免許人口の増加や車両保有台数の多さを考慮すると、発生した交通事故件数から見た我が国の道路交通はずいぶんと安全な方向に向かっていることが資料8-01の数字から読み取れる。
しかしながら交通事故総件数に対する単独事故件数が4%未満なのに、死亡事故件数からみると実に4分の1、つまり25%以上が単独事故によるものだというのは悲惨と言う以外にない。繰り返しになるが、単独事故とはすなわちひとり相撲をとったわけで第3者の関与はないのだから、事故原因がどうであれ運転していた人が避けようと思えば避けることが可能だった事故であることに間違いはない。
資料8-02には類型別の単独事故件数とその割合、資料8-03には類型別単独死亡事故の件数とその割合をまとめてある。車両の安全性が高まったことや、交通環境が整備されつつあることも要因なのだろう。時とともに単独事故の形態も変わってきてはいる。しかし原因がうっかり運転なのか操作ミスなのか、あるいは技量不足なのかは不明だが、事故を起こす前にできることはなかったのかと他人事ながらに悔やまれる。このブログに目を通していただいている方は単独事故とは無縁だと思うけれど。
自分は事故を起こさないと思っていても、事故を起こさないように運転していても、クルマを運転している限り人対車両、車両相互の事故の当事者になる可能性がゼロになるわけではない。交通法規を守っていれば安全なのではなく、ゆっくり走れば安全というわけでもない。クルマという便利な道具の恩恵を被るためにも、運転そのものを楽しむためにも自身の運転を俯瞰する習慣をつけ、また運転技術の向上を怠らないようにしたいと思う。

資料8-01
全ての交通事故に占める単独事故の割り合い
および総死亡事故件数に対する単独死亡事故件数の割り合い
<資料8-01
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資料8-02
単独事故件数の推移および類型別単独事故の割り合い
<資料8-02 pdfファイル>
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資料8-03
単独死亡事故件数の推移
および類型別単独死亡事故の割り合い
<資料8-03 pdfファイル>
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公益財団法人交通事故総合分析センター発行の交通統計に載っている交通事故件数で最も古いのは昭和23年、1948年の21,341件。その年の交通事故死者数は3,848人とある。この年の死亡事故件数の記載はまだない。
交通事故件数、死亡交通事故件数、交通事故死者数、車両保有台数、人口、運転免許保有者数の数字がそろったのは昭和41年、1966年。今から56年前。この年、日本の道路には原付1種を含む2輪車から大型特殊自動車までありとあらゆる車両が1千8百万台走っていた。道路の総延長は98万9千キロ。乱暴な計算ではあるが全ての車両を1列に並べると549m間隔になる。
この年、42万6千件の交通事故が発生しうち13,257件が死亡事故。13,904人が亡くなっている。免許人口は2千3百万人弱。
車両保有台数が9千万台の大台に乗ったのは平成14年。今から20年前。道路の総延長は118万キロになったが、1列に並べた車両の間隔はおよそ13mに縮まる結果に。
この年、93万7千件の交通事故が発生し(過去最多は平成16年西暦2004年の95万3千件)、死亡事故は8,062件で8,396人の方が亡くなっている。免許人口は大幅に増加し7千6百万人強。
交通統計令和3年版に載っている最新の車両保有台数は91,253,654台。令和3年度の数字が掲載されていないので令和2年度の数字を借りると、道路の総延長は1,227,422キロ。全ての車両が日本全国の道路を13.5m間隔で走ることになる。
令和3年になると交通事故は大幅に減少し305,196件。死亡事故件数が2,583件。2,636人の方が亡くなっている。運転免許保有者は81,895,559人。
交通事故も交通死亡事故もひところに比べれば大幅に減少している。1966年より免許人口は3.6倍に増え車両の保有台数にいたっては5倍になったのだから、道路交通は間違いなく安全になっていると言ってもさしつかえないだろう。しかし死者数に関しては日本は24時間死者をカウントしているので救急医療が進み救急医療体制が整った現在、正確なところはわからない。もちろん死者数が減少傾向にあるのは歓迎すべきことだけど。
いずれにしろ交通事故そのものが減っているのは、クルマの運転を教えている者としては大いに喜ぶべきことではある。
しかしながら、事故を起こした人も起こそうとして起こしたわけではないのは百も承知だけれど、それでも事故は防げたのではないかと考えてしまう。
ここでは令和3年度にクルマと2輪車の交通事故がどのような状況で起きたかを知る手がかりとして、交通統計から引用した数字をまとめてみた。参考になるかどうかわからないがご覧いただければと思う。

令和3年度事故類型別交通事故件数
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今年7月に発行された公益財団法人 交通事故総合分析センター刊行の交通統計令和3年版からひも解く。
・日本の人口は平成22年の128,057,000人がピークで11年後の令和3年は125,502,000人に減少
・免許保有者数は平成30年の82,310,000人がピークで3年後の令和3年は81,900,000人に減少
・車両保有台数は平成30年に最多の91,460,000台を記録したがその後横ばいで令和3年は91,250,000台に
・交通事故件数は平成16年の952,720件が過去最多で17年後の令和3年は305,196件にまで減少
・交通事故死は昭和45年の16,765人をピークに減少を続け51年後の令和3年には2,636人にまで減少
自動車の安全性の向上、交通環境の整備の推進、交通違反取り締まりの強化、安全運転の啓発活動、ドライバーの運転意識の向上等々の相乗効果なのだろう、数字的には我々が共有する交通の安全性は高まっているように見える。その昔メディアを賑わした交通戦争という言葉はもはや死語のようだ。しかし、その一方である傾向が気になる。

警察庁は交通事故を人対車両、車両相互、車両単独の3つに分類している。ユイレーシングスクールではここ10年余り運転の仕方に起因する交通事故、要するに運転の仕方次第では避けられたであろう車両単独の事故に注視してきた。車両が単独で起こすの事故とは、つまりひとり相撲だ。人であるか車両であるかは別にして、相手がある事故ならば避けられない場合もあるだろう。しかし単独での事故は運転の仕方次第では間違いなく起こさなくてすむと考える。統計的な数字は改めて集計するつもりだが、ここ数年の傾向として令和2年と3年の数字を比較してみたい。そこから見えてくるものは・・・。
交通事故の総件数は309,178件から305,196件に減少。そのうち人対車両の事故は37,811件から36,801件に、車両相互の事故は261,209件から257,481件にどちらも減少しているが、車両単独の事故だけは10,099件から10,848件に増加している。
増加していると言っても、もちろん公道を走っている台数から見ればごくわずかな数字ではある。しかし交通事故総数が減っていて人対車両や車両相互も事故件数がどちらも減少傾向にあることを考えると、そして毎日見聞きする単独事故のニュースの多さやここ数年頻繁に遭遇するようになった傍若無人の運転と合わせて想像するに、交通を共有する人々の運転の質が年々下がってきているのではないかと危惧している。以前にも書いたことがあるが、『 たまたま偶然が重なって事故を起こしていないだけで、潜在的に極めて危険な運転をしている人 』が増えているように思う。
クルマを運転する者として、運転を教えている者として、改めて運転というものについて考えるいい機会になった。
高1の5月。それまで庄内川の河川敷で練習して、ぶっつけ本番で平針の試験場で軽免許のテストを受けて1発合格。高3の5月。松橋の試験場で普通免許のテストを受けて1度で合格。1976年6月カリフォルニア州トーランスのDMVでカリフォルニアライセンスの実技試験を受けて300mぐらい走っただけで合格。嬉しかった思い出ばかり。

せっかくなので誕生日に運転免許証を更新しに行ってきたのだけれど、71歳以上になると優良運転者でも有効期間が3年になることを今日知りビックリ。
Kさんは2009年4月のYRSオーバルスクールFSWにロードスターに乗って初めてやってきた。その後、YRSオーバルレースFSWにも参加してくれるようになったけど、乗ってきたクルマはジネッタG4、ポルシェケイマン、ポルシェGT3、ドリフト用のS15シルビアなど多種彩々。そして参加してくれた回数はなんと81回! クルマの運転を謳歌しまくり。ところが2018年12月のYRSオーバルレースFSWを最後にバッタリと顔を見せなくなった。どうしたのかな、仕事が忙しくなったのかな、と思うことも度々。
ところがつい先だって突然電話。「今度のオーバルスクール行きま~す。ふたり連れて行きますから」と。
当日10数年前と同じ黄色いロードスターでやってきたKさんは、バイクにはまってしまってしまって四ツ輪との距離ができてしまったと自ら告白。で、この日は安全運転講習の名目で社員2名に練習をさせたいので付き添いとのこと。
小さなオーバル、大きなオーバルとKさんは昔取った杵柄とばかりに破綻を微塵も感じさせない走りでお手本を示す。クルマがわかっている人の走り。むしろバイクに浮気していた分、力が抜けて走りが洗練されたような。バイクに走った意味があったのかも知れない。

YRS初参加のMさんを追いかけるベテランのKさん
肝心の安全運転講習はと言うと、社員のSさんは以前にも参加してくれたけどNさんはユイレーシングスクールが初めてというより速く走ることも初めて。同乗走行で見てもらった走りが再現できずに悩んでいるのが見て取れる。
Kさんによれば社用車は年間7万キロも走るらしいから、ボクは日常の運転に役立つアドバイスを混ぜながら、Kさんはロードスターの助手席に乗せたり社用車の助手席にもぐりこんでアドバイスをしたり、無意識のうちに安全にクルマを動かせるようになってもらいたいと願いつつ。
で、ブレーキングの際のトランジションがよくわからない、あれだけ急に速度が落ちるのはボクがブレーキを蹴とばしていない訳がないと主張するSさん。そう言われても、誤解を解くために足の柔らかいADバンで再度同乗走行。『荷重が後でしょ、後、後ぉ。背中でしょ、さぁ追い越した。前に行って~戻ったぁ。引きずって引きずってぇ、横、横、横ぉ』なんてやったら「あぁ、そういうことでしたか」。『ね、蹴とばしてなんかいないでしょ』。
それならばとADバンに4人乗車で荷重移動の体感とトランジッションの作り方の説明を参加者全員に。効果てきめん。その後の走りを見た限りではブレーキを蹴とばす人はいなくなったしターンインの姿勢が良くなった。だから、もっと高い速度からターンインが可能になる。好循環。
結局Sさんだけでなく、同乗走行でブレーキを蹴とばしていると思った人は、ボクがトランジッションをとりすぎるぐらいにとってフロントタイヤに荷重がかかるのを待ってから、短い時間に雑巾を絞るように踏力を増やすことでさらにフロントタイヤのグリップを増やすから、制動力がまんま路面に伝わり大きな減速Gが瞬間的に立ち上がる。その一連の流れを蹴とばしていると勘違いしていたようだ。実際は、スロットルオフからブレーキペダルを踏みこむまでの間は誰よりも長いはずなのに。
大きな減速Gを発生させることができるということは短い距離で速度を落とせることと同義。だからそれができれば、ブレーキング区間の手前の方で必要な減速ができるから、残りで踏力を抜いてフロントタイヤの荷重を減らし、次に行うだろうコーナリングに備えることができる。スレッショルドブレーキングができればクルマに余力を与えることができる。

ADバンはすごく教育的なクルマでした
CVTでも速い
4人乗車のほうが安定していたのには驚いた
SさんとNさんが周回を続けます
Kさんにたまにはクルマにも乗ってほしいぞ、また遊びにきてほしいぞとたきつけるために懐かしいKさんの写真を。

2010年11月20日
YRSオーバルレース入門クラスを走るKさんのジネッタG4

2011年5月28日
1回だけ開催したP15でのYRSオーバルレースを走るKさんのロードスター

2013年3月10日
YRSツーデースクールFSW
ダブルコーンスラロームを走るKさんのGT3
ユイレーシングスクールを
社員の安全運転講習に使ってくれるなんて嬉しい限り
Kさん また遊びに来て下さいね
スタッフのFからメールが届いた。
意外なところで運転の話にでくわしたのでお報せします。上原浩治という引退したプロ野球投手がユーチューバーをやっているのですが、おなじく引退した審判を招いての会話の中で、運転の話が出ていました。さもありなん、という話です。
・教えてもらったYouTubeの運転にまつわるところを抽出したのが次の動画
・対談のフルバージョンは こちら です。
第608回で通学路に触れた。それを読まれた方からメールをいただいた。
————————————————————-
通学路への配慮が決定的に不足していると思います。添付した写真は近所の通学路です。環七から分岐した1車線(白いキャラバンが見える道)を小学生が歩きます。制限速度30km/hですが、勿論歩道はなく白線のみです。この先が赤堤通の起点なので、朝晩は相当な交通量です。この道を通らなくても小学校には行けるのですが、この道が通学路に指定なっています。

メールありがとうございます、Tさん。この道も中央線のない道のようですね。なぜそんな道を通学路に指定するのでしょうね。
30年余り合理的かつ階層的に作られたアメリカの道を走ってきた身としては、日本の道路事情は百歩譲っても褒めることはできない。通学路に限らず一般道から高速道路まで、道路交通法の理念である『安全かつ円滑な交通』を実現するのには心もとない。自分の経験からすると日本の行政は予備的な、あるいは予防的な対応をするのが苦手なようだ。ここはこうしたほうがいいのにな、と思うことも少なくない。そうすれば走りやすくなるのになと。しかしながら、いつも予算が…、時間が…で終わってしまう。どうやら我々はこれから先も褒められない交通環境の中でクルマを運転することは間違いなさそうだ。
だから道路事情のせいにするのではなく、自分だけでも事故を起こさないという覚悟で運転する必要がある。運転に真剣になる必要がある、と思う。
第597回令和2年版交通統計から見えてくるもの で触れたように年々交通事故件数は減少しているし、交通事故死者数も減ってはいる。けれど、昨年の運転免許人口の半分の4千百万人が日常的に運転しているとするとして交通事故件数が30万9千件だから、数字上200人が運転しているとその中の1.5人が交通事故にあう計算になる。200人の知人がいたら、そのうちの誰か1人は1年間に1回は事故にあっている、という数字だ。現実に交通事故は減ってはいるけど。我々自身からはるか遠い出来事では決してない。
ボクの場合。 毎年通う人間ドックで、「そのうち酸素吸入器が必要になるかも」と言われてタバコをやめたのが6年前。それまではかなりのヘビースモーカーだった。それでも運転中にタバコを吸ったことはなかった。吸いたい時はクルマを止めて喫煙可能な場所で吸った。自分が運転に一生懸命だということを証明するためにも、運転中に吸うことは考えられなかった。さらに言えば、そこまでやらなくてもと思われるだろうけど、運転中にラジオや音楽を聴いたことはない。純粋に運転を楽しみたいから。
ま、どちらかと言うとおっちょこちょいのほうだから、残念ながらホイールをこすったりの悔しい自損事故の経験はあるけれど、相手のある事故は絶対に起こしてはならないという前提で運転したいと考えている。

YouTube「Inter Proto Series x KYOJO CUP CHANNEL」で
9月26日(日) 15時30分~15時55分の間
『AIM Legend’s Club Cup 2021』レース
がライブ配信されます
リジェンドクラブカップレースはモータースポーツ界で活躍してきた名ドライバー達がVITAというマシンで戦うワンメイクレース。今回は最高齢87歳の多賀さんを初めとする17名が参加予定。お遊びではなく本当の本当の真剣勝負に参加するドライバーの平均年齢は72.7才です。みなさん競技ライセンスもお持ちです。驚いて下さい。

AIM Legend’s Club Cup 2021 エントリーリスト
お名前を耳にされた方もいると思います
ぜひご覧下さい
いささかこじつけがましいのはわかっているけれど、レースともなれば危険が伴うというのが定説。なのに、なぜリジェンドドライバーたちは丁々発止のレースをしても事故を起こさないのか。
ひとつだけ答えを探すとするなら、それはクルマの動かし方を体と頭で理解しているから、になるだろう。この方達がその昔クルマを動かすことに一生懸命だったのは想像に難くない。どうすれば人より速くクルマを動かせるか頭を使い仮説を立ててそれを検証し、その結果として、運転していて次に起きることがあらゆる場面で連続的に読めるようになり、間違いのない対応をとることができるようになったからだと思う。
そして、加齢だけが高齢者交通事故多発の要因ではないとも思っている。確かに若者より年寄りのほうが事故を起こす可能性は高いだろうけれど、若者が無事故なわけでもない。高齢者でも事故とは無縁の人もいる。筆者が高齢者マークだからいきおい年寄りの話題が登場することにもなるけれど、今若い人もいずれは歳を取る。歳をとっても安全に思うようにクルマを操る人達がいる。運転というものは一生ものだ。早いほうがいいに決まっているけど、だからと言って遅すぎるということはない。今や高齢ドライバーの仲間入りをした名運転手同士のつばぜり合いを見ながら、これから自分が運転とどう向き合っていくかに思いを巡らすのも悪くはないと思う。
#リンク #ブログ #高齢者 #運転 #安全運転 #事故
・第556回 高齢者安全運転診断サービス その後
・第566回 高齢者と運転
・第579回 レーサーだって歳をとる!
・第597回 令和2年版交通統計から見えてくるもの
※ レジェンドクラブカップレース広報資料

交通事故発生状況の推移の頁には
昭和23年西暦1948年からの交通事故件数/死者数/負傷者数が載っている
表に死亡交通事故件数が追加されたのは昭和38年西暦1963年のこと
しかし類型別交通事故件数等は昭和45年西暦1970年を指標とし
毎年最新の13年間の数字のみ記載されている
交通事故総合分析センターのサイト で探すと
最も古い数字として昭和21年西暦1946年の交通事故件数12,504件が載っている
・免許人口は1980年の4千3百万人から2008年には倍の8千万人の大台を超え、2018年には過去最多の8千2百30万人あまりを記録したが、2019年から減少し始めた。
・車両保有台数は2017年に9千1百50万台の最多を記録。その後減少に転じている。
・交通事故件数は2004年に最多の95万3千件を記録したが、2020年には2004年の3分の1に満たない31万件にまで減少を続けてきた。
・死亡事故につながった交通事故件数は1992年の10,892件が過去最多だったが、それ以降は毎年減少を続け2020年には2,784件にまで減少した。
・交通事故で亡くなった方の数は1992年の11,452人が最多だったが、その後は減少に転じ2020年には過去最少の2,839人を記録した。
・車両単独の交通事故が最も多かったのは2001年の5万3千件あまりだが、それ以降は連続して減少を続け2020年には過去最少の10,099件を記録した。
・死亡事故にいたった単独事故件数は1992年の2803件が過去最多で、その後減少を続け2019年には最少の814件を記録したが、2020年には825件に増加。
・近年の交通事故に占める単独事故の割合は1993年の5.92%をピークに年々減少を続け2018年には2.62%を記録したが、2019年、2020年と増加に転じている。
・交通事故全体に占める単独事故の割合は記載が始まった1970年の7.30%から減少を続け、2018年には過去最少の2.62%を記録したが、2019年からは増加に転じ2020年には3.27%に達した。
・死亡事故全体に占める単独事故による死亡事故件数の割合は1985年が最多の27.26%だったが、その後減少に転じ2011年には最少の20.04%を記録。しかしながらその後増加に転じ2016年~2019年は25%前後で推移していたが、2020年には29.63%に増加し、死亡事故のうちの3割が防ごうとすれば防げたであろう単独事故によるものだった。
・交通事故件数、単独事故件数とも昭和35年西暦1960年以降で最少を記録した2020年。しかしながら見逃せない数字がある。交通事故が100件起きるとそのうちの3件が車両単独で他は相手のある事故なのだが、死亡事故に限ると100件の事故のうちの30件が単独事故によるものという、いささか残念な数字がそれだ。
・単独事故を類型別にみると転倒は2008年の31.82%をピークに減少傾向にあったが、2018年から増加し2020年には過去最多の36.30%を記録した。2輪車の転倒事故が増加しているのが原因か。
・単独事故のうち2割強を占めていた路外逸脱による事故は年々減少を続け2020年には過去最低の5.62%を記録した。
・その形態を問わす交通事故で亡くなった方の数は第2次交通戦争期の1990年に記録した11,227人をピークに減少を続け2020年には4分の1の2,839人になったが、交通事故で亡くなる高齢者数は増加を続け2020年には70歳以上の死者数が全体の48%に達した。
自動車技術の発達で運転という行為自体が平易なものになり手軽に移動することができるようになった。交通体系の熟成が進んだ結果として交通事故件数が減少したのも間違いないところだろう。救急救命医療の発達が交通事故による死者数の減少に貢献しているのも明白だ。しかしその一方で、運転に対する危険意識が薄らいでいることはないのだろうか。
交通事故が減ったと言っても皆無になったわけではない。数字的に見れば単独事故そのものは年間1万件にすぎず、日常的に運転している人にとっても現実感が薄いかも知れないが、運転という行為をしている以上誰にでも事故を起こす可能性がないわけではない。相手がいる「車両相互」や「車両対人」の事故なら避けられない要素がからんでくるかも知れないが、避けようと思えば自分の意志で避けられたはずの「車両単独」の事故は起きるべきではないと考えている。
手軽さを気軽さと履き違えて自動車を自分の意志通りに自由に動かせると思い違いをし、運転という技術と集中力が必要な人間の行為を軽んじた結果、独り相撲で事故を起こしてしまっては本末転倒だ。自動車の便利さや楽しさを享受することは大いに奨励するけれど、人間より速く移動することができる自動車を操るのだから、畏怖の念だけはなくさないようにしたいし、してほしいと思う。

表1:全ての交通事故に占める単独事故の割り合い
および総死亡事故件数に対する単独死亡事故件数の割り合い
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表2:単独事故件数の推移および類型別単独事故の割り合い
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表3:単独死亡事故件数の推移および類型別単独死亡事故の割り合い
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表4:第1当事者から見た類型別死亡事故件数
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表5:年齢層別交通事故死者数の推移と割り合い
表5のpdfファイルダウンロード
※自動車保有台数とは自家用および事業用の乗用車、貨物車、大型小型特殊、特殊用途車、二輪車を含んだ数字をいう
※文中あるいは表中の交通事故死者数は24時間死者の数で事故後24時間以内に亡くなった方をさす

令和2年版の交通統計が届いた
COVID-19に翻弄された2020年
交通事情もそれなりに変化が
数字にも表れているのだろうか