トム ヨシダブログ

第1回 ユイレーシングスクール

 日本でクルマの運転を教えるようになってから、もうすぐ11年。安全に思いどおりにクルマを動かすためのコツを、わかりやすく説明するささやかな活動も二巡目に入っている。この10月までにユイレーシングスクールを受講してくださった方は延べ11,111名。幅広い年齢層の方が、じつに様々なクルマで参加してくれた。


   
 

 今までの受講者の最高年齢は68歳。それ以降70歳になる今年も続けて参加してくれている。60歳で初めてスクールに参加された方はクルマの運転がよりいっそう楽しくなり、70歳になる今年もユイレーシングスクールが主催するスクールレースで孫ほどの歳の若者に混ざって優勝争いをくり広げている。
   もちろん若い人が主流ではある。1年間に10回もスクールに参加してくれた大学生もいた。何度かスクールに参加してくれた方が、免許をとる前の息子さんを連れて受講されたこともあった。20代で初めて受講した青年は、スクールとスクールレースに通っているうちに、四捨五入すると40歳になるオジさんになった。
 
  クルマの運転は楽しい。身体能力が高いからと言って、それだけで運転がうまいわけでもない。反射神経が多少衰えたとしても、そのことだけで運転がへたになるわけではない。血気盛んな若者が感じられないクルマの動きを年配者だから感じられることもある。運転技術満点の熟年者でも、集中力や体力では若い人にかなわないこともある。若い人も高齢者も、ことクルマの運転に関しては年齢や性別に関係なく同じ土俵で運転技術を磨くことができる。運転に興味を持てば、一生クルマと楽しくつき合っていける。
 
  ユイレーシングスクールではふだん使っているクルマでスクールに参加してもらう。クルマはなんでもかまわない。ランボルギーニのムルシェラルゴが注目を集めたスクールがあったかと思えば、スズキのジムニーが倒れそうになりながらコーナリングの練習をした日もあった。何度かのメールのやりとりで安心できたからと三菱デリカスポーツギアという背の高いワンボックスカーで来られた方もいた。
 
  クルマはよくできた機械だ。ポルシェと軽自動車の動力性能には確かに大きな隔たりがあるが、基本的な運転操作に変わりはない。運転が好きならば、どちらも同じようにクルマを動かすことを楽しめる。速くなければ楽しくない、というわけでもない。パワーなんてあってもなくても一緒。クルマを走らせる醍醐味は、クルマが思い通りに動いた時の快感なのだから。
 
  老いも若きも、どんなクルマに乗っていようとも、運転を楽しみたいという意識さえあればクルマは大きな喜びを与えてくれる。クルマは単なる移動の手段ではないし、リビングルームの延長でもない。クルマは大の大人が一生懸命になれるほど大きな存在だ。
 
  確かに名前にレーシングの文字が躍るものだから、特殊な運転を教えるのではないかと敬遠されることもあった。どんな内容なのか問い合わせもたくさん頂戴した。しかしクルマの運転は、走るところがサーキットであれ公道であれ操作自体に変わりはない。違いがあるとすれば、走る時の状況が異なるだけだ。具体的なカリキュラムを説明すると、迷っていた方も全員が受講してくれた。

  ユイレーシングスクールが目指すもの。それは、安全にクルマを思いどおりに動かすことのできる運転技術を身につけてもらうこと。そのために初心者からベテランまで楽しく練習できるカリキュラムを用意している。必要があれば車庫入れのアドバイスもするし、ドライビングスクール卒業生を対象にしたスクールレースも開催している。本格的なレースに参加するためのアドバイスもする。「クルマの運転のことなら任せて」という意味でのつけた名前だ。
 
  運転がうまくなるためには練習が必要だが、目的のはっきりしない練習は意味がない。運転操作についての知識も必要だが、知識と実際の運転が連携していなければ役に立たない。
  せっかくのクルマをもっと楽しみたい。それにはまず、運転に興味を持つことだ。
 
  いつもの交差点を曲がる時。あなたがステアリングを切るとクルマがどんな動きをしたか覚えておいでですか?
 
 
※  今年のドライビングスクールはまもなく終了するが、来年2月、ユイレーシングスクールは赤いルノー トゥインゴGTと一緒に12年目のカリキュラムをスタートさせる。このかわいらしいホットハッチ。ドライビングスクールの先導車として、あるいは教習車として使うためにルノー・ ジャポンが提供してくれたもの。大いに活用させてもらうつもりだ。

ユイレーシングスクール:http://www.avoc.com/


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