トム ヨシダブログ

第719回 ローンチコントロール

駐車場だから加速距離は長くないしスタート地点には砂が浮いているからメガーヌRSトロフィー本来の性能ではないと思われるけれど、ローンチコントロールを可視化したらいろいろ見えてきた。


トライは2回だけ。1回目は完全に止まる前録画中にしゃべってしまいボツ。記録は1回目が良かったのだけれど。

719-1
横軸が経過時間
左目盛の赤線が速度を表し右目盛の青線が加減速Gを表す
 
グラフ左端から0.19秒で速度ゼロから発進

YouTubeにあげた動画と同じランだけど記録した数値に違いがあるのはパフォーマンスボックスやiPhoneの取付位置や取り付け方によるものか、それぞれのデバイスのデータの拾い方によるものなのか現時点では不明。

719-2
発進から1.21秒で最大加速度0.586Gを記録
その時の速度が」13.68Km/h
 

発進時は明確なホイールスピンが起きた。しかし昔ながらの高出力のマニュアルシフト車でクラッチをドンとつないだ時のようなホイールスピンではなかったような気がする。経験からすると、エンジン出力から考えれば空転に近いホイールスピンが起きてもおかしくはなかった。何かが介入していた?

719-6
0.5G以上の加速が4.5秒ほど続く
スタート後4.46秒で72.27Km/hを記録
 

この間、時間の経過とともにエンジン回転が上昇しそれに見合った加速度の増加があるはずなのだけど、それが見られなかった。それでも速度が確実に上昇していることを考慮すると、滑りやすい路面、あるいは大きなエンジン出力に対応するため、加速度を押さえる方向でなんらかの制御が入っているものと推察される。
スタート後3.4秒あたりで速度の上昇によどみがある。1速から2速へのシフトアップだろう、加速度にもわずかな落ち込みが見てとれる。対して2速から3速へのシフトアップは5.3秒あたりか。こちらは動画の音声からもわかるが一瞬加速度の鈍化が感じられる。いずれにしろシフトアップ時に加速度がマイナスに振れないシームレスなシフトアップはさすがEDC。

719-3
スタート後7.40秒でこのランの最高速度110.30Km/hを記録
この時の加速度はプラス0.062G
加速度がマイナスになるのは7.46秒時で110.22秒/-0.002G
 

スタートから7.3秒あたり。最高速度に達する前に加速度は大きく減少を始めている。と言うことは、それ以前にスロットルが閉じられていることになる。換言すればスロットルオフ後もクルマは加速した、ということになる。しかも最高速度を記録してからコンマ5秒ほど110Km/hあたりを維持している。運動エネルギーが持つ一面。
スロットルを開けつづければそれだけ運動エネルギーが増加する。スロットルオフと同時にクルマが減速を始めることがないとすれば、状況によってはスロットルを閉じてもクルマがさらに加速する可能性があるわけで、サーキットでブレーキを我慢してスピンしたりコースアウトする人やブレーキをオーバーヒートさせる人はブレーキを遅らせることで短くなった減速区間で速度を落とそうとクルマが加速状態のまま=荷重がリアにかかり前輪のグリップが低下している状況で過大な制動力を立ち上げているのではないか、ユイレーシングスクールで言うところの『蹴とばしブレーキング』をやっているのではないかという仮説がなりたつ。スピンやコースアウトは速度が十分に落ちなかったかターンイン時にクルマが前のめりだったのが原因だろうし、オーバーヒートはブレーキローターの回転が落ちなかったせいだろう。
ブレーキを我慢すれば周回路を速く走れると思うのは錯覚にすぎない。

719-4
最大の減速Gはスタート後8.30秒で-1.004G
その時の速度が96.42Km/h
 

と書いてきて、穴があったら入りたい! 猿も筆の誤り! (笑)
効率的なブレーキングは、加速中リアにあった荷重をフロントに移動させ前輪の輪荷重を増やすように制動力を立ち上げなければならない。輪荷重が増えれば増えるほど前輪のグリップが増加するから本来の制動力を発揮することができて減速Gも大きくなる。だから、最大減速Gは減速区間の後半で記録されるはずだ。つまりグラフの加速度を見る限りこれは明らかに『蹴とばしブレーキング』なのだ。実際、
・スタート後8.5秒から10.5秒までの間、速度は落ちているが減速Gの大きさが横ばい
・11.3秒から13.2秒の間、速度が一定と言うかわずかではあるが上昇している
・減速加速度が跳ね上がり11.5秒から13.6秒の間加速度ゼロ、つまりブレーキをかけているのに速度が落ちていない時間があった
・その後減速Gが回復し速度も低下
これはABSなりなんらかのデバイスが介入した結果だと言わざるを得ない。その原因を作ったのはボクだけど。ブレーキング中に速度の落ちていない時間があれば制動距離が延びるのは自明の理だ。だからブレーキングは上手くなったほうがいい。

※ 加速距離を稼ぎたかったので、このランはスロットルオフを遅らせクルマが完全に下り坂に降りてからブレーキングを開始した。下り坂で前輪に急な荷重がかかった結果である可能性もある。 って、言い訳ですけど。

『蹴とばしブレーキング』の動画

719-5
スタート後14.91秒で-0.374Gを記録した直度に停止したはず
 

しかしグラフを子細にいてみると、速度がゼロになった瞬間がない。最も速度が低下したのは記録によるとスタートから14.91秒後に時速0.04キロになった瞬間だった。速度が落ちて止まったなと思ったからブレーキをリリースしたのだけど、クルマが完全には止まっていなかった=運動エネルギーを開放しきってはいなかったってことになる。もっとも、その前の減速度の大きさにもよるだろうけど。以前、ドライブレコーダーを使った運転診断で「一旦停止ではもっと確実にしっかり停止しましょう」と言われたのはこのことだったのかも知れない。一旦停止で切符を切られるのはこういう運転かも知れない。

クルマの運転って楽しい。クルマの機能、性能を味わうのも面白いし楽しいけど、やっているつもりでやっていなかった自分とか、できていると思ってやっていたのにできていなかった自分を発見するのも楽しい。運転は学習の連続。まだまだ先は長い。

ところで、4月29日(土)に富士スピードウエイ駐車場でYRSドライビングワークショップアドバンストトレーニングを行います。Gセンサーを使って参加者全員のブレーキング、オーバル走行のデータを記録し、教室でモニターに映してアドバイスします。言葉のアドバイスに加えて視覚的にも理解を深められるカリキュラムです。興味のある方は 開催案内 をご覧下さい。ぜひ多くの人に体験してほしいと思います。



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