その昔。ジムラッセルレーシングスクールのADC(アドバンスト・ドライビング・コース)ではサーキットセッションの合間に、パドックにコーンを並べてオーバルコースを作り2台1組の追いかけっこをしていました。相手に追いつく、相手に追い上げられない練習です。アメリカではオーバルレースのことをモメンタムレースとも形容し、慣性力を損なわないことが勝利への道だと言われていました。オーバルコースではわずかなミスで速さを失います。サーキットを走る上で重要な『失速をしない走り方』と『ミスをしない運転』を身につけるためです。
ひとつの方向にしか曲がらないオーバルコースでもクルマは加速、減速、旋回を繰り返します。
加速力はクルマの性能で決まってしまいますが、人間にできることもあります。サーキットでの加速は全て中間加速なので、その初速をできるだけ速くすることです。初速が速ければ速いほど到達速度が速くなり、結果的に直線部分で費やす時間の短縮になります。
サーキットを走る時にブレーキを我慢してタイムを縮めようとする人がいますが、減速はそれほど単純なものではありません。コーナリング速度は間違いなく直線部分の到達速度よりも遅いので減速が必要になります。ですが、速く走るためには減速の仕方がが重要です。スロットルを開けている時間を長くするよりも、できるだけ短い距離で必要な速度まで減速するブレーキングと、ブレーキング区間の終わりにコーナリングに備えた姿勢作りができているか、この2点が周回路を走る時の減速に非常に重要になります。
クルマはコーナリングを開始すると走行抵抗が増えて失速します。なので、できるだけ高い速度からコーナリングするのが望ましいわけですが、ターンイン直後にアンダーステアを出してクルマが旋回運動を始めなかったり、オーバーステアを修正するためにカウンターステアを切っていては速さを損ないます。また高い速度からのターンインに成功してもクリッピングポイントあたりにある最下点での速度が遅ければ速さにつながりません。
サーキットを走る時に加速、減速、旋回のあらゆる部分でクルマの性能を100%発揮させる操作が理想ですが、クルマを運転するというのは大きな慣性力の方向を転換する作業なので、そうできるとは限りません。ですが、あらゆる部分でクルマの性能を損なわないように操作の練習 をすることは可能です。
オーバルコースの利点はコーナーが180°と奥が深いことです。換言すればコーナーにいる時間が長いことになります。そしてコーナーの前後には直線部分があります。ひとつのコーナーをクリアするごとに減速から旋回、そして加速の一連の操作を確認しながら走ることができます。しかもYRSオーバルFSWロングの場合、10秒に一度はコーナーが現れます。目的意識を持って反復練習をすれば、操作が身体にしみこまないわけがないのです。
これがユイレーシングスクールがオーバルスクールを開催し続ける理由です。サーキットを走るつもりがなくてもオーバルスクールは有意義です。自分の運転の癖を確かめることができますし、運転の基本を身につけることができます。一連の流れが身につけば、そこが公道であろうとワインディングロードであろうとサーキットであろうと、クルマと対話をしながら走らせることができるという寸法です。
今年最初のYRSオーバルスクールは1月26日(日)に富士スピードウエイで開催します。一度、ご自身がどんな手順で加速、減速、旋回を行っているか確認しに来てはいかがですか。お待ちしています。
◎ YRSオーバルスクールFSW開催案内&申し込みフォームへのリンク
YRSオーバルスクールは初めにYRSオーバル、そしてYRSオーバルFSWロングを使います
※ 写真は下に載せた動画からキャプチャーしたものです
YRSオーバルFSWロングをインベタで走ります
ラップタイムは平均速度の裏返しです
到達速度を高めるためにスロットルを開け続けるのではなく
スロットルオフから舵角ゼロでのフルトラクションまでの平均速度を上げるため
コーナーのはるか手前でスロットルを閉じ減速の準備をします
減速のためのブレーキングに続き限りなく踏力を抜いたトレイルブレーキングに備えます
コーナーの始まりを示す緑色のコーンが近づいて来ます
コース幅は14mもあります
イン側に2mもあれば直線部分からターンインすることができます
トレイルブレーキングを使うことでイン側前輪のグリップを活用すると同時に
荷重が対角線に移動するのを防ぎます
フロントのロールコントロールとピッチコントロールを同時に行います
コーナーの頂点を示す緑色のコーンが近づいてもなお
ステアリングを探りながら切り続けます
ステアリングホイールを握る手に力を入れて手を止めてしまわないように
同時にクルマが失速をしないように
トレイルブレーキングが終わったら積極的に右足を動かして
イーブンスロットルを保ちます
クルマにヨーモーメントが発生していれば
コーナーの終わりを示す緑色のコーンの手前からステアリングを戻し始め
戻した分だけスロットルを開け
加速の準備ができます
クルマを曲げるということは
大きなエネルギーの方向を変えることなので
曲げる際には丁寧にゆっくりステアリングを切る必要がありますが
ステアリングを戻すという作業は
クルマのストレスを開放することでもあるので
状況によってはスパッと戻すこともできます
YRSオーバルFSWロングをアウトインアウトで走ります
インベタの場合は直線部分の直後からコーナーが始まりますが
アウトインアウトではコーナーの曲率を変えながらクルマを曲げることができます
できるだけ高い速度からターンインをしたいので
やはりスロットルオフは早めにしてブレーキングも手前にして
前後輪のグリップレベルが均等になるようにクルマをフラットにします
アウトインアウトのターンインの位置はクルマを緩和曲線に乗せたいので
インベタの時に比べて大幅に手前になります
ですのでYRSオーバルFSWロングの場合
ブレーキングよりステアのほうが先になります
もちろん最小限の舵角でクルマにコーナリングが控えていることを伝えます
コーナーの始まりを示す緑色のコーンで
クルマはすでにロールを始めています
緑色のコーンがコーナーの入り口、頂点、出口で間に5本の赤いコーンを立ててあります
赤いコーン1本で15度進んだことになるので
コーナーの3分の1にあたる4本目をめどにブレーキを引きずります
トレイルブレーキングを使いながらゆっくりステアリングを切っていくと
腰で遠心力を感じるようになりリアのロールが起きているのがわかります
イン側に置いた頂点の緑色のコーンの前後が
クリッピングポイントあるいはクリッピングゾーンになります
頂点ではコーナーの接線とクルマの向きが平行になるのが理想です
ただしクルマが平行になっていてもエネルギーの方向が外を向いている場合もあります
フロントタイヤのスリップアングルがリアのそれよりも大きい時です
前後輪のスリップアングルが均等になるように操作することが大切です
ステアリングを戻しながら戻した分だけスロットルを開けます
アウトに出る時にステアリングを戻せないと判断したら
少しだけインにいる時間を長くしてでも
ステアリングを戻せる状況になってからアウトにはらみます
ステアリングをホールドしたり戻せないのにスロットルを開けると
荷重がリアに移動してしまいアンダーステアに陥ります
オーバルコースを走る時に大切なのは
進入と立ち上がりのラインがコースを上から見た時に左右対称であることです
直線的に入ってしまった時は頂点で小回りしてでも直線的に立ち上がります
円弧を描いて進入した時は円弧を描くように立ち上がります
それを意識して走ると慣性力を損なうことなく周回を続けることができます
ユイレーシングスクールが公開しているYRSオーバルスクール関連の動画です。操作の流れをご覧下さい。
◎ YRSオーバルロングを走る
VIDEO
◎ YRSオーバルスクールの紹介
VIDEO