トム ヨシダブログ


第644回 Nさんの場合

今年1回目のYRSツーデースクールFSW。神戸にお住いのNさんが初めてのユイレーシングスクールに参加してくれた。当日お話を聞くと、ルーテシアRSを通じて知り合った同じ神戸に住むKさんに受講を勧められたらしい。
Kさんは去年のYRSツーデースクールFSWやYRS鈴鹿サーキットドライビングスクールにも参加してくれた常連。そしたら、スクール2日目昼頃に深谷市に行ってきたというKさんがひょっこり。今回のルノー仲間全員とは顔見知りで、スクール終了まで運転とルノーの話題で盛り上がってました。

で、初参加のNさんに感想文をお願いした次第。

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FSWショートコース最終コーナーを回るNさん

 

3月19日20日の2日間富士スピードウェイにて、YRSツーデースクールFSWに参加しました。

一番印象に残っているのが、クルマは物理の法則に支配されており、クルマを動かすには理論に基づいてクルマに動いてもらう必要があるということです。そのための知識をこの2日間で非常に濃い内容を教えていただきました。

1日目は、パート毎にクルマに動いてもらうための理論を学んだ。午前中に、ブレーキング・スラローム・8の字をグループに分かれてトレーニングを行う。
ブレーキングでは、いかに効率よく最大グリップを発揮させて停止する技術をトレーニング。事前課題でだされた雑巾を絞るようにペダルを踏みこむこと。結果、最大荷重を前輪にかけてタイヤをつぶすことにより、タイヤサイズ以上のグリップが得られる。 
もう一つは、ブレーキペダルの踏み方の学び。アクセルペダルを離すとすぐにブレーキペダルを踏み込むのでは無く、一度間をおいてブレーキペダルを踏み込む技術を学ぶ。結果、荷重の移動の感じ方と過度のローターの発熱をコントロールする方法を学んだ。
スラロームでは、従来の荷重を左右に移動するスラロームでは無く、可能な限りストレートで加速させるハンドリングとアクセルワークを学んだ。荷重が均等であればあるほど安定した加速が得られることを実感した。
8の字では、従来の外側に荷重をかけたままでの8の字では無く、定常円旋回からの逆定常円旋回へつなぎ方に、ストレートで走行する方法を学んだ。つなぎをストレートで走るためには、なるべく早くハンドルを早く戻すこと、切り方は慎重に戻すときは素早く、加速は車体がまっすぐにストレート状態で安定した加速を得る。

すでにここで、自身のドライビングテクニックの常識が覆っている。

昼食休憩をはさんで午後のトレーニングに入る。午後は、オーバルコーストレーニング。日本ではインディ500マイルレースくらいしか馴染みのないオーバルコースであるが、米国ではメジャーなレーシングコースレイアウトだそうです。
一般的な定常円旋回のトレーニングでは無く、オーバルコースはストレートと円で構成されており、ストレート加速・ブレーキング減速・コーナリング・立ち上がり加速の組み合わせでトレーニングを行う。このトレーニングで、クルマの荷重移動を感じタイヤのグリップを最大化することを学んだ。
オーバルコースは、なかなか手ごわい。何度かスピンをする、理由はわかってはいるが満足できる走りがなかなかできない。オーバルコースでレースを行っている米国クルマ文化を尊敬する。サンデーレースは、オーバルコースのレースが多いのであろうが、相手を抜かす方法がわからない。今度、米国のレースを参考にしてみよう。

一日目で、クルマの動かす理論の基本を学ぶことができた。明日からは今日学んだことを自分なりに生かすトレーニングとなる。本日の走行距離 95kmなり。

二日目 富士スピードウェイショートコースでのトレーニング関谷正則氏が監修したショートサーキットとのこと、下り5%上り8%の勾配レイアウトのレイアウトサーキット。一日目にトレーニングした技術を用いてのサーキットトレーニングを行う。

最初は、全員でコース歩行を行ってコースの攻略方法のレクを受ける。勾配のあるコースなので、減速・加速・荷重のかけ方等、昨日教えてもらったことを考えながらコースの走り方を考える。なるべくストレートを最大限にとれるように走ろうと考える。
そのあとは、ヨシダ先生にリードフォローを行ってもらい、走行ラインとペースを学ぶ。先生、速いです。 と言いながら必死についていく。そのあとは、グループ毎ににラッピングを行って各自のレベルアップを行う。
都度休憩時に先生からのアドバイスがあり、再度ラップを重ねていく。メインストレートからのブレーキングで注意されるが、走り始めると頑張ってしまいなかなかブレーキングがうまくいかない。反省である。
午後からは、雨が降ってきてウエットコンディションとなり、更に難しいトレーニングとなったが、より一層荷重移動でのクルマの動きがはっきりわかることとなりいいトレーニングになったと思う。

2日目は17:00に終了 本日の走行距離148km

2日間のスクールを終え総走行距離243km あっという間の2日間であった。クルマを動かすための理論を学んだが、実行するにはまだまだトレーニングが必要というのも分かった。
スクール後に本日クルマを運転し、一般道を走りながらでも加速・ブレーキング・荷重を考えながら運転している。確実にスクール受講の成果はでていると思う。まだまだ書きたいことは多いのですが、スクールには機会があれば次回も参加したいと思っています。まだまだ自分の成長を確認したい、クルマの運転は本当に楽しい。

是非、ヨシダ先生にはいつまでもお元気でスクールの開催をお願いしたいと思っています。

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Nさんと愛車のルーテシアRSトロフィー・シャーシカップ


Nさん。感想文ありがとうございました。ドライビングスクールを長く続けられるよう健康に留意します。ぜひまた遊びに来て下さい。今年2回目のYRSツーデースクールは10月15/16日(土日)に開催予定です。

 

※ Nさんがオーバルコースでスピンしたと書かれている。路面が濡れている上に「あと5キロ速い速度からターンインしてみて下さい」と走行中にFMラジオで指示するものだから、オーバル走行が初めての人はオーバーステアになりがちで、Nさんが下手なのではありません。
スピンはオーバーステアが瞬間的に起きた結果だから、その手前でリアのグリップが足りなくなるような操作をしたのが原因ではあるけれど、スピンしなければわからないことがあるのも事実。だから、YRSオーバルFSWはイン側とアウト側のパイロンの間隔を14mにしている。つまり幅員14mの走路。車線を分ける線が描いてないから想像しにくいけど、高速道路の3車線より広いのだからYRSオーバルでスピンしても危なくはない。安心してタイヤと自分の(!)限界を試すことができる。タイヤは減るかも知れないけれど。



第638 回 クルマは前に進めたい

紹介する動画は昨年のあるF1GPのあるコーナーを回るバルテリ・ボッタス選手の走り。録画しておいたものを再生中にテレビ画面を動画撮影したもの。
オーバースピードでターンインしたのか理由は定かではないけれど、マシンがオーバーステアにおちいってカウンターステアを当てているシーンだ。

以前からコーナリング中のF1マシンのタイヤがたわむのを見て、「あんなに変形するんだ」、「リムから外れないのかな」、「タイヤがかわいそうだよねぇ」、「ハイトが高いからああなっても前に進むのかな」、「タイヤがたわまなければサスペンションが壊れているね」、「ハイトの低いタイヤだと滑り出したらスパーッっていくのかな」、「たわみが反応を遅らせるから250キロのコーナリングができるに違いないね」、「だからF1はサイドウォールがたわみやすい13インチタイヤなのかね」、「F1パイロットでもミスはするんだなあぁ」、「クルマは前に前に進めなければだめだよな」なんて勝手に独り言ちて楽しんできた。

さて。シャーシから伸びるサスペンションアームの先にあるハブに取り付けられたホイールまでは剛体。一方、ビード部でのみでホイールに密着しているタイヤは弾性体だ。この共存する形の変わらないものと形の変わるものに力が加わった時、当然のことながら弾性体であるタイヤにまず変化が生じる。

円運動を始めると遠心力が働くのでクルマは円運動の外側に向かってふくらもうとするのだけど、4本のタイヤと地面の摩擦力=グリップが生むコーナリングフォースが求心力となって遠心力が相殺され、クルマはふくらむことなく旋回を続けることができる。コーナリングの仕組み。
ところが遠心力と求心力が釣り合っていたとしてもタイヤは形の変わる弾性体なので、実はタイヤが向いている方向と実際にタイヤが進む方向との間にズレを生じながらタイヤは回転している。タイヤは円運動の外側に向かってズレながら回転している状態にあって、このズレをスリップアングルと呼ぶ。スリップアングルは4本のタイヤ全てに発生している。このズレこそ弾性体であるタイヤに生まれる最初の変化。地面との間にズレが生じるということは摩擦力が増すことに他ならないので、結果的にタイヤのグリップもさらに高まる。だからタイヤが路面とズレること、すなわちはタイヤにスリップアングルが生じることは旋回性能の向上に寄与していることになる。ただし、それはある条件の元においてだ。

前輪のスリップアングルが後輪のそれより大きい走行状態をアンダーステア、後輪のスリップアングルが前輪のそれより大きい場合をオーバーステアと呼ぶことは度々触れてきた。前者はステアリングを切ってもクルマが曲がらない、後者はステアリングを切っている以上にクルマのリアが回り込む。いずれの場合も前輪なり後輪が横滑りを起こしているわけで、その間は駆動力なり制動力が進行方向に生かされていない。つまり失速していることになる。
この動画の場合、ある瞬間にリアタイヤが大きな横力を受けグリップを増して踏ん張るものの横力に押されて大きくたわむ。次に耐えきれなくなったリアタイヤがそれまでより大きくズレることで横力を開放するから元の形に戻る。グリップを回復したタイヤだけど横力に勝てず再びたわむ。その繰り返し。クルマが、タイヤが回転した分だけ前に進んでいないことが見て取れる。

この動画のような変形はしないにしても、我々が乗っているクルマのタイヤにも様々な力が加わって形を変えていることは容易に想像できる。タイヤがタイヤとして機能していない瞬間があるかも知れない。やはりタイヤをうまく使えるように心掛けることが運転の上達には欠かせないとつくづく思う次第。

2022年のF1GPはまもなく2月23日に行われるバルセロナでのプレシーズンテストで幕を開ける。新たに18インチ径のタイヤが採用されるなど車両規則が大幅に変更になり、史上最多の23戦を戦うという今年のF1GP。果たしてどんなシーンを届けてくれるのだろうか。開幕戦は3月20日のバーレーンだ。

 

それにしても、この動画に出会って思ったことふたつ。

本当にハイトの低いタイヤがいいのだろうか、というのがひとつ。技術の進歩がトレッドゴムを進化させて扱いやすくはなっているのだろうけれど、滑り出したらスパーッといきそうで全面的に肯定できないのが本音。おそらく時代の流れがそちらに行っても、自分にとっては永遠の課題なのかな、と。昔運転の下手だった自分でもテールが流れればカウンターステアを当てることで速さを手に入れることができたバイアスタイヤ。思い出は尽きない。

もうひとつは、クルマをスタートさせてから止めるまでどんなコースを走ろうと、たとえ速く走ることが目的であったとしても、まず速さに優先して、動き出してから止まるまでの前後輪のスリップアングルの合計が等しくなるような運転を目指してきたことは間違いではなかったし、これからもそうしたいなと。



第637回 安全運転練習

Kさんは2009年4月のYRSオーバルスクールFSWにロードスターに乗って初めてやってきた。その後、YRSオーバルレースFSWにも参加してくれるようになったけど、乗ってきたクルマはジネッタG4、ポルシェケイマン、ポルシェGT3、ドリフト用のS15シルビアなど多種彩々。そして参加してくれた回数はなんと81回! クルマの運転を謳歌しまくり。ところが2018年12月のYRSオーバルレースFSWを最後にバッタリと顔を見せなくなった。どうしたのかな、仕事が忙しくなったのかな、と思うことも度々。

ところがつい先だって突然電話。「今度のオーバルスクール行きま~す。ふたり連れて行きますから」と。

当日10数年前と同じ黄色いロードスターでやってきたKさんは、バイクにはまってしまってしまって四ツ輪との距離ができてしまったと自ら告白。で、この日は安全運転講習の名目で社員2名に練習をさせたいので付き添いとのこと。

小さなオーバル、大きなオーバルとKさんは昔取った杵柄とばかりに破綻を微塵も感じさせない走りでお手本を示す。クルマがわかっている人の走り。むしろバイクに浮気していた分、力が抜けて走りが洗練されたような。バイクに走った意味があったのかも知れない。

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YRS初参加のMさんを追いかけるベテランのKさん

 

肝心の安全運転講習はと言うと、社員のSさんは以前にも参加してくれたけどNさんはユイレーシングスクールが初めてというより速く走ることも初めて。同乗走行で見てもらった走りが再現できずに悩んでいるのが見て取れる。

Kさんによれば社用車は年間7万キロも走るらしいから、ボクは日常の運転に役立つアドバイスを混ぜながら、Kさんはロードスターの助手席に乗せたり社用車の助手席にもぐりこんでアドバイスをしたり、無意識のうちに安全にクルマを動かせるようになってもらいたいと願いつつ。

で、ブレーキングの際のトランジションがよくわからない、あれだけ急に速度が落ちるのはボクがブレーキを蹴とばしていない訳がないと主張するSさん。そう言われても、誤解を解くために足の柔らかいADバンで再度同乗走行。『荷重が後でしょ、後、後ぉ。背中でしょ、さぁ追い越した。前に行って~戻ったぁ。引きずって引きずってぇ、横、横、横ぉ』なんてやったら「あぁ、そういうことでしたか」。『ね、蹴とばしてなんかいないでしょ』。
それならばとADバンに4人乗車で荷重移動の体感とトランジッションの作り方の説明を参加者全員に。効果てきめん。その後の走りを見た限りではブレーキを蹴とばす人はいなくなったしターンインの姿勢が良くなった。だから、もっと高い速度からターンインが可能になる。好循環。
結局Sさんだけでなく、同乗走行でブレーキを蹴とばしていると思った人は、ボクがトランジッションをとりすぎるぐらいにとってフロントタイヤに荷重がかかるのを待ってから、短い時間に雑巾を絞るように踏力を増やすことでさらにフロントタイヤのグリップを増やすから、制動力がまんま路面に伝わり大きな減速Gが瞬間的に立ち上がる。その一連の流れを蹴とばしていると勘違いしていたようだ。実際は、スロットルオフからブレーキペダルを踏みこむまでの間は誰よりも長いはずなのに。
大きな減速Gを発生させることができるということは短い距離で速度を落とせることと同義。だからそれができれば、ブレーキング区間の手前の方で必要な減速ができるから、残りで踏力を抜いてフロントタイヤの荷重を減らし、次に行うだろうコーナリングに備えることができる。スレッショルドブレーキングができればクルマに余力を与えることができる。

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ADバンはすごく教育的なクルマでした
CVTでも速い
4人乗車のほうが安定していたのには驚いた
 
SさんとNさんが周回を続けます

 

Kさんにたまにはクルマにも乗ってほしいぞ、また遊びにきてほしいぞとたきつけるために懐かしいKさんの写真を。

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2010年11月20日
YRSオーバルレース入門クラスを走るKさんのジネッタG4

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2011年5月28日
1回だけ開催したP15でのYRSオーバルレースを走るKさんのロードスター

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2013年3月10日
YRSツーデースクールFSW
ダブルコーンスラロームを走るKさんのGT3
 
ユイレーシングスクールを
社員の安全運転講習に使ってくれるなんて嬉しい限り
Kさん また遊びに来て下さいね



第636回 Mさんの場合

20年近くクルマを持たない生活をしていたというMさん。ご夫妻で軽井沢を訪れたある日のこと。黄色いメガーヌRSが目に止まりひと目惚れしたそうな。で、虜になったのをきっかけに今後のクルマ生活のことを考えて、敢えてメガーヌRSトロフィーMTを入手。ルノーがらみで見つけたこのブログからユイレーシングスクールにたどり着き、先日のYRSオーバルスクールに参加してくれた。

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裏のストレートから下のコーナーに飛び込む

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下のコーナーを立ち上がる

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Mさんとホントに久しぶりの愛車

 

84頁もあるユイレーシングスクールの教科書にひと通り目を通してから参加してくれたMさん。ブランクもあるかも知れないけど、日常では味わえないGに悪戦苦闘だった様子。それでもこちらの依頼に応えて感想文を送ってくれた。

トム・ヨシダ先生 日曜日のオーバルスクールにメガーヌで参加させて頂きましたMです。寒い中ご指導ありがとうございました。

初めての参加でしたし普段街乗りしかしていないので経験豊富な方たちと一緒に走っても大丈夫かと緊張しておりましたが、先生方は初心者の私にとても丁寧にご指導くださいましたし皆さん気さくに話しかけてくださり和やかな雰囲気で練習できたのはありがたかったです。

最初の同乗走行で前後左右のGの大きさに驚きました。そしてそのGに耐えるために踏ん張り過ぎて呼吸を忘れ酸欠で気分が悪くなるほどでした。実際自分が運転してみるとハンドルもブレーキもアクセルも上手く使えず先生のピタッと安定したドライブとは大違いで何度もコースオフしました。
しかし自分にとってまず大切だったのはアドバイス頂いたようにドライビングポジション、視界を広く保つこと、リラックスして呼吸を止めないことなどもっとも基本的なことでした。

様々なことを意識しながら練習を重ねるうちに最後はなんとかコースオフせず走れるようにはなりましたが安定した走行を体感できないまま終了となりました。しかし自分の技術、体力と集中力ではあれが限界という感じでした。

実際の運転はまだまだでしたがドライビングの理論や哲学を教わり同乗走行で一連の荷重移動を体感できたのは大きな収穫でした。そしてアクセル全開やクルマが滑ってコースオフも公道ではできない貴重な体験でした。ヘトヘトになるまで練習しとても満足でした。このハードな?練習の成果かでしょうか、帰りの高速はゆとりを感じながらドライブ出来ました。

今回のスクールでの経験をいかし普段から荷重がどうかかっているかを意識しながら安全に楽しくドライブしたいと思います。そしていつかスムーズで美しいドライビングができるようになりたいと夢見ています。是非またスクールに参加させて頂きたいと思います。その時はよろしくお願い致します。ありがとうございました。

 

Mさん。最初はメガーヌRSの動力性能の高さに翻弄されていたようだけれど、午後になると小気味良いエキゾーストノートを置き去りにしながら周回を重ねていました。奥さんもマニュアルシフトを操るそうです。次回はご夫婦で遊びに来て下さい。お待ちしています。



第635回 魔の交差点 ?

自宅から滋賀医大病院までクルマで急ぐと1時間10分強。朝のラッシュに重なるともう10~15分ほどかかることがある。その元凶がこの交差点。

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交差するのが大動脈の国道1号線だから信号機のサイクルはそちらのほうが長いのはいたしかたないとしても(計ってはいないけど3倍はゆうに長い)、信号待ちの列に左折車が2台もいればまず1回や2回で交差点を渡ることはできない。

原因は他人のことと交通の流れを考えられないドライバーとクルマの流れをとんと意識できない歩行者が多いこと、信号機のシステムがあいまいだから。

写真のように南進では左折するとすぐに横断歩道がある。それでも横断歩道近くまで進んで歩行者が渡るのを待ってくれればいいのだけど、私は安全運転をしていますよ、とばかりに横断歩道から離れたところ、停止線のはるか手前で停止する人があとを絶たない。その後ろも左折車で、そのドライバーが後続車のことなど考えない人だともうだめ。最初のクルマとの車間をとりすぎるから進路をふさがれる格好になって直進車は身動きがとれない。
自分がこういう状況に遭遇したら、横断歩道手前の停止線ギリギリまで躊躇なく進んでクルマを止める。歩行者に近くなるからにらまれることもあるけど、横断歩道の幅は広いし歩行者を妨げているわけではないし停止線を越えることはしない。2台目や3台目に止まることになったら、前のクルマのドライバーにルームミラーを通してにらまれようと前のクルマにピッタリとつけて止める。何を言われようと、人よりも単位時間あたりの移動量が格段に大きいクルマの流れを促進することのに寄与するならばそのほうが合理的だ。

日本は歩行者優先がいわゆる常識でお題目なのだろうけど、クルマと人の共存を考えた場合、クルマの犠牲の上に立って歩行者が過剰に優先されている。歩行者はそれが当たり前だと思っているから始末が悪い。
かの信号でも、歩行者用信号が赤の点滅を初めてからならまだしも、赤になってから横断歩道に飛び出す人がいてクルマ側がその人を待つことになり、結局横断歩道の手前で待っていたクルマ1台しか左折できないこともある。その上、歩行者用信号が赤になると同時くらいに車両用信号が黄色点滅を始める。歩行者用信号が青である間は歩行者が気ままに渡ることができるから、まばらではあっても歩行者の横断が途切れない。今までの経験だと歩行者用信号が赤にならないと左折車が進めなかったことがほとんどだ。結局、左折車がいると1号線を横切れるクルマが数台という悲惨な事態になる。信号が青になってもなかなか発信しないご仁もいるし。

アメリカの歩行者信号は青になった次の瞬間に赤の点滅が始まる。つまり、原則的に信号待ちをしていた歩行者しか道路を横断できない仕組みだ。歩行者が多いであろうニューヨークではどうかわからないけど、すごく理にかなっている。歩行者用信号が青になれば信号待ちをしていた人に横断の優先権があるけど、その人、その人達が渡り終えればクルマに通行の優先権が移る。人とクルマ、どっちかはっきりしている。人とクルマが共存できる好例だ。

それに、アイドリング時のCO²排出量は走行中のそれよりも多いから、車両のCO²排出量を減らすにはエンジンをかけたままでクルマを止めている時間を短くすることが理にかなっている。前のクルマにつまって交差点を渡れないなんて回数が減れば、ガソリンの消費量も減らせるしCO²排出量も減らすことができる。今さら言うのもなんだけれど、アイドリングストップとかのデバイスの開発と並行してクルマの流れが滞るのを防ぐ手立てを始めるべきだったのではないか。
これは私見だし歩行者からブーイングがくるかも知れないけど、横断歩道の位置を左折したクルマが2台くらい止まれるくらい交差点から離れたところに移動するのもありだと思う。交差点の渡り方によっては歩行者が歩く距離が増えるかもしれないけど、歩行者優先と刷り込まれているからか、歩行者が歩いていると横断歩道との距離を開けてクルマを止め、後続のクルマが直進できずに次のサイクルまで待たなければならない例は枚挙にいとまがない。

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信号機の点灯サイクルは変更できるはずだから日本もやればいいのにとは思うのだけど、どんな場合でもグレイエリアが好き、と言うより、グレイエリアの住み心地が快適だと思っている日本人と日本の行政はやらないだろうな、と毒づきながら毎回、次の青信号で渡れるかなと悩ましい時間を送っている。自分自身も日本人だけど。(笑)



第633回 クルマの動かし方

ワインディングロードの下りのコーナーでクルマの向きが変わらずガードレールに一直線、という経験をお持ちの方は少ないかも知れないがいるだろう。
鈴鹿サーキットの130Rでインに巻き込んでスピン。最悪の場合クルマを壊した方もいるだろう。富士スピードウエイのコカコーラコーナーや筑波サーキットコース2000のダンロップコーナーでインに巻き込んでスピンしたことのある方も多いだろう。

峠道やサーキットに限らずどんな場面でも、そうするつもりは全くないのにそうなってしまうということはあり得ることだ。なぜならばクルマの動きは操作の結果であるからして、運転手が間違っていないと思ってやった操作が実は理にかなっていなかったり、あるいは慌てた結果クルマがいやがる操作をやってしまったとか、クルマの動きを感じることができないうちに操作したとか、クルマが思い通りに動いてくれなかった原因が100%運転手にあるのは明白。

そんな話、サーキットを走るつもりはないから、スピードを出しては走らないから関係ないと言う向きもあるだろう。きょうびのクルマは何げなく乗っても運転手の意思通りに動いてはくれるからね。だからサーキットは走らない、制限速度の範囲でしか走らないという人は間違った操作が原因で事故を起こす可能性は極めて低いかも知れない。

でもその人達は実にもったいないことをしているのに気が付いていない。

クルマの運転にはやってはならないこと、やるべきこと、やったほうがいいことがある。やってはならないことをやらなければクルマが言うことを聞かなくなることはまずない。やるべきこととやったほうがいいことを知識として持っていてそれを実行できればクルマはイキイキと動く。自分がクルマを動かしているという意識が高まるから運転が楽しくなるし、クルマを所有するという価値そのものが上がるというものだ。
それにも増して、クルマの性能を引き出す方法を知っていればクルマ側に余裕が増すことになるから相対的に運転中の安全率が高まる。どんな状況でもクルマを安定させて走ることができれば、クルマがバランスを崩す可能性が低くなり、速く走ろうと思えば速く走れるし、スピンやコースアウトとは無縁になる。

座学で理論的にクルマの動かし方を解説し、走行中にリアルタイムのアドバイスで参加者の操作を修正しやってはならないことを減らし、やったほうがいいことを増やすことを主眼に練習する。ユイレーシングスクールの受講をお勧めする理由だ。

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減速中のクルマの重心は前方に移動するから前輪の荷重が増える
荷重が増えるとフロントタイヤのグリップは高まるけど
相対的にリアタイヤのグリップは減少する
 
ガードレールに一直線は前輪に荷重がかかりすぎてタイヤの限界を越えたから
130Rでスピンしたのは
高速コーナーなのに後輪のグリップが足らない状態でターンインしたから
コカコーラコーナーやダンロップコーナーでスピンしたのは
短いコーナーなのに前のめりでターンインしたから
全て前後輪のグリップレベルに差があったから

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加速中のクルマの重心は後方に移動するから後輪の荷重が増える
荷重が増えるとリアタイヤのグリップは高まるけど
相対的にフロントタイヤのグリップは低下する
 
走ってくるクルマの前に割り込もうと駐車場から
ステアリングを切ったままスロットルを大きく開けて道路に飛び出し
対向車線にはみだしそうになってスロットルを閉じたものだから
今度はインに巻き込みそうになって慌てている人がいる
フロントタイヤのグリップが常にそこにあるとは限らない
そんな人こそユイレーシングスクールに来てほしい

※ 図のタイヤに網をかけてある部分は疑似的にグリップの大きさを表しています
※ 便宜上フォーミュラカーをノーズダイブ/テールスクワットさせていますが実際にはこれほどの姿勢変化はありません

 

◎ ユイレーシングスクール受講生募集中です。みなさまの参加をお待ちしています。
・1月29日(土) YRSオーバルレースFSW 開催案内と申し込みフォームへのリンク
・1月30日(日) YRSオーバルスクールFSW 開催案内と申し込みフォームへのリンク
・2月13日(日) YRSドライビングワークショップFSW 開催案内と申し込みフォームへのリンク
・3月19,20日(土日) YRSツーデースクールFSW 開催案内と申し込みフォームへのリンク
※ すでに初めてYRSに参加されるルーテシアシャーシカップに乗られるNさんが申し込んでくれました



第632回 23年目始動

ユイレーシングスクールの22年目はオリンピック/パラリンピックでFSWが4か月も使えなかったりコロナ禍の影響で参加者が減ったり、いささか元気のないシーズンでした。それでも21回のドライビングスクールを開催しました。内訳は次の通りですが、延べ311名の方が受講してくれました。
  YRSオーバルスクールFSW6回
  YRSオーバルスクールFSWロンガー2回
  YRSオーバルレースFSW3回
  YRS筑波サーキットドライビングスクール2回
  YRSツーデースクールFSW2回
  YRS+雑誌エンジンドライビングレッスン2回
  ポルシェクラブ東京銀座ドライビングレッスン4回

そんなわけですが今月末には23年目の活動を開始します。このブログをご覧のみなさまもぜひご参加下さい。

・1月29日(土) YRSオーバルレースFSW 開催案内&申込みフォームへのリンク
(YRSオーバルレースFSWはYRSオーバルスクールFSWに参加されたことのある方が対象です)

・1月30日(日) YRSオーバルスクールFSW 開催案内&申込みフォームへのリンク

 

YRSオーバルFSWロングを走ります

YRSオーバルFSWロングを走ります

日本で最も敷居の低いモータースポーツです



第630回 新年

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

ところで、年末に高齢者講習に行ってきた。

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一番乗りで講習会場の大津市堅田にある真野自動車教習所へ

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受付で手数料5,100円を払って教室へ
一昨年から講習時間が3時間から2時間へと短くなったらしい
最初の30分は安全運転にまつわる講義
休憩をはさんで適正検査
視力と動体視力と視野を測定
次いで実技

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遠くに蓬莱山が見える住宅地にある真野自動車教習所
 
16歳の時に平針運転免許試験場で軽免許の実技を一発で
18歳の時に松橋運転免許センターで普通免許を一発で合格したから
自動車学校には行ったことがないので自動車教習所を走るのは3回目
 
実際の道路との乖離がとはここでは言わないけれど

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教習車
 
実技は1時間割り振られていたけど
教官1人で3人の受講生を担当するので待ち時間のほうが長い
ボクより若いのに誕生日の関係で先に高齢者講習を受けたスタッフのOが
教官1人と受講生3人が乗ってと言っていたけど
今はコロナ禍なので教官と1対1にしてるらしい

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講習会修了書
 
これで免許証の更新ができる
と言っても早くて4か月先だけど

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そうそう
 
スムースに運転しますねウィンカーの出し忘れがないのもいい
運転に慣れてますね
ハンドルさばきがいいし特にブレーキがいいですね
ほとんどの人がカックンブレーキなんですよ

 
と褒められたことを特筆大書しておこう
 
運転は好きですかと聞かれたから
大好きですと答えておいた
 
ちなみに視野検査では40代だからとりあえず
目指せユイレーシングスクール25周年 かな



第626回 悩ましい

この22日で新東名高速道路の浜松いなさ~御殿場間が全線制限速度120Kmで走れるようになって1年。  さて、

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クルマは移動のための道具であるとの側面が強いから効率良く使いたいと強く思ってきたし、そういう使い方ができるように努力してきたつもりだ。

で、クルマにまつわる効率と言えば時間とコストが真っ先にあげられる。A地点からB地点に移動するのが目的ならば所要時間は短いほうがいい。A地点とB地点の物理的距離は縮まらないけど、速く目的地に到達することができれば移動以外の時間的拡大が可能になる。一方でA地点からB地点に移動するためのコストは安いに越したことはない。移動にかかるコストを抑えることができれば経済的な余裕が生まれるから、その分を他の生産性向上に回せる。速さとコスト。この両方の効率を高めたいとずっと思ってきたのだけど。

しかし内燃機関を動力とする自動車は本来、移動の速さと移動のコストを同時に追い求めることが難しい類いの道具だ。クルマ自体が重いしタイヤは転がり抵抗を生じながら回っているし、クルマはもろに向かい風を切り裂いて走っているわけで、速く走らせるということはクルマにそれだけ大きな推進力を求めることになる。つまり、スロットルを開ける量を増やさなければならない。しかも、転がり抵抗にしても空気抵抗にしても速度の二乗に比例して大きくなっていくから、クルマを速く走らせれば走らせるほどエンジンの負担は増加し燃費は悪くなっていく。だから、あの日が来るまでは速さとコストを天秤にかけその都度妥協点を探ることを常としてきた、ずっと。

ところが昨年12月22日。新東名浜松いなさICと御殿場IC間の完全6車線化が完了し制限速度が一律120キロに引き上げられた。これはこれで喜ばしいことではある。それまでは後ろめたい気持ちで速さを手に入れていたのに、この日から合法的にある速度までは速さを追求できるようになったのだから。

しかし、この日を境に悩ましい日々が訪れる。

長距離の移動と言えば富士スピードウエイや筑波サーキットで開催するドライビングスクールに出向く時や東京に住む母をご機嫌伺い行く時なのだけれど、基本的に移動する時のテーマは「できるだけ速くかつ省エネ」だ。優先するのは速さだ。その上で許容できる程度の燃費を維持できるのが理想だ。

で、かの145Km区間を初めて走り切った時、確かに所要時間は目に見えて短くなったけれど、同時に燃費が思いのほか低下していた。

『えっ‼』だった。

それ以降、新東名に乗るたびにいろいろな走り方をしてみた。クルマも異なれば風向きも違っただろうから一概には言えないけれど、結論として『制限速度の引き上げをもろ手を挙げて歓迎している場合ではないな』と思ったものだ。

昔から発信加速をどうすれば燃費にいいのかとか、定速で走っている時にどこまでスロットルを抜いて速度を維持できるかとか、あれこれ燃費を向上させる方法を模索してみたけど、高速道路に関しては速さが優先事項でその上で燃費が良ければ、というスタンスだった。で、高速道路ではできるだけ速度を一定に保ち、流れを先まで読んで無駄なブレーキは使わず、上り坂は中間地点で制限速度になるようにスロットル一定で走るようにして、それなりの燃費を達成することができていた。

ところがである。同じような走り方をしても巡航速度が20キロ近く上がった結果、手に入れた速さを単純には喜べないほど燃費が低下してしまうことに気が付いた。これは誤算だった。もちろんコスト度外視で速さを求める手もあるけれど、やはりものには程度がある。リッター当たり13キロは最低でも確保しないと、出費が惜しいわけではないけど=少しは惜しい気もするけど、移動の速さを手に入れるためとは言え矛盾が生じる。

で、これはあくまでも想像で検証したことはないしするつもりもないけど、クルマの空気抵抗はだいたい110~115キロぐらいで急激に増加し始めるのではないかと考えた。

空気抵抗はCD値X前面投影面積X速度の二乗で求められると言うけどCD値は乗用車なら0.3ぐらいだろうし、メガーヌRSとルーテシアⅢRSの全幅X全高を比べても4%ぐらいの差しかないし、結局は上昇した速度が走行抵抗に大きく影響しているのではないか。むろん高出力なのに前面投影面積が小さいクルマや空気抵抗係数が極端に小さいクルマには当てはまらないと思うけど、一般的なクルマだとこのあたりで速度の二乗に比例し加速度的に大きくなる空気抵抗に抗うため、エンジンが我々が思っている以上に頑張り始め、その結果予想以上に燃費が低下したのではないかと想像したわけだ

あぁ悩ましい。選択肢は自分の手の中にあるとは言え、速さをとるのかコストをとるのか。できればどちらも手に入れたい。この1年間の経験を元に理想的なクルマ移動の方法を模索する日々が続きそうだ。

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空いていれば第1車線でも120キロで巡行できる

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120キロで巡行していてもかなりの速度差で追い抜いていくクルマがある
このシーンでの速度差は10キロではすまないはず

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そういったクルマはずっと追い越し車線を走り続ける

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メーター読みで100キロの時
GPS内蔵の速度計の数値は96キロ

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同じくメーター読み120キロの時には115キロ
速度を上げれば上げるほど誤差が大きくなる傾向にある

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メーター読みで118キロということは実車速なら112キロ程度か
クルマはともにメガーヌRSトロフィー

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ある程度速さをあきらめるとかなり燃費が良くなることを経験的に知ってはいるけど
速さを抑えると雑多な交通の流れに奔騰されることも知っている

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ルーテシアⅢRSのモニターに平均燃費を呼び出す
9.1リッターで100キロを走る
つまり10.99Km/ℓ
どんなに速く走ってもここまで悪くなることはない

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120キロで巡行中にスロットルを抜き気味にして速度を維持した場合

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120キロで巡行中に右足に集中しないで速度を維持した場合

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おだやかに加速しても
増える走行抵抗に抗うためにクルマへの負担は増える

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なんちゃって7速パドルシフトのフィットRS CVTだと

 

※ 助手席から撮影した写真以外はウェアラブルカメラで撮影したものです。

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第625回 モノの見方

スタッフのFからメールが届いた。

意外なところで運転の話にでくわしたのでお報せします。上原浩治という引退したプロ野球投手がユーチューバーをやっているのですが、おなじく引退した審判を招いての会話の中で、運転の話が出ていました。さもありなん、という話です。

・教えてもらったYouTubeの運転にまつわるところを抽出したのが次の動画

・対談のフルバージョンは こちら です。