第56回 滑って 滑って 滑って 滑る ♪♪♪
原則的に、ユイレーシングスクールはクルマの機能を発揮させることを運転技術習得の最終目標にしている。
従って、いかなる時でも、駆動形式が異なるクルマでも、常に前後輪のスリップアングルが均一であることを理想としている。
しかしある夜。水割りをなめながらあれこれ考えているうちに、バランスを崩した時にユイレーシングスクールの卒業生がどんな対応をするか見てみたくなった。今までの路線と違ったテーマに直面した時、どうクルマを操るかを知りたくなった。それで開催したのが第1回YRSスキッドスクール。
富士スピードウエイの駐車場に水を撒き、人工的に路面の摩擦係数を低くした真円コースとオーバルコースを作って走ってもらったのが以下の画像。
ふだんはテールを流すのはご法度、ましてスピンなどしようものなら○○○のユイレーシングスクールで、今度はテールブレイク距離を競います、なんて言われたものだから、参加者も面食らってはいた。
とにかく、なんとかしてオーバーステアの状態を作り出すのだが、テールが少しでも流れるものならたちまち修正してしまう。本人達は意識していないのだが、身体が反応してしまう。瞬時にテールスライドは収まり、何事もなかったかのようにクルマが安定する。それはそれで褒められるべきことなのだ…。
「今日は無礼講だから、なんとしてでもテールを流して!!!」と叫んでも、日ごろカウンターステアが好きな人以外は悪戦苦闘。いつになく真剣な表情で走る参加者を見て、スキッドスクールも悪くない、と思ったものだ。
水を撒けばスキール音はでないしタイヤも減らない。こんな運転の楽しみ方もありなんだ、なと。
【独白】初めてのYRSスキッドスクールを終えて、改めてクルマの動きを理解することの大切さを感じた。この日、テールスライドを誘発するのに苦労していた参加者は、みな同じような公式に則って反応していた。その公式には、クルマがバランスを崩した時に何をなすべきかが書いてあるはずだ。その公式が確立しているからこそ、「テールが出ない!」と悩んでいたわけだ。もし、公式にたどり着いていない人ならばもっと簡単にクルマを振り回せたかも知れないが、逆に、公式が確立しているからこそ『お尻を振る』のが難しかったのだ、と理解すべきだと思った。クルマを運転する人がみんな公式を備えていれば、クルマ社会はもっともっと楽しくなると思う次第。
Phto:Takasi Nakazawa