トム ヨシダブログ

第68回 流がす、流れる、流れを止めない


今はなきリバーサイドインターナショナルレースウエイ コースレイアウト

スタートラインを越えて5速に入れる。ホームストレートは後半が少し登り。全開で左にステアしながら、出口が下っているから先の見えない1コーナーを目指す。1コーナーをクリアすると、しばらく直線が続く。
OHVの3Kエンジンのタコメーターの針が8,500回転に近づく頃、ダブルエッセスの肝である2コーナーが迫る。最初の右コーナーのインには観客席を兼ねた土手が迫り先が見えない。5速全開で、さらに右足に力をこめながら2コーナーの見えない先を見据える。
スロットルを閉じ、ゆっくりと右足をブレーキペダルの上に移し、ブレーキパッドとブレーキローターがわずかに接するぐらいの力を瞬間的にこめる。同時にステアリングを指2本分ぐらい右向きの力を入れて、すぐに脱力。間髪をいれずにバンッとスロットル全開。

KP61スターレットは2コーナーを曲がり始めると、ある瞬間に、横Gを受けながら、それでいて眼前の景色が左右に流れないという不思議な時を迎える。


4気筒 1300cc OHV 168馬力のエンジンを積むKP61スターレット

リバーサイドインターナショナルレースウエイ

クルマがコーナリングする時、基本的には公転と自転が同じ率で進む。しかし、リバーサイドインターナショナルレースウエイの2コーナーのように、速度が高いコーナーでより速く走ろうとすると、この機械的原理を無視することが必要になる。
コーナリングで肝心なのはフロントを逃がさないことだ。最低でもフロントは自分のイメージするラインに乗せておかなければならない。しかしリアがフロントの後を追いかけているうちは、まだタイヤのグリップが遠心力に勝っているわけだから決して速くはない。
速く走るには、フロントが流れながら軌跡を描く速度で走りながらリアの流れをコントロールしなければならない。それが達成できた時、遠心力と微妙にバランスした4輪がアウトに流れる。操作が間違っていなければ、不可能であろうと思われる速度でもクルマは公転と自転を続ける。そして、リアのスリップアングルがフロントのそれを上回り、かつロールが最も深くなる直前、クルマは自転を止めて公転だけを続ける。


ポルシェGT3がテールブレイクしながら加速する

昔のことではあるけれども、ドリフトとはそんなもんだと経験していたたから、今で言うドリフトにはかなりの抵抗がある。それに興じる人たちの行儀が良いとは言えないことも、ユイレーシングスクールをドリフトから遠ざけていた。
しかも、最近のタイヤが最大のコーナリングフォースを発揮する時のスリップアングルはごくごく狭いから、コーナリングで『流す』ことは、速さにも安全にもつながらない。近年のドリフトは単にホイールスピンに過ぎない。本来のドリフトとは異なる。
だから、ユイレーシングスクールでは昨年までドリフトは『ご法度』だった。


同じくGT3が

しかし年末に水割りをなめながら、意識的に慣性力でテールをブレイクさせる経験はしておいても邪魔にはならないナ、と思った。
それで今年に入ってから2回のYRSスキッドスクールを開催した。

これが成功。とにかく、まずテールをブレイクさせるのに参加者全員が四苦八苦。なぜかって?テールが流れる前にそれと察し、修正してしまうからだ。だから運転技術から言えば文句なしなのだが、『リアを思いっきり流してみて下さい』という壁をなかなか破れないというジレンマに陥った。
それでも、慣れるにしたがってテールをスライドさせたまま『最長スキッド距離』を競えるまでにはなった。


同じくGT3も

慣性力をコントロールすることもドライビングポテンシャルの向上には役立つはずだから、そして何より楽しいから、ユイレーシングスクールではスキッドスクールを通常のカリキュラムに加えることに決めた。


86が


BRZも

プリウスも


RX-7も


FFのフォードフォーカスだって


BMW130が


ロードスターが


RX-8も

※現在日程が決まっているYRSスキッドスクールは12月だけですが、追加の日程も検討中です。決まり次第ホームページで告知しますので、ぜひおいで下さい。


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