トム ヨシダブログ

第330回 ヨーモーメント

日常ではめったに(!?)経験することはないけれど、厳密に言うとターンイン直後、すなわちコーナリングを開始した瞬間、実はアンダーステアが発生してる。

タイヤは路面とズレることでグリップを発生する。まず最初に舵角のついた前輪に横力が働いてズレ、スリップアングルがつき ≒ グリップが発生する。この瞬間に後輪には横力が働いていないからスリップアングルはついておらずグリップも大きくなってはいない。前後輪のグリップの大きさに差がある状態。
前2輪で操舵するクルマの宿命で、次の瞬間に後輪にもスリップアングルがつけばスムーズな旋回運動に入れるのだろうが、クローズドコースでちょっと速く走ろうとすると、『前輪のグリップが後輪のそれより大きい』のだからステアリングを切った通りに動きそうなものだけど、ステアリングワークが雑だったりターンインで過度の前過重になっていると、『特にアウト側前輪が悲鳴を上げてた結果』グリップの限界を越え見事な『手アンダー』が発生してしまう。

もともと、前2輪の操舵だけだとそのクルマの旋回中心は図のように後車軸の延長線上にあるわけで、クルマのフロントは外に逃げやすい傾向にある。まして前後の重量配分に差があるクルマでは前輪が悲鳴を上げやすくアンダーステアも発生しやすい。

330-1
ある半径のコーナーを前輪にしか操舵装置がついていないクルマが回っている
旋回中心は後輪の回転面に対する垂線の延長線上にあるから
後輪より先を行く前輪は軌跡の外側を通ることになり
図のようにフロントが外に逃げやすい


だからYRSオーバルスクールで、はでなアンダーステアを出している受講生には「切り初めに一瞬手を止めてみたらどう?」と言うことにしている。前輪に舵角を与えた瞬間、前輪のスリップアングルがそれ以上大きくならないようにステアリングホイールを回す手を止めて、後輪が前輪のいた位置に到達するのを待つ。後輪が遠心力を受けスリップアングルを生じグリップが増す。前後輪のスリップアングル ≒ グリップが均等になることを期待する。それから改めてステアリングを切り足す。そうすることでアンダーステアを発生を押さえ、クルマによっては低減することができる。

要するに、ホイールベースの分だけ反応が遅れる後輪を『待つ』。待つことによってクルマの後方で発生しがちなヨーモーメントを、ホイールベースの間で発生させるようにしむけ、人的努力でニュートラルステアを実現しようというわけだ。


一方、そのクルマの運動特性を解析し機械的にアンダーステアを回避しようという試みが4コントロールの逆位相。図のように前輪に舵角がつくと同時に後輪に逆方向の舵角をつけ、前後輪同時にスリップアングルを生ませようという仕組み。理論上は『待つ』ことをしなくても前輪のスリップアングルだけが増加することを避けられる。

330-2a
前後輪が逆位相でステアする場合には
4輪の回転面に対する垂線の交点が旋回中心になる
結果4本のタイヤが描く軌跡はそのコーナーの半径と相似形をなすから
図のようなニュートラルステアが実現できる


まだ新型メガーヌRSを走らせた時間が少ないので4コントロールの効能は少ししか感じていない。後輪がどんなタイミングでどのようにステアするのかわからないし、ルノーに聞いても教えてくれないだろうし、教えてくれても理解できないだろうから、ここでは後輪が逆位相にステアすることでホイールベースの長さがないに等しくなり、単純に前輪操舵のクルマより、コーナリングの際に舵角が少なくてすむことと、内輪差が少なくなることを確認しておこう。

それにしても、これだけの技術だからクルマの運動特性を理解したほうが4コントロールの利点が明白になる。かと言って、他力本願的な運転を勧めるわけでは決してなく、人的努力も怠らないようにしたいものだ。だから、みなさんユイレーシングスクールに来て下さい。


◎ YRSオリジナルビデオ 『待つ』
※ IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい

・トライオーバルを走る(26秒に最終コーナーの『待つ』ステアリングワークが)

・筑波サーキットコース1Kを走る(1分6秒に1コーナーでの『待つ』ステアリングワークが)



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