トム ヨシダブログ


第87回 富士スピードウエイレーシングコースを走る

鈴鹿サーキットや富士スピードウエイといった大きなサーキットでドライビングスクールをやってほしいという要望が前々からあった。

長いストレートならクルマの最高速付近のスピードを体験できるから走っても気持ちがいいに違いない。ドライビングテクニックにしても、高速コーナーや長いストレートの後のブレーキングで正確な操作ができて初めて本物と言えるのも間違いではない。

しかし、ユイレーシングスクールは小さなサーキットや駐車場に設けたコースでドライビングスクールを開催し続けてきた。それは第一義に反復練習の回数が多ければ多いほど練習になると考えているのと、高速で走らなくても基本的な操作は十分に習得できると思うからだ。
と言うのも、高速で走ると単位時間あたりの移動量が大きくなるから、操作の間違いは増幅されて結果に表れる。それは、慣れるまでは危険につながるし、「とにかく速くなくてもいいですから再現性のある操作を身につけて下さい」というユイレーシングスクールのポリシーにも反することになる。もちろん、教える立場からも1周にかかる時間が短いほうがアドバイスしやすい事情もある。

それでも、スピードを出したいという誘惑もわからないでもないので、今年は富士スピードウエイのレーシングコースでドライビングスクールを行うことにした。事前に参加者に配る資料を作っているのだが、その一部を先行公開。クルマが速く走ると、速くなればなるほど不安定になることを知ってもらうための表だ。
人間にしてみれば単にスロットルを開けるだけで達成できることなのだが、タイヤのコンタクトパッチでしか路面と接していないクルマにとって、高速で走る時になぜ繊細さが必要かという数字だ。少しばかり想像すると、なぜ高速域でクルマを安定させることが難しいのかがわかる。

とまぁ、それはそれとして、富士スピードウエイのレーシングコースでドライビングスクールをやるのだからコースを知らないではすまされない。トゥィンゴ ゴルディーニRSを連れ出してある走行会で初体験した時の動画がこれ。『いやぁ、広すぎてどこを走っていいのかわからない』の巻。

※30分のセッションの2周目以降を収めてあるので長編です。


第84回 久しぶりの鈴鹿レーシングコース

実は、アメリカでレース活動を始める前に一度だけレースに参加したことがある。

あれは1982年1月17日。打ち合わせで日本に戻って来ていた時のこと。無謀にも練習なしのぶっつけ本番で新春鈴鹿300キロレースに参加することにした。予選で初めて乗るクルマと初めてレーシングスピードで走るコース。
鈴鹿サーキット自体はコースオフィシャルとして旗を振っていた経験があるからレイアウトは熟知していたし、走るクルマを客観的に見ることには慣れていた。
が、クルマで走った経験はというと、配置につくためにマイクロバスに乗せてもらっただけ。常識的に考えればレースに出て他人と争う状況にはなかった。

けれど、個人的にはそんな状況が嫌いではない。

条件が揃わなければやらないのではなく、条件を整えるために時間を使うのでもなく、その時、自分に何ができるかを確認することが、より良い結果を得ることよりも大切なことだと思っていた。

だから、もちろん上位でフィニッシュできるはずもなく、ただただファーストドライバーから受け継いだ時の順位を守り、できればさらに上位を目指せれば上出来と考えていた。

50周レースの半ば。予選21位から何台か抜いて戻ってきた大竹君からステアリングを引き継ぎ、自分との勝負が始まった。ピットアウトして1コーナーに入るころ、競り合いながらストレートを駆け下っている数台の集団が見えた。これ幸いとS字入り口までに先に行ってもらい、まずついて行けるかどうかを確かめることにした。
で、1周もしないうちに懐疑は確信に変わった。単独で走れば速いドライバーも競り合っていると自由が利かない。速さを殺がれていた。十分に未経験者が集中できる速さだった。

しかもシビックはとてもスリップストリームが効いた。スプーンカーブを立ち上がって裏のストレートの半ばで、スロットルを戻さないと、前を行くクルマに追突しそうなほどだった。
競り合っているクルマはストレートではもちろん、コーナーでもラインを変えてお互いをけん制していた。目の前には何人もの先生が走っていた。ダンロップブリッジを駆け上がる時にも、スリップストリームが効いているのか確かめるために異なるラインを試すことができた。

チェッカーまで数周を残したところで23番ポストでイエローが振られていた。集団の最後から130Rにさしかかると、エイペックスを過ぎたあたりのコース上で1台のシビックが横転していた。

車両がコースを外れて止まっている時には、2周イエローフラッグを提示してドライバーに伝えた後に解除するのが鈴鹿サーキットのルールだった。チェッカーまで残りわずか。しかも車両はコース上。イエロー解除はないと見た。
ピットサインを横目に最終ラップに入り頭の中はスプーンカーブの立ち上がりに占領されていた。「130R手前の24番ポストで2周イエローが振動で振られていたから次は静止提示になるはず。ならば23番ではイエロー解除だ」と結論を導き出したところで裏ストレート。これでもかとスロットルを開け、坂を上りきる前に1台。立体交差のはるか手前で2台。それまでは、横に並んでも『いや~ぁ、届かない』振りをしていたけれど、この時ばかりは物理の法則を最大限に利用させてもらった。
イエローが提示されている24番ポスト手前の立体交差にさしかかるころ1台をインから抜いた。直後の追い越し区間でそのクルマはなす術もなし。事実上のレースはここで終わった。あとは、初めて前にクルマがいない最終コーナーを全開で駆け下ることだけだった。

最終ラップまでに前を走る集団のうちの1台を抜いた記憶があるから、大竹君から引き継いだ時の順位は定かではないが、おそらくポジションを上げることはできたはず。なによりも、自分の中で速さに対する確信を得るための引き出しが増えたことが最大の収穫だった。

’82新春鈴鹿300キロ自動車レース結果

そんなことを思い出しながら、トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールで30年ぶりに鈴鹿サーキットレーシングコースを走ってみた。前夜からの雨でコースはウエット。風が強く時折陽がさすものの、気温が低くライン上すら乾かない状態。それでも、自分の原点とも言えるコースを走るのは大変気持ちのいいものだった。

ただ、わがままを言わせてもらえば個人的には昔のコースのほうが良かったと思えたのは残念だった。

あの時、1コーナーから2コーナーまでの間に明確な直線部分があったからスロットルを全開にしていた。デグナーカーブは早めにインにつくと後が大変な、いつまで経っても終わらないブラインドコーナーだった。スプーンカーブ1個目はもっとRが大きかったし2個目までに加速できる区間があった。130Rは高速の大きなひとつのコーナーで自分の意識を確認するにはうってつけの場所だった。シケインのない最終コーナーはラインを間違えるとスロットル全開でもオーバーステアになるほどだったが、立ち上がりながら少しずつ見えてくるキラキラと光る伊勢湾がステキだった。
他にも細かい部分が変わっているようだが、それでも鈴鹿サーキットは鈴鹿サーキット。クルマをキチンと走らせることの重要性がこれほど理解できる環境はない。

※あの時、快くシビックを貸してくれたオフィシャル仲間だったRSヤマダの山田さん、一緒に走ってくれた大竹君。今でも感謝しています。


第83回 2013年全日程終了


最後のスクールの週末。金曜日に仰いだ富士山。

12月8日。ポルシェクラブ千葉のメンバーを対象としたYRSプライベートスクールが終わり、今年予定していた活動の全てが終了した。

今年ユイレーシングスクールに参加されたのは21歳から73歳までの延べ465名。うち86名がユイレーシングスクールを初めて体験された。率で言うと18.5%。ここ10年以上リピーターが9割を超える年が続いていたから、ほんとに久しぶりに新たに参加してくれた方が増えたことになる。

15年目を迎える来年も「モータースポーツをもっと手軽に、もっと楽しく、もっとみんなで」を合言葉に、参加してくれた方々に『クルマの運転って楽しいですね』と言ってもらえるようなドライビングスクールを開催したいと思う。ルノーユーザーを対象としたドライビングスクールも開催できればと思っている。

※クルマの性能を存分に味わうことができるサーキットでのスポーツドライビングも、乗り手に確かな知識と集中力を求めることには違いないのでユイレーシングスクールではひとからげにモータースポーツと定義している。


第82回 600回と1万3千人

今年もあと1ヵ月あまり。毎年、この時期になると少しばかり神聖な気持ちになる。いつもがふしだらだという意味ではないけれど。


ルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールを題材にドライビングポジションの説明

ユイレーシングスクールは1999年12月8日に、埼玉県にある桶川スポーツランドで日本でのあげた。
日本で10年あまり、アメリカで20数年。クルマとモータースポーツにかかわる仕事を通して得た経験をもとに、クルマを運転という側面からもっと楽しんでもらうことを目的にユイレーシングスクールは活動を始めた。

12月がくればユイレーシングスクールは丸14歳になるが、毎年のことながら受講して下さった多くの方と、そして活動を支えてくれた卒業生のみなさんに感謝の気持ちでいっぱいになる。

11月16日(土)。今年最後のYRSオーバルスクールが終わった。記録を見てみたら、この日がドライビングスクールと卒業生を対象としたスクールレースを合わせて600回目の開催だった。


今年最後のYRSオーバルスクール参加者と

11月17日(日)。今年最後のYRSドライビングワークショップが終わった。記録を見ると、この日の参加者を加えると開校以来の延べ受講者が13,001名だった。


今年最後のYRSドライビングワークショップ参加者と

今年は12月7日のYRSオーバルレースと翌日のプライベートスクールを残すだけとなったが、15年目を迎える来年はカリキュラムを追加する方向で検討に入っている。

気持ちも新たに、少しでも多くの人に『運転って面白いんですね』と言ってもらえるように…。


第81回 粘る足

サーキット走行では走行中のクルマの前輪と後輪のスリップアングルが常に等しくなるような操作が理想だ。

しかし操舵輪である前輪にスリップアングルを与えるのは簡単でも、外力に頼るしかスリップアングルを得ることのできない後輪にそれを与えることは簡単ではない。
しかも、高速で走っている際に前後輪のスリップアングルが等しいことは少なく、前輪のスリップアングル>後輪のスリップアングルの状態と前輪のスリップアングル<後輪のスリップアングルの状態が繰り返されている。

だから、安全に走るためにも速く走るためにも『足』がどのようにしつけられているかが重要になる。

ルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールの『足』が秀逸なのは過去にも触れたが、タイヤの動きからそのあたりを解き明かせないかとビデオで撮影した。

題して「ルノー トゥインゴ ゴルディーニ RS 舞うⅡ」

で、あくまでも個人的な感想なのだが、このクルマの足にはいわゆるハイパフォーマンスラジアルは似合わないと思った次第。


第79回 クルマを動かすということ

先日開催したYRSツーデースクールに参加していただいた方々からメールをいただいた。そのいくつかを紹介したい。

★ Sさんからのメール
ツーデースクールありがとうございました。
ビジネスマンとして或いは個人として色々な種類の研修を経験しましたが、トップレベルだと思いました。特に実技の時間がほとんどなので、体感から学ぶというか、身体経由でブレーンストーミングされる経験だったと思います。結局、「意識によってのみ運転が変わりうる」ということだと思いますが、身体から得た感覚がないと、知識だけではその意識を継続することが難しく、その意味で、サーキット走行の繰り返しがやはりこのレッスンのハイライトだと感じました。トムさんが講義された内容や、アドバイスを頂いたことの意味というか言葉そのものが、後になって響いてくるという不思議な経験をしました。またお世話になると思います。

★ Tさんからのメール
この度は、大変お世話になりました。
事前に想像した以上に内容に充実感があったばかりか、長時間の走行にも拘わらず終始楽しくかつ有意義に過ごすことができ、皆様の技術はいうまでもなく、お人柄にも、大変心打たれました。これまでいくつかのドライビングレッスンに参加してきましたが(いずれも、海外自動車メーカーの名前を謳ったプログラムでした)、安全ということをこれほど前に押し出しつつ、かつ、速く楽しく走ることをきちんと教えていただけたことはありませんでした。ご教示いただいた理論、技術を普段の安全運転に生かすとともに、自らの理解、技術の向上に努め、近い将来、再び皆様のレッスンを受講させていただきたく存じます。本当にありがとうございました。

★ Tさんからのメール
先日は色々とご指導頂きまして誠に有り難うございました。
運転に対する意識改革の機会として、大変有意義な時間を過ごす事が出来ました。サーキットで走る事と普段の運転は無縁・・・と今まで思い込んでいたのは、車人生において大きな損失でした。今後はいつものカーブや坂を上り下りする時にも自分の感覚を総動員して円滑な運転操作を目指す様に努めます。サーキット走行には(面白いと思いつつも)まだ踏み込めませんが、スクールにはまた参加したいと考えております。再びお会いできるのを楽しみにしております。

他の参加者からも感想やご意見をいただいたのだが、それはまたの機会に。

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さて、ユイレーシングスクールではYouTubeにオリジナルビデオを掲載させてもらっている。少しずつ視聴してくれる方が増えているようで、過去30日間の再生数は2,350余り、再生時間合計は3,000分を超えた。
サーキットを走ったりYRSオーバルコースを走っている動画ばかりだが、注意深く見ると運転操作のヒントになるようなものが見つかるはずだ。

その中で1ヵ月前にアップした動画の視点を変えたのがこれ。
題して、「タイヤは働く その2」

こちらも感想などお聞かせいただければ幸いです。


第77回 タイヤは働く

クルマは4本のタイヤでその機能の全てを路面に伝えている。駆動力、制動力、遠心力を4本のタイヤが『分担しながら』クルマの走行状態を保つ。
4本であることが必要条件だから、4本のタイヤのうちの1本でもグリップを失うことになれば、クルマはその機能を発揮することはできない。

スクールで毎回説明していることだが、クルマはひとつの機能だけを使っている時には非常に安定しているものだ。加速なら加速、減速なら減速、旋回なら旋回。その動きが始まってしまえば、そしてその動きを続けている限りクルマのバランスはまず崩れない。

しかし、その動きが始まる瞬間、その動きに移る瞬間にタイヤがグリップを失うことは大いにあり得る。特に対角線上に加重移動が起きる場合、すなわちターンインがその典型。
グリップを失う原因は様々だが、四隅にタイヤが付いているクルマの宿命で、1本のタイヤのグリップを損なうとその対角線上、反対側のタイヤのグリップも損なわれる。つまり、クルマが4本のタイヤで支えられているという常識が通用しない事態が起きる。

クルマを思い通りに動かすことが目的ならば、アウト側前輪のグリップに最大限の注意を払うべきだし、そのグリップの限界を探る方法もある。(どうするかは実際にユイレーシングスクールを受講してみて下さい)

ということで、一生懸命働いてくれる前輪をフィーチャーした動画がこれ。

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スクールで行うリードフォローのリードカーとして、動画撮影のカメラカーとして大活躍のルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポール。こんなこともやりました。


於:富士スピードウエイレーシングコース


リアウインドにカメラをセット

※ 詳細は近日公開です。


第75回 トゥィンゴ ゴルディーニ RS 躍る

ユイレーシングスクールでは、元社団法人日本オートスポーツセンターの委託で開催した筑波サーキットコース2000を使った筑波サーキット公式ドライビングスクールと、YRS卒業生を対象として鈴鹿サーキット西コースで開催したYRS鈴鹿サーキットドライビングスクール以外は、いわゆるミニサーキットと呼ばれる全長1キロ未満のサーキットでドライビングスクールを開催してきた。

理由はみっつ。ひとつは最高速度が高くないのでクルマへの負担が少なく、全くのノーマルカーでも必要なだけ走行を続けることができること。もうひとつは1周にかかる時間が短いのでサーキットの各コーナーを通過する回数が増えるため反復練習にうってつけなこと。
最後のひとつは、ミニサーキットでもモータースポーツを実践するために十分な施設であることを証明すること、だった。
実際、筑波サーキットコース1000や富士スピードウエイショートコースでは長年短距離レースのYRSスプリントや耐久レースのYRSエンデューロを開催し、多くのユイレーシングスクール卒業生が参加してくれた。

高性能のクルマを持っていると最高速度の高いサーキットを走りたくなるものだが、ミニサーキットこそドライビングポテンシャルの向上や、クルマを道具としたスポーツを満喫するのに最適だと考える。
アメリカのモータースポーツが盛んなのも、1,300ヶ所以上あるサーキットの中の半数を占めるミニサーキットで週末ごとにレースが開催されているからに他ならない。

話が横道にそれたが、NAエンジンがどんな振る舞いを見せるか試したくて、ルノー トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールを富士スピードウエイショートコースに連れ出した時の動画を紹介したい。

スロットルペダルの動きにリニアに反応するエンジンは、実に快適に小さなホットハッチを走らせた。同じ向きのコーナーを走るオーバルコースでは足の粘りが印象的だったが、ロードコースを走らせてみると切り返し時に起きる逆ロールに対して滑らかに動く懐の深いリアサスペンションに感銘を受けた。
ビデオでは速度感が乏しいが、実施は全てのコーナーでリアタイヤはフロントタイヤに見合うだけスライドしていて、前後のスリップアングルの均一化が簡単にできたことを報告しておきたい。


第72回 トゥィンゴ ゴルディーニ RS 舞う

ちょっと残念なことがふたつある。

ひとつは、「このアングルから撮ればトゥィンゴRSの粘っこい足の動きがわかるよね」と期待していたのだが、撮影当日が昼間だというのに雲に覆われて暗かったせいか、タイヤの踏ん張りもあまりわからず終い。編集時に画面を明るくしてみたのだけど、確かに足の動きはわかるようになるものの、他の部分が飛んでしまって断念。結局「照明が必要かな?」と再挑戦を決意したこと。

もひとつは、レヴ トゥー ザ リミットの時にインテークマニホールドから音を拾ったのだが、少しばかり機械音がやかましかった。それで、マイクに防音を施し「今度こそ」と期待していたのだが、アメリカ製の古いICレコーダーが機嫌を損ねてオーディオファイルはなし。しかたがないので有料の音楽でごまかしたこと。

そんな少しばかり欲求不満なビデオがこれ。

それでも、絵的には面白い迫力のある動画が撮れたと思うのだが。

※ 吸気音も排気音もないので想像しがたいですが、コーナリングスピードに勝るツーシーターのカメラカーに追い立てられていたので、実は、かなり全開で走っています。


第70回 アイドリングストップ


掲載が遅れてしまったが、筑波サーキットで開催したエンジンドライビングレッスンに岡崎市から駆けつけてくれたTさんのウインドと

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トゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールを点検に出した。お世話になったのはルノー京都。今回は代車に新車のマーチを貸してくれた。そして、これがアイドリングストップの興味津々初体験。


アイドリングストップ機構付きマーチ

と言っても、アイドリングストップ自体は何年も前から実用に供されている技術だし、町を走ればアイドリングストップバスが青信号になってエンジンをかけて(?)発進するのを目にするし、スクールに来たアルファロメオジュリエッタのStart&STOPシステムをパドックで試させてもらったこともあるから、興味の対象はもっぱら、アイドリングストップ付きのクルマを日常的に乗った時に自分がどんな反応をするか、だった。

マーチのアイドリングストップはスイッチの切り替えでで機能させないようにできること、アイドリングストップ中にステアリングを動かすとアイドリングストップが解除されることを教えてもらい、ちょっと安心して八条通りに乗り出した。

で、結論から言うと、「アイドリングストップという技術は確かにクルマの進化として認められるけど、違和感を感じることは避けられない」だった。

誤解のないように付け加えておくと、マーチのアイドリングストップのことを行っているのでは決してない。自宅から御殿場インターチェンジまでの400キロ強の間に信号機がひとつしかないユーザーにとってアイドリングストップが有益なのか、という議論をするつもりもない。
「アイドリングストップ機能がついていれば排気ガスの排出が減って環境にやさしく、燃費性能も向上するのでおさいふにもやさしい」と、あたかも排気ガスをたれ流すクルマが悪者で、アイドリングストップ装着車が善人だと言わんばかりの売り方に疑問を感じるのだ。そう。短期間ながら自分で体験して、今までもやもやしていたものが晴れた。技術そのものは拍手ものなのだが、もやもやの原因はその技術の伝達の仕方だった。

自動車技術として燃費向上を図るのでであればエンジン内部や駆動系の開発によってそれが達成されるべきであろうし、短時間エンジンを停止するという対症療法的な方法で声高に数値の改善を謳うのはいかがなものか、という話だ。使う環境によっては乗り手の利便性が大いに高まるのだから、もったいない話だと思う。
アイドリングストップ付きのクルマに乗っていてもその効能にあずかれない人もいる。アイドリングストップ自体を嫌う人もいるだろう。逆に、カタログに書かれた数値だけを比較して、個人の嗜好を抑えてアイドリングストップ装着のクルマを選んだ人がいるかも知れない。

やはり、この手のデバイスは、特にアイドリングストップに関しては「アイドリングストップという技術を搭載しています。通常の走行では特別に意識していただくことはありません。ただアイドリングストップを行うことで環境への負荷を減らすことはできます。機会があればそんな運転を試されてはいかがでしょう」というようなメッセージと『対』になるべきものだと思う。

ある日。スタッフで食事をしている時に絶対にぶつからないクルマの話になった。レーダーが人間の代わりをして障害物の手前で完全に停止させるデバイスを内蔵したクルマだ。一度試乗会に行こうかということになりあるスタッフが言った。「トムさんなら絶対にぶつけてみせるでしょ」と。「もちろん」と答えた。冗談だが、その場に居合わせたみんなが、クルマは安全な乗り物ですというイメージだけが一人歩きしなければいいがな、と願っていた。

その昔。米国日産が『Z』をアメリカ市場に投入するにあたりCMを流した。サーキットをさっそうと走るZの姿が目に焼きついたころ「You own the road]という刺激的な文字が現れる、そんなCMだった。が、そのCM、1週間もしないうちに画面から消えた。NHTSA(運輸省道路交通安全局)がユーザーに誤解を生じさせる可能性があるとして、放映の自粛を勧告したからだった。

アメリカと比べると概して日本のマスコミは、CMを含めての話だが極めて情緒的だ。クルマは乗り手の人生を増幅させる側面を持つから、メーカーもマスコミも情報の伝達方法には合理性を軸にして気を配るべきだと考える。も少し配慮があれば、喜んで技術を享受する人が増えると思うのだが。

ま、クルマが今よりもずっとプリミティブが機械であったころから運転の楽しさを追い求めてきた人間にとっては、最近のクルマの動きを制御するデバイスに馴染めないというか、おせっかいだとすら思ってしまう。
時代を考えれば最新技術に身を任せられるようにならなければならないとは思うのだが、クルマに任せたゆえに起きた悲惨な出来事をたくさん知っているし、任せたとたんに自分の運転が下手になってしまうような気がするし、運転に対する緊張感が薄らぎ老け込むような気がして、いまだにこの手のデバイスを受け入れるのが難しい。


ルノー京都CADONO

話が横道(?)にそれたけど、グランドオープニングの招待状をもらっておきながらなかなか行けなかったルノー京都CADONOにおじゃました。


ドアを開けると


ショールームにRSが3台


嬉しくなった


工場には入庫中のルーテシアRSが2台


外には納車待ちのトゥィンゴ ゴルディーニ ルノー・スポールが1台

まぎれもなくこの日のルノー京都CADONOはルノー・スポール占拠率が極めて高く、こんなディーラーがたくさんあればナ、と思わずにはいられなかった。
そんなディーラーでユイレーシングスクールの座学をやってみたい!