トム ヨシダブログ

第50回 スラローム A or B

11月10日。富士山も衣替えが終わっていた

今年最後のオーバルスクール。曇のち雨で大収穫

クルマは元来、とても安定した乗り物だ。クルマの3大機能である加速、減速、旋回のどれをとっても、それに対応するスロットル、ブレーキ、ステアリングの操作が『単独』で続いている限りクルマは安定した振る舞いを見せる。しかし、自由にどこにでも行けるクルマが本来の役目を果たすためには、各機能が繰り返されることになる。

だから、クルマを思い通りに動かすには、それは安全に走らせたい場合や、必要があれば速く走らせたい場合なのだけれども、機能の各パートをつなぐ部分でのクルマの挙動を安定させることが重要だ。

スクールではクルマの挙動をつなぐ部分をトランジッションと呼んでいるが、これが意識しないとなかなか会得できるものではない。だからクルマの運転は奥深いのだが、クルマが4本のタイヤでしか地面にくっついていないことを考えれば、どうすべきかが見え始める。
それ自体が重くて速い速度で移動するクルマは常に慣性力と対抗している。日常ではクルマが慣性力に勝つことなどもちろんないが、負けることはある。だからクルマが慣性力に負けないためにも、動いているクルマを常に安定させる必要があるという話だ。

そのための思想を一言で表すなら、ふたつ以上の挙動が重ならないような操作をすることだ。

もちろん、動いているクルマは復雑な動きをするから、挙動が重ならないように走らせることは難しい。しかし、操作の仕方によっては『重なる時間を短くする』ことや、『重なる度合いを少なくする』ことはできる。要は、思想を持ってクルマを動かし、思想からさかのぼってどういう操作をすればいいかを理解することだ。

というわけで、速く走ろうとするとクルマの3大機能を余すところなく使わなければならないスラロームを例に、思想の違いを可視化するためのビデオがこれ。

※操作をわかりやすくするために一部誇張してあります

■ スラロームのAとB

とかく、意識が勝ると人間はクルマに対して高圧的になりがちだ。しかし、それはクルマにとっての大迷惑。最低限、クルマが動きやすいような状況を作ってあげるぐらいの配慮が必要だ。


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