トム ヨシダブログ


第645回 YRSツーデースクールFSWの2889分の3

今年1回目のYRSツーデースクールFSWは両日とも午後から雨。天気予報が当たらないね、とため息をつきながらの2日間。

642-1

2日目午前中最後のセッションの終盤。21名の参加者全員のクルマをコース上に並べて記念撮影。クルマを並べている間にポツリ、ポツリと。

645-3
※ 表の見方

この日、朝9時から午後5時まで33歳から74歳までの運転好きがFSWショートコースを走りっぱなし。Nさんの走行距離は148キロだったらしいけれど、いちばんたくさん走ったのはメガーヌ3RSのOさんとルーテシア4RSトロフィーのWさんで、走りに走って計157周。

家族サービスがあるのでと早退した人もいたけど、なんだかなんだで全員の周回数を合計すると2,889周。で、今回は残念ながらスピンが3回。昨年の秋のYRSツーデースクールFSWはスピン無しだったのだけどねぇ。ユイレーシングスクールの面目躍如にあと一歩。

 

[追記]今回のYRSツーデースクールFSWでサーキットデビューした豊橋のOさんが、4月2日のYRSオーバルスクールFSWと4月18日のYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールに申し込んでくれた。嬉しいかぎり。



第644回 Nさんの場合

今年1回目のYRSツーデースクールFSW。神戸にお住いのNさんが初めてのユイレーシングスクールに参加してくれた。当日お話を聞くと、ルーテシアRSを通じて知り合った同じ神戸に住むKさんに受講を勧められたらしい。
Kさんは去年のYRSツーデースクールFSWやYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールにも参加してくれた常連。そしたら、スクール2日目昼頃に深谷市に行ってきたというKさんがひょっこり。今回のルノー仲間全員とは顔見知りで、スクール終了まで運転とルノーの話題で盛り上がってました。

で、初参加のNさんに感想文をお願いした次第。

644-1
FSWショートコース最終コーナーを回るNさん

 

3月19日20日の2日間富士スピードウェイにて、YRSツーデースクールFSWに参加しました。

一番印象に残っているのが、クルマは物理の法則に支配されており、クルマを動かすには理論に基づいてクルマに動いてもらう必要があるということです。そのための知識をこの2日間で非常に濃い内容を教えていただきました。

1日目は、パート毎にクルマに動いてもらうための理論を学んだ。午前中に、ブレーキング・スラローム・8の字をグループに分かれてトレーニングを行う。
ブレーキングでは、いかに効率よく最大グリップを発揮させて停止する技術をトレーニング。事前課題でだされた雑巾を絞るようにペダルを踏みこむこと。結果、最大荷重を前輪にかけてタイヤをつぶすことにより、タイヤサイズ以上のグリップが得られる。 
もう一つは、ブレーキペダルの踏み方の学び。アクセルペダルを離すとすぐにブレーキペダルを踏み込むのでは無く、一度間をおいてブレーキペダルを踏み込む技術を学ぶ。結果、荷重の移動の感じ方と過度のローターの発熱をコントロールする方法を学んだ。
スラロームでは、従来の荷重を左右に移動するスラロームでは無く、可能な限りストレートで加速させるハンドリングとアクセルワークを学んだ。荷重が均等であればあるほど安定した加速が得られることを実感した。
8の字では、従来の外側に荷重をかけたままでの8の字では無く、定常円旋回からの逆定常円旋回へつなぎ方に、ストレートで走行する方法を学んだ。つなぎをストレートで走るためには、なるべく早くハンドルを早く戻すこと、切り方は慎重に戻すときは素早く、加速は車体がまっすぐにストレート状態で安定した加速を得る。

すでにここで、自身のドライビングテクニックの常識が覆っている。

昼食休憩をはさんで午後のトレーニングに入る。午後は、オーバルコーストレーニング。日本ではインディ500マイルレースくらいしか馴染みのないオーバルコースであるが、米国ではメジャーなレーシングコースレイアウトだそうです。
一般的な定常円旋回のトレーニングでは無く、オーバルコースはストレートと円で構成されており、ストレート加速・ブレーキング減速・コーナリング・立ち上がり加速の組み合わせでトレーニングを行う。このトレーニングで、クルマの荷重移動を感じタイヤのグリップを最大化することを学んだ。
オーバルコースは、なかなか手ごわい。何度かスピンをする、理由はわかってはいるが満足できる走りがなかなかできない。オーバルコースでレースを行っている米国クルマ文化を尊敬する。サンデーレースは、オーバルコースのレースが多いのであろうが、相手を抜かす方法がわからない。今度、米国のレースを参考にしてみよう。

一日目で、クルマの動かす理論の基本を学ぶことができた。明日からは今日学んだことを自分なりに生かすトレーニングとなる。本日の走行距離 95kmなり。

二日目 富士スピードウェイショートコースでのトレーニング関谷正則氏が監修したショートサーキットとのこと、下り5%上り8%の勾配レイアウトのレイアウトサーキット。一日目にトレーニングした技術を用いてのサーキットトレーニングを行う。

最初は、全員でコース歩行を行ってコースの攻略方法のレクを受ける。勾配のあるコースなので、減速・加速・荷重のかけ方等、昨日教えてもらったことを考えながらコースの走り方を考える。なるべくストレートを最大限にとれるように走ろうと考える。
そのあとは、ヨシダ先生にリードフォローを行ってもらい、走行ラインとペースを学ぶ。先生、速いです。 と言いながら必死についていく。そのあとは、グループ毎ににラッピングを行って各自のレベルアップを行う。
都度休憩時に先生からのアドバイスがあり、再度ラップを重ねていく。メインストレートからのブレーキングで注意されるが、走り始めると頑張ってしまいなかなかブレーキングがうまくいかない。反省である。
午後からは、雨が降ってきてウエットコンディションとなり、更に難しいトレーニングとなったが、より一層荷重移動でのクルマの動きがはっきりわかることとなりいいトレーニングになったと思う。

2日目は17:00に終了 本日の走行距離148km

2日間のスクールを終え総走行距離243km あっという間の2日間であった。クルマを動かすための理論を学んだが、実行するにはまだまだトレーニングが必要というのも分かった。
スクール後に本日クルマを運転し、一般道を走りながらでも加速・ブレーキング・荷重を考えながら運転している。確実にスクール受講の成果はでていると思う。まだまだ書きたいことは多いのですが、スクールには機会があれば次回も参加したいと思っています。まだまだ自分の成長を確認したい、クルマの運転は本当に楽しい。

是非、ヨシダ先生にはいつまでもお元気でスクールの開催をお願いしたいと思っています。

644-2
Nさんと愛車のルーテシアRSトロフィー・シャーシカップ


Nさん。感想文ありがとうございました。ドライビングスクールを長く続けられるよう健康に留意します。ぜひまた遊びに来て下さい。今年2回目のYRSツーデースクールは10月15/16日(土日)に開催予定です。

 

※ Nさんがオーバルコースでスピンしたと書かれている。路面が濡れている上に「あと5キロ速い速度からターンインしてみて下さい」と走行中にFMラジオで指示するものだから、オーバル走行が初めての人はオーバーステアになりがちで、Nさんが下手なのではありません。
スピンはオーバーステアが瞬間的に起きた結果だから、その手前でリアのグリップが足りなくなるような操作をしたのが原因ではあるけれど、スピンしなければわからないことがあるのも事実。だから、YRSオーバルFSWはイン側とアウト側のパイロンの間隔を14mにしている。つまり幅員14mの走路。車線を分ける線が描いてないから想像しにくいけど、高速道路の3車線より広いのだからYRSオーバルでスピンしても危なくはない。安心してタイヤと自分の(!)限界を試すことができる。タイヤは減るかも知れないけれど。



第643回 YRSメールマガジン”Go Circuit #287″

≡≡YuiRacingSchoolpresents≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

               Go ☆ Circuits 287 (3/24/22)

------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。思い通りに走らせるのはもっと楽しい●しか
しクルマがなかなか思うように動かない時がある●クルマの運転は簡単そうで
難しい●が、難しいことに感謝しなければならいない●難しいからこそうまく
できた時の喜びは大きい●うまくなろうとする過程がまた楽しい●うまくなろ
うとするから工夫する●今の時代、クルマを使い倒さなければもったいない。
           ===> 教えているのは操作だけでなく走り方 <===
1) YRSドライビングワークショップFSWの勧め
右折車線のある交差点でUターンをしようとしたのに1回で回り切れなかったこ
とはありませんか?実は確実に回れる方法があるんです。

1月のYRSオーバルスクールFSWにADバンで参加された方が2名いました。2台と
も社用車で年間6万キロも走るので運転の基本の再確認に来られました。カリ
キュラムが進行する中でブレーキングについて質問がありました。
スクールでは常々「ブレーキを蹴とばしてはいけない」とアドバイスします。
蹴とばすとは、スロットルペダルから足を話した瞬間にブレーキペダルを踏み
込んでしまうことです。この時の力を表現するならば人をなぐるような瞬発力
です。
足が柔らかでストロークするADバンの同乗走行をした時のこと。ブレーキを蹴
とばしてはいけないと言っているのに蹴とばしていうようにしか見えない、と
オーナーが言うのです。蹴とばしていないのに何故だろうとあれこれ話してい
るうちに、ブレーキをかけた時の減速Gが大きいので蹴とばしているように感
じたのではないかとの結論に達しました。
それで、他の参加者にも見てもらう(感じてもらう)ためにADバンに4人乗車で
ブレーキペダルの踏み方を感じてもらいました。加速します。加速中は『後ろ、
後ろ、後ろ』と声に出します。次にスロットルオフにして『背中~』、ブレ
ーキペダルに足を乗せて『置いてぇ~、前』、ブレーキペダルを踏みこんで
『ジワ~ッ、前前前』。何のことかわかりますか?
全員が驚きます。強烈な減速Gが立ち上がるからです。ロガーを積んでないの
で正確なことはわかりませんが、細いタイヤのADバンでもマイナス0.8Gぐらい
には到達したはずです。もちろんABSの介入もありません。トランジッション
を大事にすることとブレーキペダルをスクィーズすることで前輪のグリップを
大きくし続けた結果です。
・前輪のグリップを増やす
タイヤのグリップはある程度のところまで荷重に比例して大きくなります。つ
まりブレーキペダルの踏み方によっては前輪の摩擦円の直径を大きくすること
ができるのです。いくら制動力が大きくてもクルマを減速するためにはタイヤ
のグリップに頼るしかありません。右足ひとつでそのグリップの大きさを自在
に操ることができれば得られるものははかり知れません。

YRSドライビングワークショップFSWでは午前中にジムラッセルレーシングスク
ールでやっていた方法でブレーキングの練習をします。間違いなく今までより
大きな減速Gを感じることができます。並行してスラロームの練習をし、午後
からはオーバルコースを走ります。ペダルワークの練習をしたい方の参加をお
待ちしています。
・4月3日(日) YRSドライビングワークショップFSW開催案内

2) 参加者募集中
・4月2日(土) YRSオーバルスクールFSW開催案内
・4月14日(木) エンジンドライビングレッスン
・4月18日(月) YRS鈴鹿サーキットドライビングスクール
・5月14日(土) YRSオーバルレースFSW
・5月15日(日) YRSオーバルスクールFSW
・5月26日(木) YRS筑波サーキットドライビングスクール

3) ルノー・ジャポン公式ブログ アップデート
#641 ”2022YRSツーデースクールFSW Rd.1”



第642回 YRSメールマガジン”Go Circuit #286″

≡≡YuiRacingSchoolpresents≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

               Go ☆ Circuits 286 (3/23/22)

------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。思い通りに走らせるのはもっと楽しい●しか
しクルマがなかなか思うように動かない時がある●クルマの運転は簡単そうで
難しい●が、難しいことに感謝しなければならいない●難しいからこそうまく
できた時の喜びは大きい●うまくなろうとする過程がまた楽しい●うまくなろ
うとするから工夫する●今の時代、クルマを使い倒さなければもったいない。
           ===> 教えているのは操作だけでなく走り方 <===
1) YRSオーバルスクールFSWの勧め
クルマの動きを分解すると加速、減速、旋回の3つに分かれる。我々はこの3つ
を組み合わせながら目的を達成するためにクルマを走らせる。操作するのはス
ロットル、ブレーキ、ステアリングの3つだ。クルマは人間が操作した通りに
動く。ほとんどの場合は人間の思い通りに動いてくれるはずだが、そうはなら
ない場合がある。それはクルマが悪いのではなく人間の操作の仕方に原因があ
る。
どんなに高性能なクルマでも限界はある。その限界を越えればクルマは操り手
を裏切り思い通りに動いてはくれなくなる。
クルマの性能=機能はタイヤを通じてしか路面に伝わらない。タイヤしか地面
に接していないから当たり前のことだ。つまりクルマの限界とはすなわちタイ
ヤの限界でもある。ならばグリップの高いタイヤを履けばクルマの性能が上が
り人間の思い通りになるかと言うと、残念ながらそうはならない。
クルマはまず重い。重いクルマが動く時には大きな運動エネルギーが生じる。
なので端的に言えば、運転するということは運動エネルギーの方向と大きさを
変えることでもある。タイヤのグリップが運動エネルギーに負けてしまえばク
ルマは操作した通りに動かない。
タイヤのグリップと運動エネルギーの関係は摩擦円から読み取ることができる。
図の矢印はクルマの速さではなく、クルマが抱える運動エネルギーの方向と大
きさを表していることに留意して見てほしい。ひとつの機能に対するだけなら
ばまずタイヤの限界を越えることはない。
・加速
・減速と旋回
しかしクルマは加速、減速、旋回を組み合わせて複雑に動く。
・クルマの動き

おわかりだろう。ふたつの操作が重なった時、どちらかひとつの操作が過大で
あれば運動エネルギーは簡単に摩擦円を突き抜けてしまう。タイヤのグリップ
の限界を越えてしまうのだ。
クルマを運転する時に運動エネルギーを常に摩擦円の中に収めておけるような
操作ができれば、安全であるし速く走ろうとすれば速く走れることになる。
YRSオーバルスクールFSWはいつもより少し高い速度で楕円形のコースを走り、
どんな場面でもタイヤの限界を越えない操作ができるように練習する。タイヤ
の使い方を知りたい方はぜひ参加してみて下さい。
・4月2日(土) YRSオーバルスクールFSW開催案内
2) 参加者募集中
・4月3日(日) YRSドライビングワークショップFSW
・4月14日(木) エンジンドライビングレッスン
・4月18日(月) YRS鈴鹿サーキットドライビングスクール
・5月14日(土) YRSオーバルレースFSW
・5月15日(日) YRSオーバルスクールFSW
・5月26日(木) YRS筑波サーキットドライビングスクール
3) ルノー・ジャポン公式ブログ アップデート
 #640 ”2022YRSツーデースクールFSW Rd.1”



第641回 2022YRSツーデースクールFSW Rd.1

2022年第1回YRSツーデースクールFSWは天気予報が大外れで1日目、2日目とも雨。
それはともかくこの週末大いに走り回ったルノー仲間と記念撮影。

641

前列右から、
YRS初参加でルーテシア4RSトロフィーに乗るNさんは神戸市から
メガーヌ4RSのワタクシは大津市から
FSWは初めてのルーテシア4RSトロフィー乗りTさんはさいたま市から
2列目右から
ショートストロークシフター装備のメガーヌ3RSのOさんは伊那市から
エキゾーストノートがステキな黒のルーテシア4RSに乗るWさんは甲賀市から
ノーマルのメガーヌ3RSのOさんは東京都から
3列目右から
YRS常連でメガーヌ3RSのHさんは安房郡から
ルーテシア3RSに乗るスタッフYは伊賀市から
ノーマルのメガーヌ3RSに乗るOさんは秦野市から



第640回 ドライビングスクールのすすめ

1999年12月にユイレーシングスクールとして埼玉県の小さなカート場でドライビングスクールを始めてからずいぶんと時間が経った。昨年末までのドライビングスクール開催数は922回。延べ受講者は17,554名にのぼる。商業的背景を持たないドライビングスクールとしては誇らしい数字ではあるし、ここ10年ぐらいはリピーター率が95%を超えるのでジムラッセルレーシングスクールから受け継いだカリキュラムが功をなしているに違いない。もっとも、そう聞くと初めてユイレーシングスクール参加を考えられている方は二の足を踏むかも知れないけれど。
ドライビングスクールの中には雑誌やカークラブの依頼で開催したものもいくつかあるし現在進行形のものもある。「所有欲から使用欲への変換」と題した企画書から始まったYRS+エンジンドライビングレッスンももちろん含まれる。

『車は所有するだけでも楽しいけれど運転してこそ本当の楽しみに出会える。そしてうまく運転できればもっと楽しい。うまくなるためにも、もっと車を楽しむためにも一度運転を習ったほうがいい。ですからこれからもエンジンドライビングレッスンを続けていこうと思います』とは村上エンジン編集長の言葉。

その通りだと思う。クルマは道具だから使い方がある。使い方を知れば知るほどクルマを思い通りに動かせるようになる。クルマの運転で楽しいのは速く走らせることだけではない。思い通りに動かせてこそクルマの本当の価値に触れることができる。クルマに頼らず自分自身が能動的にクルマを動かしていることを実感することで、運転がさらにもっと楽しくなる。

2003年からブレずに運転の楽しさを追い求め通算72回目。4月14日(木)開催の2022年最初のエンジンドライビングレッスンの申し込み受けけが始まっている。

6151
2021年2回目のエンジンドライビングレッスン
参加者全員の笑顔で記念撮影

 

今回30回目を数える『1回の受講で10回分の収穫のあるドライビングスクール』がうたい文句で3月19、20日(土日)開催のYRSツーデースクールFSWも参加申し込み受付け中だ。現在申し込まれた方16名。うち2名がユイレーシングスクール初参加。

616
2021年2回目のYRSドライビングスクールFSW
2日間どっぷりクルマの運転に浸かり
達成感いっぱいで記念撮影
 

 

今、自動車は100年に一度の大改革の時代を迎えていると言われている。あとほんの何年かすると内燃機関の爆発力を味わうことができなくなる日が来るかも知れない。運転だけを純粋に楽しむためにクルマを動かすことが否定される日が来てしまうかも知れない。だから今、経験の多寡に関わらず理論的にクルマの動かし方を学べ、理論を実践に移すことのできるドライビングスクールの受講を検討してみてはいかがだろう。

クルマの運転に正面から向き合い自分のポテンシャルを掘り下げようとする方々の力になりたい。ユイレーシングスクール無二の方針だ。



第639回 息を飲む

生身の人間が自然の摂理と物理の法則との狭間をたどり続ける営みを、息を止めて凝視できる喜び。
航跡のように生まれ続けるブラックマーク ! はためくライディングウエア !

史上最多の22戦で争われるMotoGP2022シーズンは今週末カタールで開幕。日本GPは9月25日開催予定だ。

※ MotoGPの版権及び肖像権はDorna Sportに帰属します



第638 回 クルマは前に進めたい

紹介する動画は昨年のあるF1GPのあるコーナーを回るバルテリ・ボッタス選手の走り。録画しておいたものを再生中にテレビ画面を動画撮影したもの。
オーバースピードでターンインしたのか理由は定かではないけれど、マシンがオーバーステアにおちいってカウンターステアを当てているシーンだ。

以前からコーナリング中のF1マシンのタイヤがたわむのを見て、「あんなに変形するんだ」、「リムから外れないのかな」、「タイヤがかわいそうだよねぇ」、「ハイトが高いからああなっても前に進むのかな」、「タイヤがたわまなければサスペンションが壊れているね」、「ハイトの低いタイヤだと滑り出したらスパーッっていくのかな」、「たわみが反応を遅らせるから250キロのコーナリングができるに違いないね」、「だからF1はサイドウォールがたわみやすい13インチタイヤなのかね」、「F1パイロットでもミスはするんだなあぁ」、「クルマは前に前に進めなければだめだよな」なんて勝手に独り言ちて楽しんできた。

さて。シャーシから伸びるサスペンションアームの先にあるハブに取り付けられたホイールまでは剛体。一方、ビード部でのみでホイールに密着しているタイヤは弾性体だ。この共存する形の変わらないものと形の変わるものに力が加わった時、当然のことながら弾性体であるタイヤにまず変化が生じる。

円運動を始めると遠心力が働くのでクルマは円運動の外側に向かってふくらもうとするのだけど、4本のタイヤと地面の摩擦力=グリップが生むコーナリングフォースが求心力となって遠心力が相殺され、クルマはふくらむことなく旋回を続けることができる。コーナリングの仕組み。
ところが遠心力と求心力が釣り合っていたとしてもタイヤは形の変わる弾性体なので、実はタイヤが向いている方向と実際にタイヤが進む方向との間にズレを生じながらタイヤは回転している。タイヤは円運動の外側に向かってズレながら回転している状態にあって、このズレをスリップアングルと呼ぶ。スリップアングルは4本のタイヤ全てに発生している。このズレこそ弾性体であるタイヤに生まれる最初の変化。地面との間にズレが生じるということは摩擦力が増すことに他ならないので、結果的にタイヤのグリップもさらに高まる。だからタイヤが路面とズレること、すなわちはタイヤにスリップアングルが生じることは旋回性能の向上に寄与していることになる。ただし、それはある条件の元においてだ。

前輪のスリップアングルが後輪のそれより大きい走行状態をアンダーステア、後輪のスリップアングルが前輪のそれより大きい場合をオーバーステアと呼ぶことは度々触れてきた。前者はステアリングを切ってもクルマが曲がらない、後者はステアリングを切っている以上にクルマのリアが回り込む。いずれの場合も前輪なり後輪が横滑りを起こしているわけで、その間は駆動力なり制動力が進行方向に生かされていない。つまり失速していることになる。
この動画の場合、ある瞬間にリアタイヤが大きな横力を受けグリップを増して踏ん張るものの横力に押されて大きくたわむ。次に耐えきれなくなったリアタイヤがそれまでより大きくズレることで横力を開放するから元の形に戻る。グリップを回復したタイヤだけど横力に勝てず再びたわむ。その繰り返し。クルマが、タイヤが回転した分だけ前に進んでいないことが見て取れる。

この動画のような変形はしないにしても、我々が乗っているクルマのタイヤにも様々な力が加わって形を変えていることは容易に想像できる。タイヤがタイヤとして機能していない瞬間があるかも知れない。やはりタイヤをうまく使えるように心掛けることが運転の上達には欠かせないとつくづく思う次第。

2022年のF1GPはまもなく2月23日に行われるバルセロナでのプレシーズンテストで幕を開ける。新たに18インチ径のタイヤが採用されるなど車両規則が大幅に変更になり、史上最多の23戦を戦うという今年のF1GP。果たしてどんなシーンを届けてくれるのだろうか。開幕戦は3月20日のバーレーンだ。

 

それにしても、この動画に出会って思ったことふたつ。

本当にハイトの低いタイヤがいいのだろうか、というのがひとつ。技術の進歩がトレッドゴムを進化させて扱いやすくはなっているのだろうけれど、滑り出したらスパーッといきそうで全面的に肯定できないのが本音。おそらく時代の流れがそちらに行っても、自分にとっては永遠の課題なのかな、と。昔運転の下手だった自分でもテールが流れればカウンターステアを当てることで速さを手に入れることができたバイアスタイヤ。思い出は尽きない。

もうひとつは、クルマをスタートさせてから止めるまでどんなコースを走ろうと、たとえ速く走ることが目的であったとしても、まず速さに優先して、動き出してから止まるまでの前後輪のスリップアングルの合計が等しくなるような運転を目指してきたことは間違いではなかったし、これからもそうしたいなと。



第637回 安全運転練習

Kさんは2009年4月のYRSオーバルスクールFSWにロードスターに乗って初めてやってきた。その後、YRSオーバルレースFSWにも参加してくれるようになったけど、乗ってきたクルマはジネッタG4、ポルシェケイマン、ポルシェGT3、ドリフト用のS15シルビアなど多種彩々。そして参加してくれた回数はなんと81回! クルマの運転を謳歌しまくり。ところが2018年12月のYRSオーバルレースFSWを最後にバッタリと顔を見せなくなった。どうしたのかな、仕事が忙しくなったのかな、と思うことも度々。

ところがつい先だって突然電話。「今度のオーバルスクール行きま~す。ふたり連れて行きますから」と。

当日10数年前と同じ黄色いロードスターでやってきたKさんは、バイクにはまってしまってしまって四ツ輪との距離ができてしまったと自ら告白。で、この日は安全運転講習の名目で社員2名に練習をさせたいので付き添いとのこと。

小さなオーバル、大きなオーバルとKさんは昔取った杵柄とばかりに破綻を微塵も感じさせない走りでお手本を示す。クルマがわかっている人の走り。むしろバイクに浮気していた分、力が抜けて走りが洗練されたような。バイクに走った意味があったのかも知れない。

367-1
YRS初参加のMさんを追いかけるベテランのKさん

 

肝心の安全運転講習はと言うと、社員のSさんは以前にも参加してくれたけどNさんはユイレーシングスクールが初めてというより速く走ることも初めて。同乗走行で見てもらった走りが再現できずに悩んでいるのが見て取れる。

Kさんによれば社用車は年間7万キロも走るらしいから、ボクは日常の運転に役立つアドバイスを混ぜながら、Kさんはロードスターの助手席に乗せたり社用車の助手席にもぐりこんでアドバイスをしたり、無意識のうちに安全にクルマを動かせるようになってもらいたいと願いつつ。

で、ブレーキングの際のトランジションがよくわからない、あれだけ急に速度が落ちるのはボクがブレーキを蹴とばしていない訳がないと主張するSさん。そう言われても、誤解を解くために足の柔らかいADバンで再度同乗走行。『荷重が後でしょ、後、後ぉ。背中でしょ、さぁ追い越した。前に行って~戻ったぁ。引きずって引きずってぇ、横、横、横ぉ』なんてやったら「あぁ、そういうことでしたか」。『ね、蹴とばしてなんかいないでしょ』。
それならばとADバンに4人乗車で荷重移動の体感とトランジッションの作り方の説明を参加者全員に。効果てきめん。その後の走りを見た限りではブレーキを蹴とばす人はいなくなったしターンインの姿勢が良くなった。だから、もっと高い速度からターンインが可能になる。好循環。
結局Sさんだけでなく、同乗走行でブレーキを蹴とばしていると思った人は、ボクがトランジッションをとりすぎるぐらいにとってフロントタイヤに荷重がかかるのを待ってから、短い時間に雑巾を絞るように踏力を増やすことでさらにフロントタイヤのグリップを増やすから、制動力がまんま路面に伝わり大きな減速Gが瞬間的に立ち上がる。その一連の流れを蹴とばしていると勘違いしていたようだ。実際は、スロットルオフからブレーキペダルを踏みこむまでの間は誰よりも長いはずなのに。
大きな減速Gを発生させることができるということは短い距離で速度を落とせることと同義。だからそれができれば、ブレーキング区間の手前の方で必要な減速ができるから、残りで踏力を抜いてフロントタイヤの荷重を減らし、次に行うだろうコーナリングに備えることができる。スレッショルドブレーキングができればクルマに余力を与えることができる。

366-4
ADバンはすごく教育的なクルマでした
CVTでも速い
4人乗車のほうが安定していたのには驚いた
 
SさんとNさんが周回を続けます

 

Kさんにたまにはクルマにも乗ってほしいぞ、また遊びにきてほしいぞとたきつけるために懐かしいKさんの写真を。

637-2
2010年11月20日
YRSオーバルレース入門クラスを走るKさんのジネッタG4

637-3B
2011年5月28日
1回だけ開催したP15でのYRSオーバルレースを走るKさんのロードスター

637-4
2013年3月10日
YRSツーデースクールFSW
ダブルコーンスラロームを走るKさんのGT3
 
ユイレーシングスクールを
社員の安全運転講習に使ってくれるなんて嬉しい限り
Kさん また遊びに来て下さいね



第636回 Mさんの場合

20年近くクルマを持たない生活をしていたというMさん。ご夫妻で軽井沢を訪れたある日のこと。黄色いメガーヌRSが目に止まりひと目惚れしたそうな。で、虜になったのをきっかけに今後のクルマ生活のことを考えて、敢えてメガーヌRSトロフィーMTを入手。ルノーがらみで見つけたこのブログからユイレーシングスクールにたどり着き、先日のYRSオーバルスクールに参加してくれた。

366-1
裏のストレートから下のコーナーに飛び込む

366-2
下のコーナーを立ち上がる

366-3
Mさんとホントに久しぶりの愛車

 

84頁もあるユイレーシングスクールの教科書にひと通り目を通してから参加してくれたMさん。ブランクもあるかも知れないけど、日常では味わえないGに悪戦苦闘だった様子。それでもこちらの依頼に応えて感想文を送ってくれた。

トム・ヨシダ先生 日曜日のオーバルスクールにメガーヌで参加させて頂きましたMです。寒い中ご指導ありがとうございました。

初めての参加でしたし普段街乗りしかしていないので経験豊富な方たちと一緒に走っても大丈夫かと緊張しておりましたが、先生方は初心者の私にとても丁寧にご指導くださいましたし皆さん気さくに話しかけてくださり和やかな雰囲気で練習できたのはありがたかったです。

最初の同乗走行で前後左右のGの大きさに驚きました。そしてそのGに耐えるために踏ん張り過ぎて呼吸を忘れ酸欠で気分が悪くなるほどでした。実際自分が運転してみるとハンドルもブレーキもアクセルも上手く使えず先生のピタッと安定したドライブとは大違いで何度もコースオフしました。
しかし自分にとってまず大切だったのはアドバイス頂いたようにドライビングポジション、視界を広く保つこと、リラックスして呼吸を止めないことなどもっとも基本的なことでした。

様々なことを意識しながら練習を重ねるうちに最後はなんとかコースオフせず走れるようにはなりましたが安定した走行を体感できないまま終了となりました。しかし自分の技術、体力と集中力ではあれが限界という感じでした。

実際の運転はまだまだでしたがドライビングの理論や哲学を教わり同乗走行で一連の荷重移動を体感できたのは大きな収穫でした。そしてアクセル全開やクルマが滑ってコースオフも公道ではできない貴重な体験でした。ヘトヘトになるまで練習しとても満足でした。このハードな?練習の成果かでしょうか、帰りの高速はゆとりを感じながらドライブ出来ました。

今回のスクールでの経験をいかし普段から荷重がどうかかっているかを意識しながら安全に楽しくドライブしたいと思います。そしていつかスムーズで美しいドライビングができるようになりたいと夢見ています。是非またスクールに参加させて頂きたいと思います。その時はよろしくお願い致します。ありがとうございました。

 

Mさん。最初はメガーヌRSの動力性能の高さに翻弄されていたようだけれど、午後になると小気味良いエキゾーストノートを置き去りにしながら周回を重ねていました。奥さんもマニュアルシフトを操るそうです。次回はご夫婦で遊びに来て下さい。お待ちしています。