トム ヨシダブログ

第276回 優先順位

JAFが、信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面でどれだけのクルマが一時停止するか調査したことがあった。その数字を見ると、2017年の調査で8.5%のクルマしか止まらなかった。2016年は7.6%だったという。
調査の方法等はJAFの頁に詳しいが、 ようするにだ、 『信号機のない横断歩道をあなたが渡ろうとしていても、向こうから100台のクルマがやってくるとして最初の91台はまず停まってはくれないよ』 と例えるのは乱暴か。

276-1


結果を受けて昨年、JAFは一時停止しない理由などを聞くアンケートを実施、「信号機のない横断歩道」でクルマは依然として止まらない 一時停止率は8.5% というタイトルで、歩行者がいる場合は一時停止をするのが当たり前をいう視点からレポートしている。
いろいろな設問があるが、ここではなぜ一時停止しなかったのかその理由を見てみたい。※アンケートは複数回答

①自車が停止しても対向車が停止せず危ないから:44.9%
②後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから:41.1%
③横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから:38.4%
④一時停止した際に後続車から追突されそうになる(追突されたことがある)から:33.5%
⑤横断歩道に歩行者がいても譲られることがあるから:19.9%
⑥自車が停止した際に後続車からあおられる(クラクションを鳴らされる等)から:12.6%
⑦自車が停止すると後続で渋滞が起きてしまうなど、後続車等に申し訳ない気持ちがある(交通流を乱したくない)から:12.0%
⑧一時停止することが面倒だから:8.9%
⑨先に横断歩道があることが判りにくいから:7.6%
⑩何も考えていない:5.2%
⑪そもそもこのような場面で歩行者優先だったということを知らなかった:4.2%
⑫警察が取り締まりしていないから:3.7%
⑬その他:6.4%

276-2


面倒だからとか、何も考えていないとか、警察が取り締まりをしていないからなんて理由には驚くが、総じて見れば歩行者がいても積極的に停まろうとしない人が多いのがわかる。クルマを運転している人も歩行者になる場面があるはずなのに、立場が変わると意識も変わるということか。

JAFは『横断歩道における歩行者優先が交通ルール (原文ママ)』であり、『横断歩道を横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない』とし、『歩行者がいる場合にはまず減速してその動きを注視して一時停止しましょう。また、歩行者も横断をしようとする際にはドライバーに横断する意思表示をして、お互いに安全に努めましょう』とレポートを結んでいるのだが・・・。

276-3


確かに、道路交通法第38条には歩行者優先が謳われているけれど、信号のない横断歩道に歩行者がいたら、いかなる場合も一時停止しましょう、というのは現実的でない。
屁理屈に聞こえるかも知れないが、第一章第一条にあるように道路交通法は「交通の安全かつ円滑な流れ」を実現するためのものだ。歩行者優先が一人歩きして横断歩道の手前で停まらない運転者はけしからん、という流れは危うい。歩行者がいても、停まることで交通の流れを阻害するのであれば止まらないほうがいいこともある。

276-4


自分が遵法精神にあふれているとか、自分が優良運転手だとか思ったことはこれっぽっちもないけど、運転している時にあらゆる場面の判断に優先順位をつけることは怠らない。その順位をつけるためのたたき台が「交通の安全かつ円滑な流れ」という思想だ。法律が全て正しくて従わなければならないとは思わないが、クルマを安全かつ効率的に動かすためには自分なりのルールがあるといい。ルールがあれば判断に迷うことがないし、すばやく判断をくだせる。

信号機のない横断歩道に歩行者がいたら一時停止するのは
・高齢者が待っている場合
・複数人が待っている場合
・後ろから来るクルマが遠くにいる場合
・前を走るクルマとの距離があいている場合
・先の信号でひっかかると判断した場合

信号機のない横断歩道に歩行者がいるのに停まらないのは
・前後に複数のクルマがいて一定の速さで流れている場合
・後ろのクルマが車間距離をつめている場合
・歩行者が下を向いている場合
・歩行者がスマホをいじっている場合

横断歩道に関してもこれが全てではないし、右折時とか細い道を走る時とか雨の高速道路とか、やってはいけないこと、やったほうがいいこと、やるべきことを仕分けするため、そしてあらゆる場面で安全かつ円滑にクルマを走らせるために自分なりのルールを作り積み上げてきた。クルマの運転中は次から次へと判断を下さなければならないけど、自分の行動が交通の流れを乱さないように心がけるのは心地よいもんだ。


※ 掲載した写真はイメージです


Comments are closed.