トム ヨシダブログ


第166回 ルノー・スポール スペシャリストディーラー研修

ずっと晴天がつづいていたのに、『よりによって雨だよ』となった11月9、10日。筑波サーキットで行なわれたルノー・ジャポンのルノー・スポール スペシャリスト ディーラー研修会にインストラクターとして参加した。
昨年11月のFSWでの研修に続いて2回目。「販売する人にも、クルマの面倒を見る人にももっと運転を楽しんでほしいから」とは、ルノー・ジャポンのTさん。それでユイレーシングスクールのカリキュラムを体験してもらうことになった。いわばルノー版YRSツーデースクール。

全国からルノー・スポールのスペシャリストとテクニシャン41名が筑波に集合。1日目はジムカーナ場にパイロンで作ったオーバルコースでコーナリングの練習。「あと5キロ高い速度でターンインして下さいねぇ」、「ブレーキをあとパイロン1本分引きずってぇ」、「速度を落としすぎるとクルマがロールしませんよぉ」と次から次へと愛のムチ(笑)でせかされながら、全員無事にカリキュラムを終了。

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夕方になって雨がポツポツ。真っ暗な中でコース2000の照明とヘッドライトだけを頼りに走る、走る。
滑るからクルマがよく曲がる! 面白い、面白い。

前回は日程の関係で1日目にショートコースを走り2日目にオーバルコースを走ることになったのだけど、今回はYRSらしく2日目がサーキット走行でコース1000へ。2回目ということもあるのだろうけど、リードフォローで遅れると指差されたこともあるのだろうけど、オーバル練習の効果てきめんでウエットなのにも関わらず全員がスロットルペダルを床まで踏んでいた。朝から雨で憂鬱そうな顔はどこへやら、走り終えればみんな笑顔。

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全員がコース1000を走るのが初めて。スタッフの先導でリードフォロー。遅れると指差されるは、腕をグルグル回してあおられるは、路面は濡れているは。それは、それは楽しい時間でした。

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雨は1時的にやんでもまた降り出す。降っている時間のほうが長い。走り始める頃には池はなくなったのが幸いと言えば幸い。

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コースに慣れたところで、次は

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ルーテシアRSトロフィーに乗ります。

クルマを購入する人に最も近い位置にいるみなさんが腕をあげていくのを見るのはとても、とても嬉しい。今回参加されたみなさんもそれなりに楽しめたと思う。もっと楽しむことに貪欲になってほしいし、その楽しさをもっと広めてほしいと思う。所有欲から使用欲への転換。ユイレーシングスクールが目指すところです。

クルマはただ移動に使うだけではその価値がわかりません。運転を楽しもうとすると見えてくるものがあります。

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参加されたみなさんの順応性は高いから、もっと楽しもうと思うともっと高くなる。





【スペシャリストディーラー研修に参加されたみなさんへ】
最近、クルマを買った方にユイレーシングスクールを勧めてくれるポルシェのディーラーがあります。勧めに乗って受講したその方、クルマの魅力を再発見。大喜びでした。
ユイレーシングスクールの宣伝をするつもりは、あるんですけど、カングーでもキャプチャーでもタイヤが4本ついていれば、基本同じです。よろしくお願いします。


第135回 ルノー・スポールそろい踏み

3月15日。ユイレーシングスクールの目玉(?)プログラムのYRSオーバルスクールFSWを開催。
今年から走行時間を増やすために定員を20名にしぼったのだけれど、前日のYRSトライオーバルスクールを受講した人がどうしても続けて練習したいと言うので、カリキュラムを工夫して計22名で開催。

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今回は教室で記念撮影

最近ルノーユーザーの参加が確実に増えてきていて、今回は4台のルノー・スポールが参加してくれた。

クリオに乗るHさんはサーキット走行の経験が10時間。1月のYRSオーバルスクールにも参加してくれた。
ルーテシアⅢに乗るKさんはサーキット走行は未経験でユイレーシングスクールも初体験。
ルーテシアⅣに乗るYさんは1年前のYRSドライビングワークショップに来てくれた。
メガーヌに乗るIさんは欧州車を対象としたレースに参加した経験をお持ちだが、ユイレーシングスクールは初参加。

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3兄弟と先輩といとこが
※スピダーはスタッフの愛車

みんなそれぞれ経験値は異なるけど、不思議なことに、YRSオーバルスクールで1日中楕円形のコースを走り回ると最後にはほとんど同じレベルに達する。
とにかく、午前中の半径22m直線60mのオーバルだと9秒に1回コーナーが現れるから、数えたことはないけれど相当な回数の加速→減速→旋回→加速をこなしているはずだ。
午後の半径22m直線130mのオーバルは3速に入るほど速度域が高く、なおかつ集団で走るものだからいつも理想のラインを通れるわけではないから、それはそれで練習になる。

最終的には1日でかなりの距離を走るのだが、タイヤがボロボロになるとか、ブレーキがフェードするとか、そんな話は全くない

なにしろアンダーステアを出したり突っ込みすぎるとすぐに指摘されるから、クルマが痛む前に間違った操作を修正することができる。

2月ぶりのオーバルを走るHさん。前回より良くなったでしょ、と。
もちろん格段の進歩です。午前中エンジンのかかるのが少し遅かったけど。

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クリオとHさん

クルマを全開で走らせるのが初めてのKさん。難しいですね、と。
でもキチンとできていましたよ。難しいと思うのは、今まで理論的にクルマを動かす機会がなかったからだけなんです。次回はもっと楽しくなると思いますよ。

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ルーテシアⅢとKさん

1年ぶりに来てくれたYさん。やはり、難しいですね、と。
走りは悪くないんです。ただ日ごろからもう少し積極的に運転しようという意思を持つと、もっと楽に運転ができると思います。

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ルーテシアⅣとYさん

初めてYRSに来てくれたIさん。頭を使って走るのは初めてなんで、と。
レースの経験があるだけにスムースに走ってました。でも少し走りがおとなしいかなと。次はもっとメリハリのある運転をされるとクルマの動きが良くわかると思います。

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メガーヌとIさん

クルマはその性能を味わってあげなければもったいない。特にルノー・スポールに乗る人はユイレーシングスクールに遊びに来てほしい。どれだけすごいクルマかがわかります。

※ ユイレーシングスクールのプログラムはどんなクルマでも、サーキット走行の経験がなくてもあっても参加できます。
※ あなたもクルマとの対話の糸口を探しに来てみませんか?


第131回 YRSツーデースクール

運転の上達のためには短期間に集中して練習するほうが効果的、というジムラッセルレーシングスクールの校長の教えを守って開催するYRSツーデースクール。

今回は4台のルノー・スポールが参加してくれた。


埼玉のTさんと東京のNさん。Nさんはサーキットが初めて


滋賀県から来てくれたWさんと千葉のHさん

YRSツーデースクールは1日目の午前中にブレーキング、スラローム、フィギュア8で基本操作を、午後のオーバルでイーブンスロットルとトレイルブレーキングを練習。うまくできてもできなくても、1日目に経験したことを2日目のサーキット走行に生かすことを最大の目標とする。
手前味噌ではなく、これでみなさんホントに上手くなる。今回はサーキット初体験の方が5名いらしたが、最後には全員がクルマをイキイキと走らせていた。
2日間でクルマの操り方がわかるユイレーシングスクールの目玉商品だ。


ルーテシアRSが全開でストレートを駆け下る


ルーテシアRSがロードホールディングに勝るロードスターを追い詰める


メガーヌRSがいい音を立てて疾走

ここ数年、またサーキットがにぎやかになってきて日程の確保が難しくなってきたけど、なんとか今年中にもう1度ツーデースクールができないかと画策中だ。


第121回 ルノーがもっと楽しくなる、といいな


素のメガーヌRSとトロフィーRが待つ

メガーヌRSトロフィーのお披露目に全国のルノーディーラーからルノー・スポールスペシャリストとテクニシャンが集まったのに併せ、運転講座と実技にも参加していただいた。


教室での座学があって

運転して楽しいRSモデルの良さをさらにさらに理解してもらおうというルノー・ジャポンのこの企画。事前にドライビングにまつわる資料を送り予習をしてもらい、富士スピードウエイのショートコースでは助手席から誰にでもできるクルマを安定させて走るための操作を見てもらい、翌日は駐車場に作った半径22m直線80mのオーバルコースをできるだけ速く走ってもらった。


同乗走行があって


オーバルトレーニングをやって

みなさん忙しい方ばかりだから運転道を極める時間があるか心配だけれど、少なくともこの2日間はルノー・スポールが送り出すRSモデルの性能の高さと、クルマを思いのままに操る楽しさの一端は体験していただけたと思う。

実は、一目惚れで先代ルーテシアRSを購入した後、あまりのすばらしさにルノー京都の山田さんに、「ドライビングスクールをディーラーオプションに設定しましょうよ」と投げかけたことがある。「だってクルマを動かす手続きを知らないままではこのクルマの価値はわかりませんよ」と。

ルノー・ジャポンとルノーディーラーはクルマを売るのが仕事なのは百も承知している。売ることが最大無二の目的。一人ひとりのユーザーを向いて運転の手ほどきをするのは本来の趣旨から外れる。それでもやってほしかったから。

世の中のクルマが高性能になっていくのに反比例して、クルマを操る人間の能力が低下しているのではないかと危惧しているからだ。結局、クルマがいつもそこにある家電のような存在になったのも、クルマ離れの遠因だと思うからだ。クルマにまつわるモロモロのことは、端的に言えばクルマを動かす人の影がだんだん薄くなっていることに根ざしていると考えるからだ。

という難しいことは置いておいて、クルマを操るのは単純に楽しいから、操り方を知ればもっと楽しくなるから、職務外のことではあるかも知れないけれど、ルノーディーラーに来るお客さんに製品のすばらしさを語るのと同じぐらい熱く、クルマを動かすことの面白さを伝えてほしいと思うのだ。その延長としてドライビングスクールがあって、みんなが運転を楽しめる環境があれば、クルマはもっと楽しくなる。

だから、今回担当させてくれたルノー・ジャポンには大いに感謝しているし、ユイレーシングスクールにできることは何でも協力するから、運転というソフトを抱き合わせてクルマを売る路線を確立してほしいと願っている。

富士での2日間が終わって間もなく、ルノー沼津の大石さんから連絡をもらった。ユーザーの中の有志をつのりドライビングスクールを開催したいとのことだった。具体的に動き出すのにはもう少し時間がかかるかも知れないが、RSモデルのユーザーだけでなく、ぜひカングーもコレオスもみんな含めたドライビングスクールができたらいいなと。お近くにお住まいの方は、大石さんに連絡してみてはいかがだろうか。


ピットで出番を待つ


各地からルノーが集まってきて


トロフィーRはタフだった


トロフィーRの実力を見て、体験


ダブルコーンスラロームでトロフィーRの軽さを見せ付けて


みんな笑顔


シフトアップのバックファイアの音が最高


足も最高


2日目は富士山が迎えてくれて


ロラン・ウルゴンさんとフレデリック・ブレンさんがオーバルトレーニングの視察に


最後に全員で記念撮影(参加者の半分は教室で座学中)


第119回 見た。触った。乗った。

来春発売されるメガーヌ ルノースポール トロフィーRに乗る機会があった。

当日は助手席にゲストを乗せてトロフィーRのパフォーマンスを体験してもらうのが目的だったのだけれど、楽しくて楽しくて、白状すると、その目的を忘れるぐらい本当に久しぶりに「気持ちの良い時間」を過ごすことができた。

パフォーマンスを体験してもらうために最初から最後まで手を抜かずに4時間、富士スピードウエイのショートコースを200周近く走ったのだけれど、トロフィーRはもちろん音を上げなかった。中盤から水温が少し上がりぎみだったがその後は安定していたし、ブレーキフィールも変わらなかった。そんな任務をまじめに遂行しながらの個人的インプレッション。

たぶん、軽量化がトロフィーR最大のアドバンテージだと思っていたから、走行の初めにスレッシュホールドブレーキングとダブルコーンスラロームを体験してもらった(白状すると、自分でそれを試したかったという気持ちが大きかったのだが)。

これが大正解。

タイヤトレッドがかなり磨耗していたのでスレッシュホールドブレーキングではABSが介入する場面もあった。しかし確かめてはいないけど、その介入の仕方がメガーヌRSより少ないというか、細かく制御されているように感じた。その領域に入っても減速度は変わらなかったし、その領域から抜け出すことも簡単だった。
ゲストに「今介入した」と説明はしたけれど、おそらくその違いはわからなかったと思う。

一人目のゲストを乗せてダブルコーンスラロームを抜けた時、思わず「やったぁ」と声が出そうになった。トロフィーRならではの動きが明確にわかったからだ。

軽量化がクルマにもたらす恩恵はレーシングシーンでも日常でも同じ。が、それはあくまでも一般論に近く、相対的な感覚では計ることが難しい。しかし今回はメガーヌRSという物差しがある。
もともと懐の深い足回りを備えるメガーヌRSに対してトロフィーRがどんなそぶりを見せたか。言葉で表すのが難しいけれど、走っていて笑顔にしてくれる、そんな感じ。
それでは説明にならないので、感じたことを文字にすると、
・操作に対してクルマの動きに遅れがない
・ヨーモーメントの中心がどこにあるかわかりやすい
・『おつり』をもらうことが想像できない
・パワーがあるからピッチングの制御が簡単
ということになる。

3周目からタイヤとガソリンのことだけ頭に入れて可能な限り速く走り、その動きを体験してもらった。すると、ダブルコーンスラロームで感じたことがまさにドンピシャ。

3速と4速の加速度が同じだから4速で傾斜5度のストレートを駆け下り、ブレーキングしながら3速に落としコース幅の半分ぐらいまでトレイルブレーキングを使って1コーナーのイン目がけてステア。操縦性がシャープ、という表現はあたらない。とにかくフロントを押さえている限り、舵角とクルマの向きにズレが生じない。言葉を探せば忠実。その一言。

下のヘアピンを登ってインフィールドに入って切り返すところでも、思ったところにクルマを持って行くことができる。なんと言うのかな、前後左右に荷重は移動しているのだけど、4本のタイヤがずっと地面に張り付いていてくれる感じ。

最終コーナーのアプローチでトレイルブレーキングを使った時。意識的に踏力を強めてみても後輪の滑り出しはホントに穏やか。破綻する気配もない。トレイルブレーキングをあえて短くしても、瞬間、エネルギーの方向とクルマの進む方向がズレるように感じるけど、次の瞬間には前後均等に外荷重になる。

大人2人分軽くなるということはこういうことなんだな、と自分自身すごく勉強になった。おそらく、軽量化の過程で高いところの重量が削がれた結果、重心が下がって相乗効果もあるんだろうなと想像もしたり。

走行中、かなりのゲストに「安定してますね」と言われた。「そうですね。すごくいいクルマです」と正直な気持ちを伝えたけど、すぐに「運転手がいいからでもあるんです」と付け加えることも忘れなかった。みなさん、「そうですね」と運転の仕方にも興味を抱いてくれたようなのが嬉しかった。

どんなに性能の高いクルマでも性能をきちんと引き出す方法を知らなければ、速さは即危険とイコールになるし、第一楽しくない。実際、限界を試すことなど無意味なほどトロフィーRのポテンシャルは高い。

運転を教えている立場の人間のあくまでも個人的な意見なのだが、トロフィーRは運転の仕方を教えてくれる良き先生になると思う。だから、ずっとノーマルのまま乗り続ける覚悟があって、クルマの動かし方をずっと模索し続けようと思う方にピッタリ。飾っておくだけじゃもったいないし、限界を超えて走ろうとしても楽しくないし、トロフィーRの良さはわからない。たぶん、トロフィーRの良さは長い付き合いができる方にしかわからないと思う。

昔からクルマに乗っているせいか機械にお世話になるのを好まない。ルーテシアRSを買ったのも、おせっかいでないクルマがなくなってしまうという危機感からだ。今回、トロフィーRに乗せてもらって、今の時代にしてみればおせっかいではないクルマ、自動車の本質をついたクルマを作るルノーの潔さに拍手を送りたいと思った。そして、こんな得がたい時間を与えてくれたルノー・ジャポンに感謝したい。


第111回 第1回YRSオーバルスクール大阪

全員で記念撮影(ひとり早引き)

コーナリングのメカニズムを学ぶには120キロほどの速度からのブレーキング→ターンインを繰り返すのが効果的。だからユイレーシングスクールではオーバルスクールを積極的に開催している。しかし、それができる場所というとなかなか見つからない。


ルノーRS兄弟も参加 赤のYさん 白のWさん 青のSさん

関西では奥伊吹スキー場の駐車場を借りて開催したことがあるのだが、直線があまり長く取れないのと周囲がコンクリートウォールなので2回開催しただけで中断していた。今回、たまたま舞洲スポーツアイランドのイベントスペースにキャンセルが出て、初めて大阪でユイレーシングスクールの目玉、オーバルスクールを開催することができた。


フランス国旗

当日の予報は雨。遠く見渡せる山々には黒い雲がかかっているのに、オーバルコースの上だけは晴れているという奇跡的なコンディションのもと、久留米、金沢、和歌山からの参加者を交え一日中走り回った。

今回は初めてユイレーシングスクールに参加される方が多かったけど、それでも最後にはしっかりと後輪も使ったコーナリングができるようになったから、クルマを動かすための手続きは理解してもらえたと思う。


2速でレブリミッターにあたる速度から


ブレーキングしても

4輪を路面に貼りつけておく練習を重ねる

運転の上達に終着駅はない。もっとたくさんの人にクルマと仲良くなる方法を知ってほしいと思う。名古屋以西で150mx50mほどのスペースをご存知の方はぜひユイレーシングスクールにご一報下さい。


第105回 ホットハッチ考 RSというバッヂ


RSバッヂ 1

お気に入りだった13インチタイヤを履いたGD1フィットの後釜であるGK5フィット。
GD1の時に信じられないくらいの荷物が収まって大いに助けられた経験があるので、次もフィットだろうなと思っていたらGK5が出たのは幸いだった。

ATしか乗れない息子が日本に来た時に乗れるように、それとふだんの足だからと7速CVTを選んだのだが、果たしてGK5フィットRSはホットハッチ足りえるか?


風景に溶け込むのはいいんだけど…

まだ回したことはないが、レッドゾーンの始まる6800回転まで回せば、とりあえず動力性能としてはCVTであっても痛痒を感じることはないはずだ。もちろんもっと速いコンパクトカーを選ぶ選択肢はあったけど、総合的に判断すればGK5RS-CVTで不満はない。

が、後席用のドリンクホルダーがないこと以外は使い勝手のいいGK5RS-CVTだが、気になる点がなくはない。


踏力が弱いとしかられる!

例えばアイドリングストップ。
GK5RS-CVTに乗り出した頃。交差点で止まるとメーターの中に黄色いランプが点る。最初は何のことかわからなかった(マニュアルを読んでいないことを白状するようなものだ)が、ブレーキペダルをさらに踏み込むと消えるので、踏力が足りないことを教えてくれるランプだとわかった。

そこで「ヘェ~ッ」となった。ふつう、みんなは止まる直前にそんなに踏力をかけているのかと驚いた。
ルーテシアRSだろうがトゥィンゴRSだろうが受講生のクルマだろうが、止まる寸前にかけている踏力ははるかに小さい。小さい踏力で止まれなければ問題だが、ちゃんととまれるのだから『もっと力をいれて!』なんて指示されると面食らってしまう。

どういう仕組みになっているかは知らないが、要するにAT特有のクリープ現象で停車中のクルマが動きだすのを防ぐためにブレーキは強く踏んで下さいという警告灯のようだ。しかし上り坂でも下り坂でもやってみたけれど、薄いブレーキでもGK5RS-CVTが動くことはなかった。

気になったのは、自分にとって『強すぎる停止寸前の踏力』がいわゆる標準なのだろうかということ。もしそうなら、ほとんどの人は前荷重のままクルマを止めていることになる。さらに言えば、ブレーキペダルに足を乗せる時にそこまで踏み込んでいるのではないかと心配になる。少なくとも、いわゆるトレイルブレーキングを使う場合にはもっともっと小さな踏力を残すことが重要なので、あの踏力に慣れてしまうと細やかなピッチコントロールができなくなってしまうのではないかと余計な心配をしている。薄いブレーキを使えないのは、それ以前にキチンとブレーキを踏んでいないのではないかと気になってしまう。アナログ時代の人間だからかも知れないが、どうもオンオフ的な操作には抵抗感を覚えるのだ。

YRSのスタッフにこのことを話すと、「トムさん、誰もそんなこと考えて運転してませんよ」と軽くあしらわれてしまったが。
だから、今はアイドリングストップは解除していない。それで、停止するたびに介入しない、つまりエンジンが止まらないようなブレーキングを楽しんでいる。最先端デバイスとの根競べだ。


RSバッヂ 2

例えばターンイン時の荷重移動の仕方。
ルーテシアRSでもトゥィンゴRSでも、FRのE30M3でも、はてはアメリカで足に使っていたサバーバンでも、あるいはアメリカでレースをやっていた時も、加速→減速→旋回という流れの中で自分なりの決まりがあってその手続きを守ってきた。もちろんドライビングスクールで同乗走行を行なう時もだ。
場合によってその時間を短縮することはあるが、手続きを省くことはない。クルマの性能を発揮させるにはこの手続きが絶対に必要だと経験しているからだ。
しかしGK5RS-CVTはそんな時、少し変わった挙動をする。このままコーナリングに移るとアウト側前輪のその外にまで荷重が移動してしまうような素振りをする。そのまま先に進むとアンダーステアになるな、と感じるような挙動変化をするのだ。

その原因がハイトの低いタイヤにあるのかサスペンションのセッティングなのかはわからないが、少なくともルノー・スポール3台やGD1フィットでは感じたことのない種類のものだ。もっともGD1フィットのトレッドは広げていたので、スプリングレートは落ちても4つの支点が遠くなったから感じにくくなっていたのかも知れないけど。

あくまでも想像でしかないのだが、オーバースピードでコーナーに入るとアンダーステアが顔を出し失速させ、その先の危険を回避しやすいようなセッティングなのかなとも思う。少なくともノーマルのままで4輪を使ったコーナリングを実現するのは難しい種類の足だ。

だからGK5フィットのRS、とりわけマニュアルシフト車を購入する人は足回りを改造したくなるに違いない。操縦性云々よりもカッコでいじる人もいるだろう。
が、できればクルマはノーマルのまま乗るのがいいと思っている。クルマは高度な技術に裏付けられた道具であり、頭のいい人が集まって作っている。ノーマルだからこそ発揮される性能が確かにある。
改造が許される時代だからと言って、クルマをノーマルの状態から変えるのは賛成しない。車高を落としすぎて扱いにくくなった、なんて例は掃いて捨てるほどある。ドライビングスクール受講生にも「クルマはいじらないほうがいいですよ。改造にお金をかけるんだったら自分に投資するつもりでまたYRSに来て下さい」と話している。

で、個人的なSNSにGK5RSの挙動のことを書いたら、YRS卒業生から「フィットRSのRSはロードセーリングの意味ですから」とコメントをもらった。RSがレーシングスポーツであろうとロードセーリングであろうと、そんなことはどうでもいい。言いたかったのは、RSというバッヂをつけている以上もっと明確な性格を与えるべきだったと思うヨ、ということだ。
メーカーも『走りを感じる装備をプラスしたスポーティモデル』とうたってるからGK5RSに過度の期待をしてはいけないのかも知れないが、なんか、なんちゃってスポーツモデルが増えると、どんどんユーザーが言葉は悪いが去勢されていくような不安を感じる。

YRSのスタッフにこのことを話すと、「トムさん、そこまで考えてクルマと付き合う硬派は少なくなったんですよ」だと。なんか自分が変人に思えてしまった。

でも、GK5フィットには同じエンジンを搭載したRSでないモデルがあるし、ディーラーの話だとハイブリッドに押されてRSはほとんど生産されていない少数派のようだし、メーカーがホンダだし、ユーザーや市場に迎合するのではなく、車格がエントリーモデルだからとかではなく、『乗りこなすなら乗りこなしてみれば!』なんて感じのRSを出してほしかった。RSが記号だけで終わってほしくはなかった。


RSにはもっとサーキットが似合ってほしかった

自分にとっては少し違和感のあるGK5RSだが、繰り返しになるけど、クルマとしての完成度は大いに評価している。荷重が移動しすぎる癖もトレイルブレーキング中に踏力を変化させながらいつもより長めにとれば収まる。それなりに操作すればなんとかなるから不満があるわけではない。
ただ、ルノー・スポールが送り出す一連の『潔い思想に基づいたクルマ』のようなモデルを国産メーカーに期待したいだけだ。

クルマを選ぶ時にルノー・スポールを選択肢に乗せることができる日本のユーザーは幸せだと思う。

※購入後、設問がたくさんあるホンダのアンケートに答えた。上の2点を含めて思いのたけを書き綴っておいた。

ホットハッチ考 終わり


第78回 仲間とともに

スクールで使うコースを作っていると、沈みゆく太陽が富士山の陰を雲に…。

クルマ好きがたくさんたくさん集まってくれた2004年の年間68回には及ばないが、今年、ユイレーシングスクールは32回のドライビングスクールを開催。運転がうまくなりたい方たちがユイレーシングスクール独自のカリキュラムに挑戦している。

8月に富士スピードウエイで開催したYRSオーバルスクールには、ルノー メガーヌRSに乗るHさんが千葉から参加してくれた。


YRSオーバルスクール参加者と記念撮影。ADバンで参加してくれた方も。


メガーヌRSに乗るHさんと

9月のYRS+エンジン誌のドライビングレッスンには横浜のIさんがトゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールで参加してくれた。


エンジンドライビングレッスンの記念撮影を撮影


同じトゥィンゴ ゴルディーニRSに乗るIさんと

9月末に開催した富士スピードウエイで2日間走りづめのYRSツーデースクールには水戸市からTさんがトゥィンゴRSで、MさんがルーテシアRSで宮城県白石市から参加してくれた。

ユイレーシングスクールに遠方からの参加者が少なくない。今回も水戸市、名古屋市、豊田市、西宮市、和歌山市から、理にかなった運転を身につけるためにはるばる駆けつけてくれたのが嬉しかった。

特にTさんは、このブログを読んでトゥィンゴRSの購入を決められたそうで、その上実際にユイレーシングスクールに参加してくれたのだからとても、とても嬉しい。

HさんもIさんもTさんもMさんも、もちろん。スクールが終わる頃には朝一番で走った時よりもずっとずっと、クルマとの対話を楽しみながら粋に走らせていましたとも。


YRSツーデースクールの1日目は広い駐車場で…


YRSツーデースクールの2日目はサーキットを歩くことから… (背景に見えるのが30度バンクの名残り)


YRSツーデースクールの記念撮影


ルノー・スポール兄弟とTさん、Mさんと記念撮影

※ユイレーシングスクールは12月初めまでドライビングスクールを開催しています。カングーでの参加も大歓迎です。ぜひ一度運転の楽しさを味わいに来てみて下さい。


第70回 アイドリングストップ


掲載が遅れてしまったが、筑波サーキットで開催したエンジンドライビングレッスンに岡崎市から駆けつけてくれたTさんのウインドと

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トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールを点検に出した。お世話になったのはルノー京都。今回は代車に新車のマーチを貸してくれた。そして、これがアイドリングストップの興味津々初体験。


アイドリングストップ機構付きマーチ

と言っても、アイドリングストップ自体は何年も前から実用に供されている技術だし、町を走ればアイドリングストップバスが青信号になってエンジンをかけて(?)発進するのを目にするし、スクールに来たアルファロメオジュリエッタのStart&STOPシステムをパドックで試させてもらったこともあるから、興味の対象はもっぱら、アイドリングストップ付きのクルマを日常的に乗った時に自分がどんな反応をするか、だった。

マーチのアイドリングストップはスイッチの切り替えでで機能させないようにできること、アイドリングストップ中にステアリングを動かすとアイドリングストップが解除されることを教えてもらい、ちょっと安心して八条通りに乗り出した。

で、結論から言うと、「アイドリングストップという技術は確かにクルマの進化として認められるけど、違和感を感じることは避けられない」だった。

誤解のないように付け加えておくと、マーチのアイドリングストップのことを行っているのでは決してない。自宅から御殿場インターチェンジまでの400キロ強の間に信号機がひとつしかないユーザーにとってアイドリングストップが有益なのか、という議論をするつもりもない。
「アイドリングストップ機能がついていれば排気ガスの排出が減って環境にやさしく、燃費性能も向上するのでおさいふにもやさしい」と、あたかも排気ガスをたれ流すクルマが悪者で、アイドリングストップ装着車が善人だと言わんばかりの売り方に疑問を感じるのだ。そう。短期間ながら自分で体験して、今までもやもやしていたものが晴れた。技術そのものは拍手ものなのだが、もやもやの原因はその技術の伝達の仕方だった。

自動車技術として燃費向上を図るのでであればエンジン内部や駆動系の開発によってそれが達成されるべきであろうし、短時間エンジンを停止するという対症療法的な方法で声高に数値の改善を謳うのはいかがなものか、という話だ。使う環境によっては乗り手の利便性が大いに高まるのだから、もったいない話だと思う。
アイドリングストップ付きのクルマに乗っていてもその効能にあずかれない人もいる。アイドリングストップ自体を嫌う人もいるだろう。逆に、カタログに書かれた数値だけを比較して、個人の嗜好を抑えてアイドリングストップ装着のクルマを選んだ人がいるかも知れない。

やはり、この手のデバイスは、特にアイドリングストップに関しては「アイドリングストップという技術を搭載しています。通常の走行では特別に意識していただくことはありません。ただアイドリングストップを行うことで環境への負荷を減らすことはできます。機会があればそんな運転を試されてはいかがでしょう」というようなメッセージと『対』になるべきものだと思う。

ある日。スタッフで食事をしている時に絶対にぶつからないクルマの話になった。レーダーが人間の代わりをして障害物の手前で完全に停止させるデバイスを内蔵したクルマだ。一度試乗会に行こうかということになりあるスタッフが言った。「トムさんなら絶対にぶつけてみせるでしょ」と。「もちろん」と答えた。冗談だが、その場に居合わせたみんなが、クルマは安全な乗り物ですというイメージだけが一人歩きしなければいいがな、と願っていた。

その昔。米国日産が『Z』をアメリカ市場に投入するにあたりCMを流した。サーキットをさっそうと走るZの姿が目に焼きついたころ「You own the road]という刺激的な文字が現れる、そんなCMだった。が、そのCM、1週間もしないうちに画面から消えた。NHTSA(運輸省道路交通安全局)がユーザーに誤解を生じさせる可能性があるとして、放映の自粛を勧告したからだった。

アメリカと比べると概して日本のマスコミは、CMを含めての話だが極めて情緒的だ。クルマは乗り手の人生を増幅させる側面を持つから、メーカーもマスコミも情報の伝達方法には合理性を軸にして気を配るべきだと考える。も少し配慮があれば、喜んで技術を享受する人が増えると思うのだが。

ま、クルマが今よりもずっとプリミティブが機械であったころから運転の楽しさを追い求めてきた人間にとっては、最近のクルマの動きを制御するデバイスに馴染めないというか、おせっかいだとすら思ってしまう。
時代を考えれば最新技術に身を任せられるようにならなければならないとは思うのだが、クルマに任せたゆえに起きた悲惨な出来事をたくさん知っているし、任せたとたんに自分の運転が下手になってしまうような気がするし、運転に対する緊張感が薄らぎ老け込むような気がして、いまだにこの手のデバイスを受け入れるのが難しい。


ルノー京都CADONO

話が横道(?)にそれたけど、グランドオープニングの招待状をもらっておきながらなかなか行けなかったルノー京都CADONOにおじゃました。


ドアを開けると


ショールームにRSが3台


嬉しくなった


工場には入庫中のルーテシアRSが2台


外には納車待ちのトゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールが1台

まぎれもなくこの日のルノー京都CADONOはルノー・スポール占拠率が極めて高く、こんなディーラーがたくさんあればナ、と思わずにはいられなかった。
そんなディーラーでユイレーシングスクールの座学をやってみたい!