トム ヨシダブログ


第152回 古きを愛でる

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ウン 可愛い

富士スピードウエイでスクールがある時に泊まるホテルの近くに、いつも足を運ぶお魚がおいしい赤提灯がある。遠くないのでホテルから歩いて行くのだけれど、その道すがら、ある駐車場にきれいな色の赤いクルマが止まっている。

最初に目についた時。古いルノーだということは一目でわかったけど、なんというクルマかとっさには思い出せなかった。
以前、どこかで目にした記憶もあるし、その昔、これでもかというほどイン側のサスペンションを伸ばし、何十台もの「このクルマ」が倒れんばかりの姿勢でコーナリングしているレース中の写真も見たことがある。こういうのイイネ、とにんまりした記憶はあるものの、当時は車名までは気をとめていなかったようだ。

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時を刻んだエンブレム
これは勲章でしょう

ある日、開店までに時間があったのでクルマの周りをグルリ。外観より実際の車齢に近いようなエンブレムに「RENAULT 4 GTL」とあった。

少しばかりいい気持ちになってからホテルに戻り、パソコンで検索してみてわかったのはフランス語ではカトルと呼ぶこと。なんと1961年から1992年までの長きにわたって作られたこと。ハッチバックを備えた最初の乗用車とされていること等だった。

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キャンバストップのルーフラック付き
オ・シ・ャ・レ

この可愛いカトルが何年式なのかわからないけど、決して若くはないはず。何歳ぐらいなのだろう。
オーナーは男性なのか女性なのかとか、夕方駐車場にあるということはふだんの足には使わず休日専用なのかなとか、部品はまだ手に入るのだろうかとか、あれこれ想像したり心配したり。

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今風のデザインじゃないけど存在感ありあり
今時のクルマよりクルマっぽいのが ◎

ユイレーシングスクールの卒業生にも知人にも古いクルマを大切に乗っている人がいる。たいてい、『そのクルマ』 だから所有したいという信念の持ち主だ。
『そのクルマ』 が、今時のクルマに比べて動力性能が劣っていても、便利ではなくても、維持するのが大変であっても、『そのクルマ』 がその人の自己表現の手段であって、『そのクルマ』 がその人の生活を豊かにしてくれるという確固たる根拠を持っている人達だ。

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検索した写真はどれもドアミラーだから最初からスタンダードだったのだろうか
だとしたら時代の先取り?

昔から、クルマそのものよりクルマの機能を優先してクルマを選んできた。だから個体に固執することはほとんどなかった。いつも動力性能と使い勝手だけが選択の基準だった。もちろん絶対的な性能とかではなく、自分の理想に照らし合わせてのこと。それ自体間違いではないと思うのだけど、運転することしにか執着してこなかった立場からすると、『そのクルマ』を見つけられた人に対していつも尊敬の念を感じるし、維持する努力を惜しまない彼らを応援したい気持ちになる。

ところが日本では、古いクルマが生き永らえるのがますます厳しくなるようだ。アメリカのように、古いクルマには通常の登録料より安いヒストリカルライセンスプレートを発行することが難しくても、休日だけに適用される安い保険を販売することが無理であっても、少なくとも現代のクルマと同等の努力で『そのクルマ』達を使い続けることができなけば成熟したクルマ社会とは言えない。

ないものねだり、であることはわかっているものの、なまじクルマを所有して使うことに関しては恵まれているアメリカのシステムを30年も体験してきたから、なんで日本もその極めて合理的なやり方を真似をしないのかなといつも疑問に思う。だから、なおさらに『そのクルマ』に出会った人達と『そのクルマ』達に拍手を送りたくなる。

この赤いカトルもそうだけど、クルマ好きの人がいつまでもクルマ好きでいてくれると嬉しいのだけれど。


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この日は生の大トロがあったので中トロ、赤身と食べ比べ
シ・ア・ワ・セ

最初の出会いからこのかた、美味しいお魚を食べに駐車場の横を通る時、「ヨッ、元気?」と声をかけてから赤提灯に急ぐことにしている。


第151回 人の速さとクルマの速さ

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YRSストリートの一番奥のコーナーを抜けると富士山がお出迎え

ドライビングスクールを続けているとたくさんの嬉しいことや楽しいことに出会う。毎回なにかしら心に残るシーンがあるものだけど、先日のYRSドライビングワークアウトでもそんな時間があった。

サーキットでなくても同時に複数のクルマが走るユイレーシングスクールのオーバルスクールやドライビングワークアウトでは、時として追いかけっこが始ることがある。競争するのがドライビングスクールの目的ではないけれど、一方では運転が上手くなっていく過程で他人と競うことが大切な場合もある。

今回追いかけっこをしていたのはこのふたりだけではなかったけれど、ブログに登場してもらうのはポルシェ911に乗るNさんとBRZに乗るKさん。
ふたりともユイレーシングスクールに足しげく通ってくれるいわば常連。二人とも思うところがあってYRSドライビングワークアウトに参加してくれた。

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1速に落としたくなるようなヘアピンを我慢してストレートの速さにつなげる
※写真は慣熟走行

YRSドライビングワークアウトを開催するのは広大な駐車場に作った1周840メートルの俗称YRSストリート。昨年の春、夜な夜な水割りを片手に考えに考え抜いた【ここをマスターしたら運転が上手くなる】というレイアウト。

1日の始まりは何のアドバイスもなしに参加者にコースを走ってもらうのだけど、初めての人はストレートを下って行くと正面に立ちふさがるガードレールに驚く。3速からフルブレーキングで2速に落とし、このコースで最もタイムをかせげるキンクに続く大事な「下のコーナー」を回る時、いやでも目に入るのだから。

それでも、たっぷりと時間をとったスレッショールドブレーキングの練習が終わるとガードレールが不安ではなくなって、参加者は徐々にペースを上げていく。ブレーキングのコツを覚えるとイニシャルで瞬時に速度を落とすことができるようになるから、真っ直ぐ行ってしまうような可能性は限りなくゼロになる。

以前に走ったことのあるNさんとKさんは日常からのリセットが終わると41秒前後で周回。YRSドライビングワークアウトでは5分程度のセッションを何回も繰り返すのだが、同じグループになったNさんとKさんは、やがてテールツーノーズで走り始めた。

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下のコーナーでテールツーノーズのNさんとKさん

直線での加速に勝るNさんと軽さが生きるコーナーが速いKさん。Nさんが前でKさんが後というパターンでセッションが続く。Kさんは「下のコーナー」のブレーキングでNさんに近づこうとするが、なかなかNさんと同じような立ち上がりができない。結局、ツイスティなセクションで間合いをつめ、再び「下のコーナー」でNさんに挑むという膠着状態が数セッション。

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ストレート駆け下ってブレーキングからターンイン
その瞬間、瞬間のお互いの気持ちが手にとるようにわかるのが嬉しい

そこであるセッションが終わったところでKさんに耳打ち。『あのね、「下のコーナー」のブレーキング。今はこうなっているけど、実際はムニョムニョしているから次はこうしてみたら』。

次のセッション。何度かトライしたKさんはムニョムニョを克服。「下のコーナー」を抜けて2速から3速に上げるころにはパワーの差が現れるけど、コーナーの立ち上がりではNさんのテールにしっかりと貼りつけるようになった。

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車間に惑わされないためにも相対的速さを理解できる感性が重要

何をアドバイスしたかというと、人間が考える速さとクルマの速さが必ずしも一致しないということ。運転しながらこの区別ができるかどうかが肝心だ、という話をした。ある現象をだけをとらえて近づいたと思っても、それはあくまでも人間から見ているだけで、クルマから見れば『その操作では近づくことはできませんよ』と言っているかも知れない。

今回の例では、ブレーキングで速さに勝るNさんに近ずくことを見つけたKさんは、できる限りブレーキングを遅らせてさらにNさんに近ずく努力を続けた。しかしそれを続けていても、加速性能はNさんのほうがいいのだから、それ以上局面が変わるわけはなかった。

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1000分の1まで計測できるYRSオリジナルの計測装置
運転中の耳に毎周のラップタイムが届く
タイムが伸びないと「起きて下さい」の声も

これは今回のNさんとKさんにに限らず、JAFの公認レースでも頻繁に見られる考え違い。

ブレーキングで前のクルマに近づく。思いの外に近づく。それを自分の手柄だと勘違いするから、さらにブレーキングを我慢する。我慢した結果、間合いを詰められて、かつ前のクルマと同じように立ち上がれるかと言うと、そんな保障はどこにもない。
3速全開の時に「ある車間」で走っていたとする。ブレーキングして2速に落とした時点で、単位時間あたりの移動量が減るわけだから、自ずと前のクルマとの距離は「ある車間」よりずっと短くなる。車速が変化すれば車間も変化する道理なのだけど、運転していると絶対的な速さに夢中になっているから、近づくと『ヤッター』となって、次にはもっとやってやろうとなってしまう。
本当にブレーキングが上手ければ、頑張らなくても、多少の性能差があっても前のクルマについていけるはずなのに。誰かを追いかけている時、相手に近づくのが自分のブレーキングが上手いせいなのか、それとも単に速度が落ちたからなのか見極められなければもったいない。

頑張ってそれなりの効果のようなものが現れると安心して、その先のことまで頭が回らなくなるのが人間の生理。ある意味でしかたのないことかもしれないけど、その状況を打破する工夫が次のステップにつながる。それがユイレーシングスクールがレースを勧め、ライセンスもいらない手軽なスクールレースを開催している理由でもある。

で、こうしたらとアドバイスをしてKさんがやってみたら、それまでとは全く違う展開になったという話。Kさんは宿敵ポルシェに届かんとする走りに、たいそう喜んでいた。

Nさんの名誉のために付け加えておくと、動力性能に大きな開きがあるのに同じような速さで走っていたのはNさんのせいではない。
ポルシェのように動力性能の高いクルマはそれなりのデザインがなされている。タイヤが太いのもその性能を生かすためだ。しかしながら、どんな場合でもその性能を発揮できるとは限らない。特にYRSストリートのようないやらしいコースだと、太いタイヤが走行抵抗となり、BRZより重い車重もコーナリングスピードを殺ぐから、その性能を生かせる区間が短くなる。どんなクルマでも40秒を切れれば95点、というレイアウトにしたのだから、ポルシェはポルシェ、ロードスターはロードスターなりに、それぞれコースに合わせてそれなりの走り方を構築する必要がある。

速い人は、ポルシェ乗りも39秒、ロードスター乗りも39秒で走ることができる、YRSストリートとはそんなコース。

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YRSではどんなクルマでも同乗走行で性能を引き出すコツをアドバイスします

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YRSでは受講生の走りを見ただけで何が足りないか、何が過ぎているかアドバイスします
写真はアンダーステアを出しながらコーナリングのKさん
※いつもはこんな走りではありません

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アドバイスを受けた受講生はやってはならないこと、やるべきことを区分けしながら速さを身につけます

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YRSドライビングワークアウトではコースに一度に入るのは4台まで
コース幅が14メートルもあるので安全に余裕をもって練習することができます

Kさんと『楽しかったねぇ』と話し込んでいたNさんだけど、ポルシェ乗りとしての自尊心に傷がつかなかったと言ったら嘘になるだろう。次に同じようなシチュエーションがあったら、今度はNさんにポルシェの特性を生かす走り方をアドバイスして、コーナリングの速いクルマを引き離すコツをアドバイスをしたいと思う。

クルマを上手く運転するには一つひとつの操作を自分のものにすることも大切だけど、同時にある場面で何をするべきかという答えを引き出しに溜め込むことも重要だ。

ユイレーシングスクールに来てくれた運転大好きの人達が、一日中心底運転に没頭しているのを目の当たりにするのは楽しいし、スクール終了後にお互いの進歩を披瀝しあっているのを小耳にはさむのは本当に嬉しい。ドライビングスクールをやってて良かったと思えるのは、幸せなことだ。


第150回 KさんとメガーヌRS

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KさんとKさんの愛車と記念撮影

運転歴25年のメガーヌRS乗りKさん。このブログでユイレーシングスクールのことを知り6月7日に開催したYRSオーバルスクールに初めて参加してくれた。

その時のアンケートにKさんはこう答えていた。
『初めての参加でしたが、走行前の説明や、走行中のアドバイスもあり、戸惑うことはありませんでした。走行量も多く満足でした。同乗走行では、横に乗っていても身体が振られない、スムーズな操作に感動しました。本当は、あと何回かお願いしたかったくらいです。最後に個人な反省で、午後の後半、だんだん頭の中が白くなり、操作も雑になってしまったので、自主的に休憩したほうがよかったのかと思いました。また参加したいのでよろしくお願いします。』

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YRSストリートの最終コーナーを立ち上がる

AE86トレノ、NAロードスター、レガシーワゴン、インプレッサと乗り継いだKさん。もともとこの手のタイプのクルマに興味があったとかで、試乗して気に入って購入を決めたとか。

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3速全開でストレートを下る

メガーヌRSを毎日の通勤に使っているKさん。メールで購入後の印象を聞いてみた。
『スポーツモデルですが街中で運転しにくい事は一切なく、思っていた以上に快適で乗りやすく、長距離の運転も楽です。購入前は特に思ってなかったのですが、購入後にサーキットを走行してみたいと思う様になりました。』

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スレッシュホールドブレーキングしながら2速に

サーキットを走る準備としてYRSに参加してくれたKさん。三重県からは遠い富士スピードウエイでの開催にも関わらず、間をおかずに27日のYRSドライビングワークショップと28日のYRSドライビングワークアウトに参加してくれた。

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トレイルブレーキングを使ってアンダーステアを回避

スクール開催中は時間いっぱい走ってもらうことにしているのでブログ用の取材ができなかった。それで後日、3種類のYRSドライビングスクールを受講した感想をメールで送ってもらった。

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どんつきのコーナーまでは3速に上げて全開

【受講後に変化はありましたか?】
日頃の運転においても、スクールの講義で学んだ、加速、減速、旋回時のタイヤのグリップや荷重、イーブンスロットルを意識するようになり雑な操作や、急な操作をしない様に心がけるようになりました。これは、安全な運転につながると思います。

【ユイレーシングスクールの印象は?】
運転の理論を学ぶことが大切である事が分かりまた走行量も多く、反復練習する事によって、自分なりのレベルではありますが、運転技術が向上した様に思います。
ただ漫然と走るのではなく、自分の走りを検証する事が必要とのアドバイスは、とても役に立ちました。
先生をはじめ、受講生のみなさんもスクールを楽しんでいて、とても良い雰囲気でした。

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YRSオリジナルの1000分の1秒まで計れる光電管を横切る
結果を走行中の受講生に伝えて操作を検証してもらいます

Kさん。クルマを思いっきり走らせられる広場が関西、中部にはないので当面富士スピードウエイでの開催になりますが、また遊びに来て下さい。

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待ってますよ

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ユイレーシングスクールではサーキットを安全に速く走る方法もお教えしますが、まずクルマを動かす上で知っておいたほうがいいこと、やってはいけないこと、やったほうがいいことを理論的にアドバイスすることをボトムラインとしています。

運転に興味があって少し時間のある方は以下のリンクを覗いてみて下さい。ユイレーシングスクールの練習方法を説明する動画をご覧になれます。もし興味が増したら、実際のスクールを見に来ませんか。

◎ クルマが一番苦手な「曲がる」を練習するYRSオーバルスクール
YRSオーバルスクール案内
YRSオーバルロンガーを走る

◎ クルマの基本操作を理解するYRSドライビングワークショップ
YRS流ブレーキング比較
YRS流スラローム1
YRS流スラローム2
YRS流フィギュア8

◎ 加速、減速、旋回を流れの中で練習するYRSドライビングワークアウト
YRSドライビングワークアウトのコース紹介
YRSストリートの車載映像


第149回 ローンチコントロール

ルーテシアRSのローンチコントロール。以前ルーテシアRSシャーシカップでスクールに来てくれたYさんに無理を言ってやらせてもらったことがある(Yさんはまだ試してなかったけど!)。ただ、その時は直線区間が短かったのでスロットルを控え目にして3速まで。美味しいところを味わうまでにはいかなかった。

オドメーターの数字が6000を超えたころから後学のために5速までベタ踏みで加速してみたいなぁと思っていたのだが、富士スピードウエイのレーシングコースで試す機会を得た。

舞台は全長1475mのストレート。トゥィンゴRSの時は、最終コーナー立ち上がりの登り勾配を無視して加速距離をかせぐためにずっと下がったところからスタートしたのだが、今回はローンチコントロールが正確に働くように路面がフラットになるところまで1コーナーよりに進んだところからスタートした。直線区間で加速と減速を終えるには不利になるけれど、ローンチコントロールを体感するのが目的だから。

で、当日は午後になると小雨が降ったりやんだりで路面はウエット。ところどころに水たまりもある。これ幸いとレースモードはまたの機会にして、機械まかせで、しかもウエット路面だとどんな走りをするのか、スポーツモードでの実力を見ることにした。

ローンチコントロールを作動させ、左足でブレーキペダルを踏んで、右足でスロットルペダルを全開にする。
左足をブレーキペダルから瞬間的に滑らせたら、後は右足を床まで踏み続ける。ただそれだけ。

その時の動画を編集してYouTubeにアップしたのがこれ▼。

ホイールスピンは起きるものの、ウエットだというのに想像していたよりはずっと少なく、しかもタイヤの空転が減ると、減った分だけ前に押し出される感じが強くなるような、タイヤが理想とする滑り率で路面をとらえた瞬間に最大加速度が発生するように、ローンチコントロールはそんな計算しつくされたような加速を、『運転手は何もしていないのに』実現してくれた。

すごい。すごいの一言。本来なら、ある程度熟練した人でなければできなかった種類の運転操作を、人間の代わりにクルマがやってくれる。

ルーテシアRSのオーナーはローンチコントロールを試してみるべきだ。現代の自動車技術が、どれほど人間の能力を補ってくれるレベルにまで進んでいるのかがわかる。クルマに対しても運転に対しても、新しい価値観と展望が生まれるはずだ。

ただし、時と場所をわきまえて安全第一で。クルマのおかげですばやい加速ができるようにはなるけれど、それに見合う減速ができるかどうかは確認していないと思うから。
それと、これは運転全般に言えることだけど、その速さがクルマの機能から生まれたものなのか、運転技術が生み出したものかの検証を忘れないようにしたい。そうでないと、クルマに対する畏怖の念が薄れ、本当の運転の楽しさを味わうことが難しくなるから。

ボクはと言えば、レースモードのローンチコントロールを試す前に、ドライ路面だとスポーツモードのローンチコントロールがどんな働きをするか感じてみたくなった。ルーテシアRSは楽しい。

協力:富士スピードウエイ


第148回 作ってみた

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フィットのオプションに選んだ縁高ラッゲジトレイ

YRSルーテシアRSはスクールのデモカー、リードカーとして活躍しているけど、機材の運搬も大事な役目。で、そろそろ梅雨だし、雨の日なんかに濡れた物を積む必要ができた場合に備えて、フィットのオプション品を参考にラッゲジトレイを作ってみた。

148-2寸法に合わせて型紙を作って

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シートの手前側をテールゲートトリムの下にもぐらせて固定した

と言っても、ホームセンターで買ってきた塩ビシートに切り込みを入れて敷き詰めただけのやっつけ仕事だけど、一応「縁高」にしてみた。4隅の処理はこれからだけど、材料費1,080円のなんちゃって縁高ラッゲジトレイ。


第147回 道具の使い方

2011年の初めに同じテーマで書いたのだが、その焼き直し。

以前はスクールの座学で包丁の話をかなりの頻度で話していた。なぜ包丁は引いて切るのか、という包丁という道具の使い方の話。
ところが、話していてもフーンといった感じであまり興味を示してくれないことが多かった。たかが包丁を使うのにそんなメンドクサイ話なんか要らないよ、と思っているのか、こちらの説明が悪くてピンとこないのか、座学より早く走りたいと思っているのかわからないけど、とにかく受けは良くなかった印象しか残っていない。

が、個人的には道具の使い方には大いに興味がある。どうすると道具を効率よく使うことができるか。クルマを運転する時にはいつもそんなことを考えている。正しい道具の使い方を知れば、道具を使っている時にどうすればどういう結果を期待できるか見えてくる。大事ことなのだけど、YRSの受講者でさえ、概して使いかたより使った結果のほうに興味があるように感じると言ったら怒られるか。

包丁は最も単純な機能を備える道具だから例にあげたまでで、実はクルマという道具の使い方に思いをはせてもらいたいとの願いがあった。

で、あまりにも反応がないので全長79センチの包丁を作った。もちろん木製だ。これを座学で見せれば少しは興味を持ってくれるかな、と期待した。

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全長79センチの包丁(のようなモノ)

結果は。見事に期待外れ。模型を目の前にしても、クルマの操作とは全く関係ないからか、興味を持ってくれている気配はなかった。
それ以降、あまり包丁の話はしていない。したほうがいいのだが、他にも使い方の大切さを伝える方法はあるから、79センチの包丁はガレージで惰眠をむさぼることに。

で、そう何回もあることではないので、その包丁らしきもおを紹介しておきたい。

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包丁を赤矢印の方向に動かすと

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切られるモノには緑矢印の向きに刃が当たる

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その断面を想像することができれば

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なぜ包丁は引きながら使うべきなのかがわかる

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大げさに作った包丁だからだけど、刃の角度の差はこれだけ異なる

実際の包丁の刃は薄い。それでも引くと引かないでは切れ味が違う。
クルマの運転でも、ごくわずかな操作の違いが、結果的には大きな差を生む場合が多い。

包丁のような単機能の道具でも使い方を理解すれば、より簡単に、より効率的に目的を達成することができる。クルマはもっともっと複雑な機械だから、使い方を覚えれば、より安全により快適に走らせることができる。サーキットを走るなら、リスクをとることなく速く走らせることができる。意のままにクルマを操ることにつながる。

最近は包丁の話の代わりに、「クルマの正しい動かし方を覚えておいて損はありません」と直球勝負をすることにしている。


第146回 ルノーの仲間

6月上旬はスクール続き。4日にエンジンドライビングレッスン、6日にYRSトライオーバルスクール+YRSオーバルレース、7日にYRSオーバルスクール。今年はどのスクールも、例年になく初めて受けに来てくれる方が多いので幸せ。

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◎エンジンドライビングレッスン
恒例の記念撮影

直前に仕事が入ってキャンセルした方と仕事があるからと途中で帰ってしまった方が多かったので、いつもよりさみしい集合写真。
キャンセルされた方の中にルーテシアユーザーがいたのが残念。感想を聞きたかったのだけれど。それでも6名の方が初参加だったのが救い。

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◎YRSオーバルレース
スリーワイドで路面を乾かす

おむすび型のオーバルコースで練習するYRSトライオーバルスクールとYRSオーバルレース。初参加の方がスクール、レースとも1名で常連に胸を借りていました。
いつの日か、ルノーに乗る方がYRSオーバルレースに参加足手くれるとすごく嬉しいのだけど。

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◎YRSオーバルスクール
アドバイスに集中していて記念撮影を忘れるというお粗末(泣)

過去にユイレーシングスクールを受講したことのない方がYRSオーバルスクールに7名参加してくれた。今までは9割以上が以前にも参加したことのある方だったけど、今年に入って少し風向きが変わってきた。嬉しい限り。

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雑誌エンジンの副編集長も黄色いメガーヌRSで参加
7月売りのエンジンで紹介してくれるとか

ルーテシアに乗るUさんとメガーヌRSに乗るKさんも初参加。Kさんは三重県から足を伸ばしてくれた。
ユイレーシングスクールでは初めて参加してくれた方にアンケートをとっているのだけど、回答の中からUさんとKさんの感想を紹介したい。
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・Uさん(ご本人の写真はありません。ゴメンナサイ)
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写真はUさんに借用

【設問1】ユイレーシングスクールのことをどこで(何で)お知りになりましたか?
ルノージャポンのブログで発見しました。

【設問2】YRSオーバルスクールを受講された印象をお聞かせ下さい。
初めのうちは「どうすればいいのか?」と不安というか、少し迷っていました。ヨシダさんに「考えて、どんどんトライをして、確認すればいい」と言ってもらい、その後は自分なりに色々トライ出来たかなと思っています。
朝から1日かけて、ブレーキ – ステアリング – イーブンスロットルを何度も繰り返し練習できたことが良い経験になりました。よく考えてみると、今までは運転の練習が出来ていなかった(やり方すら分かっていなかった)のだなと実感しました。
最終的には、あまり考えなくても自分レベルの運転ができているようになった気がしています。

【設問3】ユイレーシングスクールのカリキュラムはあなたの運転技術の向上に役立ちましたか?
とても役立ちました。
正直なところ技術向上したのかどうなのかは、はっきりとは分かっていませんが、何処に気おつけて運転すべきなのか。そのために何をやれば良いのか。やってはいけないのか。ということが自分の中でそれなりに整理が出来たようで、頭がすっきり出来た感じです。

【設問4】ご意見、ご感想があればお聞かせ下さい。
スクールでは運転に夢中になっていたのですが、いま冷静になって考えると「もっとトライしてみたいことがあったな」と思っています。また機会があったらよろしくお願いします。
ほとんど写真も撮れなかったのですが。最後に一枚だけ撮ったやつがあったので添付しておきます。使えそうなら使ってください。

・Kさん(ご本人の写真はありません。ゴメンナサイ)
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写真はKさんに借用

【設問1】ユイレーシングスクールのことをどこで(何で)お知りになりましたか?
ルノーのブログで。

【設問2】YRSオーバルスクールを受講された印象をお聞かせ下さい。
楽しい雰囲気の中で、自由にやらせてもらった気がします。

【設問3】ユイレーシングスクールのカリキュラムはあなたの運転技術の向上に役立ちましたか?
役だつと思います。

【設問4】ご意見、ご感想があればお聞かせ下さい。
初めての参加でしたが、走行前の説明や、走行中のアドバイスもあり、戸惑うことはありませんでした。走行量も多く満足でした。同乗走行では、横に乗っていても身体が振られない、スムーズな操作に感動しました。本当は、あと何回かお願いしたかったくらいです。最後に、個人な反省で、午後の後半、だんだん頭の中が、白くなり、操作も雑になってしまったので、自主的に、休憩したほうがよかったのかと思いました。
また参加したいのでよろしくお願いします。

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クルマの運転は楽しいからどうしても気持ちが先に行ってしまうことがあるけれど、クルマは道具でもあるので正しい使い方を一度は教わったほうがいい、というのがユイレーシングスクールの考えです。

このブログをご覧になった方、都合がついたらぜひ参加してみて下さい。

遠方で来られない方は、開店休業状態の掲示板があります。運転についての質問がおありでしたら、できる限りお答えしますので書き込んで下さい。
・ユイレーシングスクール掲示板


第145回 それなりに

オドメーターの数字が5000を超えたばかりなのに鈴鹿、阿讃に次いで3つ目のサーキット、筑波サーキットコース1000を走った。その時の動画がこれ。

YRS筑波サーキットドライビングスクールの昼休みに走ったので時間は限られていた。だから、回す気にはなっていたけれどルーテシアRSの性格をつかむところまではいかなかった。懐の深い足回りの入り口ぐらいまでは体験できたけど。

振り回せばもっと速く走ることもできると思うのだが、それは主義ではないし、タイヤのコンタクトパッチの形状をできるだけ変えずに走りたいのでもう少し走りこむ必要がある。

個人的にもユイレーシングスクールとしても、クルマに負担をかけて速く走ろうとするのには賛成しかねる。

例えば、FF車にその傾向が強いのだが、前輪のショルダーまで使ってコーナリングすることだ。ショルダーを使うほど攻めたって気持ちにはなるかもしれないけど、それで速く走れるかというとむしろ逆だ。荷重がアウト側前輪だけにかかった状態ではクルマが前に進まない。

大切なのは、それなりに走ることだ。今回もショルダーを痛めない範囲で、どれだけ短い時間でルーテシアRSの特性をつかみ、前後のスリップアングルを均等にしながら走れるかをテーマにした。だから、ショルダーが巻き込みそうな時は何もしない時間を作った。

それでも合計8周した前輪のトレッドには、アウトに逃げた形跡があった。右も左もだ。悔しいけど、まだリアタイヤが使えていない証拠。ただ、どうすればいいかはわかったので次回に試してみたい。クルマに負担をかけなくても、速さを追求する方法はいくらでもあるのだから。

写真は走行後のタイヤ

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ルーテシアⅣRSには、中低速の回り込んだコーナーが多いサーキットより、高速コーナーや短いコーナーのあるサーキットが似合いそうなの雰囲気なので、機会を見つけて4つ目のサーキットを走ってみたいと思う。


第144回 YRS筑波サーキットドライビングスクール

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今年初めてのYRS筑波サーキットドライビングスクール。未明までかなりの雨が降っていたのでシメシメと思っていたのだけれど、ホテルを出る頃には上がってしまった。
今年、YRSではブレーキングの練習に重点を置いている。安全に走るためにも、サーキットを速く走るためにも最短距離で車速を落とす操作とブレーキング区間の後半で姿勢を安定させる操作が欠かせないからだ。だからウエット路面が良かったのだけれど。

筑波サーキットコース1000で午前中2時間をブレーキングの練習にあてた結果、初めてサーキット走る人もターンイン時の姿勢作りに合格点をあげられるようになった。

そう言えば、今回はユイレーシングスクールを初めて受講する人の参加が多かった。いつもなら9割以上が以前に受講した方なのだが。

それと、今回は何年もユイレーシングスクールに通ってくれている方2人が息子さんを連れてきてくれた。
一人は免許取得中ということで、親父さんのクルマをボクが運転してサーキットを味わってもらった。
もう一人は親父さんに買ってもらったクルマで、親父さんと一緒に受講してくれた。若いというのはすばらしいことで、どんどん吸収する。多分、遠くない将来には親父さんより上手くなる手ごたえが。

ただ二人には言っておいた。「若気の至り」はクルマの運転に通用しないからね、と。

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ユイレーシングスクールには様々な人がいろいろなクルマで参加してくれる。今回、どんな参加者分布だったのかを示したのが上の図。傾向としては、いつもより年齢層が若干高かったのと、クルマをいじっている人が少し多めだったこと。前述の通り初めてユイレーシングスクールを受けてくれる人が多くて嬉しかった。

筑波サーキットに到着した時にはオドメーターの数字が5100を少し超えていた。

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スクールの合間にビデオカメラを積んで走ってみたので、ルーテシアRSから見た筑波サーキットコース1000の景色は次回に紹介します。


第143回 ルーテシアRS 阿讃サーキットを駆ける

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ストレートに並んだルノー、ルノー、ルノー

ルノークラブ走行会が行なわれた阿讃サーキット。香川県との境に近い徳島県東みよし町の山の中にあるこの1周1004mの小さなサーキットは、運転の練習にはもってこい。

なにしろ高低差がハンパじゃない。加えて、これが最大の特長なのだが、エスケープゾーンがほとんどない。コースアウトしたら即ガードレールか土手。こういう環境は得がたい。

突っ込みすぎたらアウトに逃げればいいや、で練習するのと、絶対にコースを外れてはだめだ、で練習するのとでは全く違う。テクニック以前に覚悟の仕方を養える。

それに、エスケープゾーンのないタイトなコースが役に立つこともある。

この日、サーキットを初めて走る人が何人もいたけど、みんな最後にはそこそこ走れるようになった。それは、あくまでも個人的な感想だが、レイアウトというか、目に入ってくる情報が峠道を走っているのと大差ないので馴染みやすいのではないかと。

頂上から下るセクションもいい。とにかく忙しいから考えている時間はない。なんとかしなきゃならないし、やってみればなんとかなるものだ。運転の理想は無意識行動なのだから、それを短時間のうちに習得できる。

そんな阿讃サーキットを慣らし中のルーテシアRSで走った時の動画がこれ。オドメーターの数字は4000を少し超えたばかりだったから、RSボタンには触らずショートシフトをしながら走った。

阿讃サーキットを走るのに特別な資格は要らない。ライセンスも要らない。年会費3,500円を払えば、平日、土曜、祝日なら1,600円で25分走ることができる。関西圏にお住まいのルノーユーザーの方はぜひ一度訪ねてほしい。
ただ、サーキット自体が山の上にあって、そこへ続く道は細く急で、上に住む方々の生活道路でもあるので十分注意してほしい。

サーキットを単に速く走るのではなく、自分がクルマの性能を引き出す操作ができているか検証するのにはうってつけのコースだ。