トム ヨシダブログ


第14回 YRS ルノー・スポールゼミ


YRSルノー・スポールゼミに集まったRS。

このブログでも紹介したように、ルノー・スポールオーナーを対象としたYRSゼミを開催した。開催日がゴールデンウィークの最中だったこともあり参加者は3名。さみしくはあったけれど、それはそれで充実した時間を過ごせた(と思う)。


白がWさんのメガーヌ。

 納車されてから2週間しかたっていない白いメガーヌRSで現れたWさんは、このブログでゼミの開催を知り申し込んでくれた。ごくふつうのセダンや、ごくふつうのSUVを乗り継いできたというWさん。クルマの運転を楽しみたいという思いに駆られて購入を決めたそうな。だから、メガーヌは大切に乗っていきたいと。だから。通勤にクルマを使うのを止め、運動を兼ねて自転車で通っていると言う。
  いいね。こういう話は。クルマとの付き合い方に覚悟がある。クルマさんも幸せだ。

 ユイレーシングスクールの「座学オンCD」も買ってくれたWさん。実は連休中に開催される関西で2回目のYRSオーバルスクール奥伊吹にも参加してくれる。そのWさんからのメール。

  『湖畔のカフェレストランを会場に、様々なエピソードを交えつつお話いただいたドライビング理論の講義は大変充実したものでした。YRSの講義CDにも匹敵するような4時間超にも及ぶ(!)お話の内容は、一度聴いたぐらいでは消化しきれるものではありませんでしたが、その中でも繰り返しお話され印象に残ったのが「走る・曲がる・止まる」を「荷重移動」という観点から連続的なものとしてダイナミックに解説されたことでした。ややもすると「点」でとらえそうになる運転技術を、一連の流れのものとして意識することが、なめらかかつ安全なドライビングにつながるものなのだと理解できました。
 最後に場所を駐車場に移して各自の車でドライビングポジションのチェックを受け、基本的な操作の注意点を説明してもらいました。オーバルスクールまで日常の運転で感じ取るべき宿題もいただき、当日が楽しみになりました。理論の後は実践あるのみと心ははやりますが、本日はここまで。実践は1週間後の奥伊吹オーバルスクールまでお預けです。』


青がUさんのルーテシア。

 マニュアルシフト車は3台目。レガシイB4から乗り換えたというUさんは、ルノー京都の案内を見て参加してくれた。青いルーテシアRSに乗り換えた理由は、試乗した時のカッチリした操作や動きが気に入ったからだとか。昨年7月の納車以来既に1万キロ以上を走行。聞けば、毎日の30キロに及ぶ通勤の足として使っているとのこと。

  いいね。こういう話は。大好きなクルマが日常の生活に溶け込む。クルマさんも幸せだ。

  以下は、YRSオーバルスクール奥伊吹の日が仕事で参加できないUさんからのメール。

  『荷重の話やドライビングポジションの話は日ごろ聞く機会がなかったので、大変勉強になりました。帰路和邇から自宅まで運転する中で今日教わったことを意識しながらステアリングの切り方やアクセルの踏み方を注意すると、車の動きがいつもと違うような感じがしました。今までは漫然と運転することも多かったですが、これからは課題を持って運転していきたいと思います。機会があれば実際のスクールにも参加してみたいと思います。
  今日はヨシダさんの運転するルーテシアRSの助手席に乗せていただいて「こういう風に運転したら良いのか!」と思う点も多く、大変勉強になりました。またこのような機会があれば是非参加させて頂きたいと思います。』

 実はUさんからのメールの中にギアシフトについての質問も含まれていた。ボクのルーテシアに4人乗車でカフェ・スマイルの付近を走り、ユイレーシングスクールシニアインストラクターが公道でどういう運転をするか見てもらったのだが、その操作の方法についての質問だった。
  早速思いつく限りのアドバイスを送ったところ、Uさんからは通勤時に試してみますとの返事。どんな質問で、どんなアドバイスだったかはナ・イ・シ・ョ・だけれど。


銀がボクのルーテシア。

  スバルフォレスターで参加したKさんは、社用車がルノー・カングー。ルノー・スポールでなくてもいいですか、という問い合わせをもらい、ぜひぜひと参加してもらった。
  当日の話の中で、「4本タイヤがついていれば背の高いクルマだって基本的な操作は同じです」、「背の高いクルマだから運転が楽しくないということはありません」、「理由はかくかくしかじかです」と説明すると、次は実際のスクールに参加してくれると約束してくれた。


今回の会場となったカフェ・スマイルの駐車場に羊の皮をかぶった狼が3台。

  ユイレーシングスクールの拠点がまだ完成していない部分もあり、カフェ・スマイルさんに無理を言って関西初のYRSゼミを開催した。拠点が完成すればビジュアルな情報も盛り込んだゼミを開催する予定だ。
 
  最後にもう一度Wさんのメール引用する。

  『さて今回は試験的なカフェでのイベントとのこと。ゴールデンウィーク最初の土曜ということもあってか参加者はやや少なかったようです。ルノースポールをブランドイメージの中心に据えるのであれば、ルノージャポンにも積極的にコミットしていただいて、このようなドライビングスクールを応援していただきたいと、ルノースポールオーナーの一人として感じました。』
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2月のYRS筑波サーキットドライビングスクールに参加してクルマを操る快感の虜になったKさん。4月末に富士スピードウエイで開催したYRSオーバルレースにもはるばる宇都宮から参加してくれた。もちろん。ルーテシアの性能を満喫していたのは言うまでもない。
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 ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

□ 5月29日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第13回 クルマの運転は科学だ

富士スピードウエイの周りの桜は散りかけていたが、

それでも桜はいい。

満開の桜には空間を、

地面に舞う花びらには時間を感じる。

 ===> 以下、過去に発行したユイレーシングスクールメールマガジンからの転載 です===>

 ある日のスポーツ新聞に興味深い記事が載っていた。それは競争馬の速さにまつわる話なのだが、クルマの運転ともまんざら関係なくはなさそうだった。筆者は競馬をやらないし見たこともないので、競馬に関しては全くの無知だ。競馬が速さを競うものなのは知っているが、その速さはどうやってはかるものかはわからない。だからあくまでも記事を元にしてしたためてある。

 自動車レース同様に、競馬も当時の裕福な人たちが自慢の馬で速さを競い合ったのが始まりだと言われている。もちろん、その始まりは競馬の方が先なのだが。
  近代競馬の発祥の地はイギリス。有史以前から競馬に似たようなものはあったらしいが、馬を使って純粋な速さを競う近代競馬は16世紀に始まったという記述があるらしい。やがて1620年代。競馬がイギリスの植民地だったアメリカに渡った。現存する記録では1540年にイギリスで世界初の競馬場が建設され競馬が行われ、イギリスの植民地であったアメリカでは1665年に初の常設競馬場が完成したとある。

 イギリスで生まれた競馬だが、当初騎手は馬の背中にべったりと座って乗っていたという。アメリカに渡った競馬は、そこで騎手が中腰で乗る方法があみ出される。その乗り方が革新的だったのか、結果としてレース記録が短縮したと言う。
 1897年。アメリカで生まれた中腰の前傾姿勢で乗馬する方法がイギリスにも普及し、1897年~1910年の間に7%ものレース記録を短縮。アメリカでは1890年から1899年までの間に5%のレース記録が短縮されたとある。
 
  イギリスのロンドン大学の研究チームは乗り方に記録短縮の鍵があるとの仮説を立て、騎手と馬にGPSと慣性センサーを取り付けて計測した。その結果、仮説が正しいものであるとの裏づけを得たという。
  時速約70キロで走る競馬馬の重心移動は上下約15センチ、前後約10センチ。あの巨体がこれだけの重心移動だけで疾走していることにも驚かされるが、これに対し騎手にいたっては上下約6センチ、前後約2センチというごくわずかな重心移動しかしていなかったという。馬の上で騎手が自らの重心移動を少なくすると同時に、馬の重心移動と逆向きの動きで馬の重心移動そのものも軽減し走行を安定させていることがわかった、とあった。
  馬体重は440~552キロ(今年の天皇賞から筆者が引用)。騎手は規定により54~57キロ。10分の一の質量の騎手が馬の上で微妙な重心移動を心がけることにより、馬自体の重心移動が減り馬本来の脚力が発揮された、と見ることはできないか。

 馬は騎手が乗らなければ走らない。馬は当然のことながら、騎手という重量増を抱えて走らなければならない。馬にとっては負担になる。その騎手が乗り方を変えたことにより馬の負担が減り、馬がより速く走れるようになったという話だ。

 それにしても、500キロはある馬にまたがり70キロ近くで走りながら馬の動きに翻弄されることなく、自らの動きを最小限にとどめるのは正直言ってすごい話だと思った。騎手によって馬が速くなるという話を聞いた時に半信半疑だったが、もし仮に騎手の最大の役目が『馬の重心移動の制御』にあるのだとしたら、それは大いにありえる話だ。

 クルマを運転するのは馬を走らせることとは違うが、それぞれの機能を発揮させるという意味では共通したテーマがあるようだ。重心の移動が少ないということをクルマに例えれば、ピッチングが少ないことに置き換えられる。クルマが前後のタイヤのグリップレベルを変化させてアンダーステアやスピンにおちいりバランスを崩すのは、状況としてはクルマがピッチングしているからだ。言うまでもなく、ピッチングはクルマの重心が前後に移動することによって起きる。ピッチングにより前後タイヤのグリップが変化することで、どちらかのタイヤの路面をつかまえる力が不足することが直接の原因だ。

 もし、クルマの重心が動かないように気をつけながら運転したらどうだろう?クルマの場合は馬のように重心の上下動は無視できる範囲だろう。その代わり、クルマを走らせる時にはヨーモーメントの発生が不可欠になる。それでもできるだけ重心が動かないような操作に集中すれば。

  もちろん、加速、減速、旋回を繰りかえすクルマは、ある瞬間には大きな重心移動が起きていて不思議ではない。ただその重心移動がふたつ以上重なるとクルマはバランスを崩しやすくなる。スクールで「トランジッションを意識して」と口を酸っぱくして言うのも、別の言い方をすれば「操作を重ねないで下さい」、という意味だ。

  『クルマがある動きして重心が移動したらその移動した重心を元の位置に戻すような操作をして、あるいは重心が元に戻るのを待ってから次の操作をする。クルマを安定させるためにはそんなイメージが大切だ』。こじつけに近いかも知れないが、的外れでもないだろう。次のスクールではそんなアドバイスをしてみるのも悪くはないな、とあれこれ想像しながらスポーツ紙の小さな囲み記事を何度も読み直した。

【余話】
  近代競馬の発祥の地はイギリスだが、自動車のオーバルレーシングが生まれたのはアメリカだ。1896年9月7日。ニューヨーク郊外ロードアイランドにある1周1マイルの競馬場を使って初めての自動車レースが開催された。イギリスより先にオーバルコースで自動車レースが行われた。自動車の国アメリカならではの話だ。
  同じ楕円形のコースを使う競技だが、競馬のようにオーバルレーシングが全世界に普及するようなことはなく、カナダとオーストラリアで開催されているのが現状だ。
  アメリカのオーバルレーシングには様々な形態がある。大別すればインディ500に代表されるオープンホイールレーシングとデイトナ500が有名なストックカーレーシングだ。コースにいたっては、1周320mのダートコースから2.66Kmのスーパースピードウエイまで多様。全米に1,000ヶ所以上のオーバルコースがある。
 
  アメリカでは全てのオーバルレーシングが左回りで行われる。最初に競馬場でレースを行うことになった時、競馬場の馬をつないでおくピットが走路に対して斜め左を向いていた。当時のアメリカの競馬が左回りで行われていたからだという。ピットに入れるのが馬ではなく自動車になっても、便宜上同じ方向に走ったのでアメリカのオーバルレーシングは左回りになったのだとものの本には書いてある。
  カナダのオーバルレーシングは左回りだが、オーストラリアのそれは右回り。オーストラリアが長く競馬発祥の地イギリスの植民地であったことに関係があるのか、左側通行だからなのかは調べていないのでわからない。
  ちなみに、ツインリンクもてぎにある1周2.4Kmのスーパースピードウエイ。日本で唯一のオーバルコースも左回りで使われている。しかし日本で売られている自動車が右ハンドルなので、運転する人がコーナーの内側にくるように右回りも計画段階から考えられていた。そのためコースにある信号機が回転軸に取り付けられていて反転するようになっていて、左回りでも右回りでも対処できるようになっている。

                                           <=== ここまで転載 <===

  最近、テレビでやっている競馬のCMをご覧になった方もいるだろう。疾走している競馬馬を横から撮ったものだ。ボクは見るたびに、その美しさに感動している。

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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)

□ 5月29日(日) YRSオーバルスクールFSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマが好きな人には一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第12回 オイル交換

  琵琶湖の西岸。比良山のふもとに拠点を移してから、相変わらず大津市と関東をクルマで往復する生活が続いている。最低でも月に1回、多い時は3回。それがドライビングスクールの開催であればトゥインゴの出番だ。
  当然高速道路を使うのだが、そんな時にトゥインゴGTが大活躍。自宅から御殿場インターチェンジまでちょうど440キロあるのだが、それをノンストップで走っても疲れない。流れをリードするペースで走っても、燃費はリッター15キロを割ることはない。
 
  走っている間は他にすることがないので考えてみた。どちらかというとクルマにはギアシフトが欠かせないとかたくなに思っている部類に属するのだが、トゥインゴGTだとその回数が極端に少なくなる。もともと回転ではなくてトルクで走るタイプの動力性能を備えるから、シフトダウンの必要性は高くない。初めのうちは長年の癖で左手が勝手に動いてしまっていたのだが、5速に入れっぱなしでも痛痒を感じることが少ないのが身にしみると、しだいにズボラになってきた。それではいけない、と言う自分がどこかにいるのだが・・・。
  なりいきで運転すると集中力を欠くようで生理的に受け付けないところがあったのだが、手抜きに慣れると、それはそれでいいのかも知れないと思えるようになった。それが疲れない原因なのかも知れない。

  少なくとも、今のところ長距離の移動が億劫ではなく、むしろ楽しいのはトゥインゴも一役かっている。
  と言うことで、当初の予定より遅れてしまったが、よく働いてくれる相棒をいたわることにした。


京都にあるルノー京都CADONOに到着。

  トゥインゴGTには純正で合成油が使われていると言う。いつのころか、確かあれはモービルが最初に合成油を発売したのだと記憶するが、エンジンオイルと言えば鉱物油か植物油しかなかった時代を知っている人間には、いまだに合成油を使うことに抵抗がある。
  含浸と言うらしいが、鉱物油は金属によくなじむ(浸透する)ので油膜が切れにくいという話を昔聞いたことがあるからだろう。
  とは言ってもメーカーが指定しているのだからクルマに悪いはずもなく、今回はモチュールを選びオイルフィルターと一緒に交換してもらった。


リフトアップされた相棒を下から見せてもらう。もちろん工場の許可を得た上でだ。


初めて見るトゥインゴGTの下回り。
フロントサスペンションのロアアームはIアームではなくてAアームだった。
エキゾーストパイプが1,200ccにしては太め、かな。


オドメーターが8,000キロを超えていたこともあり、抜いたオイルは若干疲れ気味。
とは言え、スクールカーのフィットやロードスターよりはましなほう。

  初回点検も同時にしてくれたが、どこも異常なし。次の出番は4月末の富士スピードウエイで開催するYRSドライビングスクール,
  YRSオーバルスクール。5月7日に奥伊吹スキー場で2回目の開催となるYRSオーバルスクール奥伊吹だ。


蓬莱山を仰ぎながら湖西道路を走る。山々もそろそろ春のよそおい。

  ところで。ユイレーシングスクールでは4月30日(土)に琵琶湖のほとりにあるカフェ・スマイルで、ルノー・スポールオーナーを対象としたYRSドライビングゼミを開催します。時間は午後4時から8時まで。カフェスマイルの美味しい料理を食べながら、どうすればルノー・スポールの性能を引き出すことができるか、安全に快適にクルマを操るコツをお話します。会費は食事と飲み物がついて4,000円。定員は10名です。ルノー・スポールをイキイキと走らせたい方はぜひご参加下さい。

・YRSルノー・スポールゼミ 案内頁
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=y-rs


今回のルノー・スポールゼミの会場。琵琶湖畔にたたずむカフェ・スマイル。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

◇ 5月7日(土) YRSオーバルスクール奥伊吹
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=oso

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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第11回 トゥインゴ試乗会開催

寒波が襲った3月上旬。御殿場の早朝の気温はマイナス8度!!!
前日のスクールでは会場が一面氷に覆われ四苦八苦。
当日は快晴ながらも、こんなに裾野まで雪をかぶった富士山は初めて。

『外観はちっちゃくて、とてもかわいらしいデザイン。乗り込んでみると狭くない。結構ゆったり。そしてハンドルの真ん中に見えるタコメーターがおしゃれ。
今日の試乗コースはYRSオーバルロンガー。走り出すとボディーの重さを感じずスルスルスル~っと加速。アクセルを踏み込めば踏んだだけ勢い良く加速。流石GT!でもターボらしさは感じないセッティングですね。
コーナーに入る。フロントがズルズル~っと逃げていくFFらしい挙動。オーバースピードだったかな?
今度は丁寧に曲がってみる。フロントとリヤの荷重量がつり合うようにアクセルコントロール。結構コントロールについてくる。サンルーフ仕様だけどボディーの剛性感もありますね。
次はコーナー中にあえてラフなアクセル操作をしてみる。直線ではあんなに勢い良く加速するのにエンジンはすごくマイルドに反応。安全な制御が入っているんですね。でも普通に操作している分は違和感は全くなし。
ハンドルさばきの良し悪しをちゃんと表現してくれる一方、ハイパワーにより危険領域に達してしまわぬようにちゃんと制御もされているって感じです。
車高の高さや椅子の高さも手伝いコーナーを頑張る車ではないけれど、街中をキビキビ走るにはとても楽しそうです。』

 3月上旬。今年最初のYRSオーバルレースが開催された日。レース参加者を対象にトゥインゴGTの即席試乗会を開催。上の一文は、当日試乗したオーバルレース参加者からの感想文。

YRSオーバルレースの昼休み。
「トゥインゴの試乗会始めます」の声に集まる、集まる。
もともと運転が大好きな連中。代わるがわるステアリングを握る。

 この日の参加者は最多11台のロードスターを筆頭に、MR-S、BMW Z3、ジネッタG4、ロータスエリーゼ、インプレッサにインプレッサワゴン。
  敷居が低いと言っても、中身は本物の自動車レースなので速いクルマか、振り回せるクルマか、ランニングコストが安いクルマか、過去に参加したFFは10指に満たない。
  FFに乗っている人は少ないが、それでも運転大好きなYRS卒業生でYRSスクールレース参加者は、我先にとトゥインゴの運転席に。
 
  コース幅14メートルのYRSオーバルでドアツードア、スリーワイドの争いを繰り広げる彼らは、間違いなく運転がうまい。操作だけでなく、クルマがどんな状態になっても立て直してやろうという意識が高い。そんな彼らがトゥインゴに対してどんな反応をするか興味深かった。

一人で運転する人がいれば、リアシートからライバル(?)が
どんな運転をするか見てやろうという人まで。
  もうひとつメールを紹介する。この日の参加者の中で紅一点。

『素直で扱いやすい車だと思いました。トルクやパワーは充分です。最近、新型のマーチを試乗したのですが、足が妙に硬くて乗りにくかったです。でも、このトゥインゴは何も考えなくても運転できました。
私はコーナリングが苦手で、特に他人のくるまでは恐怖感があるのですが、トゥインゴは、(ロールが安定しているのか?よくわかりませんが)安定感があって、とても安心してコーナリングできました。予想に反してアンダーもでないし、(私にとっては)ナチュラルステアで楽に運転できました。
—————-
最近はミラ アビイ(私の思う軽の一番おしゃれな車)でも、オプションをつけると込みこみで180万ぐらいします。トゥインゴはそんなに、高くないかもしれませんね。(^_^;)』

  コーナリングが苦手と言うこの人は主婦。実は、ご自身のポテンシャルの高さに気がついていないだけなんです。


加速しているからリアが沈んでいるだけではなく、4人乗車で走っているから。

『トゥインゴの印象。エンジン:低回転からトルクがある。小排気量でもシフトチェンジが忙しくない。サス:FFの小型車にもかかわらず、リアの接地性が良い。車体:重心(着座位置)が高いので、オーバルを走ると、ちょっと違和感がある。』
などの意見も。


レースの準備をしながらもクルマ談義に花が咲く。

  他にもいろいろな印象が届いている。みんなの意見を要約すると、
・ボディ剛性が高い ==> サスペンションがちゃんと動いている
・リアサスペンションのストロークが長い ==> 挙動が乱れない
・出力特性は十分以上 ==> ずぼら運転もできる
・小さいから取り回しが楽 ==>オーバーハングが小さいので見切りが楽
・室内の広さは十分 ==> 室内高があるので圧迫感がない
・着座位置が高い ==> ロールをまともに感じる
・トラクションコントロールを解除できない ==> ちゃんと運転できる人には物足らないしもったいない。
とまぁ、こんなところ。

  車両価格を聞いて驚いた人もいるけど、人それぞれクルマに求める価値が異なるのは当たり前。個体としてのトゥインゴGTに対して否定的な見方をした人はいなかったことを付け加えておく。

寒さのせいかこの日の参加者は少なかったものの、とりあえず全員集合。

YRSオーバルレースに参加しているのはどこにでもいそうなオジサン、お兄さん、おねえさん。
  YRSスクールレース参加者はもちろん、ユイレーシングスクールを訪れる大多数の人がマニュアルシフト車に乗っている。だから、当たり前のことなのでみんなの感想にはでてこなかったけれども、トゥインゴGTがマニュアルシフトであることも評価されるべきだ。
  マニュアルシフトのクルマに乗っている人は、単にシフトするのをいとわない人種なのではない。クルマを動かすという行為の中にギアシフトが含まれていることを自然だと思っている人たちだ。
  この日の参加者は25歳が最年少。あとは30代40代から50代の半ばまで。みんな「クルマを動かすこと」が好きな人ばかり。

  社会がクルマに「気軽」を求めている時代に、昔ながらの運転を「手軽」に楽しめるクルマを供給しているルノー・ジャポンに拍手。


トゥインゴに乗っている時のみんなの顔は笑顔、笑顔、笑顔。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第10回 クルマの性能は使い方次第

初めに、このたび未曾有の震災にあわれた被災者のみなさまに心からお見舞いを申し上げるとともに、犠牲になられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

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  ユイレーシングスクールは卒業生のためにスクールレースを開催している。
  ドライビングスクールやオーバルスクールで基本的な運転操作を教えることはできるのだが、その人のドライビングポテンシャルに幅を持たせることはなかなか難しい。そこで、ひとつの目的に向かって大勢で走ることで運転操作とは別の『運転意識』を養ってもらおうというわけだ。


ルマン式スタートでレースは始まり、

  運転が上達するということは、人間が成長することに似ている。
  子供は伸長期と充実期を繰り返して成長すると言われているが、クルマを運転する時の能力も同じように向上していく。ある程度経験があれば、運転操作はこなれていく。免許証をとったばかりのギクシャクさは影を潜めるはずだ。ドライビングスクールで基本的な操作を学べば、思い通りにクルマを安全に速く走らせる技術はが身につく。例えて言うならば、これが伸長期だ。
  しかし、それだけではクルマの運転は完結しない。我々がたった一人で走る機会などあるわけがないのだから、仮に運転操作に長けていてもそれだけで十分ということはない。同じところを走るにしても日によっては条件が異なるかも知れないし、本人の体調だって同じではないこともある。
  だから。同じ目的を持った人と競い合いながら運転することで、他人を意識することを養ってもらい、同時に自分の思い通りにならない環境でクルマを走らせることで、目的に対する意識を鮮明にすることを期待してスクールレースを開催している。
  どこを走っても同じような速さで走れる。他人と競り合いながらも目的から逆算して、その時に行うべき操作をはじき出す。その練習だ。これが充実期を豊かにする。むろん、運転意識の生長は運転操作のレベルを底上げする効果もある。


我先にとクルマに駆け寄り、

 ユイレーシングスクールが開催しているスクールレースの種類は3つ。YRSエンデューロ、YRSスプリント、YRSオーバルレースだ。今回はその中のYRSエンデューロの話。

  YRSエンデューロは130分の耐久レース。もっとも2001年の開始時には120分だったのだが、卒業生が目標をクリアしてしまったので難易度を上げたしだい。とは言うものの、この難題もクリアしてしまったのだから、まさに運転技術の向上に終わりはない。
  YRSエンデューロのルールはこうだ。レースはチェッカー優先の時間レース。決められた時間を走り切り、なおかつできるだけ遠くまで走った者が勝者になる。これは参加者全員に等しく、過給器つきのクルマもNAのクルマも大排気量車も同等に扱われる。
  つまり、どんなクルマに乗っていようと所定の時間が過ぎてチェッカーが振られた時にコントロールラインを通過できなければ、それまで大量のマージンを築いて独走していようと、周回数は少なくてもチェッカーを受けたクルマよりは上位にならない仕組み。
  そして、競争はコース上だけにしたいのと、ピットでの危険を排除するために、2分半のピットストップを3回義務付ける。ピットロードの制限速度は10キロ。だから、ピットインで順位を上げようとしても徒労に終わる仕組みになっている。
  耐久レースだからチーム参加が原則。当初は卒業生同志でチームを組んで参加することがほとんどだったが、耐久レースの走り方がわかってくると一人で走り切りたいという希望が続出。最近では半数以上のチームがソロエントリ。一人で130分を走り切ってしまう。


一瞬の静寂の後、

  2001年4月28日。第1回YRSエンデューロのその日。1周1キロちょっとの筑波サーキットコース1000のグリッドには7台のクルマが並ぶ。コースの反対側にはイグニッションキーを持ったドライバーが立っている。グリーンフラッグが振り下ろされるやいなや、ドライバーがクルマに駆け寄り、乗り込み、もどかしそうにシートベルトをしてエンジンをかけ、慌てふためくようにグリッドを離れていく。
  それから2時間近くが経過。トップを走るのは赤いロードスター。他のクルマを全て周回遅れにして余裕の走り。
  と、そのロードスターが最終コーナーでスローダウン。フィニッシュまで5分を切っている。137周目のできごと。ピット前のストレートにたどり着いたドライバーがピットクルーとなにやら話している。どうやらガス欠。

  チェッカーを受けなければ、ラップタイムは遅いもののコンスタントに走っている軽自動車のスバルヴィヴィオに追い越されてしまう。
  結局、ドライバーがクルマを押してコントロールラインをまたぎ、最下位になることはまぬがれる。


脱兎のごとくグリッドを後にし、

  時は移り2010年7月31日。ところは同じ筑波サーキットコース1000。この日、35回目のYRSエンデューロが開催された。参加したのは15台。6台がチームエントリで9台がソロエントリ。
  特別ルールが適用され135分の時間レースとして開催されたこのレースを制したのは、170周を走破したロードスター。2位には同じロードスターが169周で入り、同じ距離を走った性能で勝るS2000を押さえ込んだ。
  上位3台が2時間以上全開で走った末に僅差でフィニッシュしたこともレースを大いに盛り上げたが、それ以上に、レース時間が5分延長されたとは言え、1位のクルマが170周、約177キロを走り切ったことが注目された。


ライバルを牽制しながら、

  さて、2001年の137周と2010年の170周。この数字を少し詳しく見てみたい。
  2001年のレース時間は120分。1回3分のピットストップが3回義務付けられていたから、コース上にいた時間は実質111分。それで137周したので時間当たりの周回数は74周。2010年はレース時間が135分で2分半のピットストップが3回義務付けだったから、実際に走行していた時間が127.5分で時間当たり80周したことになる。
  74対80。距離にして時間当たり6キロ強遠くへ走ったことになる。しかも、2001年は燃料を使い切ってしまっていたから、それ以上遠くへ行けなかった。それに対し2010年は燃料タンクにまだガソリンが残っていたから、行こうと思えばまだ先まで走ることができた。
 
  この差はどこから来るのか。


少しでも優位に立とうとペダルが折れんばかりにスロットルを開け続ける。

 たかが6キロの差ではあるが、それが競争という極限状態でクルマを走らせていたら。
 
  速く走ろうとすると、人間は機械に頼りがちになる。速く走ろうと思えばむやみにスロットルを開け、短い時間で減速しようとし、クルマの都合など考えずに目標を達成しようとする。自分の能力ではないのにも関わらず、それが自分の分身のごとく振舞う。
  しかし、サーキットで耐久レースに参加して好成績を修めるというテーマを考えれば、間違いなく運転は合理的でなければならない。ガソリンしかり。タイヤ、ブレーキパッドしかり。クルマの機能を発揮させるために、それを高いレベルで保つためには理詰めのアプローチが必要になる。
  ユイレーシングスクールがモータースポーツ、そしてスポーツドライビングを『知的遊戯』と呼ぶゆえんだ。自動車レースは、決して肉弾戦ではない。


と言ってもプロのドライバーの話ではない。どこにでもいるオジサン、お兄さんが主役だ。

  2001年の第1戦の後。ユイレーシングスクールではYRSエンデューロ参加者に、どうすればより遠くに行けるか、その方法をアドバイスしてきた。時間はかかったが、純粋にクルマを使って楽しんでいる内に、彼らのドライビングポテンシャルは確実に向上した。
  伸長期と充実期を繰り返すことによって、クルマの性能に頼って走るのではなく、クルマの性能を制御しながら目的を達成する方法を身に付けた。
  間違いなく、彼らは市街地であろうと高速道路であろうと、あるいは峠道であろうと、必要最小限の消費で安全に目的を達成する術を知っている。運転操作と運転意識が融合した結果だ。

  第35回YRSエンデューロの優勝者が初めてユイレーシングスクールを受講した時、どうアドバイスしてもアンダーステアを出しながらコーナリングしていたのを思い出す。ドライビングスクールだけでなくスクールレースをやっていて良かったと思う瞬間である。
 
  あなたも少しばかり運転に興味を持ってはいかがですか。


トゥインゴにむらがる運転好きなオーバルレースの常連。詳細は次回。
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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第9回 速さと安全

  ユイレーシングスクールが主催するドライビングスクールでは、「今日は自分のイメージより少し速く走る努力をしてみて下さい」と言うことにしている。速く走ることを奨励している。
  もちろん、安全が確保できるクローズドコースで、なおかつ、クルマの動きを見ただけで運転している人がどんな操作をしているかがわかるインストラクターが目を光らせている環境での話。
 
  理由はクルマの運転理論は速く走らないと理解できない部分があるのと、速く走ることによって感じることがあるからだ。
  正確に言うと、速く走ることによって『クルマの挙動を拡大して観察する』ことができるからだ。
 
  クルマを思い通りに動かすためには、何をさておいても、クルマの動きがわかるようにならなければならないのだが、よくできた現在のクルマは、運転手が操作と挙動の因果関係を検証することが難しい、という事情がある。そこで速く走ろうとした時に、速く走れない原因をさがそうというわけだ。その原因こそクルマを動かす時にやってはならないことであり、その原因を取り除くことがクルマを安全に速く走らせることにつながるという仕組み。
 
  もちろん、無制限に速く走ってもらうわけではない。操作の習熟のために作ったカリキュラムの中で、インストラクターが一人ひとりの走りを観察しながらペースを上げていってもらう。決して無秩序に速く走ることを奨励しているわけではない。


YRSオーバルスクール上級編で全員集合。

  2月上旬。この日は過去にYRSオーバルスクールを受講したことのある人を対象に、さらなるドライビングポテンシャルを引き出すための特別カリキュラムを実施。
  通常のYRSオーバルスクールでは半径22m、直線60mのYRSオーバルFSWを運転が最も難しい『インベタ』のラインで走ってもらうのだが、上級編では半径22m、直線130m、幅員14mのYRSオーバルロンガーを使いアウトインアウトのラインで走る。1周400m強のコースでも到達速度は120キロになるから、エネルギーを制御する練習にはうってつけ。ほとんどのクルマが2速と3速を使うから、ブレーキングとターンインとシフトダウンを同時にこなすのが実に気持ちいい。


コース自体は単純だが。

  この日は特別カリキュラムのためにオーバルコースをアウトインアウトのラインで走ってもらったが、通常のオーバルスクールは1日中インベタ(イン側に置かれたパイロンに沿って)で走ってもらう。実は、このインベタで走るほうが難しい。
 
  さて、「今日はオーバルコースを走ります。自分のイメージより少し速く走る努力をしてみて下さい。もちろんできる範囲でかまいませんから」と言われた時、あなたはどうやってオーバルコースを速く走りますか?
 
  オーバルコースはレイアウトこそ単純だが、単純がゆえにクルマの3つの機能をきちんと引き出すことができなければ速くは走れない。ここで言う速さとはラップタイムのこと。1周にかかる時間。1周の平均速度の裏返しでもある。

  例えばYRSオーバルのような楕円形のコースでもいい。ある形をした周回路を走る場合、直線の後に控えるコーナーに進入する時には減速が必要になる。コーナーを回り終えれば加速することができるが、次のコーナーの手前では再び速度を落とさなければならない。その繰り返し。
  速度を上げるにはスロットルを全開にしている時間を長くすればいい。すばやく速度を落とすには急ブレーキをかければいい。速く走ろうとする時、そう考えるのは間違いではない。初めのうちは受講生のほとんどがそう考える。しかし、それだけででは速く走れないばかりかクルマのバランスを崩す可能性が高い。


どこに自分のクルマを持っていくかが難しい。

  少し考えればわかる。周回路を走る時、まず間違いなくストレートよりもコーナーの速度が遅い。速さの目安になるラップタイムは平均速度の裏返しだから、クルマが自由に加速できるストレートではなしに、いかにコーナーの速度を高く保つかが周回路の速さの鍵になる。
  なのに。速く走ろうとする時。人間はできるだけ長くスロットルを開け、短い時間で速度を落とし、コーナリング中もスロットルを開けようとする。
  しかし、それができる人はまずいないし、我々が乗っているクルマはそのような走りをするようには作られていない。そんな走りをする人は、自らクルマの動きを理解して運転していないと白状しているようなものだ。
 
  ストレートを思いきり加速するのはいい。ドライビングスクールでも「クルマをまっすぐにしてスロットルを床までドンと開けて下さい」と言う。ただし、コーナーが迫ってくるのにスロットルを開け続けているのは間違いだ。
  コーナー直前までスロットルを開けているということは、スロットルを閉じてからターンインまでの短い距離で強いブレーキをかけることになる。その時に何が起きるか。
  急ブレーキをかけることで、加速中にリアにかかっていた荷重がフロントに激しく移動する。前輪の荷重が増える。前輪のグリップが高まる。逆に後輪のグリップは低下している。そこへもってきて、コーナー直前の操作に慌ててステアリングを『バキッ』と切る。増えた荷重に苦しみながらも前輪は、コーナリングを開始しようとするものの、舵角が抵抗になってさらにフロントの荷重が増す。特にアウト側前輪は荷重のほとんどを担うことになるから、飽和状態をとうに過ぎているはずだ。

  秀逸なカリキュラムで行うユイレーシングスクールでは見かけないが、ターンイン直後にアンダーステアを出してコーナーを回れなかったり、ターンインするやいなやスピンするクルマがあると聞いたことがある。そんなクルマは、人間がクルマの都合などおかまいなしに操っているわけだ。
  しかし、当の本人は定められたコースを速く走ろうとしていたはずだ。それがスピンしてしまっては速さどころの話ではないではないか。


ターンインからリアがロールを初め、

  コーナリング中にスロットルを開けようとするのも、人間の勝手な思い込み。確かにコーナリング中にスロットルを開けることは速く走る上で必要なのだが、それには根拠が必要だ。
  コーナリング中のクルマのタイヤは、そのグリップのほとんどを遠心力に抵抗することに使っている。つまり、限りあるグリップが主に横方向に使われてしまっている。ただでさえ進行方向のグリップが不足気味のところにもってきて、速く走りたいからとスロットルを開けたら何が起きる。
  スロットルを開けると荷重がリアに移動する。必然。前輪のグリップは減る。開けたとたん、それまでかろうじて円弧を描いていた前輪も、減ったグリップにその舵角では遠心力に抗えずにアウト側に流れる。アンダーステアが発生する。
  速く走ろうとしているのに、アンダーステアを出して大回りするのもどうかと思うが、それよりもコーナリング中にスロットルを開ける気持ちになることのほうが問題だ。
  速く走ろうとして、仮にそのクルマの限界速度でコーナリングしていれば、まずスロットルを開ける気にはならない。わずかなスロットル操作でクルマが姿勢を乱すからだ。何気なくコーナリング中にスロットルを開けられるのは、その時の速度が限界速度よりずっと遅いからだ。
 
  急ブレーキで速度が落ち過ぎたのかどうかは別として、周回路を速く走ろうとしたのだから、行き当たりばったりで運転するのではなく、目標に向かって合理的なアプローチをするべきだと思うのだが。


フロントと同等のロールがリアに発生し、

  コーナリングの後半にスロットルを開けてアンダーステアを誘発してアウトにはらむ人はユイレーシングスクールでも見かける。ストレートが見え始めるとついつい加速を開始したくなる。その気持ちをわからなくはないが、コーナリング中のスロットル操作と同じで、前輪に舵角がついている限りクルマは自由に加速しない。速く走るためにスロットルを開けたいのなら、最初にするべきなのは、コーナリングの後半でステアリングを戻せるラインにまずクルマを乗せることだ。
  ステアリングを戻しただけ、つまり前輪がコーナリングの担当から解かれるほどにクルマは加速できる態勢にになる。
  タコメーターの針が踊っても、エンジン音が高まっても、コーナリング中のクルマは加速しない。速く走っているつもりでも、実車速は上っていない。
 
  自動車メーカーは、できるだけ特別なテクニックを必要とせずに運転できるようにクルマを作っている。誰でも高性能を享受できるように努力を続けている。しかし、それでも最後はクルマを運転する『その人』に全てを委ねなければならない。
  委ねられた人が、もしクルマの扱い方を知らなかったら。その人から運転する楽しさも、安全も、快適さも遠のいていく。


ステアリングを戻してロールを消すとコーナリングが完結する。

  日本では、速く走ることが一律に危険であると喧伝されている。いち時期など、大新聞ですらサーキットを走る人を暴走族と同じに扱っていた。しかし、速く走ることが危険なのではなく、やってはいけない操作を知らないことこそが危険なのだ、とユイレーシングスクールは主張する。
 
  免許証を持っている人全てがサーキット走行を体験することは不可能だろう。それでも、機会があれば、少しでも多くの人に速く走ることに挑戦してほしいと思う。少しだけ速く走ろうとするだけ、自分が気がつかなかったクルマの動きがわかるようになり、クルマを安定させて動かすためにどんな操作をしたらいいのかがわかる。もちろんキチンとしたアドバイスが受けられる環境での話。
 
  それだけでなく、速く走ろうとすることで、むしろ速さと人間の能力を超えたクルマに畏怖の念を抱くことができると思うのだが。


別の日に筑波サーキットで開催したドライビングスクールにやってきた兄弟。
Eさんはサーキットを走るのは初めて。それでも最後には「もっとずっと走っていたい。
自分のクルマがこんなに走るとは思っていなかった。
できるなら明日も走りたいぐらい」と、スポーツドライビングの虜に。

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  ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
  特に3月19/20日に開催するツーデースクールはクルマの動きを理解し、操作と挙動の因果関係を把握するための短期集中カリキュラムとして好評です。
   
■ 3月19、20日(土、日) YRSツーデースクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=2ds

◆ 4月22日(金) YRSドライビングスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

□ 4月24日(日) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第8回 温故致信

  今から30数年前の話なんて、興味がないかも知れないけれど。

  確か1977年ぐらいのことだったと思う。まだ、日本の道にターボチャージャーで過給された乗用車が走っていなかったころの話。
  大阪のある会社がアメリカからターボチャージャーのキットを輸入し、国産車用に転用して販売することになった。その試作品を搭載したスカイラインにドライバー誌の記事を書くために試乗した。もちろんターボチャージャドエンジンは初体験。ずいぶんと前のことだから詳しいことは覚えてないが。それでも、初めて体験したターボチャージャーの『底力』には大いに驚かされ、ますますクルマの運転が楽しくなったことが記憶の片隅に鮮明に残っている。

トゥインゴGTのターボチャージド1,148ccエンジン。くねる吸気パイプ。


ルーテシアRSの1,988ccNAエンジン。

  それはこんなことだった。

  「ターボチャージャーで加給されたレシプロエンジンが、加給されない、いわゆるナチュラルアスピレーションのレシプロエンジンより大きな馬力を発生することは情報として知っていた。排気ポートの下流にタービンを備え、排気ガスの圧力でタービンを回す。同軸上に設けられたコンプレッサーが空気を圧縮して吸気ポートに送り込む。結果として大量の空気が送り込まれることになり、それに見合った燃料が供給されればナチュラルアスピレーションのそれよりも大きな爆発圧力がシリンダー内で発生する。すなわち、ターボチャージャーを装着することで、エンジン本体の構造を大幅に改造することなく大きなパワーを得ることができる」。
  そんな予備知識があって、多分ノーマルのスカイラインよりもパワーが出ているんだろうな、ということは想像で来たが、では実際に大きくなったパワーが何をもたらすのかは未経験ゆえにわからなかった。

  試乗は一般道で行った。御殿場周辺だったはずだ。
  その会社の人からステアリングをまかされ、五感をスロットルペダルに集中して走り出す。レシプロエンジンという原動機は、電気モーターと異なり回転が上がるに連れてパワーが幾何級数的に大きくなるのが特徴で、それが人間の感性をくすぐるところがある。
  回転を上げないで走っている分にはふつうのスカイラインだったクルマが、加速中に少しだけスロットルを開ける時間をながくしたとたんにお尻が沈み込むような加速度をもたらす。2速で回すと手がつけられないような加速を見せる。しかも、3速でも、4速でも回転を上げるようにスロットルを開ければ、それまで感じたことのない頭が後に引っ張られるような加速度を感じる。
  ふつう、低い回転からスロットルを踏み込んでもナチュラリーアスピレーテッドエンジン(NAエンジン)は反応しない。エンジンの回転が上がって、空気を吸い込む量が増えないとだらしないところがある。

  ターボチャージャーをおごられていても、回転が低いとまだるっこしい部分はある。しかしスロットルを踏み込み始めてから、ちょっと辛抱すると突如としてモリモリとパワーが出てくる。これがタイムラグというやつか、と納得。スロットルの開け方いかんによって、その後に続くパワーの出方も異なる。それまでの大きくなったパワーを見てやろうという期待感が、どうすればエンジンの『ツキ』をよくすることができるかという興味に変わった。
  コツが、ガバッとスロットルを踏み込むのではなく、そろっと開けて待つ。回転が上がりだしたころ、探りながら開ける。リニアに反応するのを確かめたら、ドバッと開ける。燃費を考えなくてもいいのなら、ターボチャージャーの目を覚ます方法はこれだと思った。
  過給が始まってからのパワーは、もちろんスカイラインのものではなく、ふたまわり排気量の大きなエンジンを載せたような荒々しささえあるものだった。

  しかし、その試乗で最も感銘を受けたのはターボチャージドエンジンが見せる登坂での『底力』だった。絶対的なパワーが大きくなったことよりも、そのエンジンの『力の出し方』に心を打たれた。

  クルマがいかによくできた道具だとしても、坂を登る時にはそれまでより大きな駆動力がいる。駆動力の源がトルクだ。トルクが細いと坂道にさしかかると回転が落ちてしまう。するとシリンダーが混合気を吸い込む量がすくなくなるから、ますますトルクがやせてしまう。そこでギアを落としてエンジンの回転をあげ、シリンダーに活力剤を注入してしのぐことになる。ところが、ターボチャージドエンジンは、ギアを落とさなくても、一瞬のもたつきはあるものの、ガバッと開けずに少しずつタービンの回転が上昇するようにスロットルペダルを操作すれば、ギアを落とすでもなく、坂道を加速して登ってしまう。
  これには驚いた。パワーが何馬力アップしているとか、トルクの数値はこうなっていますとか言う前に、走行抵抗を受けた時のトルクの出方はNAエンジンでは味わえない開放感だった。
  平坦地や下り坂はストレスがないから、それほどターボチャージャーの恩恵を感じることはない。単に「パワーがあるじゃない」という感じだ。NAエンジンもエンジン回転が上がりやすい状況であればそれなりに加速する。ところが、ターボチャージドエンジンはタイムラグさえ味方につけてしまえば、登坂でさえスロットルを戻さなくてはならないほどキチンと加速する。むしろ負荷がかかっているほうが「力強く」感じる。
  当時の記事が残っていれば書いてあるはずだ。ターボチャージャーの本質はパワーアップとか数値的なことはもちろんだが、エンジンの性格を変えてしまうところにある、と。
  そして、これは書いたかどうか忘れたが、ターボチャージドエンジンを搭載したクルマに乗る時はスロットルコントロールをより繊細にする必要がある。スロットルを開ける時は、常に「戻す」ことを前提にスロットルを開けるようにするべきだと。

  トゥインゴGTのエンジンのことを書こうとあれこれ考えていたら、結局、自分自身のターボチャージドエンジン原体験にいきついてしまった。
  思うに、この時にスロットルをオン/オフ的に操作するのでは、エンジンの特性によってはそぐわない場合があるということに気がついた。加給されたエンジンをコントロールするには、壁についている電灯をつけるオンオフスイッチではなく、ラジオのボリュウムコントロールを回して音を大きくしたり小さくしたりするような、連続的で間断のないスロットル操作が求められることを学習した。おそらく、このことは今に続く自分のドライビングポテンシャルの向上を大いに助けてくれたはずだ。


トゥインゴ3兄弟のエンジン性能曲線。どれも個性にあふれる。

  ドライビングスクールの同乗走行で実に様々なクルマに乗る。軽自動車からSUV。レース仕様に武装したポルシェGT3まで、いろいろなエンジン特性のクルマに乗る。しかし、同乗走行はお手本を示すのが目的だから、走りながらの説明に忙しいこともあり、とりあえず走ってしまうのでそれぞれの性格まで正確に覚えていることは少ない。
  しかし今回、トゥインゴGTがやってきてじっくりと付き合うようになった。そこはそれ、長い付き合いになるのだから相手の性格も知たくなるというもの。
  そこで、ルノー・ジャポンに頼んでカタログを送ってもらった。トゥインゴ3兄弟と兄貴分のルーテシアRSのだ。ついでに最近発表されたばかりのメガーヌRSのカタログも送ってもらった。

  トゥインゴ3兄弟のエンジンは、それぞれ1,000ccNA、1,200ccターボ、1,600ccNA。最大出力はこの順番に75、100、134馬力。最大トルクは同じく、10.9、14.8、16.3Kgm。それぞれ数値は異なるが、クルマを押し出すトルクの出方が違うのがわかる。ちなみにそれぞれの車重は、980、1、040、1,120Kg。(数字は全てカタログ値)

  パワーもトルクも最も小さいトゥインゴは、小さなエンジンをブンブン回してクルマを活発に走らせるのが向いているかも知れない。NAエンジンだからスロットルレスポンスも素直なはずだ。
  エンジンが上まで回るトゥインゴRSは、回るけれどもトルクの山が険しいのでこまめにシフトしてエンジン回転に意識すると運転が楽しいかも知れない。
  エンジンが2,000回転も回っていれば最大トルクの9割がたを発生するトゥインゴGTは、タコメーターを見ずに加速度を感じながら、できるだけ低い回転でシフトアップするとターボチャージドエンジンの快感を覚えることができるかも知れない。

  どんなクルマにもそれぞれの性格があって、それぞれの味付けがなされている。目的に応じた使い方ができれば、クルマという道具を使いこなすことができれば、パワーがあろうとなかろうと、それは問題ではない。この、エンジン性能に結構ドラスティックな違いがある3モデルが用意されたトゥインゴは、どこか、将来のユーザーに対して「あなたはどれをお選びになりますか?それはどんな理由からですか?」なんて聞いてくれているようで心地よい。

  で、3兄弟の中で唯一過給されているトゥインゴGT。カタログを見て思ったのだが、トラクションコントロールを解除できなくて正解だと確信を致した。
  排気量が小さいから絶対的なトルクが小さいとは言え、どんなところからでもクルマを加速させることができるトルク特性だから、間違って開けてはならない場面でスロットルを開けてしまうかも知れない。確信犯的にそうした場合でも、トラクションコントロールの介入がなければ、ひょっとすると操縦性を大きく変えてしまう可能性もある。
  我々がクルマを使う場合、ずっと加速しっぱなしという状況はまずないわけで、加速の後には減速がある。トルクがあり余っていて加速のいいクルマは、少しスロットルを開けている時間が長いだけで内包するエネルギーを増加させる。速度の上昇に対して二乗で、クルマは止まらない、曲がらない道具に変貌する。走行中のクルマが最も安定するのは加速も減速もしていない時だから、もしスロットルを戻すのが遅れて加速の直後に減速という事態になれば、クルマがバランスを崩す可能性が高い。
  うん。やはり、トゥインゴGTには解除できないトラクションコントロールがふさわしい。


ルーテシアRSの1,988ccNAエンジンとメガーヌRSの1,988ccターボチャージドエンジンの性能曲線。

  ターボチャージドエンジンと言えば、今度発表されたメガーヌRSにも搭載されている。魅力的なクルマなので、ぜひオーナーになる方はトルク特性を意識しながら運転してみてほしい。より快適にメガーヌRSを走らせられるはずだ。

  これはターボエンジンに限ったことではないが、スロットルの開け方にちょっとだけ注意を払ってみてはどうだろう。
  右足のかかとをしっかり床につけて、靴の中で足の指を開くようにして、ふくらはぎが緊張する感じでつま先だけを動かしてみる。ベタッとペダルに足を乗せているよりも、自分の意思がダイレクトにスロットルに伝わるような気がするはずだ。
  もちろん、運転中いつもそうしているとくたびれてしまうから、時々やってみればいいし、峠道を走る時とかある条件の時だけでもかまわない。慣れてくると意識しなくてもペダルの操作がこなれてくる。
 
  そして、ターボチャージャーで過給されたクルマに乗る時は、戻すタイミングを間違えないようにスロットルを開けてほしい。よくしつけられた最近のエンジンは、昔みたいな『ドッカンターボ』ではない。しかし、人間の生理で計るのが難しいほどに加速する場合があることを覚えておいておきたい。「確信のもてる範囲」でスロットルをコントロールするのが粋というものだ。


半年ぶりの自宅。いつもの405(フォーオーファイブ)は、
車間距離もそこそこに80マイル/時(120Km/h)で流れる。
速度を出すと危険?車間距離をとらないと危険?

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  ユイレーシングスクールでは2月、3月に以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
  特に3月19/20日に開催するツーデースクールはクルマの動きを理解し、操作と挙動の因果関係を把握するための短期集中カリキュラムとして好評です。
   
■ 2月20日(日)YRSドライビングワークショップ FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=dwf

◆ 2月24日(木) YRSドライビングスクール 筑波
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=tds

■ 3月4日(金) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

■ 3月19、20日(土、日) YRSツーデースクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=2ds
□クルマはよくできた道具だから、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさんです。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/


第7回 体力測定 その2

  ユイレーシングスクールのドライビングスクールは2月から始まる。その前に、そのうち受講生も操るだろうトゥインゴGTに対する理解度を深めるため(と理由をつけて)2回目の体力測定に連れ出した。
  今度の舞台は、F1グランプリも開催されたことのある富士スピードウエイレーシングコース。先日の筑波サーキットコース1000では基本的な操縦性を確認することが目的だったが、今回は、まだ本来の力ではないのを承知で、動力性能と制動性能を確認することをテーマとした。
  最終コーナーを立ち上がって1コーナーに行くまでのストレートが1.5kmもある世界屈指のハイスピードサーキット。小さなトゥインゴGTがどんなたち振る舞いをするか、ターボをおごられているとは言え、1,200ccの小さなエンジンを載せたかわいらしいホットハッチがどんなポテンシャルを秘めているか、ワクワクしながら、快晴だけれど空気がとても冷たい富士スピードウエイに乗り込んだ。


ゲートをくぐって坂を上っていくと。なんと、絵に描いたような富士山がお出迎え。

  今回はもうひとつ大事なテーマも抱えていた。
  実は、ルノー京都CADONOでトゥインゴGTを受け取った時にトラクションコントロールが解除できないことがわかった。つまり、走らせている間はずっとトラクションコントロールのお世話になることになる。この、常に介入しているトゥインゴGTのトラクションコントロールがどうしつけられているか確認することも、5速全開のコーナーのある富士スピードウエイのレーシングコースに繰り出した理由のひとつ。
  
  ご承知の通り、トラクションコントロールとはある条件下では運転手がスロットルを開けても、開けた分のパワーが駆動輪に伝わらないように制御する装置だ。その時に駆動力がかかると、クルマのバランスを崩す可能性があるとクルマ自身が判断して、スロットルペダルと吸気装置の関連を絶つ。駆動輪にそれ以上の駆動力を与えないか、場合によっては駆動力を減らし、それによって、クルマが思いもよらない動き(これはほとんどの場合危険につながる動きなのだが)をしないようにコントロールしてくれる装置だ。
 
  ここではトラクションコントロールの是非を問うつもりはないし、功罪を語るつもりもない。日本でも遅まきながら数年後には全ての乗用車に備えなければならない装置なのだから、不確かな人間がクルマという能力拡大機械を操る時には必要だと世の中は判断しているのだろう。
  いずれにしろ、  トラクションコントロールが働くということは、それが不注意でそうなったのか、確信犯的にそうしたのかは別として、運転手の意思がクルマに伝わらない瞬間がおとずれる可能性があるということは、クルマを運転する人全てが意識しておくべきだと思う。


富士山は無条件にいい。特に冬の姿はステキ。

  しかし、クルマの運転を教える立場からすると、トラクションコントロールをもろ手を挙げて歓迎するわけにはいかない面もある。  ABSブレーキもそうなのだが、それらのセーフティデバイスが介入することを前提とした運転をする人がいることだ。クルマが運転手のミスを補ってくれるからと、およそ理論的とは言えない運転をしたり、介入することを利用してサーキットを速く走ろうとする。
  クルマの楽しみ方という面からすれば、それを否定することはできないのかも知れないが、『セーフティデバイスに頼らなくてもすむドライビングポテンシャルを身に付けて下さい』と言っている側としては、「ちょっとなぁ」なのである。
 
  幸いなことに、ユイレーシングスクールに来てくれる人達はクルマも自分も、そしてクルマの操り方もとても大切にしてくれる。お行儀の悪い人はいないし、むしろ、もう少し積極的にクルマを走らせてほしいと思う人の割り合いが高い。
  そんなドライビングスクールだが、トラクションコントロールが装着されているクルマで、それが解除できる場合には解除して練習をしてもらう。クルマを思い通りに動かすコツを習いに来ているわけで、そこはそれ、「機械に頼らなくてもクルマのバランスを崩さないような操作を身につけて下さい」と、なかば強制的にトラクションコントロールを切ってもらうことにしている。
 
  クローズドコースとは言え、トラクションコントロールを解除して走らせて危なくないのか、って声があるかも知れない。それだったらユイレーシングスクールには行かない、という人も現れそうだ。しかしご安心を。
  ユイレーシングスクールのカリキュラムではクルマを限界近くで走らせることもあるが、だからといって絶対的な速度が高いわけではない。クルマの特性を考えて、速くなくても運転手が失敗しやすいようなコースを設定しているし、クルマの挙動を見れば何を考えながら走っているかがわかる。全てを把握した環境で練習するのだから、危ないことはない。

  トラクションコントロールを解除して走ってもらうのにはふたつの理由がある。
  ひとつは、当然のことながら、トラクションコントロールに頼らなくてもクルマを速く走らせる方法、それはすなわちクルマをどんな時にもどんな状態でもクルマをコントロールすることにつながるのだが、その方法を学んでもらうこと。
  もうひとつは、自分の意思でトラクションコントロールを解除することで、『ドライビングをミスっても、もうクルマは助けてくれない』という意識を持ってもらうことだ。
 
  「運転中は誰も助けてくれません。どうすれば安全に運転できるか、自分で決めて下さい。自分で無理だと思う速さで走る必要はありません。他人と比較する必要もありません。どんな速度で走るか、いつスロットルを開けるか、いつブレーキをかけるか、自分が確信を持てる範囲から始めて下さい。」と走行前に話すことにしている。
  もちろん、最後に「いざとなればセーフティデバイスに頼ろう、なんてヨコシマなことは考えないように」、とつけ加えるのは忘れない。
  最初は躊躇していた人も、少し走ればその環境に慣れる。人間の学習能力は偉大だ。最後には、『トラクションコントロールを解除しないで走っても、トラクションコントロールが介入しない運転ができるようになる。トラクションコントロールがついているのを忘れるほどに』。すなわち、ある程度の練習は必要だが、人間がミスを犯さなくなる。機械に頼らずに、人間が自立してクルマを運転することができるようになる。


ピットにて。とにかく寒かった。

  話が横道にそれてしまった。
  トゥインゴGTのトラクションコントロールは、できれば解除した時の走りを体験してみたかったのだが、結論としては解除できないほうがいいかな、と思い始めている。
  小さい割に低回転からトルクの盛り上がるトゥインゴGTは、FFということもあって高速コーナーのスロットルオンオフに鈍感ではない。多分、トラクションコントロールではステアリング角度も拾って制御しているのだと思うのだが、万が一、ステアリングを戻さないでスロットルを全開にする人がいたらと考えると、運転手が解除したくてもできないほうがいいかも知れないし、それで不都合があったわけでもない。


陽がかげり、たたずむトゥインゴGT。

  結局、つごう1時間の走行をトゥインゴGTはこともなげにこなしてみせた。全くのノーマル。空気圧だけ5%あげただけ。
  最終コーナーの立ち上がりのできによって、1コーナーのブレーキング手前の到達速度はかなり違ったが、最も速かったのはメーター読みで174キロ。この速度でも外乱を受けずに、神経質ではなく直進性を保っていたシャーシは◎。
  5速170Km/hから2速60km/hまでの減速を25回繰り返しても、フェードもせず悲鳴を上げなかったブレーキに◎。
  3速全開の100R。小さな身体をひねりながら、4本のタイヤで路面をしっかりつかみ、排気量の大きいクルマとの差をつめることができたサスペンションに◎。
  いいことばかりのようだが、気になった点がなかっただけのこと。宣伝をするわけではないが、ドライビングインストラクターの視点からすると、道具としてのトゥインゴGTの完成度は極めて高いと見た。
  ちなみに、ラップタイムはベストで2分35秒ほど。ごくふつうのタイヤを履いた小さなホットハッチとしては悪くない。


頑張った小さなエンジン。まだオイル交換はシ・テ・ナ・イ。
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  ユイレーシングスクールでは2月、3月に以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
  特に3月19/20日に開催するツーデースクールはクルマの動きを理解し、操作と挙動の因果関係を把握するための短期集中カリキュラムとして好評です。
   
■ 2月20日(日)YRSドライビングワークショップ FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=dwf

◆ 2月24日(木) YRSドライビングスクール 筑波
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=tds

■ 3月4日(金) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

■ 3月19、20日(土、日) YRSツーデースクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=2ds


第6回 道具を使う

  『包丁という道具があります。モノを切るための道具です。道具としては、包丁を持った人間が直接モノにあてて切るという、極めて単純かつ原始的な機能を備えています。ですがこの包丁にも、これからお話するクルマの運転同様に、理にかなった使い方があります。』
  ドライビングスクールの座学で、そんな話をすることがある。


   
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ほう‐ちょう〔ハウチヤウ〕【包丁/×庖丁】
1 料理に使用する刃物。出刃(でば)包丁・刺身(さしみ)包丁・薄刃包丁などがある。包丁刀。
2 一般に薄刃の刃物の称。畳包丁・紙切り包丁・裁縫用の裁ち包丁など。
3 料理をすること。料理。割烹(かっぽう)。「―始め」
「折ふし御坊は、見事なる鯉を―して御座ある」〈咄・きのふはけふ・上〉
[出典:デジタル大辞泉]
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  さて。みなさんは包丁をどのようにして使うだろうか。包丁を引くか、押すか。どちらかに動かしながら切るのではないだろうか。お刺身のような柔らかいモノを切る時には、ゆっくりと引きながら切るのではないだろうか。
  上から下に切り下ろすよりも、引くか押すか、包丁を動かしながら切る方が切りやすい。経験的にそうしているのかも知れないし、そうすることを誰かに教わったのかも知れない。板前さんの真似をしているのかも知れないが、包丁の使い方としては、それが正解だ。
 
  ところが、なぜそうすると切りやすいのか、その理由を知っている人は意外に少ない。そうすることに疑問を抱いている人はもっと少ない。それは、包丁を使うことが我々の日常の中でごく当たり前の行為になっているからに他ならない。なぜそうするのか理屈を知らなくてもとりあえず包丁を使うことはできるし、知る必要はないと言えなくもない。

  しかし一方で、包丁を動かしながら切ると切りやすい理由を知っていれば、どんな場合でも間違った使い方をしなくてすむのではないか。包丁に対する興味が増すかも知れない。包丁を使うことがもっと楽しくなるかも知れない。包丁の使い方をもっと研究したくなるかも知れない。
 
  という訳で、高校の時に先生に聞いたことの受け売りではあるが、包丁を動かしながら切ると切りやすい理由。
  『包丁を動かしながら切る。つまりモノに対して真下に切り下ろすのではなく、モノに対して包丁が斜めに入るように切ることによって、包丁の刃の厚みを薄くしている』のだ。
  もちろん包丁の刃が現実に薄くなるわけではない。が、動かすことによって実際にモノを切る刃の角度を小さくすることはできる。

 包丁の刃を模した三角柱。実際には刃と直角をなすのが刃の厚みだが、同じ刃でも斜めに計れば角度は小さくなる。

 
  モノを切るにはカミソリのようにごく薄い刃のほうが切りやすい。モノの形も崩れにくい。しかし、包丁がカミソリのようであったならば、刃こぼれをするかも知れないし、耐久性も期待できない。そこで、刃が薄くはない包丁を動かすことで、「人為的に刃の薄い包丁でモノを切っている」、これが包丁を動かす理由にあたる。


 
 時間に余裕のある人は実際に体験してみてほしい。
  りんごを8等分する。くし型になったひとかけらが45度の刃をした包丁だと考える。モノに対して真っ直ぐに切り下ろした場合を想定して、りんごの切れ目に直角に切ってみてほしい。どうだろう。断面は変わらず45度をしているはずだ。
  今度は切れ目に対してできるだけ平行に近くなるように切り、その断面を見てほしい。どうだろう。先ほどより角度が小さくなっているずだ。切れ目に対して浅い角度で切れば切るほど、断面が表す「包丁の刃の厚み」も薄くなる。

  おわかりだろう。なぜ刺身包丁が長いのか。柔らかなお刺身の形を崩さずに切るために、できるだけ浅い角度で、しかも一回のストロークで切るために長めに作られている。
  逆に、出刃包丁は短くて刃に厚みがある。出刃包丁はモノを切るというよりくさびを打ち込むように分断するためのものだから、それなりの形をしている。

  包丁は、それが高級品でなくても、よく研がれていなくても、とりあえずはモノを切る時に引くなり、押すなりして『包丁の長さ』で切ることを意識すれば、その機能を最大限に発揮させることができる。
  道具は、その機能を発揮するための工夫がされている。その機能を引き出すのは使う人の役割だ。

 
 クルマの運転も同様だ。包丁と異なりクルマは複雑な道具ではある。使い方はそれほど難しくはないとも言えるし、ある条件下ではかなり難しいとも言える。どう思うかは、使う人がクルマに対してどういう意識を持っているかで異なる。

  クルマの機能は三つ。加速と減速と旋回。三つしかないとも言える。これらを組み合わせて我々はクルマを目的に応じて走らせている。
  しかし、加速と言ってもただスロットルを開ければいいかというと、そうではない場合がある。ブレーキにしても、どんな時にも同じように踏めばいいというわけではない。ステアリングも、ただ回せばいいというものではない。目的によって回し方は異なる。

  最近の、よくできたクルマは運転することを意識しないで、まるで家電製品を扱うような感覚で走らせることもできる。ある意味では運転という行為から人間が解放されるのだから、道具が進化する方向としては否定できない。
  しかし、『スロットル、ブレーキ、ステアリングをどうやって操作すればクルマの機能を発揮させられるか』ということを知れば、サーキットで速く走りたい人はより速く、安全運転を心がけたい人はより安全にクルマを動かすことができるのも事実だ。
  思い通りにクルマを動かす。その扱い方を知ってほしくてユイレーシングスクールは10年を過ごしてきた。これからも、少しでも多くの人に「なぜそうするとクルマが思い通りに走るのか」を知ってもらうために2巡目の10年を走っている。
 
  クルマは高度な機能が詰め込まれた道具だから、運転は包丁を使うほど単純な作業ではない。しかし、元々が人間の能力を拡大してくれる道具でもあるわけで、間違った使い方は避けたほうがいい。自身のためにも周囲のためにも、自分の運転と一度は向き合ってみる価値はあると思うのだが。いかが。


兄貴分にガレージを占拠され、あわれ雪の下。
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  ユイレーシングスクールでは2月、3月に以下のドライビングスクールを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
   
■ 2月20日(日)YRSドライビングワークショップ FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=dwf

◆ 2月24日(木) YRSドライビングスクール 筑波
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=tds

■ 3月4日(金) YRSオーバルスクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf

■ 3月19、20日(土、日) YRSツーデースクール FSW
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=2ds


第5回 体力測定に挑戦

 オドメーターがそろそろ3000を刻もうとするある日。トゥインゴGTをサーキットに連れ出した。走行距離から言って「まだ早いかな」とは思いつつ、赤いコンパクトハッチの実力をどうしても試したくなって1回目の体力測定に挑んでみた。
 

走行前に記念撮影。遠くに1コーナーがかすむ。

 舞台は筑波サーキットのコース1000。ここは、2000年からユイレーシングスクールがドライビングスクールに使用しているコース。全長は1,039メートルとサーキットとしては短い部類に属するが、コース幅は全域に渡って11メートルと広く、奥の深いコーナーがほとんどなのでドライビングポテンシャルを向上させるにはうってつけのコース。

 茨城県下妻市にある筑波サーキットにはコース2000と呼ばれる全長2,045メートルのコースもあるが、『クルマの挙動を知る』、『操作と挙動の因果関係を検証する』、『クルマを操るコツを学ぶ』にはコース1000のほうが適している。
 理由は明快だ。コース1000はコーナーの半径に対するコース幅が広いので、とりあえずどこを走ってもそこそこの速さで走ることはできる。別の見方をすれば、それだけ安全でもある。
 しかし、例えば足を(サスペンションを)硬めただけのロードスターで1周43秒で走ろうとすると、広いコースの中で走行ラインを絞り込み、かつクルマを前へ前へと進めなければならなくなる。
 つまり、手軽に楽しむことのできるコースであると同時に、速く走るためにはドライビングテクニックはもちろん、冷静に状況を判断する能力を養うことができる。実際、コース1000のYRSドライビングスクールでサーキットデビューを果し毎日の運転を楽しんでいる人もいれば、YRSドライビングスクールで腕を磨いて本格的なレースに挑戦している人もいる。

・筑波サーキット コース1000レイアウト
http://www.avoc.com/renault/t1ck_layout.jpg

 ストレートエンドでは速いクルマでも時速150キロほどしか出ないコースだが、サーキットに変りはなく、街中や高速道路を走るのとは違い、それなりに車を動かす方法を身につけている必用がある。
 クルマを運転する人全てがサーキット走行を経験することは不可能に違いないが、サーキットは一部の特別な人たちのものでもなく、モータースポーツに興味のない人にも運転の楽しさやクルマを動かす時の決まりごとを教えてくれる場所だから、できるだけたくさんの人がサーキットに興味を持ってもらえると嬉しい。
 日本では「スピードを出すと危険」というイメージが定着しているから、サーキットを走っていると言うと眉をひそめる人が多いがそんなことはない。公道でもサーキットでも運転という操作自体に変わりない。むしろ、運転の奥深さを知るためにもクルマの限界で走ることのできるサーキットの存在は大きい。


兄弟も参加していた。

  1周1キロメートルのコースには設計上のコーナーが14個ある。しかもコース幅が広いので、初めてコース1000を走る時にはどこをどう走っていいかわかりにくい。控えめな速度で走っていると、なおさら走行ラインを見つけることが難しい。なにしろコース幅11メートルというのは一般道の4車線近くの広さだ。そこを自由に走ってもかまわないと言われても、クルマをどこに向けたらいいのか困惑して当然。実際には5回しかコーナリングしないのだから、もっともな話だ。
  しかし、速く走ろうとするとラインが見えてくる。そんなもんだ。
 
  速く走ろうとする。1周のラップタイムを短縮しようとすると、コーナーもストレートもスロットル全開で走ればいいと考えがちだ。ところがサーキットと言えどもコーナーの手前では減速をしなければならないし、コーナリング中はスロットルを全開にすることができない場合が多い。
 
  しかしテーマを絞り、速く走ろうとすると、必然的にクルマの性能を引き出すことを優先しなければならなくなる。速さを実現するのはクルマだからだ。クルマの性能を引き出すためには、4本のタイヤを常に路面に押し付けておかなければならない。そのためには、いかなる場面でもクルマが安定するように走らなければならない。この思想が理解できれば、サーキット走行は格段に楽しくなるし、速く走れもする。
  走行中のクルマが最も安定しているのは直進状態だ。しかしコーナリングをする必要もある。では、コーナリング中にはどうすればいいのか。そこから導き出されたのがアウトインアウトの走行ラインだ。コーナーの手前でコーナーのアウト側により、コーナーの中でコーナーの中心に近づき、コーナーの出口でコーナーのアウト側にはらむ。これを一筆書きのような走りで実践できれば、コーナリング中のクルマを安定させることができる。つまり、アウトインアウトとはコーナーの直線化という概念から生まれたテクニックなのだ。
  かくして、走る前にコース図とにらめっこしてクルマが最も安定するラインを見つけることができれば、実際に走る段になってアタフタする必要はない。


サーキット走行後のタイヤ。決してサーキット向きではないが頑張ってくれた。

  サーキットを走ると言っても、プロドライバーのように速く走る必要はない。その人の経験と、その人のクルマの速さに応じて『それなりの速さ』で走ればいい。
  サーキットを走るのだからと自分の実力以上の速さを追いかける人がいるが、あれはもったいない。サーキットで遅いと恥ずかしいと言う人がいるが、それももったいない。
  サーキットをたった一人で走ることはまれだから、他人への配慮を忘れないのなら誰もが自分のペースで走るべきだ。


プラスティック製のレンズカバーには必要ないが、昔は飛散防止のためにテープを貼るのが決まりだった。ちょっと雰囲気。

 
 コースに慣れてきたら、少しだけペースを上げてみる。冷静に観察すると、ペースを上げるとクルマが落ちつかない場面に出くわすはずだ。クルマが不安定になるのは、タイヤが路面をつかむ力が弱まった時だ。それが1本のタイヤで起きたのか、それとも2本のタイヤでか。なぜそうなったのか。
  間違いなく、そうなったのはペースを上げた時の操作をクルマが受け付けてくれなかったからだ。その時の操作を思い出し、ペースを上げる時に調整すべき点を想像することができれば、それだけでドライビングポテンシャルは向上する。

  クルマの運転は人間本位に行わないほうがいい。クルマが意図したように動いてくれなければ目的を達成することはできない。クルマを思い通りに動かしたければ、クルマが走行中にどんな状況にあるか感じ取ることが大切だ。クルマは常にどうなっているかを語り続けている。あとは貴方が聞く耳を持っているかどうか、それが運転のうまさと楽しさへの入口だ。


全長3,600mm。およそサーキットに似つかわしくないトゥインゴも元気いっぱい。

  体力測定の結果はというと、エンジンをいたわりながら走ったコース1000のラップタイムが49秒8。決して遅くない。それよりも、あらゆる状況でリアがブレークしなかったのは特筆ものだ。クルマ自体の安定性が高い証拠。
  トラクションコントロールをオフにして走れなかったのが残念だが、それもトゥインゴGTの欠点ではない。(トラクションコントロールについては別項で)
  小さなホットハッチは筑波下ろしが吹きすさぶコース1000を元気に走り回った。次回の体力測定ではもう少し速さを見つけることができるはずだ。

・YRSオリジナルビデオ 筑波サーキット コース1000
http://www.avoc.com/5media/video/movie.php?t=go_racing

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  ユイレーシングスクールではウエブサイトにドライビング理論を学ぶための教科書を公開しています。クルマを安全に走らせたい、クルマの運転を楽しみたいと思っている方にお勧めです。

・ユイレーシングスクール教科書
http://www.avoc.com/5media/textbook/textbook.php?page=0