレースに参加してくれるようになった。数は多くないけれども、彼らは今、もはや自動車レースが一部の人のものだとは少しも思ってはいない。むろん彼らは暴走族ではないし、むしろ安全にクルマを運転することに関しては達人の域にあると言ってもさしつかえない。


YRSオーバルレース

クルマと人との関係を濃密にすることのできる自動車レース。F1をはじめ様々なモータースポーツに参画しているルノーが、日本でふつうの人のためにふつうのクルマで参加できる自動車レースを開催してくれないものだろうか。

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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクール、スクールレースを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ YRSオーバルスクールFSWロンガー

○ 2012YRSオーバルレースFSW 第2戦

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
YRS座学オンCD案内頁


第33回 クルマと人

クルマを所有する個人は、あらゆる意味で人間の「能力拡大器」であるクルマを持つことでその思いを満たすことができる。
クルマを運転する個人は、様々な目的を達成するために「自己解放の道具」であるクルマのイグニッションキーをひねる。

他方、クルマを提供する人々は、個人の所有欲に訴えることしか個人の思いにたどりつく術をもたない。クルマが実際に「人間能力拡大器」であることは間違いないのだが、クルマを所有している人、あるいは所有しようとしている人の「自己解放」にまでは踏み込むことができない。クルマが個人の手に渡った時からクルマの価値は全てその個人に委ねられる。個人はまたそれぞれに、自らの思いをクルマに託す。

かくして、所有する人、そして運転する人次第で、クルマはその人の人生に大きなかかわりを持つ。

トゥインゴGTのオドメーターも2万キロを超えた

だから、ユイレーシングスクールではドライビングスクールで、

『クルマの運転は現代社会ではほとんど手にすることができない自己完結行動を可能にしてくれます。例えばコンビニに買い物に行くのであってもサーキットを走るのであっても、あるいはただ目的もなくクルマを走らせる時でさえ、クルマを停めてイグニッションキーを抜くまでは全てのことがあなたがた自身に委ねられています』

『安全に走ることも、快適に走ることも全てご自身が決めなくてはならないのです。ですから、無理をするのは禁物
です。他人と比較しても、あなたはあなたです。好きなクルマを運転するのですから、とりあえず粋に走ることを目指して下さい』

『ご自分でシナリオを書き、ご自身が主演をはり、ご自身で監督して作品を創る。その作品をご自身が味わう。もちろん公道でもサーキットでも他人との交通がありますから独善的になることは避けなければなりませんが、どんな作品を創るかはあなた次第です。シナリオの書き方はいくらでもお教えしますから、ぜひご自身で満足のいく作品ができるように努力してみて下さい』

と言うことにしています。

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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 3月17、18日(土、日)YRSツーデースクールFSW 案内頁&申し込みフォーム

○ 4月4日(水) YRS鈴鹿ドライビングスクール南 案内頁&申し込みフォーム

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
YRS座学オンCD案内頁


第32回 YRSオーバルレース

 ユイレーシングスクールはオーバルレースを開催している。レースと言っても日本のモータースポーツ権能であるJAFの公認レースでもないし、参加するのにライセンスも要らない。いわばグラスルーツモータースポーツ。ユイレーシングスクールのオーバルスクールを受講すれば誰でも、ヘルメットさえあればふだん乗っているクルマで参加できる。ノーマルのクルマで参加する人も多い。
 
  まずはどんなレースなのか紹介しよう。YRSオーバルレース常連の越後さんのアイディアで撮影した面白い動画がある。

□2012YRSオーバルレース第1戦Bクラス ヒート1

□2012YRSオーバルレース第1戦Bクラス ヒート2

  日本ではなじみの薄いオーバルレースだが、アメリカで自動車レースと言えばオーバルレース。1周320mの小さなダートトラックからアメリカで最も大きい1周4.28Kmのタラデガスーパースピードウエイまで、全米には1,000ヶ所以上のオーバルコースがある。
  レースにしても4歳から参加できるクォーターミヂェットレースから1日で40万人近くが集まるインディ500まで種類は豊富で、参加するにも見物するにも多彩なメニューが用意されている。
  某著名レースエンジニアをして、「同じとこグルグル回って何が楽しいの?」と言うオーバルレースだが、これこそモータースポーツの原点。オーバルレースをやらない手はない。毎月1回。パイロンで作ったクォーターマイルオーバルでYRSオーバルスクール卒業生が火花を散らし、高揚感を堪能している。

YRSオーバルFSWロンガーの幅員は14m。本格的なサーキットよりも広い。

オーバルレースの醍醐味はテールツーノーズ、

サイドバイサイド、

ドアツードア、

スリーワイド。
 

オーバルレースに参加している人の運転技術はかなりのもの。この人たちがクルマ人生で事故を起こすことは、まずないだろう。自動車競走という環境で養われた的確な状況判断とたくさん引き出しのある運転技術が、無意識にクルマを安全にイメージするままに動かすことを可能にしているからだ。
  ユイレーシングスクールを受講する人全てがオーバルレースに参加してくれているわけではないが、YRSオーバルレースはクルマを運転するという作業の究極の形のひとつだと自負している。

※写真は全て、YRSオーバルレースに参加している数少ない女性の一人増田さんが撮ってくれたもの。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 3月17、18日(土、日)YRSツーデースクールFSW 案内頁&申し込みフォーム

○ 4月4日(水) YRS鈴鹿ドライビングスクール南 案内頁&申し込みフォーム
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
YRS座学オンCD案内頁


第31回 活動開始

1月に予定していたYRSドライビングワークショップFSWが雪のため中止。今年も天候が不順な様子。それでもようやく14年目を数えるユイレーシングスクールが始動した。

2月11日にYRSオーバルスクールを受講したことのある方を対象としたYRSオーバルスクールロンガーと、これまたYRSオーバルスクール卒業生を対象としたYRSオーバルレース第1戦を開催。
”ロンガー”はオーバルスクールで使っている半径22mの半円を60mの直線で結んだオーバルよりも大きな、半径22mで直線が130mのオーバルをアウトインアウトで走って高速コーナリングでの姿勢作りを練習してもらうのが目的。クルマによっては3速に入れなければならないし、クルマを曲げながらシフトダウンしなければならないから、それはそれですごく楽しいのだけれども、原則的にオーバルスクールでクルマを安定させて走ることに慣れた方に受講してもらっている。

オーバルレースは同じ大きさのオーバルで自動車競走をしてもらうのが目的。我が国では最も敷居が低くて、最も中身の濃いモータースポーツだと自負している。
オーバルスクールを受けた方が全てオーバルレースに参加しているわけではないけれど、自動車レースなど『自分には関係ない』と思っていた方が少しずつではあるけれど参加してくれるようになった。
クルマ好き、運転好きが全て自動車レースを意識する必要はもちろんないけれども、ある理由から運転がうまくなるためには欠かせない要素でもある。どんな理由かは別の機会に。


今年初めてのYRSオーバルスクール。10名の参加者と並ぶトゥインゴGT。

翌12日に開催したのがYRSオーバルスクール。加速、減速、旋回というクルマの3つしかない性能を存分に発揮してもらうことが目的。オーバルスクールで初めて愛車のスロットルを床まで踏んだ方も数知れない。街中ではヒンシュクもののスキール音を発生しながらのコーナリングもオーバルスクールの目的のひとつ。スキール音が出ていないと「もう少し元気に走ってみましょうか」というアドバイスが飛ぶ。

良くできた道具であるクルマは、ある程度の速さで走ってみないと『やってはいけないこと』と『やっていいこと』と『やらなければならないこと』が見えてこない。見えれば、それだけでクルマさんにずっと近づくことができる。オーバルスクールの目的はあくまで、ご自身のドライビングポテンシャルと一度向き合ってみてはどうですか、というところにある。

この日は遠くからルノー メガーヌRSも参加してくれた。サーキットを走ったこともないしサーキットを走るつもりもないIさん。クルマの性能を引き出すことも考えてなかったらしいが、終わってみればご自身の運転に課題が見つかったと言われる。

クルマをどう使うか、どう乗るかは一人ひとり異なるのだろうけれど、せっかく安くない買い物をしたのだから、安全な所でキチンと動かし方を教えてくれる機会に試してみるのは無駄なことではないはずだ。

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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 3月17、18日(土、日)YRSツーデースクールFSW 案内頁&申し込みフォーム

○ 4月4日(水) YRS鈴鹿ドライビングスクール南 案内頁&申し込みフォーム
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
・YRS座学オンCD案内頁


第30回 鈴鹿国際南コースを走る

今やYRS常連となったWさんが鈴鹿国際南コースを初めて走ると言うのでトゥインゴGTと一緒にお供した。


WさんのメガーヌRSと並んで出走の準備。

トゥインゴGTにとっては、筑波サーキットコース1000、富士スピードウエイショートコース、富士スピードウエイレーシングコースに次いで4つ目のサーキット。
鈴鹿国際南コースは国際格式のカートレースが開催される他、その攻略しがいのあるレイアウトでスポーツドライビングを楽しむ人達に人気がある。7つの左コーナーと5つの右コーナーと2本の直線を組み合わせた1周1,264mのコースは、『人間が考えるクルマを速く走らせる方法』と『クルマが性能を発揮しやすい走り方』に大きな食い違いが表れるところが面白い。
サーキットではラップタイムの良し悪しが注目されることが多いが、実は、タイムなんていうものはどうでもよく、自分の思いがクルマさんが求めているものに近いのか確かめるところに面白さがある。どこまで自分がクルマを動かす理屈を理解しているのか、垣間見ることができるのはとりあえずサーキットだし、走って見ればスロットルを遠慮なく床まで踏み込むことができるだけで十分に楽しい。


小さな身体を揺らしながらS字コーナーを抜ける。


ノーズをもたげ3速フルスロットル。

ユイレーシングスクールのCDを買い、Yゼミに参加し、奥伊吹スキー場で開催したYRSオーバルスクールや遠く富士スピードウエイのツーデースクールに参加してくれたメガーヌRSのオーナーWさん。そのかいあって初めて走るコースでも、迷いも躊躇もなく、最初からかなりのペースで走行。アンダーステアを出すでもなく、スピンするでもなく、最終的に1分6秒の前半までタイムを縮めた。
「あれ、タイムを気にしているじゃん!」とは言うなかれ。その人固有のドライビングポテンシャルは、速く走ることをテーマにしないとその正体を見抜けない。その上、テーマを持って走る以外にドライビングポテンシャルの向上を図る手段はない。
ラップタイムはどうでもいいと言うのは、人の速さと比べる意味はないですヨ、ということであって、その人がタイムをバラツキをなくそうとした時に安定したタイムが記録できるか、タイムを縮めようとした時にタイムアップできるか、その人にとっては『自分の本性』と向き合う唯一のてがかりではある。


コース攻略を練るWさんの目。

決して安くないメガーヌRSを手に入れたWさん。最初にお会いした時から「このクルマを思い通りに動かせるようになりたいんです」とおっしゃっていた。それから1年も経っていないけれど、着実に確実に運転の幅を広げられている。
理にかなった操作をしなかったら、6秒台に入る前にスピンしたりコースアウトしたかも知れない。がむしゃらに走っていては、どこをどうするとタイムアップにつながるか見つけられなかったかも知れない。
Wさんが進んでいる方向は、ルノー・スポールオーナーとして正しい道です。メガーヌRSも喜んでいるはずです。ユイレーシングスクールはこれからもWさんを応援します。

※例のごとく走行データを公開します。

速度と加/減速度のグラフ。軌跡上の緑色の点がスタートライン。


速度と横向加速度のグラフ。最大1.1Gを記録している。

ところで、今回Wさんが走った鈴鹿国際南コースでYRSドライビングスクールを開催します。期日は4月4日(水)。ルノー・スポールオーナーに限らず、多くのルノーオーナーの方のご参加をお待ちしています。

○ 4月4日(水) YRS鈴鹿ドライビングスクール南 案内頁&申し込みフォーム
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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールも開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 2月12日(日)YRSオーバルスクール FSW 案内頁&申し込みフォーム

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
YRS座学オンCD案内頁


第29回 奥比叡ドライブウエイ その2


湖西に雪が降る季節になった。奥比叡は今、どんなヨソオイなんだろ。

昨年。奥比叡ドライブウエイにトゥインゴGTを連れ出した時。せっかくワインディングロードを走るのだからと、データロガーを載せていった。
データロガーと言っても大げさなものではなく、フロントウインドに吸盤で取り付けてシガーライターのソケットに差し込むだけの簡単なもの。ただ、GPSの電波を拾って位置情報からクルマの動きを記録するので、速度はもちろん加減速Gや横G、果ては軌跡や標高など、操作を解析するには十分なデータが残せる。

サーキットでは『なぜタイムがでないのか?』なんて難問を説明する際に役立つデータロガーだが、なにも使い道はクローズドコースに限らない。まして、ワインディングロードじゃなくて市街地でもクルマをどんな風に動かしているかを知ることができる。もっとも、無料のアプリケーションソフトをダウンロードして自分で解析しなければならないが、これはこれで面白く、クルマが『きちんと作られた道具』であることを改めて思い知らされることになる。


ユイレーシングスクールが使うデータロガーのパフォーマンスボックス

自分がどんなイメージでクルマを動かしているのか知るのには、初めて走る奥比叡ドライブウエイは絶好の題材。何度も走って練習すると、学習してうまくまとめてしまうから、今回は、これも初めて走ることになる復路を1回だけ走ってデータを採取。
クルマの運転というものは、つまるところ、いかにクルマを安定させて走るかにつきるわけで、自分が安定させて走っていると確信していても、後からデータを見てみると「あれ~ぇっ」なんてこともある。
今回がいい例で、いささか自信のあった自分の運転を省みるまたとない機会だった。決して操作が間違っているわけではないく、一般的に見ればクルマをきちんと制御している範囲ではあるのだが、『ターンインの手前でノーズを拾った』つもりだったのにまだ前傾姿勢だったり、『ブレーキング区間の最後でマイナスの減速度を限りなくゼロにした』つもりだったのにまだクルマが減速していたり、『初期の舵角を少なくした』つもりだったのに身体には感じないアンダーステアが出ていることがわかったり。自分のイメージと実際のクルマの動きに少なくないズレがあったことはまぎれもない事実。
省みるに、トゥインゴGTのふところが深いサスペンションに気を良くして、ホイールベースの短さを見込まないで操作していたのかも、という結論に至った。安定させることをテーマに操作したつもりだったが、感じられないところで微妙にバランスが崩れていたことになる。正直言って少しばかり落ち込んだが、これもまた勉強。

自慢にはならないし、参考にもならないと思うが、その時のデータの一部を公開。クルマがどんな姿勢で動いていたか想像することはできると思う。
見難いかもしれないが、図は左の座標が加減速Gで赤い折れ線グラフで増減を、右の座標は横Gで青い折れ線グラフで表示している。軌跡上の緑の丸がクルマの位置、グラフの中にある緑の縦線が対応するクルマの加速度を示している。ちなみにグラフでは、加減速Gがゼロを基点に最大0.7Gとマイナス0.6G、横Gは同じくプラスマイナス1.4Gを表示している。


ターンイン手前の減速中。


まさにターンイン。


コーナリング中。


S字コーナーの切り替えし地点。


コーナリング中。

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※ 次回Yゼミは1月28日(土)に開催します。ルノーオーナーの方、ぜひ話を聞きに来て下さい。

・YRS Yゼミ開催案内


第28回 第1回Yゼミ

少しばかり古い話になるが、昨年12月の第1土曜日。YRSリトリートでYゼミを開催。インターネットでの募集に応募してくれた3名が参加。
春に開催したルノースポールゼミに参加した後、富士スピードウエイのユイレーシングスクールまで足を伸ばしてくれたWさん。今回も真っ白なメガーヌRSを駆って現れた。
申込書の車両欄にフィアットパンダと記入されたNさん。実はロータスエリーゼもお持ちで、サーキット走行を楽しんでいるとか。
ダートラ仕様のミラージュで登場のMさん。JAF公認のスピードラリーに参戦中で、上位を目指すために参加してくれた。

キャプション:参加者が全員そろったところで記念撮影。

クローズドコースで開催するユイレーシングスクールのプログラムは、朝いちばんに行う座学で始まる。その日に練習する内容の説明と、練習の目的と、目的を達成するために必要な操作を理論的に説明する。その日のテーマが明確になれば効果的な練習ができる。
1回でもユイレーシングスクールに参加した人がクルマを安定させて走らせることができるのは、この理にかなった運転を説く座学に負うところが大きい。

というわけで、ユイレーシングスクールの特徴である座学だけを抽出したのがYゼミ。
近所の道でトランジッションとイーブンスロットルを体験してもらうために30分ほど走るだけで、あとは朝10時から夜の9時近くまでクルマと運転の話ばかり。当然、実際のドライビングスクールより情報量は多い。
ユイレーシングスクールが用意したビデオや参加者が持って来たビデオを見ながら操作を解説し、わかりにくいところは図を書いて説明する。
その場で運転の練習ができるわけではないけれども、Yゼミで得た知識を実際の運転にあてはめようとするだけでドライビングポテンシャルは間違いなく向上する。なにしろ理論を理解するには想像力が必要だし、想像すればイメージが造れるし、運転に必要な客観性を養うこともできる。そこがYゼミの狙い。今年から少しばかり能動的に運転してみようという方にはYゼミがお勧めだ。

メガーヌRSに乗るWさん。

パンダで登場のNさん。

ダートラ仕様のミラージュをラリー用に改造中のMさん。

話をして、ビデオを見て操作の説明をして、またビデオを見て。

サスペンションが動くモデルを使って姿勢変化と荷重移動の関係を説明する。

初対面同士でもそこはそれ。クルマ談義に花が咲く。

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※ 次回Yゼミは1月28日(土)に開催します。ルノーオーナーの方、ぜひ話を聞きに来て下さい。
・YRS Yゼミ開催案内
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁


第27回 奥比叡ドライブウエイ その1

天気予報は外れ。朝一番でゲートに入ったのに。

近くにありながら行く機会のなかった比叡山ドライブウエイに行ってきた。と言っても、朝7時のゲートオープンと同時に走ってきたのは正確に言うと奥比叡ドライブウエイ。
比叡山山頂へと続くこのワインディングロードは、実は2つの会社が運営しているとかで、京都方面から山頂を目指す比叡山ドライブウエイと琵琶湖方面から入る奥比叡ドライブウエイとに分かれる。

紅葉真っ盛りと思いきや、ピークは過ぎてしまったようで。

琵琶湖大橋に近い仰木ゲートをくぐりしばらく走ると勾配が急にきつくなる。比叡山自体の斜面が急なのだろう、コーナーの曲率は小さく直線部分はほとんどない。少し走るたびに耳がツーンとしたことでも勾配が急なことがわかる。

町のなかでは少数派の赤いボディカラーも自然の中では麗しく。

天気予報がみごとに外れどんよりとした曇り空を見上ながら走るものの、【晴天・紅葉・トゥインゴ・見晴らし】を実現できると思っていたものだから、いささか意気消沈。今回は仰木ゲートから10キロほどのところにある峰道レストランの駐車場で折り返しすことにした。それでも比叡山の雄大さを感じることはできた。

肉眼では見えた琵琶湖も写真では。

とにかく展望がすごい。急に立ち上がった山だからなのだろう、眼下には手前に湖西の町並が、その向こうに琵琶湖が広がり、対岸の遠くにある山々までが見渡せる。この日は霞んでいて墨絵のようだったが、晴れていればここからの眺めを味わうだけでも少しばかり高い料金の元は十分に取れるはずだ。

データロガーのデータ。

ワインディングロードを走るのだからとデータを取ってみた。右の図は仰木ゲートから峰道レストランの先にある検札所までの軌跡。走った時はもっとたくさんのコーナーをクリアしたように思えたものだが。左の図は標高を示す。仰木ゲートが230mぐらい。7キロで740mまで駆け上がったことがわかる。

晴れていれば背景に琵琶湖が映りこむロケーションなのだが。残念。

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第26回 今年もそろそろ終わり

日本に来て最初にドライビングスクールを開いたのが1999年12月9日。間もなくユイレーシングスクールの12年目が終わろうとしている。

今年最後のYRSオーバルスクール&YRSオーバルレースで記念撮影。

今年もクルマが好きで、運転することが好きな方々がユイレーシングスクールを受講してくれた。その数、延べ509名。12月3日のYゼミに2名の申し込みがあるから、合計510名を超えることは間違いない。
アンケートをとっても、受講してくれた方から運転が上手くなったと感じる、運転がより楽しくなったといった声が聞こえてくるから、今年もスクールの目的を達成できたかなと安堵する一方で、少しばかりの不安もある。

受講者数が明らかに減少傾向にあることだ。比較のために例をあげると、最も受講者が多かったのが2003年の1,474名。その年は年間56回の様々なドライビングスクールを開催した(ちなみに最も開催数が多かったのは2004年の年間68回)。しかしながら今年は最後のクローズドコースのスクールが終わっても約3分の1の509名。受講者の需要を見込んで開催したスクールの数も31回に減った。
ユイレーシングスクールの受講者だけが減っているのであれば、スクールにその原因があるのだろうから致し方ないとしても、他のドライビングスクールも、サーキットの走行会も、はてはサーキットを走る人そのものが減っているという。つまりクルマが好きな人でも運転をしなくなった、ということなのかも知れない。
だとすると、極めて残念なことだ。クルマは単なる移動の道具ではなく、操る人の生活に無限の断面を見せてくれる人間の友達でもある。

世の中が運転を楽しむ雰囲気ではないという声も聞こえてはくるが、だからと言って好きなことをすることを放棄するのはもったいない話だ。
省エネだからクルマに乗らないほうがいいという意見も、少しばかり短絡的に思えるし、クルマの運転を楽しみながら省エネに貢献する方法だってある。

日本人はすこしヒステリックかも知れない。日本人であるボクが言うのもおかしなものだが、クルマ以外にもやることがたくさんある時代。結果的に我々は有限資源を使わなければ生活できない立場にあるわけだから、むしろ、クルマが好きか運転が好きかを自分に問い直して、ほんとうに好きならば堂々とクルマの運転を楽しむべきだと思う。
卒業生に勧誘のメールを出しても、その気にならないといった返事が来るにつけ、「クルマ?手放しました」と聞くにつけ、みんなもっと元気をだせよ、と言いたくなる。

来年はより多くのクルマ好き、運転好きがユイレーシングスクールに遊びに来てくれないかなぁと思うこの頃。

Yゼミの会場。現在2名の申し込み。まだ間に合います。

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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 12月3日(土)YRS Yゼミ 案内頁&申込フォーム

http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=y-rs

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第25回 YRS プライベートレッスン

参加者とスタッフで記念撮影。
※前夜に撮影した時のASA感度を戻すのを忘れて撮ったために粒子が粗かった。悔しいぃ。

 11月初旬の土曜日。「例年より初冠雪が早かったというのに富士山に雪はないし、山も色づいてないし、やっぱし暖かいのかねぇ。紅葉見れないし、改めて出直してコウヨウ」な~んてスタッフと戯れながら、YRSプライベートレッスンは始まった。
 今回はポルシェクラブ千葉の依頼で開催。楽しみながら運転技術を磨たい、日ごろ性能を発揮させることが難しいクルマを思いっきり走らせてみたい、そんな要望から当日のカリキュラムを決定。
 「いつもの」半径22m直線130mのYRSオーバルロンガーでのイーブンスロットル、トレイルブレーキングを練習し、次に同じオーバルをインターセクションで結んだフィギュア8(8の字型コース)で切り替えしの練習することにした。加えて、性能の高いクルマばかりなので高速コーナリングを体験してもらおうと、全長460mのトライオーバル(おむすび型オーバル)を走ってもらうことにした。
 YRSらしく1000分の1秒までラップタイムを計測して走行中に読み上げるから、全てのカリキュラムをこなすとかなりスポーツした気分にもなれる。
 集まったのは、997GT-2が3台、964カレラ2が2台、ボクスターSが2台、996GT3、997カレラS、997カレラS CAB、997カレラS Tip、ケイマンS、73カレラ(ナロー)がそれぞれ1台。秋晴れのもと、この日ばかりは全員が床が踏み抜けんばかりにスロットルを開けていた。

 前回のレッスンで試してもらった左足ブレーキングに磨きをかけてきた人もいたし、前回よりトランジッションのとり方が上手くなった人もいた。ドライビングスクールをやっていて良かったなぁと思えるのは、そんな参加した方のドライビングポテンシャルの向上を目にした時だ。これだからドライビングスクールはやめられない。

ひと通りのカリキュラムが終わる頃、聞けば全員がお腹いっぱい。予定より早めに切り上げることになったのだが、オーナーにとっては『所有欲』に加えて『使用欲』をも満たしたクルマ漬けの1日だったに違いない。

・YRSプライベートレッスン案内頁

http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=ypy

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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

○ 11月20日(日)YRSオーバルスクール FSW 案内頁&申し込みフォーム

http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

○ 12月3日(土)YRS Yゼミ 案内頁&申込フォーム

http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=y-rs

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/