第278回 吉田塾
ユイレーシングスクールは18年の間に様々なカリキュラムを用意してきたが、今回初めて、参加者にどんなことを学びたいか聞いて、それに応じる内容のスクールをやってみた。題して吉田塾。
申し込み時に知りたいことややってみたいことを書いてもらった結果、
・自分のクルマの特性を知りたい
・オーバーステアが出た時の対処方法を知りたい
・コーナリングの限界速度の見極め方を知りたい
・運転の癖を知りたい
・上りと下りのコーナーのブレーキングの踏み方を知りたい
・スピンしてみたい
といった声が寄せられた。
それではというので、いつも使っているFSWの駐車場に半径28mの120度コーナーをパイロンで設定。オーバルコースのように奥が深いコーナーは、コーナーの奥に行くほど速度が落ちてしまうので、オーバーステアに持ち込むのが難しいからだ。
できれば90度ぐらいのコーナーでやりたかったのだけど、コーナーの前後のストレートの幅を14m確保し、コーナー区間は20mのコース幅を取るとなると、駐車場の形状からして120度回さないとならなかったのだ。
それでもオーバルコースよりはコーナーが浅いのでオーバースピードに対して挙動がはっきり出るはずだった。
コース幅14mというと高速道路の3車線より広い
サーキットでも幅員14mはない
広くするのはどこを走ったらいいのか「迷ってもらうため」と
安全に走ってもらうため
せっかく初めてのコースを走ってもらうのだからと、ユイレーシングスクール始まって以来初めて、朝一番の座学をやめて後回しに。ユイレーシングスクールを初めて受講する方もいたが、自分なりに走ってもらうことにした。
リードフォローでコースを覚えてもらい、次に単独で少しずつペースを上げて走ってもらう。ところが誰もスピンしない。
「あと5キロぐらいターンインの速度を上げてみて下さい」のアドバイスに応えてくれるのだけれど、オーバーステアにはならない。
なかなかオーバーステアが顔を出さない
決して遅いわけではなく操作がていねいだから
クルマがバランスを崩さない
コース幅を広く取りすぎたためアウトインアウトで走るとコーナーの曲率が大きくなって、全員がそれなりに全開で走っているのに、クルマがバランスを崩すまでの速度に到達しないままターンインしている可能性があるな、と。
で、助走が長く取れる逆回りにしたら、ようやくバランスを崩しそうなクルマがちらほら。
「もう少し速く入ってみましょう」と何回かはっぱをかけると、ようやくスピンするクルマが。
結局、スピンというのは瞬間的なオーバーステアなわけで、オーバーステアというのはフロントタイヤよりもリアタイヤのスリップアングルが大きい状態のことをさすわけで、基本的にアンダーステア傾向に作られている量産車がオーバーステアになることはまれ。リアタイヤのグリップがフロントタイヤのそれに比べて極端に少なくなるような操作をしない限り、オーバーステアとは縁遠いものなんですよ、と説明。
今回もスピンしたのはオーバースピードが原因ではなく、コーナリング中にスロットルを緩めたために過重が移動した結果だった。
クルマがバランスを崩さないように操作すればスピンやアンダーステアとは無縁ですよ、4輪の過重配分をコントロールできれば4輪を使ってクルマを動かせますよ、と昼休みに座学をやって、午後からはいつものオーバルコースでオーバースピードでターンインする練習と、前後タイヤのグリップバランスを微妙にかつ積極的に変えるトレイルブレーキングの練習をしてもらった。
午後遅く
逆光気味の富士山がきれいだったから
富士山を背景に記念撮影とあいなったのだけど甘かった
人も逆光だった(笑)
今のクルマはほんとうによくできている。タイヤのグリップや剛性も一昔前とは雲泥の差だ。意識的にクルマのバランスを崩そうとしても、簡単にはバランスが崩れない。
クルマが運動力学にのっとって作られている以上、物理学的な操作を学び実行すれば、クルマは安定して思い通りに走ってくれるということだ。
参加してくれた方はそれなりに収穫があったようで笑顔の解散となったけれど、「スピンするにはスピンするような操作をするからです」と説明するのも必要だけど、オーバーステアを実際に体験してもらうのも大切かも知れないと改めて思った。なんとか工夫してもっと『スパッ』って回るレイアウトを考えてみよう。
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