トム ヨシダブログ


第559回 Sさん親子

実に様々な人たちがユイレーシングスクールを受講してくれるけど、概して速く走ることに慎重な人たちと速く走ることに抵抗のない人たちに大別できる。

初めてSさんに会ったのは2012年7月のエンジンドライビングレッスン。BMWのツーリングで参加と記録にはあるけど、申し訳ないことにどんな走りだったかは記憶にない。次にSさんと会ったのは2013年6月のYRSドライビングワークショップFSW。ポルシェGT3での参加だった。Sさんはどちらかと言うと後者で、クルマをねじ伏せて走るようなところがあった。いわゆる『何かがあってもどうにかしてしまう』タイプの走り方だった。それが正しい方法かどうかは別にして。それでもYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールやYRSスキッドスクールを含めいろいろなカリキュラムに参加してくれているうちに、運転の仕方が穏やかになっていった。と言っても、遅くなったわけではなく、むしろ速度域は上がっていった。ありていに言えば、人間主体の運転からクルマとの共同作業で動かすことに目覚めた始めた、と言うべきか。その後、会社の後輩を何人も何度も連れて参加してくれたり、ユイレーシングスクールのカリキュラムをそれなりに評価してくれているようだった。

いつだったかある時、「きちんと運転できたほうがいいから、今度息子が免許とったら連れてきますから」と。そして言葉通り2016年6月のYRSドライビングワークショップFSWに19歳の息子さんがやってきた。かすかにだけど、運転操作だけではなく、クルマを運転するということについてかみ砕いて話した記憶がある。親父さんが一度はたどった方向には進まないように。

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そして
先週の土曜日のYRSオーバルスクールFSW
今度は免許を取ったばかりの大学生の娘さんと参加してくれた

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どうせ運転するのだから安全に楽しく運転してほしいというSさん
Sさんがユイレーシングスクールの思想をどのくらい理解しているかは?だけど
娘さんに自分なりに伝えたいことがあると言うから
『おかしな走りになったら降りてもらうから』と脅かしておいて助手席に乗ることを許可
 
最初のうちはSさんが話しかけるとペースが乱れることがあったけど
これから先親子で運転についての話題作りになるならと静観

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これは同乗走行中の写真だけど
 
いつもの通りYRSオーバルスクールFSWは短いセッションを繰り返すので
Sさんに『今度は娘さんがひとりで走るのを見ていれば』と無理やり降ろす
それでもセッションを重ねるうちに娘さん
ひとりでも十分クルマの動きを理解した操作ができるようになって
セッションの間に娘さんにどうですかと水を向けるとはにかんで

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これも同乗走行中の写真で
 
具体的な操作を説明しながら
とにかくクルマの動きをこと細かく知ろうと努力してみて下さい
状況が正確に把握できれば正確な対応ができます
と進むべき方向も伝えておいた

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娘さんの走りをビデオに収める父親の図
 
Sさんは車載動画を撮るためにビデオカメラをセットしていただけでなく
ラップタイムが計れるようにロガーも積んでいた

 

週が明けて火曜日にSさんからメール。「2/20のレッスンありがとうございました。日曜に日常走行練習しました。練習の成果が明らかにわかるぐらい、安全に安定した走りになりました。また、レッスンに参加させていただきます」とあった。

メールにはYouTubeに上げた娘さんがひとりで走った時とボクの同乗走行の車載動画のURL。ロガーのデータを落としてラップタイムはもちろん、娘さんがひとりで走ったのか、Sさんが横に乗っていたのか、ボクが乗っていたのか、右回りか左回りかまで、この日娘さんが走った108周の詳細がわかるエクセルファイルが添付されていた。  このブログをアップしたら、動画を見て気が付いた娘さんへのアドバイスをSさんにメールするつもりだ。

親父万歳‼ だね

 

【追記】 Sさんからメールが来た。

メール、ブログ確認しました。身体のブレはシート等もあり仕方がないと思っていました。同乗レッスンのビデオを参考に勉強します。
YRSは誰でもどんなレベルでも、安全に走る基本を教えて頂ける場所と理解しています。スポーツ走行しないので、必要ないと思う人が多い様です。まだ、道路を700km程度しか走っていない娘でも参加できて、安全運転の基礎レベルが向上出来ている事を周りに伝えたいと思っています。また、参加させて頂きます。



第558回 Aさんとの再会

先週のYRSオーバルスクールの申込みフォームを整理していたらAさんの名前が目に飛び込んできた。正直言って嬉しかった。
第431回 でも触れたように、Aさんが乗っていたルーテシアⅢRSに見惚れて試乗もしないで購入し、それが縁でルノー・ジャポンのブログを書かせてもらうようになった経緯がある。けれども 第431回 でAさんがドライビングスクールは卒業です、というようなことを書かれていたのが残念で、クルマは何でもいいからまた遊びに来てくれないかなと思っていたから。

スクール当日の朝早く。申込みフォームの車名欄にNDロードスターとあったからフムフムと思いながらFSWの東ゲートに着くと、既に〇〇ナンバーのNDロードスターが。小走りに駆け寄り窓をノックすると、懐かしいAさんの顔が。「また来ちゃいましたよ」と笑うAさんの笑顔が最高でした。

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『第431回 ルノーとの出会いとAさん』 にも登場する相変わらず柔和なAさん
「やっぱりMTが好きです」と書かれていた通りに選ばれた終のクルマ

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「いや~ 難しい」を連発されるも
何年かぶりのYRSオーバルコースで
本当に久しぶりにFRとMT
破綻しない走りは基本ができているからです

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ご自身は「遅くて遅くて」と言われるけど
ナラシもそこそこで操舵輪と駆動輪が別々のクルマを
あそこまで走らせられば遅くはありません
これからが楽しみというものです
 
お願いしておいた感想文が届いたので紹介します


ユイレーシング ヨシダさま

 前回お世話になったのは2015年5月のツクバと記憶してます。なんと6年も間が空いてしまいました。実はその当時所有していた車両は手放してしまいもう参加することも無いだろうと思っていたのです。

 今回突然に参加させていただいたのはロードスターNDを入手してしまったからです。数年前に70歳を迎えた今、なぜロードスターを入手したかと言えば丁度70歳で免許更新となり高齢者講習が必要となりました。講習には2種類あり通常の高齢者講習とチャレンジ講習があり、前者は受講でOK、チャレンジは試験です。高齢者の事故が話題になっているのでいつまで乗るか、いつ返納するかと考え「そうだ チャレンジを受けて3回受からなかったら免許返納だ」と思い申請しようと7校ほど問い合わせましたが何処も受けつけてもらえずチャレンジは断念となりました。自己判断で返納時期を決めるのは非常に難しいのではないでしょうか?試験で検定員が不合格と判断してくれれば決断できるのではないでしょうか?
 
 そこで多少の無理は承知の上でロードスターにたどり着きます。後がないなら最後の車は基本のFR、MTにしよう。それにアイドルストップはいらないし高齢だから他人は乗せない。それにマツダはドライビング教室も開催してるし30年以上も2シーターを作り続けている。この会社を応援しようと思ってしまった。30年イベントは終わってしまったが次は40年イベント。参加したいな。その時、私は何歳?。

 オーバル参加の当日が初東名です。初ETCは正常に作動するかなんて心配しながらFSWに。東ゲートでヨシダさんに声をかけてもらいました。ロードスターは軽快でしたが他の参加者の速いこと速いこと。どんどんおいて行かれてしまいます。リードフォローなんてついて行かれずリードフォローになりません。後の方、ごめんなさい。同乗走行でヨシダさんのドライブを体験してこんなに速くそしてスムースに車は動くんだって感激でした。前後輪が同じにドリフトするなんてすごい。車にストレスを与えない乗り方です。また 参加させてください。よろしくお願いいたします。

 

 

Aさんは書かれていないし極めて僭越なことだと思うけど、ボクはAさんがロードスターに行きついた理由がわかるような気がする。当日の朝、ゲート前であれこれ話していて、高齢者講習を受けたと聞いたからどんなものかたずねてみた。ボクは来年の春が高齢者講習だから参考にしたいと思って。結局Aさんはチャレンジ講習ではなくて高齢者講習を受けたのだけど、受講者3名と教官が1台のクルマに乗って実技をやったそうだ。その実技がひどかったらしい。縁石に乗り上げるは一旦停止で止まらないは、それでもその人たちは合格だったそうだ。Aさんはこんな人たちと一緒に走るのは怖い、と思ったとのこと。当然だ。何のための講習かとも思ったに違いない。一方で、そんな経験からAさんは改めてクルマを動かすことに真剣に向き合ってみようと思ったのではないだろうか、今いちど運転を楽しんでみようと思われたのではないか。 だから、FRでMTでプリミティブなロードスターでなければならなかったのではないかと想像する。違っているかも知れないけれど。
家族用に万能なカングー、自分用に走りに特化したロードスター。高齢者として理想的なクルマ選びの一例ではないか。

AさんYRSオーバルスクールFSWの70歳以上割引きの特典を使ってまた遊びに来て下さい。7月のYRS筑波サーキットドライビングスクールにもぜひ。ユイレーシングスクールは老いも若きも一生懸命運転する人を応援します。



第548回 22年目のユイレーシングスクール始動

とてつもなく寒い週末。ユイレーシングスクールの22年目が始まった。1999年のあの日の桶川も寒かったけど。

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今年初めて富士山にご挨拶
御殿場市山の尻から1月8日朝6時55分の富士山を仰ぐ

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FSWに向かう途中にいつものところに
1月9日朝6時34分の富士山を御殿場市山の尻から仰ぐ
 
デジカメとスマホで露出がこんなに変わるもんだ!

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1月9日の土曜日
ポルシェクラブ東京銀座に依頼されてドライビングレッスンを開催
状況を勘案して座学は参加者自身がクルマに乗ったままラジオで
 
FSW入場時に検温はしてくれるので
アルコール消毒液と手指消毒用ハンドソープとハンドタオルを用意
オープンエアではあるけどできるだけの準備はして

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参加した17名中サーキット走行の経験がある方は2名のみ
それでも全員がクルマを速く走らせることは好きみたいなので
安全にクルマを走らせる方法を解説し
クルマがいやがる操作を少なくする練習をしてもらいました

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目から鱗
そんなこと考えたことなかった
自分のクルマがこんなに走るとは思ってなかった
運転するのがさらに楽しくなりました     そんな声が
 
参加された方には満足していただけたようです

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ポルシェクラブ東京銀座のドライビングレッスンが終わって
1月9日午後4時50分の富士山を仰ぐ

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1月10日朝6時30分
須走にある旅館の駐車場
凍ってなかったのは幸いだけど
エンジンをかける時にはマイナス10度
動き出してもこの外気温
しびれるとはこのことか

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なんか不気味な話もあるけど
やっぱり富士山に積もっている雪が少ない
1月10日朝7時6分の富士山を富士スピードウエイ駐車場P2から仰ぐ
朝日がまぶしい
 

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1月10日の日曜日
今年初めてのYRSオーバルスクールも
座学はクルマに乗ったままで聞いてもらった

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質問がある場合はホーンを鳴らしてもらって
 
路面が冷たすぎなのとタイヤの皮がむけていないクルマが何台か
急遽カリキュラムを変更してYRSオーバルの走行を割愛して
よりスピードのでるYRSオーバルロンガーでの走行に変更

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陽が上っても路面は冷たく気温は4度
その上風がでてきて寒いのなんのって
スタッフにレインコートを着せて寒さをしのぎ
 
タイヤも温まらないのに参加者は元気に走り回る
午後だけで4分のセッションを11回
1周20数秒のコースでです

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寒いのにアドバイスに応えてくれて
一生懸命走ってくれた参加したみなさんに感謝感謝です
 
1月10日午後4時52分の富士山
片付けしてて遅れてしまったけど
あと10分早ければ
光の帯をまとった富士山を撮ることができたのに
残念



第546回 Yさんとのやりとり

ユイレーシングスクール22年目の始動を前に虚心坦懐。

過去にYRSオーバルスクールに参加してくれたYさんとのやりとりを載せるのを承諾してもらって。   Yさんはクルマの運転を全開で楽しみ中。

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赤い矢印に注目です

 

ありがたいことに、ユイレーシングスクールは参加してくれた方々とともに成長しています。今までも、そしてこれからも。



第543回 A110を味わいつくす

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抽選で選ばれてAlpine X Engine ドライビングレッスンに参加された方々に
最初は座学でクルマの動きに大きな影響を与えるサスペンションと車重の話をし
パドックでA110の加速と減速を見てもらって
走行中のクルマの挙動変化がいかに大きいか観察してもらい
 
次いで筑波サーキットコース1000の1コーナーの内側に移動してもらい
A110でイーブンスロットルとトレイルブレーキングのデモランを見てもらう

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参加者にも同じことをやってもらうので
座学で話したなぜイーブンスロットルが大切なのかを実車を前に説明
スロットルだけでなくブレーキでも前後荷重を均等にできることも繰り返し説明
 
A110は潜在性能が高いから間違った操作も受け付ける懐の深さはあるものの
走行状態に即した操作をすればさらに限界をあげることができるから
安全ではあるし速く走ろうと思えば速く走れると身振り手振りで伝える

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デモランではイーブンスロットルで85キロでターンイン
この日は路面が冷たく4輪が外に流れそうになるので80キロをめどにしましょうと説明
トレイルブレーキングに移る前のブレーキングでは少し大げさに踏力を強めて緩めて
ターンインする時には沈んだノーズを拾っていることを確認してもらう
 
コース幅が13mあるとは言え半径25mの1コーナーに80キロで入るのには
前後タイヤのグリップが均等でなければクルマがバランスを崩す可能性が高くなる

 

朝の座学で話したことを要約すると、まず軽さ。
・動いているクルマは大きな運動エネルギーを抱えている。
・ブレーキをかけてもクルマがすぐに止まらなかったり、ステアリングを切ってもクルマの向きが変わらなかったりするのはその運動エネルギーの向きを変えなければならないからだ。
・運動エネルギーは物体の重さx速度の二乗を2で割ることで求められるから、クルマが重ければそれだけ運動エネルギーは大きくなりクルマの運動性能に影響が出る。
・軽ければ小さな力でもクルマを加速させることができるし、同じような制動力ならば軽いほうが短い距離で減速できるし、コーナリング時の遠心力も少なくなるからクルマの旋回性能が高くなる。
・レースの車両規則で最低重量が決まっているのは、クルマを軽くしてライバルを出し抜くことを防ぐためだ。

A110Sの車重は1,110Kgで292PSのエンジンを積む。比出力は3.80Kg/PS。昔の人間にしてみれば、パワーウエイトレシオが4キロを切るクルマが誰にでも手に入るなんて夢のまた夢。(A110ピュアとリネージは出力が252PSで比出力は4.40Kg/PS)。
1,410Kgで350PSのエンジンを積むクルマがある。その比出力は4.03Kg/PS。加速性能は出力が大きいほうが有利ではあるけど、100Km/h時の運動エネルギーを比較すると428,241J対543,981J。A110の運動エネルギーのほうが2割強少ない。これが本来は曲がるのが苦手なクルマなのにA110にはヒラリ感がある理由だ。そして大事なことは、運動エネルギーは速度の二乗に比例して大きくなるから車重が軽いと過渡特性に優れていることだ。

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ユイレーシングスクールが車重700KgのEPロードスターを作ったのは
まさに『軽さはクルマの武器だ』ということを証明したかったからでもある。

 

次に足。
・サスペンションの役割は第1義に路面からのショックで重たいクルマが壊れないようにすること。乗っている人間が乗り心地がいいと感じるのは副次的なことでしかない。
・クルマの性能が高くなって注目されているサスペンションの役割がタイヤが路面に押し付けること。つまり路面から離れないように常にタイヤを路面に貼りつけておくこと。
・クルマの性能はタイヤが路面と接するコンタクトパッチ(接地面)を通じてしか発揮されないから、コンタクトパッチが変形しづらいサスペンションが運動性能の向上には欠かせない。
・サスペンションの種類にはいろいろあるけど、A110が採用しているダブルウィッシュボーンという形式はホイールトラベルを確保するのに有利で、かつタイヤの上下動によるコンタクトパッチの変形が少なく、セッティングの幅がありバネ下重量も軽減できるという利点がある。
・60年代初頭から現在までF1マシンがダブルウィッシュボーンサスペンションしか採用しないのはそれが4輪自動車の性能向上に欠かせないからだ。

「70キロぐらいから始めてみて下さい」の声に参加者がストレートで加速。1コーナーのはるか手前でクルマが加速も減速もしていない状況をスロットルペダルに乗せた右足ひとつで作り、「ターンインは手前からゆっくりと手を止めないで切り続けます」に反応してコーナリングを開始。良く動く柔らかいサスペンションが姿勢変化をわかりやすくしているのだろう、ほとんどの参加者がノーブレーキでコーナーに進入するのは初めてなのだろうけど見事にこなしていた。まれにターンインの位置が奥になってフロントタイヤからスキール音が聞こえていた例もあったけど。

そう言えば、A110の特色のひとつに、結構な速度でコーナリングしてもスキール音が聞こえないことが上げられる。スキール音はパターンが刻まれたトレッドゴムが共振して発生する。FFでアンダーステアになるとアウト側前輪から派手なスキール音が聞こえる。1本のタイヤに荷重が集中し、タイヤの向いている方向とタイヤが回転して実際に進んでいく方向にズレがあるからだ。
A110のタイヤが鳴かないというのは、車重が軽くミッドシップだといということもあるけど、サスペンションが車重はもちろん運動エネルギーも全てのタイヤに分散して1本あたりの負担を軽減しているからだろう。

「姿勢制御はストレートにいるうちに終わらせます」と繰り返し参加者のトレイルブレーキングを見ていると、程度の差こそあれ、ほぼ全員が120キロプラスに届いた速度をブレーキングで殺し、踏力を緩めて前後輪のグリップバランスをとってからターンインしていた。たまにブレーキングポイントを遅らせた人が、つんのめったままステアリングを切ってアンダーステアにみまわれコーナーのインにつけていなかったけど。

やはり軽くて足のいいクルマはいい。初めて乗るクルマなのに、その後のコース全周を使った試乗でも、この日までサーキットを走ったことのない人を含めて全員が十分以上の速さで走り回っていた。A110がわかりやすいクルマだからこそ、だ。。

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昨日届いたエンジン243号に早くもALPINE x ENGINE ドライビングレッスンのレポートが載っていた。村上編集長が参加者のアンケートを紹介しているけど、その中のひとつに 『サスペンションの動きがしなやかで、荷重移動、特にアクセル・オフやブレーキング時、ブレーキをゆっくり抜いて少し残す時の挙動が非常にわかりやすかった』 とあった。

機会があったらA110を味わってみることをお勧めする。その時はステアリングホイールを手のひらの摩擦だけで、いつもより手前から最初はゆっくり、フロントタイヤのグリップをステアリングの重さで感じる範囲で速めながら回し続けてみて下さい。A110の素性がわかります。



第541回 Alpine x Engine ドライビングレッスン

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12月10日。筑波サーキットコース1000。アルピーヌA110の試乗を兼ねてスペシャル版エンジンドライビングレッスンを開催。A110の美点の軽さと足の良さを味わってもらいました。



第539回 腰で曲がる

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YRSオーバルスクールFSWロンガーでIさんのポルシェ911に同乗
 
Iさんのポルシェはタイプ991Ⅱの7速マニュアル
1,440キロの車重の60%が後輪荷重
タイヤはフロントが245/35ZR20でリアが305/30ZR20
ホイールはフロントが8.5Jでリアが11.5J
最高出力は420hp

 

RRだからリアが重い上にリアのオーバーハングマスが大きくて、リアの荷重を吸収するのと大パワーを受け止めるためにリアタイヤがフロントタイヤに比べてかなり幅広で、成り立ちとしてはインバランスなクルマでも4本のタイヤの限界を使って速いコーナリングをすることは理論的に可能だし、できない話ではない。それは、タイヤの幅に関わらずコーナリング中常に前後のタイヤのスリップアングルが均等になるような操作を行うことで実現できる。

クルマがアンダーステア気味かあるいはアンダーステアでコーナリングしている時、前輪のスリップアングルは後輪のそれより大きい。つまり前輪は限界付近か限界を越しているのに対し、相対的に言って後輪にはまだ余力がある状態なので4本のタイヤの限界を使ってコーナリングしていることにはならない。オーバーステア気味、あるいはオーバーステアでコーナリングしている場合はその逆。4本全ての美味しいところを使っているわけではないから、遅い。

アンダーステアを出すとフロントが逃げるのを感じるはずだし、オーバーステアではクルマが失速しているのを感じるだろう。どちらもクルマが予定された軌跡に乗って前に進んでいるわけではないのだから、結果的にそのコーナリングは遅いことになる。

ブレーキ、ステアリング、スロットルをトランジッションを意識して操作すれば、前後輪のスリップアングルを均等に持って行くことはできる。もちろんコーナリングをしているクルマの動きは複雑だから、瞬間瞬間の話ではなく、コーナリングのアプローチ、コーナリング、脱出の各パートにおいて、という話だ。

Iさんのポルシェに積まれていたロガーによると、YRSオーバルスクールFSWロンガーの下のコーナーで1.35Gの横向き加速度を記録している。太いリアタイヤのおかげか。それだけのコーナリングフォースを4本のタイヤが発揮したということは、クルマが受けていた遠心力がそれだけ大きかったということであり、それだけの遠心力を発生するほどコーナリング速度が速かったという証明に他ならない。クルマもタイヤも運転手もいい仕事をした、ことになる。

コーナリング初期にアンダーステアを出さないようにするのは簡単ではないけど、前後輪のスリップアングルの大きさに差が出ないように意識して運転していると、ターンイン後のアプローチで、肩ではなく腰で遠心力を感じ始めることができる。4WSでない限り後輪のスリップアングルの源は遠心力だけなのである程度の速度が必要だけど、その時には前後輪のスリップアングルが均等に近づいていると言ってもいいだろう。ヨーモーメントの中心もホイールベースの間に収まっているはずだから、4本のタイヤが同じように働いてくれる状況を作れたことにもなるからクルマは安定して旋回運動を続けることができる。

速度が低い場合は   遠心力やヨーモーメントの影響を受けることは少ないけれど、クルマが動いている間は全てのタイヤにスリップアングルが生じているのだから、前後輪のスリップアングルを意識した操作はバランスを崩さない運転につながるからスリップアングルを意識して損はない。

 

動画はIさんが提供してくれました。静止画は動画からキャプチャーしたものです。



第537回 YRSオーバルスクールFSWを動画で見る

YRSオーバルスクールは入力に対して正確に反応するクルマと、それを操るあいまいな人間の操作とのギャップを埋めるのに最適なカリキュラムです。
ただ走っていても運転は上手くなりません。クルマを正確に動かすための操作がどういうものかを理論的に理解し、それを実行できるか検証する。その作業の連続が上達につながります。1分間に4~5回のコーナリングを試せるYRSオーバルスクールFSWは操作の仕分けにうってつけです。

たくさんの方の参加をお待ちしています。詳しくはYRSオーバルスクールの紹介をご覧下さい。

arrow2YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク

お知らせ
ユイレーシングスクールでは来年、YRSオーバルスクールに参加したことがある方を対象とした新しいカリキュラムを始めます。今年のYRSオーバルスクールは12月のあと1回。日没時間が早いので時間を短縮して開催します。安価になっていますので、ぜひこの機会に。

 

YRSオーバルスクールFSWでのトレイルブレーキングのデモランの様子

YRSオーバルスクールFSWでのセッションの例

YRSオーバルスクールFSWでのセッションの例

一見するとすると複数のクルマが同じコースを走るのは危険なように思えますが、ユイレーシングスクールではまずクルマを思い通りのラインに乗せることを練習し、さらに複数のクルマが同時に走行する場合のルールも決めているので危なくはありません。むしろ同時に走行している他のクルマのことも意識しないとならないので判断力を養う練習にもなります。



第536回 11月のYRSオーバルスクールFSW

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朝8時集合
教室の窓は全開でエアコンの送風は強
 
クルマの機能は3つしかないこと
クルマの機能は4本のタイヤを通じてしか発揮されないことや
減速Gは制動力に比例するのではなくタイヤのグリップによるものだと
イラストとホワイトボードを使ってわかりやすく説明

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座学が終わると最初にイーブンスロットルでコーナリングするクルマを観察してもらう
今回はユイレーシングスクールが初めてのSEKさんのクルマを借りて
SEKさんは助手席からイーブンスロットルの実際を観察
ブレーキは使わずに60キロでターンイン
コーナリング中はイーブンスロットルで速度を維持
クルマの性能って高いでしょの問いかけに
SEKさんうなずく

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デモランでイーブンスロットルのなんたるかを確認した後
参加者が4人ひと組で速度を指示して練習
45キロから50キロへ55キロへあと数キロペースを上げて
速度が上がると運動エネルギーが増えるから
操作の開始を手前に操作の終わりを奥にして
瞬間瞬間のクルマの挙動が急にならないように補正します
OKBさんとKONさんがイーブンスロットルの練習中

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今年7回目のYRSオーバルスクールには16台が参加
うち7台がルノー車
ユイレーシングスクールが初めての方が3名
小さなオーバルでイーブンスロットルとトレイルブレーキングの練習をしてから
大きなオーバルにコースを替えて1周20秒ちょっとのコースを走る走る
午前中に3分間のセッションを左右で4回
午後に3分間のセッション左右3回と4分間のセッションを左右で6回走ることになります

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イーブンスロットルの練習が終わると大きなオーバルに乗り入れて
何をやっているかと言うと
ブレーキタッチの練習
アイドリングでクラッチをつないで発進して定速に
かかとを床につけてブレーキペダルに足を乗せて
ブレーキパッドとローターが当たりだす位置を確認
エンストする寸前まで踏力を増してからリリースの繰り返し

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慣れてくると右足先で前輪に抵抗が生じたのがわかると同時に
自分を取り巻く空気が前方に移動するのを感じられるようになる
加速から減速へのトランジッションの基本中の基本
荷重が前輪にかかり出すタイミングを見つけるのが目的
大きなオーバルのイン側とアウト側に分かれて繰り返し練習
SUZさんとOKBさんがつま先に神経を集めてブレーキタッチ
速く走ることだけが練習ではありません

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いかにYRSオーバルFSWのコース幅が広いかがわかる1枚
イン側のパイロンとアウト側のパイロンまで14m
高速道路の1車線が3.5mだからその3車線より広い
複数のクルマが同時に走っても安全なように考えられているYRSオーバルFSW
写真左からHIRさんSAWさんKONさんSEKさん

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ブレーキタッチの練習が終わるとトレイルブレーキングの練習
小さなオーバルで目いっぱい加速した後
限りなく薄いブレーキを引きずってオーバースピード気味にターンイン
イーブンスロットルでも60キロでターンインできるけれど
トレイルブレーキングを使えば80キロからのターンインも可
ユイレーシングスクールが初めてのSUZさんのクルマを借りてデモラン
走り終えてどうでしたと聞くとレース経験のあるSUZさんが〇〇〇と

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イーブンスロットルとブレーキタッチの練習が終わって
トレイルブレーキングの練習をする頃になると
クルマを近くに停めて
ああでもないこうでもないと話に花が咲くルノー組

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大きなオーバルに舞台を移してまずリードフォロー
初めはインベタで1分半次にアウトインアウトで2分半
車間距離6mで前のクルマの真似っこをしながらペースを上げていきます
SUZさんのクルマを借りてSEKさんとHIRさんを引っ張ります

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セッションの合間を使って
ドライビングポジションの矯正や
ヒールアンドトーのやり方の説明もします
クルマの動きを遅滞なく感じることができるドライビングポジションは大切
エンジンブレーキを減速に使うことはご法度だけれど
シフトダウンを正確にするためのヒールアンドトーも大切です

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運転の上達には正しい操作と間違った操作の仕分けが大切
そのためたくさん走るにこしたことはない
時間の節約のために通常は3グループに分けて走行
巻き尺を使ってコース幅を確認して
アウト側のクルマの走り方とイン側のクルマの走り方を説明
この大きさのオーバルだと動力性能に差があっても
双方がミスなく走ると永遠にサイドバイサイドが続きます

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イン側のKONさんとアウト側のSAWさんが並んで下のコーナーに進入します
左回りの場合イン側は4.7mほどの第1車線内でアウトインアウト
アウト側は第2車線と第3車線を使ってアウトインアウトで走ります
すると距離を走らなくてはならないアウト側と
コーナーの直後からフルトラクションの加速ができるイン側の
パフォーマンスがバランスします
オーバルコースではイン側が有利ですがアドバンテージはアウト側にあります

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ユイレーシングスクールが初めての
SEKさんとSUZさんが中心線で測って1周442mのYRSオーバルFSWを
半周離れて走ります
お互いに横を見て
近づいたか離れたか一喜一憂しているはずです
透明な時間が過ぎていきます


今月のルノーな人達   (下の方にお知らせがあります)

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常連のHIRさん
いつもユイレーシングスクールのことを気にかけてくれてありがとうございます

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神戸から参加してくれるKONさん
春のYRSツーデースクールに続いての参加でした
遠路はるばるありがとうございます

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ルーテシアⅣからルーテシアⅢRSに乗り換えたOKBさん
マニュアルシフトとワイドトレッドの踏ん張りはどうでしたか

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8月のYRSオーバルスクールに続いて参加してくれたSAKさん
まだまだいけますよ

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今回ホイールをインチダウンしてきたSAWさん
厚くなったタイヤの感触はどうでしたか
春のYRSツーディスクールに続いて参加してくれました

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初めてユイレーシングスクールに参加してくれたSEKさん
レース経験がおありです
また遊びに来て下さい

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初めてユイレーシングスクールに参加してくれたSUZさん
SUZさんもレース経験がおありです
また遊びに来て下さい


お知らせ
ユイレーシングスクールでは来年、YRSオーバルスクールを受講したことのある方を対象とした新しいカリキュラムを始めます。今年のYRSオーバルスクールは12月のあと1回。日没時間が早いので時間を短縮し安価になっていますので、ぜひこの機会に。

◎ YRSオーバルスクールFSW開催案内&申込みフォームへのリンク



第532回 Gさんのブログから拝借

p1mユイレーシングスクールのことを書いたブログを見つけたので拝借
7年前の書き込みでした
 
2013年のYRSツーデースクールFSWで
初めてユイレーシングスクールにきてくれたGさん
楽しくサーキット走っているかな
 
写真もGさんのブログから拝借

 

ちょっと、真面目な話かな・・・。チョッと、宣伝になるのかな・・・。

確か、免許を取得したのは、1986年。子供ながらに、世間の景気が良くなっていくのが分かる時代でした。僕の家庭は、特別バブル景気の恩恵を受ける家庭ではありませんでしたが、浪人もさせてくれたし、大学にも行かせてくれました。

そんな時、2台目の車として出会ったのが、VW シロッコGTI16V。すでに、ゴルフはゴルフⅡになっていましたが、シロッコはゴルフⅠのシャーシのままでした。初めてのMT車で、うれしくて、走りまわりました。何の知識も無く、ただ、山や高速を飛ばして楽しんでいました。

バイト代は、車の改造費とガソリン代とデート代に消えて行きました。しかし、山の中で自爆事故。

修理完了後、KONIスポーツのショックをガチガチに固め、バネをサンダーでカットし、フロントに目分量で鬼のようなキャンバーをつけて、(笑)・・・・ジムカーナに行く前日、練習していて自爆事故・・・・・・ \(-o-)/

2回もつぶしてしまいました。 (-_-;)

その後に乗った、ALFA75も、テールスライドが止められず、自損事故。さらに、その後に乗ったBMWでも、雨の高速でテールスライドを起し、自爆大破全損。他人様にあまり迷惑をかけていないのが、唯一の救いです。 m(__)m

少し大人になり、山にも行かなくなり、高速でも無茶はしなくなりました。しかし、やっぱり走るのは好きだし、上手に運転出来る様になりたいと本心で思うようになりました。

他人様に迷惑をかけずに、運転が上手になる方法・・・・。”やっぱり、サーキットで練習” ここに、行きつきました。

いきなり、サーキットへ行っても怖い・・・。そんな気持ちから、何か、きっかけを与えてくれるものは無いかな・・と探している時に出会ったのがこの教科書でした。

ユイ・レーシングスクールの教科書

トム・ヨシダさんという方が書かれていました。

技術論はさておき、その冒頭の言葉に感銘を受け、今でも心にしている言葉があります。

”最近のクルマは実に良くできている。 運転のセオリーを知らない人もそこそこには速く走れる。 しかもお金を出せば誰にでも高性能車を買うことができる。ハイグリップタイヤをおごれば下手なやつも上手く見えるから、ヒーローになるにはとりあえずお金さえあればいい。しかし、本当はあらゆる状況においてどんなクルマでもコントロールすることができるテクニックを身につけてこそ、クルマの運転は楽しいはずだ。”

”クルマを速く走らせるには理にかなった方法で運転することが必要だ。セオリーを理解すれば、クルマの限界に安全にしかも簡単に近づくことができる。クルマに余計な負担をかけずにすむから痛みも少ない。そして、操作を間違った時の危険度も低くなる。”

”絶対にクルマの性能を越えては速く走れない。速く走る為には自分が速く走ろうとするのではなく、「クルマに速く走ってもらう」ように運転することが必要だ。”

”運転手がどんなに頑張って速く走ろうとしても、絶対にクルマさんの性能以上には速く走れない。速く走りたければ、クルマさんに速く走ってもらえるように努力をしろ。”

”速く走るのはクルマさん。運転手までもが速く走っているつもりになるな。速い操作(慌てた操作、雑な操作)をする必要もない。”

”サーキットを走る場合、クルマさんを振り回して楽しむのか、それともクルマさんとの共同作業で(自分の)限界に挑戦するのか、はっきりとどちらかに決めろ。”

”ラップタイムを基準に速く走るのが目的とするならば、運転手は必要最低限の操作をしろ。よけいなことはするな。”

”クルマさんが不安定になるのは運転手の操作が間違っている場合がほとんどだ。自分のミスをクルマさんのせいにするナ。運転を見ればその人の他人に対する接し方がわかるというもんだ。”

”複数のクルマが高速で走るサーキットには守らなければならないマナーがある。決してナンデモアリの世界ではない。サーキットでの行動は全て自己責任に基づいて行われなければならない。サーキットを格闘場にしないためにも。一人で走っていて自爆するぶんにはまだしょうがないが、サーキットでは複数のクルマが同時に走る機会がほとんどだから、他人の安全はもちろん自分のためにも最低限のルールは守らなければいけない。”

そして、僕は彼の開催する2Dayスクールという、泊まりこみのスクールの門をたたきました。富士でみっちり2日間。1日目は広場で基本練習。2日目は富士ショートコースで走りこみ。すごくためになりました。

色々調べると、僕の知らない所で、様々な講師がスクールを開催しているようですね。関西ではあまり開催されていないようで、寂しいですが・・・。

僕は、たまたま、初めてのスクールがトムさんの所でしたので、他はあまりよく知りませんが、広場での基本操作の練習は、本当にためになりますね。

そんなトムさんが関西(和歌山)で来年、2015年1月25日(日)にスクールを開催するようです。僕もまだ、予定が確定していませんので、参加表明が出来ていませんが、出来るだけ参加したいなと思っています。

まあ、何だか宣伝みたいになってしまいましたが、自動車の運転が好きな方は、いちど、どこかの広場スクールに参加してみられてはいかがでしょうか・・・。

運転の楽しさの幅が広がりますよ! (^_^)