トム ヨシダブログ

第329回 自転軸

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2018年最後のYRSオーバルスクール
参加者全員で記念撮影


ユイレーシングスクール一押しのカリキュラムがYRSオーバルスクール。
「楕円形のコースをグルグル回るだけで面白いの?」という声があるのは知っているけど、それはオーバルコースを走ったことのない人が言う言葉。オーバルコースを走るのは間違いなく面白いし楽しいし、ためにもなる。

なぜか。一方向にしか走らないオーバルコースでは、速く走ろうとすると全周にわたってタイヤの限界を余すところなく使い続けなければならない。左右のコーナーがあるロードコースではどこかで妥協しながら平均速度を上げていくという作業が必要だけど、オーバルコースでは限界の線上でクルマを操り続ける必要がある。

クルマが加速、減速、旋回を繰り返す時、タイヤは駆動力、制動力、コーナリングフォースを発生する。クルマを限界で走らせるには、例えば10のグリップがあるタイヤを履いていた場合、タテとヨコに使うグリップの和が常に10になっていなければならない。摩擦円の理論だ。タイヤに余力が残る9.5でもだめだし、限界を越えてしまう10.3でもだめだ。その上、走行中のタイヤのグリップはタイヤにかかる荷重とタイヤの滑る量で変化する。設計上はグリップ10のタイヤでも、走行中は8になったり13になったりする。すると今度は増えたり減ったりするグリップに応じてタテとヨコの和が常に100%になるように操作する必要がある。しかも、クルマにはそんなあやふやなタイヤが4本もついているのだ。

YRSオーバルスクールは常連の参加が多いけど、彼ら彼女らはまずアンダーステアを出さない。速く走っているのにアンダーステアとは無縁だ。それは駆動方式に関係なく後輪を使ったコーナリングができるからだ。つまりターンイン後に、後輪にもスリップアングルがつくような操作をしているから、ちょうど4コントロールの逆位相が機能した時のようにホイールベースの中心あたりに自転軸をおいたようなコーナリングができる。

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クルマは自転しながらコーナリング(公転)をする
(写真はカタログから拝借)


4コントロールが装備されていないクルマの場合、操舵装置のついていない後輪にスリップアングルがつけるのには遠心力に頼るしかない。速度が上がれば遠心力も増すから、フロントが逃げない範囲でより高い速度からターンインすれば後輪にも十分なスリップアングルをつけることができる。この時、舵角を必要以上に増やさないのがコツだ。前輪のスリップアングルがアンダーステア方向に大きくなっていくと後輪のそれはそれ以上大きくならないからだ。

4コントロールがついていれば、コーナリング中にステアリングを切り足せば旋回半径を小さくできるから、真っ直ぐ進入して真っ直ぐに出て行くような走り方も可能なはずだ。いずれにしろ、クルマは後輪を使って曲げなければならないのは同じだ。

ある程度クルマを速く走らせないと『 どうするとどうなる 』といった人間の操作とクルマの挙動の因果関係を理解しにくい。だから、慣れれば100キロ超からターンインできて、10秒に1回同じコーナーが現れるオーバルコースでの反復練習がうってつけなのだ。

もちろん、常連組も最初から速かったわけではないし、失敗なしで走っているわけではない。失敗はするけど大きな失敗はしないし、失敗してもごまかす方法を知っているからクルマを前へ前へと進めることができる。そのうちにとんでもなくうまくいく時がある。そのうちにタイヤの限界を越すすれすれの状況を維持できるようになる。そんな、自分とのやりとりを延々と続けられるのだからオーバルコースが面白くないわけがない。


◎ YRSオーバルスクール動画
IE(Internet Explorer)でビデオを視聴するのが困難のようです。Chromeやsafari、Firefoxなどのブラウザをご利用下さい。

↑ ブレーキングで前に荷重がかかりすぎている場合はターンインして下り始めると右前輪が悲鳴を上げる。前過重を抜かないようにフロントを拾う。

↑ 下のコーナーのアプローチは斜滑降のようなもの。外に逃げようとするクルマの向きを変えるのは永遠の課題。

↑ 下りかけるとフロントがストンと落ちる。その直後、前過重になり軌跡が変わる。




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