第124回 クルマだからできること 1
16年目を迎えた今年。3種類のYRSスクールレースの中でしばらく中断していたYRSエンデューロとYRSスプリントを再開することにした。
YRSスクールレースは一度でもユイレーシングスクールのカリキュラムを受講したごくごくふつうの人にモータースポーツでしか味わえない醍醐味を味見してもらおうと始めた。手短に言えば、ジムラッセルレーシングスクールの真似だ。
当然のことながら、参加するクルマはふだんの足。レース用に特別な装備はしてはいけないことになっている。ライセンスも要らない。必要なのは長袖と長ズボン、ヘルメットにグローブだけ。
本格的なレースに参加するためにはそれなりの準備が必要で、その手間と費用を考えて「レースなんて自分には関係ない」と思っている人にヨーイドンを体験してもらおうというのが最大の目的だ。もちろん、運転技術の向上に役立つことは言うまでもない。
ところが、初めのうちは卒業生に呼びかけてもなかなか前向きな反応が返ってこなかった。自分の経験からして、レースに出ることで一皮剥けるのは間違いなかったのだが。
そこで卒業生にこんな話やあんな話を投げかけてみた結果、YRSエンデューロもYRSスプリントも大成功を収めた。
『他のスポーツの場合、昂揚感を得るためには一流のアスリートになる必要がります。そのためには莫大な時間と努力が必要です。それに加えて身体能力が高くなければ本当の醍醐味はわからないかも知れません。しかしモータースポーツでは手順を間違えなければ、アマチュアでもその領域に達することができます。それがモータースポーツをみんなに勧める理由です』。
※ 自慢にはならないが、実は運動が大の苦手。小学校に入学する前から病弱で体育の時間はもっぱら見学。そのせいか、いまだに逆上がりもできないし跳び箱も跳んだことがない。そんな話を卒業生にすると怪訝そうな顔をするけど本当の話だ。小学校に入る前から眼鏡をかけていたほど視力が悪かったから、レースに憧れてはいたけれど、プロのレーサーになることなど想像すらできなかった。でも、そんな自分にクルマは大いなる自由を与えてくれた。
サイドバイサイド、テールツーノーズ、ドアツードアのYRSオーバルレース
※ 3番目のYRSスクールレースとして始めたのがYRSオーバルレース。広場にパイロンで楕円形のコースを作り1周20秒足らずの競争を繰り広げる。
日本では馴染みのないオーバルレースだから参加者集めに苦労することがわかっていたから、YRSエンデューロとYRSスプリントが軌道に乗って卒業生がレースを楽しめるようになった2004年に始め今にいたっている。
卒業生をモータースポーツに引きずり込むための悪魔のささやき(!?)は次回に続く。