トム ヨシダブログ

第539回 腰で曲がる

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YRSオーバルスクールFSWロンガーでIさんのポルシェ911に同乗
 
Iさんのポルシェはタイプ991Ⅱの7速マニュアル
1,440キロの車重の60%が後輪荷重
タイヤはフロントが245/35ZR20でリアが305/30ZR20
ホイールはフロントが8.5Jでリアが11.5J
最高出力は420hp

 

RRだからリアが重い上にリアのオーバーハングマスが大きくて、リアの荷重を吸収するのと大パワーを受け止めるためにリアタイヤがフロントタイヤに比べてかなり幅広で、成り立ちとしてはインバランスなクルマでも4本のタイヤの限界を使って速いコーナリングをすることは理論的に可能だし、できない話ではない。それは、タイヤの幅に関わらずコーナリング中常に前後のタイヤのスリップアングルが均等になるような操作を行うことで実現できる。

クルマがアンダーステア気味かあるいはアンダーステアでコーナリングしている時、前輪のスリップアングルは後輪のそれより大きい。つまり前輪は限界付近か限界を越しているのに対し、相対的に言って後輪にはまだ余力がある状態なので4本のタイヤの限界を使ってコーナリングしていることにはならない。オーバーステア気味、あるいはオーバーステアでコーナリングしている場合はその逆。4本全ての美味しいところを使っているわけではないから、遅い。

アンダーステアを出すとフロントが逃げるのを感じるはずだし、オーバーステアではクルマが失速しているのを感じるだろう。どちらもクルマが予定された軌跡に乗って前に進んでいるわけではないのだから、結果的にそのコーナリングは遅いことになる。

ブレーキ、ステアリング、スロットルをトランジッションを意識して操作すれば、前後輪のスリップアングルを均等に持って行くことはできる。もちろんコーナリングをしているクルマの動きは複雑だから、瞬間瞬間の話ではなく、コーナリングのアプローチ、コーナリング、脱出の各パートにおいて、という話だ。

Iさんのポルシェに積まれていたロガーによると、YRSオーバルスクールFSWロンガーの下のコーナーで1.35Gの横向き加速度を記録している。太いリアタイヤのおかげか。それだけのコーナリングフォースを4本のタイヤが発揮したということは、クルマが受けていた遠心力がそれだけ大きかったということであり、それだけの遠心力を発生するほどコーナリング速度が速かったという証明に他ならない。クルマもタイヤも運転手もいい仕事をした、ことになる。

コーナリング初期にアンダーステアを出さないようにするのは簡単ではないけど、前後輪のスリップアングルの大きさに差が出ないように意識して運転していると、ターンイン後のアプローチで、肩ではなく腰で遠心力を感じ始めることができる。4WSでない限り後輪のスリップアングルの源は遠心力だけなのである程度の速度が必要だけど、その時には前後輪のスリップアングルが均等に近づいていると言ってもいいだろう。ヨーモーメントの中心もホイールベースの間に収まっているはずだから、4本のタイヤが同じように働いてくれる状況を作れたことにもなるからクルマは安定して旋回運動を続けることができる。

速度が低い場合は   遠心力やヨーモーメントの影響を受けることは少ないけれど、クルマが動いている間は全てのタイヤにスリップアングルが生じているのだから、前後輪のスリップアングルを意識した操作はバランスを崩さない運転につながるからスリップアングルを意識して損はない。

 

動画はIさんが提供してくれました。静止画は動画からキャプチャーしたものです。



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