トム ヨシダブログ


第89回 ユキはよいよい、だったけど…


こんなんでした。須走の旅館にて。

今年は雪が多い。YRSリトリートでの雪かきも3回を数えた。今も降っている。午前中は気温が高かったので降るそばからシャーベットになっていたけど、冷えてきたら積もりだした。明日は新記録の4回目かな。

で、先週末に今年最初のスクールとスクールレースを開催するはずだったのだけど、金曜日にコースが完成した頃から雲行きが怪しくなってきた。宿に戻っていろいろな天気予報片っ端から見てみたが、肯定的な予報は皆無。コースが水没するくらい雨が降っても決行してきたが、道中のこともあるので涙を飲んで夕刻に中止の告知。

天候不順で中止にしたのは、14年間で2回目。前回も雪だったっけ。

なんとか日曜日のオーバルスクールだけでもと懲りずにタブレットとテレビにかじりつくけど、状況は悪化するばかり。岡崎市からの参加があったこともあり、土曜日午前中に中止を決定。今回はユイレーシングスクールに初めて参加してくれる人が半数にのぼっていたのでぜひやりたかったのだけど、日曜日にコースに行ってみて判断が間違っていなかったことを確信。

翌月曜日は東京で打ち合わせ。未明まで東京方面への東名が御殿場から不通でやきもき。大津に帰るための新東名も三ケ日まで通行止め。「ユキめっ」と思いつつも、こればかりはどうにもならない。何もなかったことを良しとしなければ。


金曜日の朝。コースを作る前には富士山が拝めてたのに。


雪がやんだ日曜日。備品運搬車もトホホ。


本当ならばオーバルコースのストレートなんだけど。


探すのが大変だった。

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ホワイトバレンタインデーかな。

パソコンに向かう前に用事で県庁まで出かけたのだけど、湖西道路も161号線もノロノロ。ふだんの倍の時間がかかってしまった。

遅々として進まないので周囲のクルマの動きを観察した。運転を教える立場の人間としての個人的な意見なのだが、やはりクルマを運転している人はふたつに大別できる。

ひとつ目は、雪が降っていて、たまたま気温が低くないので積もってはいないのだが、晴天や雨天との時と同じような感じで運転している人たち。車間にしてもそうだし、前のクルマが減速を開始した時の反応の遅さもそうだ。雪の日には事故が多いようだが、それは、雪道が滑るのではなく、滑りやすい路面を走っていることに対する意識のしかたに問題があるのではないのか。

ふたつ目は、雪=滑ると思っているのだろうか、やたら慎重になって渋滞の原因になってもおかまいなしの人たち。安全を見越して運転するのは大切なことではあるけれど、交通の流れの中にあって自分がどういう位置に置かれているかを自覚したほうがいいのではないか。個人個人の目的を達成するにも、交通という体系の中に組み込まれなければ始まらないのだから。

ふたつに共通するのは、クルマをなにげなく運転していることだ。少しでも運転について考える時間を作れば、誰でもドライビングポテンシャルは向上するのだけどな。


第86回 エンジンドライビングレッスン


終わってからの記念撮影は笑顔、笑顔

エンジンという雑誌がある。時計やクルマやファッションなど大人の男が心引かれるアイテムに焦点を当てて創られている。読まれた方もいると思う。

そのエンジン誌が主催するのがエンジンドライビングレッスン。実は2003年に当時の編集長だった鈴木正文さんに企画を持っていって実現したものだ。
とにかく、毎号毎号これでもかというほど高性能で魅力的な(しかも高額な)クルマが掲載されている。個人的に大きなクルマは性に合わないのだがそれらのクルマの良さは十分に理解できるし、現実にはそういうクルマを所有している人もいるわけで、そんなクルマを所有している人に運転を上手くなってほしいものだ、と考えるのは自然な流れだった。

編集部近くのお寿司屋さんで昼食をごちそうになりながら、「編集長、クルマは使ってなんぼのもんです。読者が思いっきり愛車を走らせる環境を用意して、読者に愛車を粋に走らせるコツを教える機会を作りましょう。クルマは使わなければもったいない。読者が所有欲を使用欲へ転換できるように促すのもエンジンの使命のひとつです」と熱く訴えたことを覚えている。

2003年暮れ。試験的に開催。これが参加した読者に大好評。聞きたかったことを教えてもらえた。自分の操作が間違っていたことに気づいた。運転がこんなに楽しいものだとは気がつかなかった。クルマは操作次第で安定して走るものだとわかった。等など。編集部が集めたアンケートには、運転に目覚めた人達の声があふれていた。

ということで、2004年からは定期的に開催することになった。年によって開催数は異なるが、10年間で46回、延べ1,204名の読者が受講してくれた。

日本に数台しかないというクルマも参加した。ポルシェばかりが20数台も集まった回もあった。きれいにレストアされた古いクルマにも同乗させてもらった。下は20代から上は70代まで、クルマのことになると話が尽きないといういい大人が丸一日、クルマ以外のことを頭から追い出してクルマを動かすことだけに没頭する。そんなエンジンドライビングレッスンが今年も3回開催される。


順番待ちのクルマを見るだけで壮観

午前中に行うオーバル定常円を走る


アドバイスに耳を傾けるどの顔も真剣


エンジン読者はみな紳士。それでいて熱い


参加車もバラエティに富む


高性能なクルマこそ正確な操作が求められる


参加される方もさまざま


午後は筑波サーキットコース1000を走りっぱなし


心地よい疲労と笑顔。最も嬉しい瞬間


ユイレーシングスクールではこんなクルマも作った


鈴木編集長に試乗してもらったことも

※ロードスターを改造したこのクルマ。アメリカのSCCA車両規則に合わせて作った。夢は卒業生とこのクルマでアメリカのレースに挑戦すること。
※写真は過去に開催したエンジンドライビングレッスンから。撮影は神村 聖さん、版権はエンジン編集部にあります。


第80回 なんだかなぁ…

敦賀市を基点とし大津市まで続く国道161号線。必要度が高い割りには、和迩から大津市中心部までは商業地を貫いているため流れがよどむことが多い。少し離れたスーパーに買出しに行く時は国道を使うが、遠出をする時にはその山手側を走る湖西道路を使って一気に京都東インターに向かう。

で、まもなく湖西に越してきてから3年が経つ。使うことの多い湖西道路。少しばかり気になることがある。大津方面に向かってふたつ、敦賀方面に向かってひとつある計3ヶ所の「ゆずり車線」でのこと。
もともとは有料道路だったのだが、国道の渋滞を解消するために全線追い越し禁止にして無料開放されたとか。ところが流入量が増えたのが理由(?)で正面衝突事故が多発(!)したとかで、低速走行車を追い越せるように部分的に2車線化したそうな。もともと片側1車線で設計された経緯から、ゆずり車線は本来の車線の左側に張り出す形で設けられている。そのゆずり車線の走り方の話。

通勤で利用するわけではないので使う頻度はそれほど多いほうではないが、湖西道路に乗るとほとんどの場合時速80キロぐらいの流れに身をおくことになる。制限速度60キロの自動車専用道路なのだが、「交通の流れ」はそれよりも20キロほど速いことが多い。日本海側と太平洋側の国道を結ぶ要でもあるからトラックが多いのだが、彼らのほとんども制限速度を守っては走っていない。関西からの観光バスも多いが、彼らもまた、制限速度を上回る速度で走っている。

ところが、たまに制限速度をピッタリ守って走っているクルマに遭遇する。「交通の流れ」はそれより速いわけだから、必然的にそのクルマの後ろには『減速を強いられたクルマ』が数珠つなぎになる。良識あるとおぼしきそのクルマはトラックにあおられたりするのだが、それでも動ずることなく制限速度を守って走り続ける。
しかし、制限速度で走っていたはずのそのクルマがゆずり車線のある所にさしかかるやいなや、80キロほどに速度をあげるのだ。で、ゆずり車線が終わると再び制限速度を守るかのように速度を落とす。
最初の頃は『2車線にならないと怖くて速度をあげられないのかな』なんて想像をしていたのだが、何度か出会ううちに、もちろん相手は異なるのだが、ゆずり車線で速度をあげる理由がわかった。運転に自信がないのではなく、確信犯なのだ。

ゆずり車線の手前には「この先ゆずり車線、左側追い越し禁止」の看板がある。しかし、先を急ぐクルマの中にはゆずり車線を使って前のクルマを追い越す輩がいることも事実。要するに、かの御仁は違反行為であるゆずり車線を使っての追い越しをされないように、その区間だけ速度を「後続のクルマ」の速さに合わせていたというわけだ。だからゆずり車線が終わると、順法精神を発揮して制限速度での走行に戻ることになる

そこでふたつの疑問。ひとつは、この人達は交通法規を守り守らせることを是としているのに、一部区間だけとは言え法定速度を超えて走ることに矛盾を感じてはいないのか。
もうひとつは、渋滞解消のために2車線化したはずなのに、なぜ増設した車線を走行車線にしなかったのか。湖西道路を走るクルマ全てが拡幅された部分の左側を通ることにすれば、従来の車線が本来の目的である追い越し車線となり渋滞解消に役立つのではないのか。
前後を監視車に挟まれ50キロで走る大きな重機を積んだトレーラーがゆずり車線に移動する場合は抵抗がないかも知れないが、先の例のように速く走れるクルマが制限速度を守って走っている場合は、左に寄りたくない気持ちがわからないでもない。しかも名前がゆずり車線。『なんで俺がゆずらなければならないんだ』となっても不思議ではない。人的努力がなければなりたたない交通規則は不完全のそしりをまぬがれないだろう。

白線を引きなおすだけで交通の流れが安全かつ円滑になれば、それこそ法律の精神をまっとうするということではないのか。

制限速度の設定も問題だ。法律で定められているようだから簡単には変更できないのだろうが、概して日本の制限速度は低く設定されすぎだ。実情に即してはいない。それでは運転する人間の危機感を殺ぐばかりだ。お上が定めた制限速度で走っているのだから安全、という誤解を生みかねない。
速度を抑えて走ったからといってクルマを運転する危険度が減るわけではないのに、単純に走行速度を抑えている。まるで事故が起きることを前提とし、起きた場合の被害を少なくするための設定ではないかと疑いたくもなる。

例えば、自宅のあるカリフォルニア州ファウンテンバレー市を貫く405フリーウエイとブルックハーストストリートのランプ。270度ぐるりと回るコーナーには35マイルの標識がある。もしここを40マイルで走ろうとすれば、いや37マイルでもいい、ほとんどのドライバーは怖い目にあうはずだ。35マイルは規制値ではなく、ふつうの人にとってそのコーナーの限界速度なのだ。

例えば、2000年1月1日をもってアメリカのフリーウエイの制限速度が連邦法ではなく州法で決められるようになった。
で、モンタナ州のように制限速度を撤廃した州も現れ、一時期はそれこそ高性能スポーツカーの聖地になった例もある。
で、カリフォルニア州は都市部の制限速度をオイルショック時に設定された55マイルから65マイルに引き上げた。当初、安全面から変更に反対する声もあったようだが、結果的には渋滞が減ったばかりかフリーウエイでの事故も減ったとする記事を読んだことがある。55マイルを上限として走っていたクルマが減り、「交通の流れ」全体が速くなった結果だろう。
最近のデータは持ち合わせていないので事故の発生件数とかはわからないが、流れが速くなった結果ドライバーに緊張感が生まれ、事故に結びつく運転が減ったとも想像できる・
実際、アメリカに帰るたびにものすごい速さで流れる405に乗って驚く。65マイル制限なのに75マイルは当たり前、時間帯によっては80マイルで流れている。それでも目立つことをしなければ速度違反に問われない。

いろいろな考えの人、様々な価値観の人が混在する「交通の流れ」の中で安全に効率よく運転することは難しい。運転している間は、ドライバー同士がお互いのコミュニケーションをとることができない。同じ空間を共有している人が何を考えているのかわかりようがない。

だから、違反を奨励するつもりは毛頭ないけれども、決められた数字だけにこだわるのではなく、自分が飲み込まれている「交通の流れ」を乱さないように心がけて運転するのが安全への第一歩だと考える。

日本の交通規制については言いたいことが山のようにあるけれど、こればかりは法律で決められたことだからなんともしようがない。しかし、法律の精神が、安全かつ円滑な交通の流れの実現にあるわけだから、もっと実情に即した運用がされてもいいのではないかと思う。

【追記】
・ゆずり車線の看板の下には英語で『Slower traffic lane』と書いてある。湖西に来た時からゆずり車線って変な名前だな、なぜ登坂車線と表記しないのかなと思っていたのだが、たぶんゆずり車線の一部が下っているので帳尻を合わせるための名前なのかなと想像している。
・モンタナ州はその後、相次ぐ高性能スポーツカー事故に対応するために制限速度を設けたというニュースに触れたことがある。


第66回 自由を求めて

この世の中に、全ての束縛から解き放たれた自由はあり得ない。人は制約を受けながら自由を模索する。

クルマの運転も同じ。いかに高性能なクルマでも、その性能の全てを無条件に堪能することは不可能だ。
クルマは人間の能力を拡大してくれる最良の友人ではあるが、クルマが自由をもたらしてくれるわけではない。

我々は目的を定めてクルマを動かす。もろもろの制約の中で安全に、かつ効率良くクルマを動かそうとイメージする。
そのイメージが、『クルマが動きやすい状況』に合致していれば、もろもろの制約などなんのその、クルマは実に生き生きと動いてくれる。
操る人間は、クルマが目的に近づけてくれることに無上の喜びを感じる。

20m間隔で並べられた11本のパイロン。もちろんパイロンに沿って直線的に走ればクルマはその性能をいかんなく発揮する。それでも、いつかはスロットルを閉じなければならない。クルマの速さとはそういうものだ。そして、直線での速さは高性能のクルマと高性能ではないクルマの序列を生む。

ではパイロンを縫って走る場合はどうか。もはやクルマはその持てる性能を無制限に発揮することはできない。クルマに、そして人間にできることは、次から次へと迫りくるパイロンをクリアしながら先に進むことだけ。

パイロンを倒さないように。
遠回りしないようにパイロンをなめて。
チャンスがあればスロットルを開けて。

11本のパイロンをクリアした時。人はクルマと同じ速さを手に入れる。
クルマを生き生きと走らせることができれば、その時、人は自由を手に入れる。
そこにはクルマの絶対的な性能が生む無意味な序列はない。そして、クルマを操る人が主役になる。


第65回 YRSドライビングフラッシュ

ご覧になったことのがあるかも知れないけど、ユイレーシングスクールのウェブサイトに掲載してあるコンテンツを紹介。

□ ターンイン

・I’m a faster driver.

・I’m a faster driver, too.

・Me too !

・I’m the fastest !!

■ エクジット

・I was driving faster.

クルマが思うように動いてくれるのはすばらしいことです。